高市総理が「高齢者窓口負担」改革必要性に言及の意味
今回の衆院選は、左派政党が日本国民から退場勧告を突き付けられたようなものでもあるとともに、現役層の声を受けた政党が躍進した選挙でもあります。そのひとつとして、注目すべき党があるとしたら、チームみらいかもしれません。昨日の国会答弁で高市総理から、▼保険料率の上昇を止めること、▼引き下げていくこと、▼高齢者の窓口負担を検討すること―――に関する言質を引き出しました。これは大きな成果です。
目次
衆院選の公示前と新勢力の関係
先日の『衆院選の実態は自民大躍進というより立民への退場勧告』でも指摘しましたが、今月の衆院選は、自民党が空前の勝利をおさめた選挙であるとともに、立憲民主党と公明党から合流した「中道改革連合」が選挙前の勢力を大幅に減らして惨敗した選挙でもあると見るのが妥当でしょう(図表1)。
図表1 公示前勢力と新勢力
| 会派 | 公示前 | 新勢力 | 増減 |
| 自民 | 198 | 316 | +118 |
| 維新 | 34 | 36 | +2 |
| 与党合計 | 232 | 352 | +120 |
| 中道 | 172 | 49 | ▲123 |
| 旧立民 | 148 | 21 | ▲127 |
| 旧公明 | 24 | 28 | +4 |
| 国民 | 27 | 28 | +1 |
| 参政 | 2 | 15 | +13 |
| 未来 | 0 | 11 | +11 |
| 共産 | 8 | 4 | ▲4 |
| れ新 | 8 | 1 | ▲7 |
| 減ゆ | 5 | 1 | ▲4 |
| 保守 | 1 | 0 | ▲1 |
| 社民 | 0 | 0 | ±0 |
| 無所属 | 10 | 4 | ▲6 |
| 合計 | 465 | 465 |
(【出所】報道等。ただし、自民党の議席に無所属1議席を含めるかどうかについては報道等で差異があるほか、中道改革連合、「公示前勢力」には選挙直前に離党した人を含めるか含めないか、などの事情で、報道や『ウィキペディア』など外部サイトの記載と異なっている可能性がある)
その正体は左派政党の壊滅的激減
図表は報道等をもとにして作成した勢力図ですが、若干不正確である可能性が含まれている点についてはご容赦ください(選挙直前になって立憲民主党を離党し、中道改革連合に加わらなかった議員、選挙を機に引退した議員などを含めるかどうか、などの考え方が異なるため)。
ただ、中道改革連合、いや、ありていにいえば旧・立憲民主党が、勢力をおよそ7分の1(!)に減らすという大失態により惨敗した、というのが、実態に近いでしょう。
これに加えて選挙後の勢力のうち、立憲民主党の21議席に限定していえば、自民党からのおこぼれ6議席が吹く産まれていますので、それがなかった場合には事実上、15議席しか獲得できなかった計算であり、ということは、148議席から15議席へと、約10分の1(!)に激減した格好です。
しかも、図表でもわかるとおり、惨敗を喫したのは立憲民主党だけではありません。
日本共産党も勢力を8議席から一気に4議席へと半減させましたし、同じく公示前に8議席だったれいわ新選組は、今回の選挙であやうく議席をゼロにするところ、比例で自民党のおこぼれ1議席を獲得。
また、唯一の衆議院議員だった新垣邦男氏が先日離党したことで衆議院議員がゼロになった社民党は、沖縄2区で無所属出馬した新垣氏に対抗馬を立てて共倒れとなり、議席の回復は果たせませんでした。
つまり、中道改革連合(49)、日本共産党(4)、れいわ新選組(1)、社民党(0)という4つの左派政党に所属している議員は54人で、定数465議席のうちの11.6%を占めるに過ぎません。
あるいはこの54人のうち、公明党出身者28人を「左派」から除外し、自民党のおこぼれ議席を除外した「実力ベースの左派政党」で見たら、立憲民主党15人、日本共産党4人、れいわ・社民0人、合計19人と、定数465議席のうち4%を占めるに過ぎません。
左派議員が国会全体のわずか4%という時代が、ここまで早く訪れるとも思っていなかったのですが、本当に時代は激動するものだと思います。
自民でも左派でもない政党は維持か躍進
ただ、自民の圧勝は、多分に小選挙区の「勝者総取り」システムの影響も大きいと考えられますが、本稿でもうひとつ注目しておきたいのが、「自民でも左派でもないそれ以外の政党」の状況です。
たとえば、連立与党の一角を占めている日本維新の会は、公示前の34議席と比べ、新勢力は36議席で、2議席増やしました。維新も「自民おこぼれ」が2議席含まれていますので、これを勘案すれば事実上のプラスマイナスゼロですが、自民以外の政党に逆風が吹くなかで勢力を維持した格好です。
一方、「手取りを増やす」で注目を集めた国民民主党は、公示前の27議席を28議席へと1議席増やしました。自民おこぼれが2議席あったため、事実上のマイナス1議席ですが、それでもサナエ旋風のなか、これで踏みとどまった格好です。
また、参政党は選挙前の2議席から、一気に15議席へと拡大しています。うち1議席は「自民おこぼれ」ですので、実質的に獲得したのは14議席ですし、190人の候補を立てたわりに当選者が少なかったという点は気になりますが、それでも昨年の参院選に続いての大きな躍進です。
さらに興味深いのは、チームみらいでしょう。
同党は昨年の参院選で議席を獲得して注目を集めましたが、今回の衆院選では、比例代表中心ではあるにせよ、いきなり11議席を獲得したのです。自民おこぼれが2議席含まれているため、実質的には9議席ではあるものの、それでもこの伸び方は驚異的です。
(※余談ですが、日本保守党は公示前の1議席を失いましたが、「減税・ゆうこく連合」が1議席を獲得しており、これに無所属4人を足すことで、トータルの465議席となります。)
チームみらい・安野代表のXポスト
こうしたなかで、個人的にこの「チームみらい」という政党が、今後、どんな活躍をするのか(あるいはしないのか)は、注目するに値する論点だと考えています。いきなり日本共産党を大きく上回る議席を獲得したからです。
そんなチームみらいの安野貴博代表が25日、Xアカウントを更新し、衆院初の代表質問で、高市早苗総理大臣から社会保障を巡り、「現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくことは重要」、「高齢者の窓口負担の割合の在り方は避けては通れない」とする答弁を引き出したと報告しました。
本日、衆議院にてチームみらい初の代表質問でした!
チームみらいの高山の質問に対し、総理からは「現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくことは重要であると認識」、「高齢者の窓口負担の割合のあり方は、避けては通れない検討課題」と答弁がありましたhttps://t.co/fwbxMXtiQ2
— 安野貴博@チームみらい (@takahiroanno) February 25, 2026
チームみらいの代表質問とこれに対する高市総理の回答は、noteで公開された次の記事で読むこともできます。
チームみらい 衆議院本会議 代表質問全文(2026年2月25日)
―――2026年2月25日 20:49付 noteより
社会保険料の問題
正直、経済理論的にツッコミどころがある質問もないわけではありませんが(たとえば「消費税の減税をすれば円安がさらに進行して物価が上昇する」のくだりなど)、これらについてはとりあえず脇に置き、『社会保険料負担の引き下げについて』の節に注目してみましょう。
「現在、多くの現役世代が『働いても手元にお金が残らない』という閉塞感の中にいます。その背景に、企業負担分も合わせると税引前所得の3割近くにのぼる社会保険料があるという声を多くいただいています」。
この記述、著者などはウェブ評論活動を続けていてよかったなぁ、などと思います。
少し脱線しますが、社会保険料は問題だらけだからです。
あまり知られていませんが、社会保険料といえば、現在の日本では事実上の老人福祉税と化していて、勤労層が支払った社会保険料のうちのかなり多くの部分が「現在の」老人の「9割引医療」や贅を尽くした訪問介護、異常に手厚い年金などで浪費されているからです。
社会保障の制度は難解であり、おもにサラリーマンなどが支払った保険料や税金などの資金の流れについては厚労省の開示資料もデタラメなものが多く、全容の解明は容易ではないものの、ほんの一例を挙げると、例の「医療費キノコ雲」の問題があります(図表2)。
図表2 医療費キノコ雲
計算してみると、65歳以上の医療費は、2024年時点で年間約30兆円であり、これが今後も当面は膨張し続けると考えられます。そのうえ、とくに75歳以上の後期高齢者は、およそ7割が「9割引医療」の特権を享受しているため、これらの医療費は現役世代を苦しめている元凶のひとつです。
年収660万のサラリーマンの社会保険料は200万円超!
では、具体的にいくらを支払っているのか―――。
これについては加入する健康保険やその人の年齢などによっても異なるものの、たとえば東京都政管健保に加入する40歳以上で年収660万円の人の場合、昨年(2025年)の減税を考慮する前のベースですが、社会保険料は200万円を優に超過します(図表3)。
図表3 人件費と年収と手取りの関係(40歳以上・年収660万円の場合)
内訳は、本人負担分が約104万円で、これだけでも非常識なほどに巨額ですが、問題はそれだけではありません。サラリーマンの場合、社会保険料は従業員の見えないところで、会社が同額以上を支払っているからであり(この設例だと110万円)、これを含めたら社会保険料はなんと214万円(!)です。
年収660万円、実質的な人件費770万円の人にとっては214万円もの社会保険料が奪われ、しかもこれらの多くは返ってきません(『社会保障批判再反論のフリー素材』等参照)。
高市総理の回答の意味
少し脱線しましたが、以上が日本の社会保障制度の大きな問題点のほんの一部です。チームみらいの代表質問に含まれている社会保険料の問題点は、こうした背景を知っていると、非常にわかりやすいでしょう。
ちなみに高市総理からの回答は、こうです。
高市総理からの回答
現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくことは重要であると認識しております。持続可能な社会保障制度の構築に向けた改革に取り組んでまいります。その際、高齢者の窓口負担の割合のあり方は、避けては通れない検討課題と認識しています。
自由民主党と日本維新の会の連立政権合意書において、令和8年度中に具体的な制度設計を行い、順次実行するとされ、その旨閣議決定されていることも踏まえて、政府与党一丸となって丁寧に検討を進めていきます。
高市総理のこの発言、真意は定かではありませんが、ただ、少なくとも社会保険料の料率の▼上昇を止めること、▼引き下げていくこと、▼高齢者の窓口負担を検討すること―――が避けて通れない課題だとの言質を引き出した格好です。
このあたり、著者個人としては、チームみらいを無条件にどこまでも信じようとは思いませんが、少なくともこの答弁を引き出したことについては高く評価するに値すると考えています。
高市総理の発言が社会保障の在り方を考えるうえでスピード感を含め十分かどうかという問題はあるにせよ、まずは社会保険というう狂った制度を変えていくことの必要性は、徐々に認識として広まりつつあることも間違いありません。
やはり、若い人を含め、選挙では必ず投票しなければならないことはいうまでもありません。社会保障の在り方に納得しない現役層の声が強まれば、自民党としても対処せざるを得なくなるからです(そして、この社会保障改革は、老人利権にしがみついてきた一部左派政党の終わりの始まりでもあります)。
社会保障は解体すべき
「社会保障を解体する」。
著者が意思に噛り付いてでもウェブ評論活動を続ける理由のひとつがこれです。
いずれにせよ、普段から述べているとおり、著者としては次のような「パッケージ」改革が必要だと考えています。
国民年金
老後(あるいは遺族、障害時)の最低限の生活保障として制度設計し直す。給付水準は本人が任意で決定する払込額と運用実績に完全連動する積立方式とし、保険料拠出時にはその全額の税額控除を認めるなど制度優遇するが、年金支給時に税金から半額填補する制度は廃止する
厚生年金
現行の「サラリーマン強制加入」型の厚生年金は廃止し、その時点の厚年加入者はGPIFなどが保有している資産から過去に払った保険料(労使込み)の無税での返金を受ける。また、現在の年金受給者は経過措置として国債発行等により調達した原資で年金の支給を継続する
年金の二階部分
厚生年金を廃止することにともない消滅する年金の「二階部分」については、希望者のみ、完全積立方式での基金や民間年金保険などに加入するという選択肢を準備する(現行のiDeCoなどの仕組みの拡充方式に拠る方法なども検討課題)
健康保険
高齢者に対する医療費はとりあえず8割引、9割引を直ちに廃止し、最低でも3~5割の負担に改める。また、中期的に生年別組合方式に移行し、同一年齢同士の支え合いとしたうえで、同一保険料・同一給付を原則とし、現在の高額療養費区分(ア)(イ)などは廃止する
介護保険
健康保険を生年別組合方式に移行する際に介護保険も健康保険に統合することで発展的に解消する
これらがいつ実現するかどうかはわかりませんが、5年、10年というタームで見れば、間違いなく、実現に向けて進んでいくのではないか、などと思う次第です。
本文は以上です。
金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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チームみらいは比例近畿ブロックで1議席取り損ねてます。なんで実力での獲得議席は10議席かと。
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最近の選挙結果は、現役世代のふざけんなという意思の体現でしょう。何故現役世代は自己責任で放置され、本来自己責任であるべき人たちが手厚い保護を受けるのでしょうか。この流れはSNSという強力な連帯ツールを得て、選挙結果に反映させる手段を獲得してしまったからにはもう留められません。
まードー転んでも団塊ジュニア世代は取りこぼし枠内、上の世代の借財を片し下の世代から頭数だけ多い老害として遇されるンやでイヤんなるわ
たぁだ頭数は有るから『世代丸っと無敵のヒト化』は避けたいトコロ…で公的手当てを企図ると下の世代から疎まれるンやろナァ
知らんけど