自民圧勝が気に入らない?「得票2割なのに議席8割」
選挙結果が受け入れられないからでしょうか、SNS上では「今回の選挙で自民党に投票した人は有権者の20%あまりだが、その自民党が議席の86%を獲得したのはおかしい!」といった議論が出ています。ただ、棄権票や無効票を母数に加えるのはいかがなものかと思いますが、違和感があるのはそれだけではありません。小選挙区の仕組みを採用しているのは日本だけではありませんし、また、日本は参院全国比例などで民意を細かく反映させる工夫をしていることは無視すべきではありません。
目次
有権者の2割しか自民党を支持していないのか
今月の衆院選では、自民党が衆院(定数465議席)の3分の2を超える315議席という圧倒的な議席を獲得するという圧勝を遂げました。
これに関するごく簡単な選挙分析については、『衆院選の実態は自民大躍進というより立民への退場勧告』でもすでに実施していますが、自民党が全有権者からもれなく3分の2の信認を得たわけではありません。
総務省データによると選挙当日の有権者は1億人少々(正確な数は103,211,224人)ですが、小選挙区で自民党に投じられた有効票は27,710,493票であり、これは有権者数の26.85%に過ぎません。また、比例票に至っては21,026,139票に過ぎず、有権者数の20.37%に過ぎないのです。
しかし、自民党が獲得したのは、比例代表では176議席中67議席(占有率38.07%)ですが、小選挙区に関しては289議席中248議席、つまり占有率でいえば85.81%に達しています。
こうした状況を受け、Xなどではこんな趣旨のポストもあるようです。
「有権者の20%あまりの支持しか受けていないのに議席で85%を得るのはおかしいじゃないか」―――。
棄権・無効を母数に加えるべきではない
そもそも論として、「有権者の20.37%しか自民党に投票していない」、は比例代表の話であり、「85.81%の議席を得た」、は小選挙区の話ですので、両者を意図的に混同するのはいかがなものかとは思います。
ただ、小選挙区で話を合わせたとしても、「有権者の26.85%しか投票していない自民党が議席の85.81%を占めた」という言い方をすれば、たしかに「それはおかしい」と思う人もいるかもしれません。
しかし、じつはこれ、巧妙な詭弁なのです。投票参加率を無視して全有権者に対する割合で議論しても意味がないからです。棄権・無効を母数に加えるべきではありません。
この点、「小選挙区で自民党の候補者に投票した人が27,710,493人(26.85%)いた」、ということは、「小選挙区で自民党の候補者に投票しなかった人が75,500,731人(73.15%)いた」、ということではあります。
しかし、その言い方をすれば、「小選挙区で中道改革連合に投票していない人は91,001,582人(78.37%)いた」、ということでもありますし、「小選挙区でその政党に投票していない人数」が最も少なかったのは自民党だ、ということです。
- 自民に投票していない人…7550万人(73.15%)
- 中道に投票していない人…9100万人(78.37%)
- 維新に投票していない人…9947万人(93.37%)
- 国民に投票していない人…9897万人(92.48%)
- 参政に投票していない人…9929万人(93.05%)
- 共産に投票していない人…1億93万人(95.95%)
- れ新に投票していない人…1億296万人(99.55%)
- 減ゆに投票していない人…1億286万人(99.37%)
- 保守に投票していない人…1億311万人(99.83%)
- 社民に投票していない人…1億306万人(99.74%)
- 未来に投票していない人…1億305万人(99.72%)
(※当日有権者数は103,211,224人と想定)
このように考えていくと、今回の選挙では最多得票の政党が「総取り」となる小選挙区の仕組みがかなり極端に出たことは間違いないにせよ(その大きな原因は「立憲民主党+公明党」あらため「中道改革連合」がズッコケたためでもあります)、最多得票政党が第1党になっているという点は間違いありません。
日本以外にも小選挙区などの仕組みは採用されている
ちなみに日本の小選挙区制度を批判する人はときどき出現するのですが、小選挙区制度を採用している国は日本にも数多くあります。
たとえば英国なども下院で小選挙区制度を採用しており、報道等によれば、2024年下院選挙の投票率は約60%であり、また、第1党となった労働党は得票率33.7%であるにもかかわらず411議席、つまり定数(650議席)の63.2%の議席を獲得。
これに対し、第2党の保守党は、得票率では23.7%と労働党を10ポイント下回ったに過ぎないのに、獲得した議席は121議席と、定数の18.6%に留まりました。
冒頭で述べた「全有権者に対する割合」理論を用いるならば、労働党は有権者全体の20%前後の支持しか得ていないのに、議席の63.2%を獲得した格好です。
単純小選挙区制である英国と小選挙区比例代表並立制の日本を単純に比較はできませんが、有権者の2~3割の投票結果により第1党が圧倒的な議席を獲得することになるという仕組みは、べつに日本だけに限られるものではないのです。
少数政党乱立を防ぐ仕組みや第1党優遇の仕組みなど
一方の比例代表はどうでしょうか。
じつは、比例代表でも、少数政党の乱立を防ぐ仕組みや、あるいは比較第1党を優遇する仕組みなどが採用されているケースはあります。
たとえばギリシャの場合、議会(※一院制、比例代表制、定数300議席)では、過去には第1党に追加で50議席が加算されるという「ボーナス制度」が採用されていたことで知られています(現在はもう少し複雑な仕組みが採用されているようですが)。
さらには、比例代表制を採用する国では少数政党の乱立を防ぐ観点から、「最低得票制度」ないし「阻止制度」と呼ばれる仕組みがあり、たとえば「得票がX%に満たない場合は議席を配分してもらえない」、といった具合に、議席を得られる要件を厳格化していたりすることもあります(たとえばドイツなど)。
こうした事例を調べて行けば、完全に得票比例で議席が案分されるわけではない国や、第1党が議席の多くをかっさらうという国は、わりと一般的に観察できるのです。
日本の選挙制度は重層的
かたや日本の場合は単純小選挙区制度ではなく、465議席を小選挙区289議席と比例代表176議席に案分していて、しかも比例重複立候補を認めており、惜敗率などの条件次第では復活当選という救済を認めているわけですから、小選挙区だけで極端な差がつく仕組みは緩和されています。
(※もっとも、いわゆる「比例ゾンビ」を巡る批判があることもまた事実ですが…。)
また、日本では参議院については解散総選挙がなく、定数(248議席)の半数(124議席)を3年ごとに改選する仕組みが取られていて、衆院でいう小選挙区と似た「一人区」は32区しかなく、50議席は全国比例で、42議席は事実上の中選挙区で選ばれます(例:東京選挙区の場合は6人当選します)。
このため、衆院で第1党が圧勝するようなことがあっても、参院では第1党が単独過半数を獲得するほどに躍進するとは限りません。
少なくとも衆院側で小選挙区制度が採用されて以降、衆参同日選は開催されていませんが、想像するに、もし次回(2028年7月)の参院選にぶつけて衆院選が行われ、衆院側で自民党が今回並みの圧勝を遂げたとしても、自民党は参院で単独3分の2どころか、単独過半数すら確保できるか微妙です。
これはもちろん、参議院側では定数の半分ずつしか改選されないという事情もさることながら、「勝者総取り」方式の衆院小選挙区と異なり、全国比例や中選挙区など小政党に有利な仕組みが取られていることなどが影響しているのです。
このように考えたら、日本の選挙制度は(意図したものであるかどうかは別として)仕組みとしてはわりと重層的である、という言い方もできなくはありません。
気に入らないからといって大騒ぎするのはどうなのか
いずれにせよ、投票率を高めるためにはまだまだ課題はありますが、ただ、「投票率はもっと上がるべきである」とする議論と、「勝者総取り」の小選挙区制度が制度として優れているのかどうかという問題は、本来は切り分けて考えるべきものでしょう。
そして何より、自民党が圧勝したという選挙結果が気に入らないからといって、「日本の選挙制度には問題がある!」、などと大騒ぎするのはいかがなものかと思う次第です。
本文は以上です。
金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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有権者一億弱に対して2割も得票していれば、統計的には国民は自民を信任したのと同じですね。
批判すべきは投票に行かなかった約五千万人もの有権者だと思いますけどねえ。
選挙に行かなかった人が、もし行ってたら、もっと自民の当選者が増えていたかもしれません。
完璧な選挙制度がない以上、どんな選挙制度でも、文句をつけようと思えば、出来るのでは。
このテの批判をする人には、石破政権下の選挙で立憲が躍進した時も当然同じ論法の指摘してるんですよね?と問いたい。
してるワケないかぁ〜、本国から野党ネガキャンの指示なんて出ないだろうし〜(棒)
朝日にしろ赤旗…は、まートーゼンか、
コノ選挙制度で何年やって来たんでショーねェ?
何で今まで黙ってたんスカねェ?
…ナンてェ棒読みが空耳
ま、こー云ふ記事を出すコト自体がATM的報道機関と有権者の溝を更に深くするに資すると理解してやっとんでしょーから、開き直ったドMっぷりっスな
知らんけど
麻生太郎が若い頃に、総選挙でボロ負けして政権交代したときは、得票数だけで言えば議席数ほどの差はなかったのですが、
寡聞にしてそういう冷静な客観分析をマスメディアで見聞きしたことないですね。
トランプがバイデンに負けたときも、選挙人の獲得総数はトランプが多かったのにも関わらず、「勝った方が総取りルール」で、負けていたような。
そういうこともマスメディアではあんまり見聞きしませんな。
そういうとこだぞっ、嫌われてるの。
常日頃、不快な気持ちでマスコミの垂れ流す言説風のプロパガンダを聞いてますが、国民の代表と詐称する割には国民の総意、判断を無視する姿勢はあり得ないですよね。少なくとも多くの国民がそう感じてると思うんですが。
マスコミは岡田屋の国民をコントロールしないと、という思想を体現してます。
身も蓋もない事を言えば、得票率と議席数が「順位では比例すべき」理由はあっても、「数で完全に比例しなければならない」理由は何一つありません。そもそも不可能ですし。
「合意した制度に則り運用する」が全てです。異を唱えるならば正式に提議し議決すれば良いだけ。合理性があれば広く受け入れられ可決するでしょう。その主張が「ご都合主義」と見なされれば否決されます。自民勝利後にだけ喚く方は、さてどちらでしょうね。
そして、法律という合意を崩したいと望むのであれば、改憲も是としなければならないはずです。きっと選挙制度が気に食わないと発信している方は、皆様熱心な改憲論者なのでしょうね。
左派って、気に入らない選挙結果だと、
・国民は馬鹿だ
・若者は投票するべきでない
・教育の敗北
・人気投票になった
など、有権者を馬鹿にするようなことばっかり。左派が勝つ場合は「民意が示された」って事になるんだけども。そして、左派は負け惜しみとして、
・戦争になる
・独裁が始まる
・日本は貧しくなる
みたいなネガキャンが始まるまでが定規()。
なぜ、もっとも民主的な手続きで得た結果をここまで否定できるのか本当に謎。
本日の悔しいのぅですね。
カミーユ「傷を舐め合うようなマスゴミとパヨクなんて知りませんよ」