組織票を侮るな…ダメ候補者にトドメ刺しに選挙行こう
①組織票の動向、②少数党の動向、③投票率の動向―――。今回の選挙、なかなかに読めません。こうしたなかで、最近の一部メディア報道では「楽勝ムード」を煽るかのようなものも見受けられますが、投票率が下がれば組織票が有利になることを忘れてはなりません。選挙とは▼選挙はダメ候補を落とす手続▼池の水を入替える手続▼鉄道改良工事そっくり、▼食堂街の食堂選びにそっくり、▼国民全員の協力が必要不可欠―――、です。
目次
選挙戦を読むポイントを集約する
連日のように報告している通り、当ウェブサイトはあくまでも「評論サイト」でありたいと考えており、「政治活動サイト」ではないつもりです。
したがって、現在進行中の選挙については、個別政党名や個別候補名を出して応援したり、あるいはネガティブ・キャンペーンを打ったりすることはしないつもりですし、また、メディアが実施する選挙情勢に関する調査を引用したり、論評したりするつもりもありません。
なお、今回の選挙に関する予想については、すでにある程度の骨格を固めており、何事もなければ、その論考については2026年2月8日(日)午後8時、すなわち投票が締め切られる時間に公表しようと考えています(もしかしたら公表しない可能性もありますが)。
ただ、選挙戦を読む上でのポイント―――たとえば現在の比較第1党である自民党や、最大野党である立憲民主党が公明党と合体して出来上がった「中道改革連合」が、それぞれ、今よりも議席を増やすか減らすか―――については、選挙情勢分析と無関係であれば、当ウェブサイトにて取り上げて良いと考えています。
これについては(本稿からわざと表現を変えますが)基本的に次の3点がポイントであろうと考えられます。
- ①組織票の動向
- ②少数党の動向
- ③投票率の動向
組織票、侮るなかれ!
まずは、組織票。
一般に自民党には医師会、郵政などの組織票があるとされますが、組織票という意味で強いのは労組系の政党(旧立憲民主党、国民民主党など)、創価学会票(旧公明党)、日本共産党などです(余談ついでに申し上げておくと、旧統一教会にそこまでの組織力などありません)。
近年、とりわけ2005年以降の衆院選で見ていると、この組織票の力は徐々に低下しているフシがありますが、やはり労組にせよ宗教票にせよ、若返りに失敗し、年々高齢化が進んでいると考えられるからです。
ただし、「高齢化で組織率が下がっている」からといって、「組織票を無視して良い」という話ではありません。
とくに2024年の衆院選の時点では自公連立の関係から公明票が自民党系候補者の得票を一定数押し上げていたと考えられる一方、今回の選挙では公明票が自民候補から剥落し、旧立憲民主党系候補の得票を押し上げる効果が生じる可能性があるため、注意が必要です。
一説によると1選挙区あたり2万票あるとされる公明票が自民党から旧立憲民主党に移ると、その選挙区における自民党と旧立憲民主党の得票差が4万票拡大することになるからです。
前回選挙は121区が「得票差2万票以下」
ちなみに前回、つまり2024年の選挙の例でいえば、全国289選挙区中、得票差が1,000票以下だった選挙区が9区もありました(図表1)。
図表1 小選挙区・僅差の選挙区(2024年・得票差1,000票以下のケース)
| 選挙区 | 1位 | 2位 | 得票差 |
| 島根県 第2区 | 自由民主党(70,869票) | 日本維新の会(70,745票) | 124票 |
| 三重県 第1区 | 立憲民主党(59,691票) | 自由民主党(59,529票) | 162票 |
| 栃木県 第1区 | 自由民主党(45,546票) | (無所属)(45,368票) | 178票 |
| 群馬県 第1区 | 自由民主党(74,930票) | 立憲民主党(74,716票) | 214票 |
| 神奈川県 第3区 | 立憲民主党(50,626票) | 自由民主党(50,290票) | 336票 |
| 東京都 第10区 | 自由民主党(93,491票) | 立憲民主党(92,900票) | 591票 |
| 福井県 第1区 | 自由民主党(45,917票) | 立憲民主党(45,179票) | 738票 |
| 宮城県 第6区 | 自由民主党(60,387票) | 立憲民主党(59,515票) | 872票 |
| 神奈川県 第11区 | 立憲民主党(80,207票) | 自由民主党(79,281票) | 926票 |
(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果』データをもとに作成)
また、得票差が2,000票以下だった選挙区も6区あります(図表2)。
図表2 小選挙区・僅差の選挙区(2024年・得票差1,000票超2,000票以下のケース)
| 選挙区 | 1位 | 2位 | 得票差 |
| 東京都 第15区 | 立憲民主党(66,791票) | (無所属)(65,666票) | 1,125票 |
| 千葉県 第5区 | 立憲民主党(71,555票) | 自由民主党(70,215票) | 1,340票 |
| 千葉県 第9区 | 自由民主党(69,563票) | 立憲民主党(67,920票) | 1,643票 |
| 徳島県 第1区 | 自由民主党(104,885票) | 立憲民主党(103,161票) | 1,724票 |
| 沖縄県 第3区 | 自由民主党(73,226票) | 立憲民主党(71,457票) | 1,769票 |
| 東京都 第1区 | 立憲民主党(56,979票) | 自由民主党(55,040票) | 1,939票 |
(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果』データをもとに作成)
詳細は省きますが、得票差が1万票以下だった選挙区は、図表1、図表2も含めて61区、得票差2万票以下にまで拡大すると121区もあります。
組織票自体で選挙結果がひっくり返る可能性もある
こうした状況を踏まえ、自民党候補マイナス2万票、立憲民主党候補プラス2万票、という雑な仮定を置いて、2024年の選挙結果をもとに両党の獲得議席数を試算すると、自民党は66議席減らし、(旧)立憲民主党は66議席増え、完全に与野党が逆転する可能性があるのです(図表3)。
図表3 自民⇒立民に2万票移動した場合(2024年の小選挙区のケース)
| 政党 | 2024年 | シミュレーション | 増減 |
| 自民 | 132 | 66 | ▲66 |
| 立民 | 104 | 170 | +66 |
| 維新 | 23 | 24 | +1 |
| 国民 | 11 | 11 | 0 |
| 公明 | 4 | 4 | 0 |
| 共産 | 1 | 1 | 0 |
| 社民 | 1 | 1 | 0 |
| 保守 | 1 | 1 | 0 |
| 無所属 | 12 | 11 | ▲1 |
| 合計 | 289 | 289 | 0 |
(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果』データをもとに試算を実施)
もちろん、この図表は旧立憲民主党と旧公明党の統合を反映させていないなど、かなり雑なものではありますし、また、2024年といえば「石破ショック」で自民党が自滅した回でもあったため、この回をベースに議論しても意味がない、といった批判はあるでしょう。
ただ、ここでお伝えしたいことは、組織票というものは、決して侮れるものではない、という事実です。
とくに小選挙区は「勝者総取り」ですので、最大政党が圧勝する傾向が強いものの、選挙区レベルでちょっとした風がふくだけで、情勢は大きく変わるのです。
少数政党に票を奪われる効果はどれだけ発生するのか
同じ文脈で触れておくべきが、少数政党の動向でしょう。
2024年衆院選や2025年参院選では、自民党が盛大にズッコケて議席を減らしましたが、その裏側で注目を集めたのが少数政党です。
今回の衆院選でも、国民民主党、参政党、日本保守党、チームみらい、日本自由党などの「保守政党」が注目を集めています(※ただし、ここで「保守政党」という用語を使ったのは便宜上であり、著者自身は日本自由党を除く各政党が「保守政党」に値するとはまったく考えていない点はお断りしておきます)。
また、少数政党のなかには、たとえば社会民主党、れいわ新選組、日本共産党など、一般には左派とみられる政党も存在しますし、日本維新の会のように、ここ10年あまりで台頭し、いまや連立与党の一角を占める政党もあります
参院選では、基本的に改選数124議席に対し、全国比例代表に50議席が配分され、また、複数名が当選する選挙区も15都道府県・42議席が配分されているため、こうした少数政党が議席を得やすい仕組みが採用されています。
ところが、衆院選では、これらの少数政党は(とりわけ小選挙区で)多数の議席を得るのが難しく(例外は大阪府を中心に圧倒的な強さを誇る日本維新の会くらいでしょうか)、むしろ大政党(今回でいえば自民党と「中道改革連合」)の議席の攪乱要因となり得ます。
たとえば、今回の選挙でも、参政党が比例を含めて全国すべての都道府県で総勢190人もの候補を立てており、もし自民票が参政党などに「食われる」効果が発生すれば、その分、自民・参政両党候補が共倒れとなり、結果的には中道改革連合に有利に働きます(いわゆるタナボタ効果)。
仮に現在も自民党総裁が石破茂・前首相だったとすれば、自民票が「保守野党」に食われる効果が全国的・大々的に発生していた可能性が非常に高く、先ほど図表で示した「自民党が小選挙区で66議席(かそれ以下)しか取れない」という可能性も、現実味を帯びてくるのです。
週末の首都圏は積雪も?
ただ、その一方で、やはり読めないのが、とくに自民党にとっては「サナエ旋風」が発生するかどうか、です。
これに関しては当ウェブサイトの制約上、メディアが実施している最新の世論調査については紹介することはしませんが、「465議席中289議席が小選挙区で決まる」という衆院選の仕組みや過去の選挙などの実例などに照らし、こうした旋風が生じる可能性は否定できません。
こうしたなか、本稿で敢えて少しだけ踏み込んでおきますが、一部メディアが特定政党に関する「楽勝ムード」のようなものを煽っているのは非常に気がかりなところです。
くどいようですが、先ほども指摘したとおり、近年では組織票の力の低下が目立っているものの、組織票は決して侮れません。投票率が下がり、とくに若い人の投票率が下がれば、組織票に強い政党が躍進する可能性があるからです。
とりわけ気になるのが、週末の天気でしょう。『tenki.jp』によると、この週日曜日の天気は、太平洋側ではおおむね晴れが予想されるものの、人口が多い首都圏だと一時雪となる可能性もあり、寒くなれば投票率が下がるかもしれません。
ダメ候補にトドメを刺しに行こう!
ただ、当ウェブサイトでは何度も指摘している通り、選挙とは▼選挙はダメ候補を落とす手続▼池の水を入替える手続▼鉄道改良工事そっくり、▼食堂街の食堂選びにそっくり、▼国民全員の協力が必要不可欠―――、です。
選挙:5つの視点
- 選挙はダメ候補を落とす手続
- 選挙は池の水を入替える手続
- 選挙は鉄道改良工事そっくり
- 食堂街の食堂選びにそっくり
- 国民全員の協力が必要不可欠
「投票したい候補者がいない」などと言ってないで、週末は「ダメな候補者」にトドメを刺しに行くという心構えで投票に臨んでみてはいかがでしょうか?
当ウェブサイトが選挙期間中に選挙ネタをここまで連続して取り上げるのもちょっと異例ではありますが、それでも選挙が私たちの社会にとって死活的に重要であることは論を俟たないのであり、くれぐれも選挙には必ず出かけていただきたいと思う次第です。
本文は以上です。
金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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今回、富山1区は、高市さんは応援したいけど自民党には票を入れたくないという私のようなものには絶妙な落としどころになっております。比例票がどこに向かったかとか結果が楽しみです。
なお期日前投票のための駐車待ちで1時間とか、中でも投票待ち30分とか前代未聞な事態になっているとニュースになっております。
今回の選挙で一番悩む人は、自民党候補者が反高市派や親中派の選挙区の投票者でしょうか。
高市総理を応援したいが、反高市や親中に投票したくない気持ちは十分わかります。
ただ、不本意でも自民党候補者に投票することが、高市総理に力を与えることになるでしょう。
今回は、他の保守党ではなく自民党に投票すること=高市総理を信任すること=が最重要と考えます。
高市総理が国民の強い支持を得ることで、自民党内の反高市・親中派を押さえることができるでしょう。(でも、大分3区と鳥取1区は自民党に入れたくないよなぁ。)
まったく同感です。
総裁が高市氏だから自民党のオマエ(候補)に投票してやったんだぞ、という事にしましょう
日本の選挙は自民党vs中革みたいな構図ではなくて、基本的に実務能力を持つのが自民党くらいで、その自民党のリーダーが信任に値するか否かだけなんだと思います。
石破は三連敗し、高市総理は国民に支持されている。そのまま選挙結果になるんだろうと思う。
うちの選挙区の自民党候補も馬鹿ではないが人間的に問題がある人です。
しかし今回は目をつぶって投票して、安定政権でこれまでの失政をテコ入れしてから、ダメな与党候補は落としていく。
現在の酷い状況に特効薬はない、時間をかけて状況を良くしていくしかないと思うんですけどね。
朝のTVで各党の公約・政策が比較できるサイトの存在が紹介されていました
実際の投票行動を考えますと、その公約の実現性も大きなファクターになると思えます
最善と思える公約でも実現性が0であれば効果は0です
しかし次善策であってもそれが実現されれば有権者、あるいは投票者の確実な利得を生みます
死票となっても長い目でその党を応援したいという意向もあるかもしれませんが
今回、公明党が抜けた久しぶりの選挙です。
公明党と共産党しかいない、究極の小選挙区が無くなったのがいいですね。
そんな選挙区なら選挙の度に精神的ダメージを負ってしまうので、選挙に行きたくなくなります。