キャッシュレス先進国スウェーデンで現金決済義務化か

当ウェブサイトでしばしば取り上げる話題のひとつがキャッシュレス決済です。キャッシュレス決済の利便性や威力はなかなかのものがあり、著者などもその恩恵を受けている人間のひとりですが、一方、やはり怖いのが災害時です。電機や通信が途絶した状況だと、キャッシュレス決済が機能しない可能性があるからです。こうしたなかで目に付いたのは、キャッシュレス先進国とされるスウェーデンで、むしろ現金決済を義務付ける動きが出ていることです。

交通系ICカード共通化の威力

当ウェブサイトにて何度か報告してきたとおり、著者はかなり以前から、「現金を使わない生活」を実践しています。

これが、なかなかに便利なのです。

キャッシュレス決済の手段として、とりわけ都市部でよく利用されるものは交通系ICカードです。首都圏の場合はSuicaかPASMO、近畿圏の場合はICOCAやPiTaPaなどが中心ですが、これらのカードは全国の規格の共通化が進み、多くの場合、全国で利用可能です。

たとえば首都圏で暮らす多くの人々は、おそらくは少なくともSuicaかPASMOのいずれかは所有していると考えられ、これらを持っていれば日常的に鉄道などを利用するのにいちいち切符を買ったりする必要がないなど非常に便利ですが、それだけではありません。

これらのICカードを持っていれば、たとえば大阪や名古屋などの他都市に出かけたときにも、そのままこれらを使用することができます(ただしICカード対応エリアであることが必要ですが)。

先日調べてみたのですが、Suicaを1枚持っていれば、最近だと札幌市営地下鉄、JR北海道(たとえば新千歳空港駅や札幌駅、旭川駅などの区間)、ゆいレール(たとえば那覇空港駅からてだこ浦西駅までの区間)などを乗りとおすことができます。

スマホに取り込めばチャージ段階から現金不要

これ、本当に便利です(とくに出張族にとって)。

SuicaとICOCAの相互利用が始まったのは2004年8月1日のことらしいのですが、著者も自身が所有しているICカードをそのまま使って他エリアの鉄道に利用できるようになったことを、今でも鮮明に覚えています。もういちいち切符を買わなくても、良くなったからです。

しかも、交通系ICカードは、鉄道以外でも利用可能です。首都圏の場合だと主要なバス路線(たとえば都営バスなど)、都電、あるいは都内などを走るタクシーなどで利用可能で、さらには主要なコンビニエンスストア、ドラッグストア、スーパー、ファミレスなどでも利用することができます。

しかもこれらICカードは、最近だと物理的なカードではなく、スマートフォンに取り込むことが可能です。

iPhoneユーザーの場合はApple Pay、Androidユーザーの場合はGoogle Pay、といった具合に、カード情報そのものをスマホに取り込み、そのスマホをFeliCa端末にかざせば、取り込まれているカード(たとえばSuicaなど)の情報が呼び出されて支払うことが可能、という仕組みです。

そして、スマホに取り込んだカードは、チャージする際にはクレジットカードが必要ではありますが、逆にいえば、チャージする際に現金が不要で、わざわざ駅の券売機などを使う必要もありません。つまり、チャージする段階ですでにキャッシュレスなのです(クレジットカードの利用代金は後日銀行口座から引き落とされます)。

このことから、①銀行口座を作り、②クレジットカードを作ってスマホに取り込み、③Suicaなど交通系ICカードを作ってスマホに取り込む―――ことさえできれば、極端な話、日常生活からは可能な限り、現金を使わないようにすることができるのです。

現時点で現金が必要な場面

ただし、『「現金」という「電気なしでも使える最強の決済手段」』でもお伝えしたとおり、現代社会は完全なキャッシュレス、というわけにはいきません。

思いつくままに列挙しても、次の通り、まだまだ現金の需要はあります。

祝儀、不祝儀、お小遣い

結婚祝い、出産祝い、入学祝い、香典、その他冠婚葬祭に関する金銭、子供に対する小遣いやお年玉 等

現金しか使えない場面

銭湯、個人経営の飲食店、ゲームセンター、パチンコ屋、自動販売機、コインランドリー、賽銭、加持祈祷、病院、クリニック、歯医者、PTA会費、学校の教材費、割り勘 等

さすがに、結婚祝いや加持祈祷・お祓い、あるいは銭湯や個人経営店、病院、クリニック等ではまだまだキャッシュレス決済はそこまで普及していないようです。

しかし、最近だとお祝いや香典、小遣いなども徐々にキャッシュレスが広まりつつあるようであり、たとえば最近だと子供さんへの小遣いをキャッシュレス方式で与えるなどの事例もあるようです(さすがにお子さんが小学生のうちは現金の方が適しているようにも思えますが…)。

また、個人経営の店舗であっても、飲食店の場合は限定的ながらキャッシュレス決済が使えるというケースもチラホラ出てきているようであり、これに加えて最近だと一部のコインランドリーでQRコード決済などを受け付けし始めているケースもあるやに聞き及びます。

これに加えて個人間でのワリカンなどの場合は、最近は一部のコード決済、あるいは「ことら送金」などを使えば、たとえば電話番号に紐づけた送金なども可能です。

著者自身としては、「ことら送金」がなかなかに便利だと考えていて、メインで使用している銀行口座に携帯番号などを紐づけておけば(紐づけ方法は銀行にもよりますが、多くの場合はとても簡単です)、あとは携帯番号を相手に伝えればおカネを受け取ることができます(逆も可能)。

このように考えていくと、現金でなければできない決済という場面は、どんどんと狭まっていることは間違いありません。

災害時に気になるキャッシュレス

もっとも、こうした観点から、もうひとつ気になるのが、災害時です。

現在のキャッシュレス生活は、電気と通信の存在を前提としています。

交通系ICカードにしたって、QRコード決済にしたって、クレジットカード決済にしたって、あるいは「ことら」にしたって、どれもデバイスないし通信機等に電源が入っていなければ使えませんし、また、通信網がダウンしていれば同様に使い物にならないことが多いです。

仮に―――本当に、「仮に」、という議論ですが―――、東京などの大都会が地震などの災害、あるいは外国からの武力攻撃といった突発的な災害ないし戦闘に巻き込まれ、電力供給が断たれるような事態に陥ったら、どうすれば良いでしょうか。

もちろん、まずは身の安全を確保することが最優先ですが、次いで大切なことは、公的な支援などが得られるまでの期間、最低限の生活ができるような準備を怠らないことです。

当ウェブサイトでは先般よりお伝えしていますが、現金は必要です。

著者の知り合いの事例だと、過去に大震災の被害に遭った経験から、非常用の現金として、千円札、百円玉、十円玉をすぐに持ち出せる場所に常備しているといいます。

じつは、百円ショップの『ダイソー』では「お札サイズに対応したチャック付きポリ袋」(長さ約170㎜、深さ約85㎜、厚さ0.08㎜)というものが売られているのですが、ちょうど紙幣を小分けにして保管するのにちょうど良いのだとか。

現金は千円、百円、十円が基本

現金(しかも金種は千円札、百円玉、十円玉)を保管する理由は簡単で、停電すればキャッシュレス決済手段がいっさい使えなくなるうえ、多くの店舗で真っ先に釣銭不足が発生するからです。

また、災害時で電気が来なくなった場合、コンビニなどの小売店では生鮮食品などを早めに売り切らないといけなくなりますが、電気がないため当然キャッシュレス決済手段も使えず、必然的に計算が簡単な百円単位・十円単位などで販売せざるを得ません。

たとえば普段だと「648円」、「756円」などと円単位の端数で表示されている弁当類も、災害時には「弁当1個500円」、「おにぎりセット1個300円」、「おにぎり1個100円」といった具合に、キリが良い単位で販売されます。また、キャッシュレス決済が使えないため、当然、店には釣銭が不足します。

したがって、災害時には1万円札などの大きな単位の紙幣ではなく、千円札や百円玉が役に立つといいます。

たとえば災害に備えて非常持出袋を自宅や職場に備えている人も多いと思いますが、そのような人は、その非常持出袋に千円札と百円玉を10枚ずつ入れておけば、コンビニで売られている1個500円の弁当と1個100円のおにぎり、1個100円のお茶、1本500円の傘などを釣銭なしで購入できます。

もちろん、最近だと災害時に無料で飲料などを提供してくれるタイプの自販機もあるようですが、そうした自販機が自宅や職場の近所にあるとは限りませんし、必要な商品が適時に手に入るという保証もありません(人々が殺到して商品があっという間に払底する可能性すらあります)。

こうした事態に備えて、やはり一定期間、キャッシュレス決済も使えず、ATMも動かないという前提で、1~2週間分の生活を賄えるだけの現金を、(しかもできれば小銭や千円札などで)手元に置いておくのが望ましいのでしょう。

これに加えて地震などの災害で停電したとしても、公衆電話は電源を電話線から得ているためか、災害時にも使用できるケースが多いようです。ただし、停電してしまうとテレホンカードなどが使えず、結果的には通話のための十円玉がたくさんあると、何かと助かるのだそうです(これは阪神淡路大震災でも経験されたことだそうです)。

それに、十円玉、百円玉がたくさんあれば、災害時に辛うじて動いている自販機を見つけたときに、釣銭なしで商品を手に入れられますので、その意味でも小分けにした小銭を非常持出袋に忍ばせておくとともに、自宅などのわかりやすい場所に、小銭を入れたビンなどを保管しておくのもひとつのアイデアです。

この点、防犯面からは、本来、自宅に多額の現金を保管することは望ましくないとされますが、そもそも防災を目的とする小銭であれば、そこまで多額ともなりません。

キャッシュレス先進国・スウェーデンの事例

さて、こうしたなかでちょっと興味深い話題があるとしたら、これかもしれません。

キャッシュレス先進国スウェーデン、現金決済受け付け義務化へ 戦争などの有事に備え

―――2026年3月19日 10:48付 AFPBB Newsより

AFPによると長年キャッシュレス革命を先導してきた北欧のスウェーデンが、国民に対し、緊急時に備えて現金を手元に置いておくよう呼び掛け、あわせて食料品店や薬局に対しても、現金決済を受け付けるよう義務付けようとしているのだそうです。

何でも記事によるとスウェーデンではほとんどすべての取引がキャッシュレス決済で行われているのだそうで、現金決済を受け付けている飲食店や商店、サービス業は「ごくわずか」なのだとか。そんな同国が現金、クレジットカード、携帯電話のオンライン決済など「複数の決済手段を確保しておくよう国民に呼び掛けた」といいます。

スウェーデンの場合は地震国でもなく、台風などの災害もおそらくは滅多にないと思われますが、いったいなぜここにきてキャッシュレスなのでしょうか。

AFPによると背景にはロシアによる2022年のウクライナ侵攻があるようです。名目としては「一時的な混乱、危機、最悪の場合は戦争に備え」、とありますが、スウェーデンでは地理的な理由などもあり、民間防衛体制に加え、いわゆる「全民衆防衛」体制を強化しているのだとか。

そして、日本だってロシアに加え、中国、北朝鮮など少なくとも4つの無法国家が近隣に存在するという大変に危険な状況にあるわけですし、そのうえ地震、雷、火事、親父などの災害大国ですから、やはりそれらへの備えは大切だといえるでしょう。

いずれにせよ、こうした備えをきちんとしているのであれば、普段の生活はキャッシュレス決済で徹底的に便利にするのも良いのではないか―――、などと思う今日この頃です。

本文は以上です。

金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない

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読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

    毎度、ばかばかしいお話を。
    ○○(適当な人名をいれてください):「有事に備えて現金決済を義務化することこそ、有事を引き起こすのだ」
    思い当たる人名が、多々あるようで。

  2. 引っ掛かったオタク より:

    『備えあれば憂いなし』
    ヒダリマキーズにとってはこういった先人の知恵の結実たる慣用句なんかも排除すべき旧弊ナンでショーなァ
    知らんけど

    1. 引きこもり中年 より:

      『備えあれば憂いなし』
      この先人からの言葉が残っているということは、この言葉が実行できていない、ということではないでしょうか。

  3. Sky より:

    技術企画に従事していて他業界関係者と会合する場に於いて必ず課題になったのはインターオペラビリティ(相互運用性)や可用性、MTBF、MTTF、MTTRといった信頼性案件です。その担保の為に後方互換性を確保する、2重化する、ワッチドックを設ける等、故障影響度や経済性等を鑑み最善と思われる方策を関係者で合意しシステムを構築します。
    決済手段はその歴史や実績、重要性に於いて現金を使用可能な状態に保持するというのは極めて重要と認識しているのですが、スゥエーデンの事例は、わざわざその様な事を提案しないとならない位にキャッシュレス化が進んでいるのだろうという様にとらえました。
    例えば時刻のタイムスタンプも現代社会に於いて重要な社会インフラです。現在GNSSの一つGPSを用いたタイムスタンプが陰日向汎ゆる所で利用されています。実はこれは現代社会インフラのアキレス腱の一つと言っても良いでしょう。
    現代社会インフラは汎ゆる所に「風が吹けば桶屋が儲かる」的な有機的な繋がりがありそれらが機能する事で維持されているという脆弱性を内包しています。プリミティブ手段を残すのは立派でMUSTな経済安全保障の方策の一つです。

  4. 匿名 より:

    ・・・少なくとも4つの無法国家が近隣に・・・

    皆さん、ここ笑うところですよ

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