「異見」に触れてこそ、議論を深めることができる
普段から申し上げているとおり、当ウェブサイトでは、「意見と事実の区別」、「異見を排除しないこと」、「事実関係を明らかにすること」が、議論をするうえでとても大切だと考えています。このあたりはますめでぃあに弱い部分でもあります。こうしたなか、昨日、とあるメディアの報道を眺めていて気付いたのが、「自分自身と異なる意見」を読んでいると、非常に参考になることもある、という事実です。
目次
メディアの3つの問題点
普段から申し上げていることですが、当ウェブサイトでは「客観的事実と主観的意見についてはキッチリと分けること」、「異なる意見に触れること」、「事実を踏まえたうえで議論すること」などが、とても大切だと考えています。
こうした考え方は、新聞・テレビに代表される既存のマスメディアの報道に対する一種のアンチテーゼだと思います。というのも、マスメディアの報道は、得てして「事実と意見を混同する」、「異なる意見を排除する」、「事実を無視して議論する」、などの特徴がある(と著者自身が考えている)からです。
日本のメディアの報道に問題がある理由は、結局のところ、昨日の『「武田総務相がNHKに受信料引き下げを要請」=産経』などでも触れたとおり、彼ら自身が既得権益に安住し、知的訓練を受けていないからではないかと思う次第です。
ちなみに著者自身、かつては「日本のマスメディアの報道には大きな問題がある」と考えていたのですが、最近になって、この考えを改めました。「報道に大きな問題がある」のは、なにも「日本の」マスメディアに限った話ではないからです。
この点、どんなメディアのどんな報道に問題があるのかについては、具体的に言いたいことはたくさんあるのですが、本稿ではこれらの詳細に立ち入ることは控えておきます(というよりも、これについて触れ始めると、キリが亡くなってしまいます)。
米国の事例を1つだけ挙げておくと、ドナルド・J・トランプ米大統領に「新型コロナウイルス感染に伴い呼吸障害が生じている」などの誤報を複数のメディアが流してしまった、という「事件」などがその典型例でしょう(『「トランプ米大統領に呼吸障害」報道の答え合わせ』等参照)。
この点、当ウェブサイトは「読んでくださった方々の知的好奇心を刺激すること」を目的に運営しています(※それが実践できているかどうかは読者の皆さまがご判断ください)。
「知的好奇心を刺激する」というのは、なかなか難しいことですが、ひとつのヒントがあるとすれば、マスメディアが陥りがちな、「意見と事実を混同する」、「異見を排除する」、「事実関係を無視して議論する」などのポイントに気を付けることではないかと思っています。
各論を考える
事実と意見の大きな違い
普段から申し上げているとおり、世の中の「報道」ないし「論評」と呼ばれる文章に含まれる要素は、基本的には「客観的事実」と「主観的意見」の2種類しかありません。
これらのうち、「客観的事実」は「書き手が違っても内容が大きく異ならない情報」のことであり、「主観的意見」とは「書き手によって内容が大きく異なる可能性がある情報」のことです。たとえば、
「安倍晋三氏は2020年9月16日をもって内閣総理大臣としての職を辞した」
という文章があったとすれば、これは「客観的事実」です。
もちろん、記事を書く人によっては、「安倍は」と呼び捨てにするかもしれませんし、「2020年」を「令和2年」、「皇紀2680年」、「中華民国109年」などと呼ぶ人もいるかもしれませんが、表現が違うだけで、情報としての基本的な構成要素は同じです。
しかし、安倍政権の評価を巡っては、人によっては
「安倍晋三氏は日本の歴史に残る大宰相として、さまざまな業績を残した」
などと絶賛するかもしれませんし、またある人は
「安倍晋三氏は『もりかけ問題』などのさまざまな疑獄から逃げ回り続けた」
などと批判するかもしれません。このように、記事の書き手、情報の伝達者によって、記述内容がときとして180度真逆になってしまうような情報は、「主観的意見」です。
一般にまったく逆の情報を受け取ると、人間は混乱するものです。しかし、180度真逆の2つの意見を見たときに、どちらの情報が正しいのか、私たちは判断しなければならないこともあります。それこそがまさに、自由民主主義社会の醍醐味でしょう。
この点、日本は言論の自由が認められている社会であり、かつ、民主主義社会です。異なる意見であっても自由に表現する機会は認められなければなりませんし、私たちはそれらの異なる意見のぶつかり合いを通じて、どちらの意見が正しいのか判断していかないといけないのです。
異なる意見を大切に!
そして、私たちは異なる意見に接しながら、果たしてどちらの言い分が正しいのかについて、ひとつひとつ判断していかなければなりません。
たとえば、昨今、一部マスメディアが大々的に取り上げている「日本学術会議への任命拒否問題」などを巡っても、「菅義偉総理大臣が人事権を恣意的・不当に悪用した事件」と見るのか、それとも「日本学術会議側に問題があったため」と見るのかは、意見は異なっているのではないでしょうか。
この点、従来だと、私たちが社会のさまざまな話題を知り、判断する手段は、新聞、テレビを中心とするマスメディアに限られていました。そして、マスメディアの報道は、得てして「事実」と「意見」を区別することなく、ときとして両者をごちゃまぜにしていたフシがあるのではないでしょうか。
こうしたなか、インターネットの発達にともない、マスメディアの社会的影響力が日々、どんどんと低下していることは事実でしょう。だからこそ、インターネットを通じて手に入るさまざまな客観的事実、主観的意見を判別しながら、私たちはある程度、自分の頭で何が正しいのかを判断していかねばなりません。
ただし、自戒を込めて申し上げておくならば、「自分にとって心地良い意見」、「自分が賛同できる意見」のみを読み続けるのは、適切なことではありません。ときとして、「自分と異なる意見」、「自分が賛同できない意見」を読むことも大切です。
事実関係の無視、議論のすり替え
さて、「異見の排除」という論点と微妙にかかわってくるのが、「事実関係を無視した議論」の危険性です。
その典型例として、「もりかけ問題」を挙げておきましょう。
以前から当ウェブサイトをご愛読いただいている方ならご存じだと思いますが、「もりかけ問題」とは、
「安倍晋三(氏)が内閣総理大臣としての地位を悪用し、個人的な友人が経営する学校法人に対し、何らかの便宜を提供していた疑い」
のことだったはずです。その個人的友人が経営する学校法人の名前が「森友学園」であったり、「加計学園」であったりしたため、「もり」と「かけ」をあわせて「もりかけ問題」などと俗称され、おもに「ATM」などと呼ばれるメディアや、特定野党などが舌鋒鋭く追及してきました。
ただ、この「もりかけ問題」、事実関係を調べていけばいくほど、その正体はよくわかりません。
このうち「森友学園問題」については、当初は「国有地を不当に安く払い下げたかどうか」、「その国有地の払い下げに安倍総理自身(あるいは昭恵夫人)がかかわっていたかどうか」がポイントだったはずですが、待てど暮らせど、「安倍総理自身が国有地払い下げに関与した」という証拠は出てきません。
ところが、途中から、「森友学園側が安倍総理側から寄付金を受け入れたから問題だ」、「安倍晋三記念小学校という学校名を予定していたから問題だ」、といった具合に、次から次へと意味不明な論点が出てきて、安倍総理や財務省関係者などは、さまざまな答弁に追われました。
また、「加計学園問題」についてはもっとすごく、当初は「法律で設置が禁止されている獣医学部の新設を安倍総理が圧力を掛けて通した」といった疑惑だったはずですが、事実関係を調べていくと、「じつは獣医学部の新設を禁止した法律は存在しない」などが判明。
その過程で、「貧困調査」と称して歌舞伎町のいかがわしい店に出入りしていた、違法な天下り斡旋に関与していたなどの不祥事で知られる文部科学省の前川喜一元事務次官が、文部科学省内の文書をメディアに持ち込んでいたことなども明らかになったという次第です。
つまり、この「もりかけ問題」、本来ならば北朝鮮核開発問題への対応など、重要な懸案を審議しなければならなかったはずなのに、国会をくだらないスキャンダル追及の場にしたという意味で、「ATM」などのメディアや特定野党の罪は極めて重いと言わざるを得ません。
自分自身の頭で考えることの大切さ
ただ、2017年以降の「もりかけ問題」の過程で明らかになったのは、「自分自身の頭で考えること」の大切さだったのではないでしょうか。
実際、2017年7月には、特定メディア・特定野党による「もりかけ問題」追及により、政権支持率が急落したにも関わらず、その3ヶ月後の2017年10月に実施された衆議院議員総選挙では、自民党がまずまずの勝利を収める一方、最大野党の民進党は自滅・瓦解に追い込まれました。
ちなみに現在の最大野党である立憲民主党は、当時「希望の党」を率いていた小池百合子東京都知事から「排除された」人たちが集まってにわかに結党したものですが、各種世論調査では、衆院選直後と比べて現在に至るまで、支持率はジリ貧です。
また、自民党、安倍政権の側は、安倍総理自身が2018年9月の自民党総裁選で石破茂候補を破って圧勝しましたし、2019年7月の参院選でも、多少議席を減らしたものの、目標議席は確保し、まずまずの勝利を収めています。
さらには、安倍総理自身が健康問題で辞任すると表明したところ、安倍政権下で一貫して官房長官を務め続けていた菅義偉氏が自民党総裁選で圧勝し、総理に就任。
政権発足後わずか1ヵ月で、さっそく「ハンコ行政廃止」、「沖縄振興予算見直し」、「日米豪印クアッド外相会談実施」など、矢継ぎ早に手を打っているのです。
奇しくも持ち上がった日本学術会議の「任命拒否問題」については、マスメディアや特定野党側はこれを菅政権追及の材料にするつもりだったようですが、菅政権からはほとんど相手にされていません(『ワンイシュー全力投球のメディアは「置いてけぼり」に』等参照)。
一部メディアの調査では、10月の菅義偉政権に対する支持率は急落したようですが、菅政権がこうした「返り血」を気にせずに突っ切れるかどうかと、こうした菅政権の姿勢を私たち日本国民が支持するかどうか、といったところが、今後の見どころではないかと思う次第です。
本稿を執筆した理由
以上、本稿ではとりとめもなく、普段から何となく当ウェブサイトにおいて考えている内容をまとめてみたという次第です。
ただ、唐突にこんな議論を執筆した理由は、とあるメディアの報道を眺めていて、ふと「自分とまったく異なる立場で書かれた記事にも、ごくたまには参考になるものがある」、という事実に気付いたからです。
それについては、早ければ本日早い時間にも当ウェブサイトに掲載できると思いますので、どうか期待してお待ちくださると幸いです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
元米高官のマイケル・ジョナサン・グリーン(Michael Jonathan Green, 마이클 조나단 그린)米戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長
https://dot.asahi.com/aera/2017091500111.html?page=1
駐韓外信記者クラブ会長を務めたマイケル・ブリーン氏
https://s.japanese.joins.com/JArticle/250557?sectcode=A10&servcode=A00
今、異なる人物なのにようやく気付きました。
安倍元総理の良くない点は、何でも対応してしまおうとしたことでしたね。モリカケなんぞただの言いがかりなのだから、相手にしない方法を考える努力をして実行するべきでした。どんな言いがかりでも対応することが、誠実なことと勘違いしてしまっていたのでしょう。総理が誠実さを発揮すべき優先順位はまず国民。野党やマスコミの相手をすることは、一部の国民に対して特に優先して誠実であろうとして、モリカケなんかどうでもいいから政策を実行してほしい大多数の国民を蔑ろにしてしまっていたといえます。眼の前の野党に不誠実にすることで多くの国民に対して誠実にすることを選択すべきでしたが、それができなかった。菅総理を見ていると、あえて不誠実に振る舞うことが、誠実なことであるということに気が付かされます。クレーマーに対して「うるせえ、知らねえよ」と追い返すことが他のお客さんにとってプラスであることと似てます。
国民に自分で考えるように誘導することで、クレーマーに対して冷淡な対応しても世論の支持を得られるようにする手法は、自分自身参考にしたいと思います。
いつも知的好奇心を刺激する記事の配信ありがとうございます。
モリカケ問題は当方が日本人の安全保障に関して意識が凄く低いというよりは問題過ぎて絶望するレベルであることを認識させてくれたありがたい話題ですね(笑)。
確か安倍総理が長期に召還中の駐韓大使を再派遣した時に相変わらずモリカケをやっていたからです。
安倍総理が上記行動した事はアメリカから日本に北朝鮮に関してなんらかの有事が発生する可能性があることを伝えられたと思います。
そうでない場合は釜山の愚者像設置と言う状況が変わっていないのに大使を再派遣した事は
日本は貴国の主張を認めます。
と言うことを伝えることです。
あの時もモリカケを変わらずやっていたのですが「今モリカケで政府を批判する時期ではない」意見が日本人のどこからも出なかった事が問題と思います。
果たして、あの時朝鮮半島に有事が発生して半島からの難民多数発生して、半島に残された日本人の治安維持と救出に「超法規の」行動を政府が行う場合、国民は政府の行動を一致して支持するコンセンサスを形成できたでしょうか?
ムリだったと思います。
そして今同じ状況でもムリでしょう。
この国の国民は非常時の振る舞いについて民主主義国家の構成員である資格を満たしていますかね?
当方思うに共和制ローマの市民よりはダメですね。
以上です。駄文失礼しました。
「代議制民主主義政体」では代議員全般の質は選挙民全般の質を超え得ない、といったトコロでしょうか…
まあ過去は変わりませんから(特亜はどうだか知りませんが)、
われわれは今後どうしていくのか?っつうコトですかナ
更新ありがとうございます。
なるほど〜これで納得しました。私、先にハンギョレの論考(6:00発)を読んで意見を書き込みました。
理由はタイトルを見た時、後の6時発の方が頭が入り込み易そうだったからです。それが終わった後、コチラに来ました。うん、順番変えて見ると分かり良いぞ(笑)。
自分とまったく異なる意見というのは、たまには良いものですね。自分の見方、角度とまったく異なる切り口から入り込む。但し駄目文、3行読んで「もうやーめた」もありますが。
さて、菅総理と安倍総理の違いは、安倍氏は何でも生真面目に相対し過ぎた。知らん顔しとけば良いものまで。菅総理は愛想もクソも無く、ポイッと捨てる。「この件については、私から意見をするものではありません。次ッ」(笑)。ガンバレ〜!
「愛想もクソも」→「愛想もこそも」では? でもクソのほうがよさそうかも。
もうかなり昔のことになりますが、私がいわゆる「市民団体」とやらに完全に見切りをつけたできごとがありました。
櫻井よしこ氏が神奈川のどこかの市民ホールで講演会を開催しようとした際に、神奈川人権センターを名乗る市民団体が市にクレームを入れ、講演会を中止に追い込んだことがありました。その理由が「あんな右翼に講演会をさせるだなんてケシカラン」というものでした。
私はそのニュースを聞いた時、思わず耳を疑いましたよ。櫻井さんの主張に100%賛同しているわけではありませんが、なによりも「仮にも『人権』を掲げる団体が、こんなあからさまな言論弾圧をしでかして、恥じることがないとはどういうことだ?」とね。そしてお仲間の団体がこのような恥ずべき行動に対して、一向に声をあげない様子を見て、いわゆる市民団体に完全に見切りを付けました。そして、以後、市民団体とかNGO/NPOなどの言うことを一切信用しなくなりました。
サヨクが一切の異見の存在を認めないのは今に始まったことではありません。そして二重基準、時には三重基準を振り回して何ら恥じることがないのも同様です。
実は、私が日頃サヨクを非難・罵倒してやまないのは、「あんな連中と一緒にされたくない」というのが一番の動機だったりします。そして連中が後生大事に掲げる幾つかの概念の元々の成り立ちや由来を知っているがゆえに、そのデタラメな使い方に我慢ならんと思っているのです。
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
(なにしろ、自分がその典型なので)
(アメリカ社会分断を見ると、日本以外も、そうかもしれませんが)日本で議論するのに難しいのは、「自分(または自分たち)の気分を害する事実もある」ということを認めることです。(「自分の気持ちに寄り添うこと」なら、ほっといても、真偽不明でも、事実としてしまうので)
大学教授相手の素人でも、高齢者相手の若者でも、オールドメディア相手のネットでも、こちらが正しいこともあり得ます。そもそも現実社会では、問題は複数の問題の集合体(?)で、すべての問題を完全に解決する正解はありません。だから、正答の反対は間違いではありません。
蛇足ですが、自分が若い頃になかったものを、権威あるものと認めることも困難なのかもしれません。(もっとも、若い頃にあったものの代用品として、理解するかもしれませんが)
駄文にて失礼しました。
私も、つい先日コロナの扱いを2類から5類に変更するというデマを拾ってしまいました。
自分が見たいこと、信じたいことに飛びついてしまうあたりが、ネット情報の怖い所ですね。
ご指摘いただいたケロお様はじめ、ここの読者の見識の高さにいつも感服しております。
ただみんな大好きな彼の国に関しては、そういった傾向があるなと感じております。