「予算審議が足りない」は本当か
高市早苗総理大臣は現在、予算案の年度内成立を目指しているとされますが、そのためには国会の審議時間が少なくなるという問題が一部メディアなどから提起されています。ただ、大変申し訳ないのですが、現実の衆院予算委員会の審議状況を見ていると、予算とそこまで関連性が高くなさそうな質問も散見され、その意味では「審議時間を減らすな」という主張に妥当性があるのかは個人的には疑問です。
目次
予算成立の遅れ:審議時間短縮に批判も!
今年は高市早苗総理大臣が1月21日召集の国会で冒頭解散したことで2月8日に衆院選が行われました。このため、来年度予算の成立が遅れています。
政府側は年度内の成立を目指しているとのことであり、たとえばロイターの次の報道によれば、13日に衆院を通過させて参院に送付し、参院側では16日から衆院と同じ11日間の審議を行い、31日に予算を成立させる構えだとされます。
マクロスコープ:予算年度内成立に現実味、参院自民にも「進むしかない」の声
―――2026年3月3日 11:51 GMT+9付 ロイターより
これについて、ロイターの記事では「年度内成立に向けてはめ込んだだけの日程」、「例年開かれる集中審議や省庁ごとに詳細な審議を行う分科会が抜け落ちている」などとしたうえで、こう述べています。
「例年70~80時間程度を積み上げる審議時間は60時間に満たない」。
そのうえで、記事によると立憲民主党幹部は「暫定予算を組めば済むことなのに、高市氏がなぜここまで(予算年度内成立に)こだわるのか分からない」などとしたうえで、「強引な政治を続けていれば、そのうち国民が『おかしい』と気づくだろう」、「その時が来るまでこちらは正論を言い続ける」と述べたのだそうです。
辻元氏「高市総理も与党も常軌を逸している」
これらのくだりだけを見ると、まさに「高市自民」が「数の力の横暴」により、強引に審議を進めようとしているようにも見えます。
じっさい、立憲民主党の辻元清美参議院議員は3日、自身のXを更新し、このタイトな日程を巡って「横暴」と断じたうえ、「高市総理も与党も、常軌を逸しているように見える」などとし、「多数をとったからこそ、歴史に恥じない振る舞いをしていただきたい」と結んでいます。
私は初当選から30年になるが、こんな「横暴」は見たことない。
安倍政権時代、与党は衆議院で3分の2議席以上持っていた。
当時、私は54議席の弱小野党第一党の国対委員長として対峙した。日程協議は厳しかった。しかし、予算委員会は1ヶ月は審議した。… https://t.co/PYl2tM0O7G
— つじもと清美 (@tsujimotokiyomi) March 3, 2026
田村智子氏「総理に聞いてます」
ただ、大変申し訳ないのですが、著者自身の目から見て、現在の国会質疑にそこまで時間をかける価値があるのか、疑問でもあります。
たとえば、アベマタイムズが配信した次の記事によると、日本共産党の委員長でもある田村智子衆議院議員は2日、予算委員会の場で質問に立ち、イラン情勢について高市総理を指名し、国連憲章などについての考えを糺しました。
共産・田村議員「総理に聞いてます。総理に聞いてます」→坂本委員長「まず所管大臣から」→ 田村議員「総理に聞いてます。総理に聞いてます」 イランへの“先制攻撃”めぐり国会紛糾
―――2026/03/02 20:27付 Yahoo!ニュースより【ABEMA TIMES配信】
しかも、記事によれば、予算委員長が答弁者として(高市総理ではなく)茂木敏充外務大臣を指名するなどしたら、田村氏は執拗に、「総理に聞いてます、総理に聞いてます」と繰り返したのだそうです。
もちろん、予算委員会の場ですので、予算執行に関する質疑はあって良いとは思いますが、だからといってイラン情勢について取り上げたうえで、何でもかんでも高市総理に答弁を求めるというのは、いかがなものでしょうか。
日本共産党といえば先月の衆院選で、勢力を8議席から4議席へと半減させましたが、その「4議席の政党」のために、しかも個別論点に関して総理大臣自身が答えなければならないというのも、なんだか総理の負担が大変重い気がします。
中道改革連合議員からは事前通告なき質問も
その一方、野党側からは事前通告がない質問も相変わらず飛んでいるようです。
高市早苗首相が困惑…「速記を止めてください」予算案審議日程めぐる野党指摘に予算委員長が宣言
―――2026/03/03 15:16付 Yahoo!ニュースより【日刊スポーツ配信】
日刊スポーツの記事によれば、3日の予算委員会で中道改革連合の渡辺創議員が国会法を持ち出し、通常国会が毎年1月中の召集を常例とされていることや、会期が150日間と定められているとして、「この条文の目的はどこにあると思いますか」と高市総理に問いかけたのだそうです。
(※ちなみに該当する国会法の条文を調べてみると、おそらくは第2条と第10条のことを指しているのだと思われます。)
国会法第2条
常会は、毎年一月中に召集するのを常例とする。
国会法第10条
常会の会期は、百五十日間とする。但し、会期中に議員の任期が満限に達する場合には、その満限の日をもつて、会期は終了するものとする。
記事によるとこの渡辺議員の質問は事前通告になく、高市総理も「困惑の表情を隠せず、木原稔官房長官らと相談するようなそぶりもみせたが、すぐに答えられなかった」ため、坂本哲志委員長が「速記を止めてください」と述べて質疑が一時中断したのだそうです。
ちなみに渡辺氏の回答は、こうだったのだそうです。
「常識的に考えれば、予算審議は十分な時間が必要なので1月中の召集が求められ、常会は十分な審議時間が必要だから最低でも150日が必要だということ」。
大変申し訳ないのですが、この手の「相手が準備していない問いかけ」をいきなり投げかけ、相手が答えられない自分なりの解釈を国会の場で述べられても、それを見ている国民の側としては困惑する限りではないでしょうか。
カタログギフト追及も!
さて、こうした流れでもうひとつ取り上げておきたいのが、これです。
高市首相、カタログギフトは「考えに考えに考えたあげく例外的なことをした」…批判受け「慎みたい」とも
―――2026/03/03 19:10付 読売新聞オンラインより
3日の衆院予算委論戦の焦点⑤ 中道・落合貴之氏
―――2026年3月3日 21:33付 日本経済新聞電子版より
読売新聞や日経新聞などの記事によると、中道改革連合の落合貴之議員は高市総理が選挙後に自民党議員にカタログギフトを贈った件で、「政治家同士の贈答品をなくせば必要な政治資金も減るのではないか」などと問いただしたのだとか。
ちなみに落合氏といえば、東京6区から出馬して自民党の畦元将吾氏に1万票を超える差で敗れ、本来ならば比例復活もできなかったところ、「自民のおこぼれ」で比例復活したことでも知られます。
自民の「おこぼれ」で比例復活、中道・落合貴之さん複雑「野党の役割果たしていきたい」
―――2026/02/10 10:00付 読売新聞オンラインより
今回の選挙、自民は本来、東京ブロックの比例で8議席を獲得するはずでしたが、重複立候補していた候補は全員小選挙区で全員当選してしまい、比例単独候補が3人しかいなかったため、差の5議席のうち2議席が中道改革連合に廻ったものです(他は国民民主党、チームみらい、参政党に1議席ずつ配分)。
正直、カタログギフトはもっと多くの野党議員が徹底的に追及するのではないかと個人的に思っていたのですが、記事で見る限りにおいては落合氏の追及もそこまで徹底したものではなかったようです。
ただ、違法でもないカタログギフト「問題」を取り上げるという時点で、やはり非常に残念です。
テレビ民主主義の崩壊と社会SNS化にアップデートできているのか
もちろん、予算委員会ですから予算執行に関することであれば質問として取り上げても違和感はありませんが、さすがにイラン情勢や国会法、カタログギフトといった論点を取り上げ、しかもそれらを高市総理に答えさせるという時点で、状況のアップデートができていません。
以前の『衆院選の実態は自民大躍進というより立民への退場勧告』などを含め、何度か取り上げて来たとおり、今回の衆院選は、単なる自民党の圧勝という側面だけにとらわれるのではなく、もっと大きな流れで把握すべきではないでしょうか。
それは結局のところ、SNSの社会的な影響力が急速に高まり、マスメディアが報じない情報―――たとえば、国会質疑の「切り取りではない全容」などが、ネットを通じて拡散するようになったからではないかと思います。
実際のところ、著者自身もSNSのヘヴィ・ユーザーですが、SNSでは「情報をあるがままに発信する」ことで、大変多くの共感を得ることができることもあります。事実をわかりやすく正確に発信すると、多くの人の目に留まり、評判が評判を呼ぶからです。
また、カタログギフト問題についても「法的な問題がない」という事実がかなり早い段階で広まり、オールドメディアもカタログギフト配布に「法的問題がない」という点はかなり早い段階で認めざるを得なかったのは、まさに社会全体がSNS化した証拠ではないかと思います。
もっといえば、「テレビ民主主義」が崩壊したのです。
『立憲民主再生のヒントは有権者に愚直に向き合う玉木流』などでも指摘しましたが、新聞・テレビが問題を焚き付け、これに野党が乗っかるという共犯関係からは、野党もいいかげん脱却しなければなりません。野党が惨敗した理由は、まさにここに詰まっているからです。
野党がテレビ民主主義から脱却できるかどうかについては、あまり時間が残されていないことだけは間違いないと言えるでしょう。
本文は以上です。
金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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予算審議が足らないかどうかは、上手い質問(?)をするかどうかで、日本の有権者に判断してもらうべでき、でしょう。
蛇足ですが、国会中継をネットで配信して、その質問や答弁の質を視聴者に判断してもらって、随時、それを画面に表示しては。
「三つ子の魂百まで」
今のこの流れから“トンチンカン”に映る言動を繰り返すかぎり悪弊を躾け直す前に議席を失うことでせう
知らんけど
本当に生活者ファーストを謳うのなら与党を利する等と考えずに予算案に集中した審議をする方が有権者の理解を得られると思いますがこの人達の考えは違うのでしょうか?
で。
「特定野党の姿勢」はおいといて、予算案の年度内成立を目指すべき理由を考えてみた。
・選挙で与党が圧勝したという事実は、有権者がこのタイミングの解散を容認したということ。
解散の責任を問うなら、最新の民意に基づく与党が迅速に予算案を通す方が、正当性・一貫性がある。
・暫定予算は、義務的な経費に限定され、かつ手続きが極めて非効率。
「暫定予算で十分、年度内成立にこだわる必要はない」という主張は、「国民が期待する政策・経済対策の大幅な遅れを容認せよ」という主張に等しい。