【速報】韓国の外貨準備、実質的に「64億ドル減少」
本日の「速報」です。韓国銀行は同国の2021年8月における外貨準備高が「前月比53億ドルの増加だった」と発表しました。ところが、実態はSDRの追加配分の影響を除外すれば、実質的に64億ドルの減少です。8月末ごろの通貨防衛による影響でしょうか。
韓国銀行が今朝、同国の8月における外貨準備高を公表しました。
Official Foreign Reserves(August 2021)
―――2021/09/03付 韓国銀行HPより
これによると、同国の外貨準備高は4639億ドルで前月比53億ドル増え、過去最大となりました。
ただ、冷静に中身を見てみると、今回の同国の外貨準備高の変動要因のうち、国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)を116.9億ドル分、追加配分されたことを除けば、実質的には減少です。
外貨準備は一般に、金、SDR、IMFリザーブポジション、現金預金、有価証券などで構成されているのですが、韓国銀行の発表によれば、同国の外貨準備のうち、現金預金(deposits)の残高が前月比98億ドルも減少しているのです(図表)。
図表 韓国の外貨準備高(2021年8月)
項目 | 金額 | 前月比増減 |
---|---|---|
有価証券 | 4183億ドル | +34億ドル |
現金預金 | 210億ドル | ▲98億ドル |
SDR | 152億ドル | +117億ドル |
IMF-RP | 47億ドル | ― |
金 | 48億ドル | ― |
合計 | 4639億ドル | +53億ドル |
(【出所】韓国銀行)
すなわち、SDR追加配分の影響を除外すれば、実質的に同国の外貨準備高は64億ドルの減少、というわけです。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
この点、先月の『家計破綻?通貨危機?スワップなき韓国の「ジレンマ」』などでも報告したとおり、先月は米FRBのテーパリング観測で同国の通貨・ウォンが乱高下する展開がありました。
この点、先月末頃に不自然に韓国ウォンが買われている局面があったのですが、もしかすると韓国銀行による為替介入オペレーション(自国通貨買い/外貨売り)が行われたのかもしれません。
このあたりについては、以前から当ウェブサイトで申し上げている次の仮説との整合性を検証する良い機会でもあります。
FRBの緩和と韓国の外貨準備高とマネタリーベースの関係(仮説)
- ①FRB等、主要国中央銀行による金融緩和
- →②為替市場で韓国ウォンを含めたEM(※)通貨高
- →③韓国の通貨当局が「ウォン高になり過ぎれば輸出業者が困る」と判断
- →④韓国のウォン売り・ドル買い介入(→外貨準備の増加)
- →⑤市中のウォン流通量が増大(→マネタリーベースの増加)
- →⑥金融機関の家計向けローンが増大(→家計債務の増大)
- →⑦カネを借りた家計がリスク資産を購入
(※「EM」とは “Emerging Markets” 、つまり「新興市場諸国」のこと。)
この点、韓国のマネタリーベース統計は数ヵ月遅れで公表されるため、このあたりの正確な検証は現時点ではできませんが、これに関して続報などがあれば、追って別稿などで報告したいと思います。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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韓国の言っている外貨準備は「あてにならない」のでは。
グリーンスパンの著書には通貨危機に際して韓国の言っている外貨準備は実はなかったと書いてある。民間の銀行に貸し出し、不良債権処理に使われてしまっていたらしい。
現在韓国では家計債務、企業債務とも膨れ上がっている。債務の相手は株と不動産だろう。
これらが値下がりを始めたら貸し出しは不良化する。その時また同じことをするのだろうか。
>グリーンスパンの著書
邦題名「波乱の時代(上)(下)」ですね。 日本の金融機関がザワついていたので韓銀に連絡したら、「実はもう残って無い」とあっさりゲロしたくだり。 あまりにもケンチャナヨ全開で、結構笑ってしまいました。
今はとりあえず12月31日まで米韓為替スワップがあるのですが、あと4か月弱ですしね。 米国としては民間の銀行の様子を知りたくて、このスワップを延長したのかもしれませんね。
更新ありがとうございます。
2、3年前会計士様は「韓国の外貨準備、実質的に使い物になるのは2,000〜3,000億足らず」と仰られていた記憶があります。
そこから頑張ったとしても、ジャンク債など使い物にならない債権は残っているでしょう。「64億ドル減少」は非常に痛いですね。ホホホッ見ものじゃ。
>先月末頃に不自然に韓国ウォンが買われている局面があったのですが、もしかすると韓国銀行による為替介入オペレーション(自国通貨買い/外貨売り)が行われたのかもしれません。
あれで64億ドルマイナスだとすると、4000億ドル有っても大してもたないですね。
今月は、1150台に戻しましたから、ウォン売り介入になると思います。