自前資源開発は「経済性以上に経済安保の観点が必要」
「自前資源開発は経済性以上に経済安保の観点が必要」。まさに、これに尽きます。先日より紹介している通り、日本が政府主導で進めている南鳥島の資源開発を巡って、「多額のコストを投じるくらいなら中国と仲良くしてレアアースなどを融通してもらえば良い」とする批判があるようですが、改めて指摘しておくと、これは議論として周回遅れも甚だしいものです。
目次
中国の対日制裁、機能せず!
高市早苗総理大臣の「台湾有事は日本にとって(集団的自衛権を発動する要件のひとつである)『存立危機事態』に該当し得る」などとする発言を受け、中国側が強く反発している問題については、当ウェブサイトではこの半年近く、何度も話題として取り上げて来たところです。
ただ、『日本はピンチをチャンスに変える国…中国の制裁の結末』などでも指摘したとおり、中国による対日「制裁(?)」措置の効果は極めて限定的であると断じざるを得ません。経済的に見ても、実効性のある措置がほとんど含まれていないからです。
改めて内容を列挙しておくと、これがまた壮絶です。
中国が日本に講じて来た「制裁措置」
- SNSを使い日本人を脅す
- 日本向けの団体旅行の自粛
- 日本製のアニメの上映延期
- よくわからない会合の中止
- ロックコンサート公演中止
- 日本人歌手の歌中断→退場
- 自衛隊機FCレーダー照射
- パンダの貸与期限の不延長
- 世界各国に向けた日本批判
- 日本に対する輸出管理強化
- 総領事へのアグレマン遅延
- 日本の企業や団体への制裁
(【出所】報道等をもとに作成)
冒頭の「中国政府高官らによるSNSを使った日本国民への脅迫」、想像するに、日本の世論を脅すことを通じて高市内閣の支持率を引き下げ、もって「台湾発言」を日本政府自身が自主的に撤回せざるを得ない状況を作ろうとした可能性はあります。
ただ、もし仮に中国側がそう思っていたのだとしたら、少なくともその狙いはことごとく外れたと断じざるを得ません。
「民主主義国における最も正確な世論調査」である国会議員選挙、すなわち衆議院議員総選挙で、高市総理率いる自民党が歴史的圧勝を記録したからです。
正直、中国による「日本の世論を通じて高市総理に圧力を掛ける」という狙いは、現在のところは失敗に終わりつつあると考えた方が良さそうです。
レアアース制限については侮れない
ただし、これらの「制裁」措置のなかで、短期的に日本経済に死活的打撃を与え得るものがないわけではありません。
その事例が、レアアース(希土類)などを含む重要鉱物の対日輸出制限でしょう。これらのなかには産業で欠かすことができないものが含まれているからです。
中国政府がこれらの対日輸出を禁止/制限すると匂わせただけでも、日本の産業関係者が気にする程度には、日本を揺さぶることができますし、おそらくメーカーや商社などの2026年3月期決算にかかる株主総会でも、このあたりが大きな話題となるであろうことは間違いありません。
実際のところ、レアアースやレアメタル、あるいはその他の重要鉱物については、元素によっては世界の製錬工程に占める国別シェアで中国が9割以上を占めているケースも多いのが実情です。したがって、これらの安定供給は、日本にとっても重要な課題のひとつでしょう。
たとえば、国際エネルギー機関が昨年取りまとめた報告によれば、レアアースの製錬シェアは92.1%に達するほか、▼ガリウム98.7%、▼グラファイト95.2%、▼マンガン95.0%、▼金属ケイ素84.8%、▼モリブデン81.0%―――などとなっています(※)。
南鳥島開発などを進める日本
仮に中国が製錬シェア90%以上を握っている品目で、対日輸出の全面禁止措置などを講じた場合は、少なくない日本企業の生産活動は大混乱に陥る可能性もあります(※といっても、輸出禁止措置を講じれば、中国にとっても売り先がなくなるため、セルフ経済制裁という側面もありますが…)。
だからこそ、短期的には日本もレアアース、医薬品といった重要物資の供給断絶に対してはそれなりの警戒が必要だといえるでしょう。
ただ、日本側も手を拱(こまね)いているだけではありません。
レアアース類の対中依存を脱却するための努力が、それこそ国を挙げて行われているのです。
その事例としては、南鳥島周辺にある日本の排他的経済水域(EEZ)の海底資源(いわゆるレアアース泥)が有名ですが、じつはそれだけではありません。豪州など世界各地の鉱山などでのレアアース採掘に加え、いわゆる「都市鉱山」(廃棄物などからの再利用)技術の開発なども進められています。
もちろん、採算性や技術面(とくに精錬工程)などにおいて、まだ課題が残されている部分もあるようですが、ただ、それでもこうした努力自体は継続すべきですし、継続するでしょう。
世界6位のEEZ面積誇る日本:海底熱水鉱床などの可能性も!
それに、とくに海洋資源採取については、技術開発を続ける価値があります。
とりわけ日本は領海を含めたEEZの面積が世界で6位であるともいわれており、深海を含めた海洋資源開発には大きな可能性が眠っています。場合によってはレアアース泥だけでなく、海底熱水鉱床やマンガン団塊、石油や天然ガス、さらにはメタンハイドレートなどのエネルギー資源の開発にも、技術の応用が利きます。
独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の『海にはどんな資源がある? メタンハイドレートや海底熱水鉱床に注目!』というページによれば、たとえば「海底熱水鉱床」の場合は次のような説明があります。
海底熱水鉱床
海底面から湧き出す熱水に含まれる銅や亜鉛などの金属成分が、海水によって冷却されることで沈澱してできたもの。日本では、沖縄海域や伊豆・小笠原海域などに分布し、水深500m~3,000mの場所に存在が確認されています。主に銅や亜鉛、鉛、金、銀などを含有します。
なかなかに楽しみな話です。
この点、一部の経済評論家などは、たとえばメタンハイドレートの場合は採算性の観点から大きな問題がある、などと指摘しているようですが、深海からの資源採取技術などが向上していけば、これらの資源についても利用できるものが増えてくるかもしれません。
すなわち、中国によるレアアース制裁が、むしろ日本における自前資源開発を促進する、といった効果すら期待されるのです。
「中国と仲良くして融通してもらう」は議論として周回遅れ
もっとも、ここまでの議論を踏まえ、改めて思い出しておきたいのが、自前資源開発をしようとすれば、なぜかそれに対して反論が出てくる、といった法則かもしれません。
『「中国と仲良くしレアアースを安く買おう」は周回遅れ』でも取り上げたとおり、一部の関係者は、とくに南鳥島レアアースの開発には、非常にネガティブです。
いったいなぜなのか。
その際の考慮要素のひとつは、中国の環境規制が極めて緩い、という点です。
一般に指摘されている通り、レアアースの精錬工程ではさまざまな廃棄物が出てきますが、日米など先進国では環境対策が必要とされるのに対し、中国の場合はとりわけ環境規制が緩く、「ほとんどコストなしに廃棄物を処分することができる」状況です。
「環境規制が緩いこと」自体が妥当なのかどうかを議論することなしに、「中国は規制が緩くてコスト競争力が高い」、などといわれても、通常のビジネスマン的な感覚からすれば困惑する限りです(いわゆるサステナビリティ開示の観点からも、説明責任を果たせるのかは疑問です)。
ただ、この「中国はコスト競争力が高い」の一点張りで「南鳥島レアアース開発はコストがかかり過ぎるから断念すべきだ」、などと言いたいのであれば、それは議論があまりにも乱暴です。
とりわけ、「自前資源開発をするカネがあったら、そのカネで資源が安い時(?)にたくさん買って備蓄しておく方が遥かに有意義だ」、といった主張には、思わず首をかしげてしまいます。もうそのタイミングはとうの昔に過ぎたからです。
『驕る戦勝国…高市総理こそ戦争を防ごうと努力している』などでも指摘したとおり、中国共産党政権にとって「台湾統一」は死活的な問題であり、この期に及んで重要な物資の供給を中国一国に依存するという状況が許されるはずなどありません。
その意味で、「中国と仲良くして資源を融通してもらおう」、という発想が口を突いて出てくるのだとしたら、その議論は周回遅れというほかないのです。
また、もし日本が国を挙げて、レアアースを備蓄しようとしているとする意図を中国側に見抜かれると、中国側は必要量を超えてレアアースを輸出することを差し止める可能性だってあります。「自前資源開発を止めて中国と仲よくしよう」、は、あまりにも国際政治の現実を見ない暴論なのです。
「自前資源開発は経済性以上に経済安保の観点が必要」
さて、こうしたなかで、本稿でもうひとつ紹介しておきたいのが、この記事です。
経済安保確保へ国産化必要 南鳥島沖レアアース開発の石井正一氏
―――2026/03/19 07:03付 Yahoo!ニュースより【時事通信配信】
記事はまさにこの南鳥島レアアース開発を率いている石井正一氏が時事通信のインタビューに応じ、資源開発の意義を「経済性以上に経済安全保障の視点が必要だ」と述べた、とするものです。
「自前資源開発は経済性以上に経済安保の観点が必要」―――。
まさに、これに尽きます。
該当する時事通信の記事自体は短いのですが、石井氏の発言があまりにも的確過ぎるため、言いたいことは十分に伝わってきます。
記事ではまた、中国がレアアースの圧倒的な世界シェアを握る現状について、石井氏は「特定国への過度な依存は相手に言われるがままになる」と述べたとされますが、これなども調達先を多様化することが必要である理由としては、十分でしょう。
個人的には、自前資源開発の必要性とともに、その将来性についてももっと知りたいところですが、このあたりは先月のレアアース泥の試掘の結果がどう出てくるかなども気になります。
いずれにせよ「災い転じて福となす」の好事例となることを、強く期待したいと思う次第です。
本文は以上です。
金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
![]() | 日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |






日韓大陸棚協定の終了を早く宣言して ガス田・油田の単独開発の準備をしていただきたいものです。事なかれ主義政権ができたら 協定更新をしてしまうかもしれません。日本の権益を守ることが 最も大事です。
ちきゅう号 きっと予約いっぱいで大忙しでしょう。
ノルゥエーのように 日本が突然エネルギー輸出国になれるのかもしれません。
わくわくです。
>日本が突然エネルギー輸出国になれるのかもしれません。
その可能性はありますね。
北海道から日本海側の東北地方、信越地方には油田やガス田がありますし、再稼働したり既存の油田やガス田の生産力を向上させれば、中東と比較して程遠いかもしれませんが、オイルマネーで潤うかもしれません。
以前説明したように、当該調査事業は内閣府が事務局として推進している「SIP:戦略的イノベーション創造プログラム」の登録プログラムの一つです。令和5年からのSIP3(第三期)では「海洋安全保障プラットフォームの構築」という名前で登録されているものです。実施計画書はこれです。
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/sip_3/keikaku/05_kaiyo.pdf
今回の発掘調査の位置づけは本報告の30ページに記載されています。
即ち国策、国プロとして位置づけされており、しかもこのプログラム名称からも判るように、海洋安全保障PF構築活動の一環としての位置づけであり、単に経済性が〜、という狭い視野で語るものではありません。
SIP概要は内閣府のHP「SIPとは」をご参照ください。
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/sympo1412/about/index.html
「府省の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより、科学技術イノベーション実現のために創設した国家プロジェクト」「総合科学技術・イノベーション会議では、内閣総理大臣、科学技術政策担当大臣のリーダーシップの下、我が国全体の科学技術を俯瞰する立場から、総合的・基本的な科学技術・イノベーション政策の企画立案および総合調整を進めてきた」
第一期は2014年安倍政権時にキックオフしており、いわば安倍元首相の置き土産の一つで視座が一段上にある。と言うことです。
>「自前資源開発は経済性以上に経済安保の観点が必要」
ゲームのルールは既に変わってるんですよね。
自由貿易体制のあらゆる規制は全て悪なんて時代はとっくに終わってて。
>「中国と仲良くして融通してもらう」
生殺与奪の権を、進んで献上しようってんですね。
名付けて、”まな板の上でコイ(乞い)” 作戦!・・。
(=_=)=3
東日本大震災後に「電気は韓国から買えば、日本の原発は無くせる。」なんて言ってた民主党の議員が居ました。実行してたら今日本はどうなってたでしょう。
ある意味「ガソリンプール」より酷い。
レアアースはよくトリウムと一緒にでできますが、有機トリウムは生体半減期が400年もあり何十年も前に摂取したトリウムのせいで肝臓がんなることもあり、トリチウムよりずっと問題がある物質です。正直は私は中国製を使うことに賛成です。誰だって自分の国を汚染したくないでしょう。
レアアース泥にはトリウムは入ってませんよ。
素手で触ってたし。
>特定国への過度な依存は相手に言われるがままになる
国際関係だけでなく、ビジネスでもプライベートでもそうだと思う。
特に気が変わりやすい相手に対しては。