事実と意見ごちゃまぜ記事に政治家が即時反論する時代
良い、悪いの議論とは無関係に、社会のSNS化は進みます。おそらく今回の選挙でも、SNSがこれまで以上に大きな役割を果たすことでしょう。こうしたなか、当ウェブサイトでは何度もしてきたとおり、メディアというものは事実と意見をごっちゃにして報じるという悪弊から抜け出していないのですが、それと同時に報じられた当事者がSNSで直接、一次情報を出せるようになっているという事実にも注目すべきです。
目次
変わらないテーマ
客観的事実vs主観的意見
いい加減、指摘し続けるのも疲れてきたのですが、それでも指摘し続けなければならない話があります。
それは、新聞やテレビを中心とするマスメディア(あるいは「オールドメディア」)が正確な情報を常に発信しているとは限らない、というものです。
当ウェブサイトの事実上の第1号記事である2016年7月22日付『情報の種類』で指摘して以来、この10年間述べ続けてきたとおり、そもそも情報には常に2つの種類があります。それが「客観的な事実」と「主観的な意見」です。
2つの情報
- 客観的な事実
- 主観的な意見
ここで「客観的な事実」とは「いつ、どこで、だれが、なにを」やったかという「誰が報道してもまったく同じになる(はずの)情報」のことであり、これに対して「主観的な意見」は「報道する人自身の分析や意見・解釈」などのことを指します。
この10年間述べ続けてきたとおり、新聞、テレビというものは、得てして両者を混同します。
それが意図的なものなのか、それともナチュラルに混ぜてしまっているのかはわかりませんが、とにかく両者を混同することが大変に多いのです。
客観的事実に主観的意見が勝手に付け加えられている
たとえば、メディア報道を眺めていると、こんな記事にぶち当たることがあります。
「OO党のXX代表はメディアのぶらさがり取材で記者団から新党との連立政権の可能性について尋ねられたところ、『現時点ではまったく考えていない』としつつ、将来についても『まずは新党を見極めたうえで考える』と述べた。連立を否定せず、将来的な連立政権形成に含みを持たせた格好だ」。
これは、本当に困った話です。事実と意見を完全に混同しているからです。
ここで、客観的事実とは、①「OO党のXX代表が新党との連立の可能性については『現時点でまったく考えていない』、としつつ、将来についても『まずは新党を見極めたうえで考える』と述べた」、です。この部分は(多少の要約は入っていますが)基本的にウソではありません。
ただ、これに続く②「新党との連立を否定せず、将来的な連立に含みを持たせた」、はどうでしょうか?この②の記述は、文章前半の①、つまり「XX代表が述べた内容」から論理的考察として当然に導ける結論でしょうか?それともこの記事を書いた記者のただの主観に基づく感想ないし解釈でしょうか?
残念ながら、この②は①から当然に導くことができる結論ではありません。
まず①の部分で、「OO党のXX代表」は、これから出来上がる新党については「現時点で(連立は)まったく考えていないし、(将来の連立も)その新党を見極めたうえで考える」と述べているわけですから、自然に考えて「その新党との連携は現時点でまったくの白紙」と見るのが妥当です。
もちろん、将来のことですから、その時点の判断として連立する可能性だってないわけではないでしょうが、連立しない可能性だってあるわけです。つまり、「現時点でまったくの白紙」と「将来的な連立政権樹立に含みを持たせる」は、意味合いがまったく違ってしまうのです。
つまり、この記事の問題点は、①「OO党のXX代表が述べた内容」(客観的事実)と、その①の部分からは必ずしも導き出せない、この記事を書いた記者による勝手な解釈②「将来的な連立政権樹立に含みを持たせた」という主観的意見が完全に結びついてしまっているのです。
報じられた本人にとってはたまったものではない
ただ、こうした記事を見かけたとしても、ひと昔前、まだインターネットがなかった時代だと、少し勘の良い人なら「変な記事だな」と気づけたかもしれませんが、多くの人は、「そうか、OO党のXX代表はあの新党と連立を組むつもりなのか」、などとする印象を刷り込まれてしまうのです。
私たちの情報入手手段は、それこそ新聞かテレビ、あとはせいぜいラジオや雑誌などに限られていたからです。
そして、なかにはこんなことを思う人もいるかもしれません。
「OO党はほかの野党とは一線を画す政党だから信じて支持して来たけど、あの新党と連立を組むってことは、しょせんOO党もその程度の政党だったのか。支持するの、や~めた」。
「OO党も結局は政策よりも政局が大事な政党なんだな。こういうところからホンネがダダ漏れだね。支持する価値はない」
この「OO党のXX代表」、自分が述べてもいない内容を勝手に付け足されたうえで記事にされ、かつ、少なくない有権者にかなり一方的な印象を持たれてしまうわけですから、まさにその政党や発言した代表ご本人にとっては、まさにたまったものではありません。
最近のケース・スタディ
ちゃんと発言を調べたら「そんなことは言ってない」
これに関連して取り上げておきたいのが、こんな実例です。
国民民主党・玉木氏、中道改革連合と連立に含み 「参院の結集見極め」https://t.co/aouUNrzm0r
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) January 22, 2026
記事の表題に、『国民民主党・玉木氏、中道改革連合と連立に含み』、とあります。
これだけを読むと、立憲民主党と公明党が結党した新党「中道改革連合」を巡って、国民民主党の玉木雄一郎代表が将来的な連立に前向きな姿勢を示したかにも見えます。
「やはり、国民民主党だって、しょせんは旧民主党から出て来た政党であり、立憲民主党にシンパシーを感じているのか」―――。
見る人が見たら、そういう感想を持つのは当然のことです。
ただ、これについては記事を読んでみると、また全然違った印象があります。
記事によると玉木氏は「中道改革連合」を巡って、「安全保障やエネルギーを巡る政策を現実路線に転換したことを評価」したものの、連立政権を組む可能性を巡っては、両党が「参院、地方組織も合わせて結集していくかまずは見定めたい」と述べたに過ぎません。
要は、「連立に含み」など、本人は全く述べていないのです。
メディアの主観的報道はまったくなくならない
記事のなかでは玉木氏の発言した内容が掲載されているに過ぎませんが、それでも普通に読んだら、「いつもの玉木ブシ」にしか見えません。
玉木氏を擁護するつもりはありませんが、同氏、あるいは榛葉賀津也幹事長は、普段から「対決より解決」、「政局より政策」を唱え、政策を実現するためであれば自民党とも立憲民主党とも組むという姿勢で一貫しており、こうした玉木・榛葉両氏の普段からの言動に照らせば、今回の発言にも何ら矛盾はありません。
要するに、「将来、政策が実現できそうな局面が生じれば、『中道改革連合』と何らかの協力はするかもね」、くらいの意味合いと考えるべきであり、これに「将来の連立に含みを持たせた」という記者の勝手な解釈を載せるのは、やはり不適切です。
こうした「メディアが記者の主観的な解釈を勝手に付け加えること」の弊害、実例とともに、当ウェブサイトではもう何回取り上げたかわからないほど、頻繁に指摘しているところです。
そういえば、当ウェブサイトの「第1号記事」で取り上げたのも、当時(2016年)に行われていた東京都知事選で、全国紙や全国ネット局などが都知事選の候補者を「主要3候補」と呼び、勝手に候補者が3人しかいないことにしている、とする話題でした。
当時はこの3候補がメディアに大々的に取り上げられ、事前の世論調査でも「3人のうちの誰に投票するか」が話題となっていましたが、これなどメディアが勝手に「主要候補は3人であり、それ以外の候補は泡沫候補である」と決めつけていた格好です。
この「メディアが主観で報じているフシがある」とする10年前からの指摘が、いまだに有効だとは、なんだか微妙です。
玉木氏自身が即効メディアに反論
もっとも、当ウェブサイトでは『SNS投稿の長さと説得力は「反比例する」という仮説』などを含め、これまでに何度も指摘してきたとおり、オールドメディアが人々から見放されていますが、これも著者自身に言わせれば、なかばメディアの自業自得です。
インターネットの出現で、メディアの報道がいかに信頼できないかが人々にバレてしまったからです。というのも、インターネットには大きく「複数の情報源を簡単に比較できること」「似たような事件をメディアが過去にどう報じて来たかを簡単に確認できること」、といった特徴があるからですが、最近はそれだけではありません。
よろい一次情報に近い場所からの情報を、国民が直接確認できるようになってきたからです。
インターネットの特徴
- 異なる複数の報道を横軸で比較できること。
- 異なる時点の報道を縦軸で比較できること。
- 一次情報に近い情報にアクセスできること。
これに関連して取り上げておきたいのが、玉木雄一郎氏のこんなXポストです。
選挙前の大事な時期に、誤解を招くようなビュー数稼ぎの記事やめてほしい。
中道改革連合が、参議院の立憲民主党や公明党すら結集していないのに、我が党が結集するはずないと言ったまで。
本当にこういう記事やめてほしい。 https://t.co/SgFyVwOpyJ
— 玉木雄一郎(国民民主党) (@tamakiyuichiro) January 22, 2026
報道の当日、玉木氏は速攻でXに反論を掲載したのです。
玉木氏自身がXで説明したところによると、「中道改革連合との連立に含み」の記事で報じられた玉木氏の発言は、「中道改革連合に参議院の立憲民主党や公明党すら結集していないのに、そこに国民民主党が結集するはずない」という意味だったのだそうです。
これについてはもちろん、「メディア記者を誤認させた玉木氏が悪い」、「わざわざ本人が補足説明するのは言い訳がましい」、などと強弁する人もいるかもしれません。
政治団体「日本自由党」がメディアに敢然と反論
ただ、シンプルに考えて、これはなかなかに凄い時代になったと見た方が正確ではないでしょうか。
メディアに変な内容を報じられても、かつては「泣き寝入り」するしかなかったのが、現代社会だとこうやって政党の党首自身がSNSを使ってガンガンに情報を発信し、メディアの報道に異を唱えることができてしまうからです。
この文脈で、もうひとつ、なかなかに強烈な話題も取り上げておきましょう。
衆議院選挙の候補者アンケートが各メディアから寄せられ、順次回答しています。
その中で、毎日新聞のアンケートに下記設問がありました。選択式で、自由記述欄はありません。
—…
— 日本自由党【公式】 (@nihonjiyuto) January 22, 2026
これは、浜田聡・前参議院議員が主体となって結党された「日本自由党」の公式アカウントがXにポストしたものですが、なかなかに素晴らしい内容です。
新聞社から送られてきたアンケートに含まれていた、高市早苗総理大臣の台湾有事に関する答弁を巡る設問を巡って、次のように指摘するのです。
「この設問は、『高市氏の台湾発言は問題であるか否か』という二者択一を前提とした、極めて誘導的な構造となっており、現実的かつ責任ある政策判断の立場を選択肢から排除しています」。
「本来示されるべきであったのは、『台湾発言の内容自体は誤りではないが、外交・安全保障に関わる発言である以上、日本政府内での調整、ならびに日米間での意思疎通を十分に行った上で発言されることが望ましい』という、極めて常識的かつ実務的な選択肢です」。
なんとも同意せざるを得ない記述ですが、なにより印象的なのは、これが当時者から直接、一般国民に対して公開されていることです。
SNS活用して世の中をより良くする
結局のところ、新聞社が情報を加工して新聞紙面に掲載するよりも、SNSで一次情報を直接流した方が効率的だ、ということに、政治家、政党、政治団体などが気付き始めているのではないかと思います。
おそらく今回の選挙も前回以上にSNSの影響力が大きくなるでしょうし、この傾向は止められません。もちろん、SNSには誤情報も蔓延していますし、社会のSNS化が無条件に望ましいというものかどうかは別問題ですが、こうした「良い」「悪い」の議論とは無関係に社会のSNS化は進みます。
いい加減、私たちもSNSの存在を前提とし、SNSをうまく活用しながらこの国をより良い姿に変えて行くべきだと思う次第です。
本文は以上です。
金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
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日本に必要なのは信頼できる新聞である。
嗚呼許すまじうその新聞
二度とゆるまじうその新聞
我らの空に
悪い新聞と良い新聞
その間にある断絶の谷間は、かように深い
この②は①から当然に導くことができる結論ではありません。・・・まったくもってご指摘のとおりですが 注意深く読まないと ②の結論だけが 記憶に残ってしまいます。自戒します。
問8.高市早苗首相の台湾有事を巡る答弁に関する毎日新聞のアンケートをめぐり、その設問の仕方が極めて不適切との指摘が日本中から寄せられています。あなたはこのアンケートの仕方が不適切と思いますか。
1.不適切だと思う
2.不適切だと少しは思う
3. まったく不適切だと思わないこともない
4. 適切であるはずがない
5. 多分適切ではない
6. 敵である