ウクライナがハルキウ回復もロシアは「蛇島」作戦継続
英国防衛省が発表する戦況図が更新されました。たしかにウクライナ側がハルキウ周辺を回復していることが確認できます。ただ、その一方で、ロシアは残された黒海艦隊を使い、「蛇島」と呼ばれる黒海西部の小島への補給作戦を続けているのだそうであり、油断は禁物、といったところでしょう。しかし、現在の黒海がウクライナや西側諸国の対艦ミサイル、ドローンといった武器の試験場になっているフシがあることもまた見逃せません。
ハルキウ周辺をウクライナが回復
国際法に反した戦争を続けるロシアの敗色は見えて来るのでしょうか。
ウクライナに対する軍事侵略の開始からすでに2ヵ月半が経過するなかで、戦局にまた新たな展開が見えてきた可能性があります。というのも、昨日の『成立した米レンドリース法がウクライナ戦に及ぼす影響』でも紹介したとおり、ウクライナが火曜日時点でハルキウ近郊の村落をロシアから奪還したと発表したからです。
Ukraine pushes back Russian troops in counter-offensive near Kharkiv
―――2022/05/11 7:35 GMT+9付 ロイターより
ロイターなどの報道によると、ウクライナ政府が火曜日、ハルキウ市の北部・北東部の村をロシア軍から奪還したと発表。これ自体が「戦争の流れを変える可能性がある戦果」だ、としているというものです。
地図で調べてみると、ハルキウはロシアとの国境からも近く、もしもウクライナがドンバス地域からロシアを「押し出す」ことを望んでいるのならば、この地点を制圧することは大変に重要です。
こうしたなか、英国防衛省が連日公表している戦況図を見ても、少しわかり辛いかもしれませんが、たしかにハルキウ周辺の勢力が塗り替わっていることが確認できます(図表1、図表2)。
図表1 5月10日付の戦況図
(【出所】英国防衛省の5月10日付ツイート)
図表2 5月11日付の戦況図
(【出所】英国防衛省の5月11日付ツイート)
このあたり、ロシアにとっての栄光の5月9日を過ぎてもなお、目に見えた戦果がなく、それどころかロシアが少しずつ、ウクライナから押し出され始めているのは興味深いところです。
ロシアは「蛇島」作戦に力を入れているらしい
こうしたなか、同じく英国防衛省が発表した『インテリジェンス・アップデート』によれば、ロシア軍は「蛇島」と呼ばれる、黒海西部に浮かぶ小島の攻略に力を入れている、などと記載されています。
Latest Defence Intelligence update on the situation in Ukraine – 11 May 2022
Find out more about the UK government’s response: https://t.co/DjNroJk7jh
#StandWithUkraine pic.twitter.com/iFMlDEKM4T
— Ministry of Defence (@DefenceHQ) May 11, 2022
- 蛇島としても知られているズミイヌイ島で戦闘が続いており、ロシアはその島の露出した駐屯軍を繰り返し強化しようとしている
- 一方で、ウクライナはロシアの防空システムへの攻撃とともに、バイラクタルドローンを船に補給することに成功。これに対しロシア海軍側は、モスクワ艦を失いクリミアに撤退したことで、ロシアの補給船は黒海西部で最小限の保護しか受けられないでいる
- ロシアが蛇島での軍隊を増強していること自体、ウクライナにとってはロシア軍やその物資を攻撃するうえで多くの機会を提供している
- ただし、ロシアが戦略的防空および沿岸防御巡航ミサイルで蛇島での地位を強化すれば、それらは北西黒海を支配する可能性がある
…。
つまり、蛇島という小島をロシアに制圧されてしまうと、戦況は再びロシア側に有利になってしまうものの、モスクワ艦を喪失したロシアにとっては、必ずしもそれは容易い仕事ではない、ということでしょう。
このあたり、ロシアの補給が脆弱である、といった点は、インテリジェンス・アップデートでも繰り返し指摘されていました。こうした点は、海上補給においてもまったく同じことがいえるのかもしれません。
戦線膠着はロシアの立場をさらに悪くする
いずれにせよ、まだまだ予断を許すものではないにせよ、また、英国や米国、ウクライナ政府などの発表を鵜呑みに信じるべきかどうかという疑念は残るものの、さまざまな情報ないし客観的な情勢から判断する限りは、この戦争が長引くことは、間違いなくロシアが置かれた状況を悪化させます。
たとえば、米国ではすでにレンドリース法がジョー・バイデン大統領の署名を得て成立しましたし、黒海は事実上封鎖され、黒海艦隊は孤立し、いまや対艦ミサイルやドローンなど、ウクライナや西側諸国のさまざまな兵器の実験場と化しているフシがあります。もちろん的はロシアの艦船です。
そういえば、『5月9日に向けてマイナスの戦果がロシアに続々発生中』あたりでも議論したとおり、5月9日以前の段階で、2017年に就役したばかりのフリゲート艦「アドミラル・マカロフ」に対艦ミサイル「ネプチューン」が命中した、とする話題もありました。
Russian warship Admiral Makarov ‘on fire after being hit by Ukrainian missile’
―――2022/05/06付 Independentより
これが事実なら、ロシアにとっては大変に大きな損害でしょう。
さらには、5月2日時点の『インテリジェンス・アップデート』によれば、ロシアは軍事侵攻開始時点で地上戦闘力全体の約65%に相当する120を超える大隊戦術群を動員したものの、これらの部隊のうちすでに4分の1以上が戦闘能力を喪失した可能性がある、と指摘されています。
Latest Defence Intelligence update on the situation in Ukraine – 02 May 2022
Find out more about the UK government’s response: https://t.co/ZuMXTmNRyd
🇺🇦 #StandWithUkraine 🇺🇦 pic.twitter.com/S7E6h4WTgM
— Ministry of Defence 🇬🇧 (@DefenceHQ) May 2, 2022
「地上戦闘力全体の65%を投入し、その4分の1が戦闘能力を喪失した」ということは、単純計算でロシアの地上戦闘力全体の15%前後がすでに失われたことになります。もしかすると現時点では損害はもう少し増えているかもしれません。
楽観は禁物だが…
そのうえで米レンドリース法の影響で、米国からの武器貸与が加速すれば、戦況はウクライナにとってさらに有利なものとなるかもしれません。現時点で過度な楽観視は禁物ですが、まずはロシアの戦力が徹底的に削がれることは、北方領土問題などを抱える私たちの国・日本にとっても歓迎すべき話ではあります。
そして、現在のように戦線が膠着してしまっていることは、ロシアにとっては間違いなく打撃となるでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
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北方領土についてだけが、積極的関心事項ですね。
今のところゼレンスキーは
「俺が勝ったら北方領土を返す」
とは匂わせてすらいません。
ならば、泥沼化してソビエト連邦同士で10年間ぐらい殺し合いを続けてもらうのがベターシナリオかと。
北方四島はウクライナからすれば他国の領土
言及しなくて当たり前
このまま十年争ってほしいなんてことはあまりにも心ない発言
いますぐにでも終結しクリミア含めて撤退してくれる事を祈る
ロシアの国力を削ぐことが北方四島の奪還に必要なこと
そのためにも、サハリンの開発から手をひき一致団結してロシアを干上がらせること
ロシアが暴発すれば日本は北方四島を守る(日本固有の領土)名目で進軍出来る
しなければしないで国際協調しながらロシアに取引もちかければよい
もちろん日本の領土だ。値切れるだけ値切って。
ハルキウ周辺の勢力の変化はこの地図がわかりやすいかもです。
https://twitter.com/War_Mapper/status/1524177753314111490
放棄されたロシア軍車両と思しき映像
https://twitter.com/UAWeapons/status/1524006059110715393
蛇島は開戦初期にロシアが制圧した島ですが、防空を担っていたモスクワがいなくなったのでウクライナ軍の無人機の攻撃に晒されるようになりました。ロシアの対空システムが攻撃される映像も流れていました。
そこをロシアがテコ入れしている、という話だと思います。
ハルキウの 露助往ぬるや 春消ゆる
このところ歳のせいで目がぼやけてしまって、文中の「蛇島」が「独島」に勝手に脳内で変換されてしまいました。ロシア・ウクライナが独島をめぐって攻防??、へぇー、将来の竹島奪還に向けてやり方をよく勉強しておかなくちゃ。何だか目だけでなく頭まで支離滅裂に。
私事ですが、20代の時にソ連(当時)のオデッサを訪問したことがあります。記憶は薄れましたが、美しい街並みだったと思います。映画「戦艦ポチョムキン」の舞台になった港も訪れました。
また、若い女性はスタイルも良く美人が多かった思い出があります。ただし、年配の女性は、ほとんどの例外なく重量感にあふれており、そのコントラストが印象的でした。
いまはただ、ウクライナ軍がその全土からロシア軍を駆逐することを願っています。