野党の動向次第では自民圧勝も自民大敗も両方あり得る

実際のところ、自民党は議席を減らすのでしょうか?これについて、公明党が保持しているとされる「約2万票の基礎票」がそっくりそのまま、自民党から立憲民主党に移れば、自民党が大敗を喫することは間違いありません。ただ、今回の選挙を読むうえで不確実性は、ほかにもいくつもあります。保守票の食い合い(自民にマイナス)、社会のネット化で左派政党の支持が減少(自民にプラス)、高市効果(自民にプラス)―――、といったところであり、今回は選挙予測が大変難しいところです。

朝日新聞調査だと新党への期待は低い

最大野党の立憲民主党、つい昨年まで与党に入っていた公明党の両党が事実上統合するとの話題に関しては、当ウェブサイトでも『「立民+公明」の新党が政策に先立ち党名とロゴ公表か』などを含めて何回か取り上げていますが、世間的にもさまざまな反響があるようです。

ただ、あえて著者自身の「主観」で申し上げるならば、やはりSNS空間では、両党および両党が新たに設立する「中道改革連合」に対し、肯定的な意見はほとんど見られません。一般のSNSユーザーの多くは、同党に対し、基本的にネガティブに見えます。

こうしたなかで、個人的にちょっと驚いた話題があるとしたら、これかもしれません。

新党は政権に対抗できる勢力に「ならない」69% 朝日世論調査

―――2026年1月19日 5時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より

解散、賛成36%・反対50% 「与党が過半数しめたほうがよい」52% 朝日新聞社世論調査

―――2026年1月19日 5時00分付 朝日新聞デジタル日本語版より

朝日新聞が公表した全国世論調査によると、この新党が高市早苗政権に対抗できる勢力になるかどうかという質問で、対抗できる勢力に「なる」が20%に留まる一方、「ならない」が69%を占めたのだそうです。

また、衆院比例の投票先で「中道」を選んだ人の割合は9%で、これに対し他党は▼自民34%、▼維新10%、▼国民10%、▼参政7%、▼れいわ4%、▼共産3%―――などとなっており、「中道」は自民の約4分の1に過ぎないだけでなく、日本維新の会、国民民主党にも負けています。

朝日新聞という、一般には左派的と見られているメディアの調査でこれなのですから、ちょっと意外感があります。

もちろん、選挙は水物ですので、現時点の調査が選挙結果を決めるというものでもありませんが、ただ、今回の選挙戦は23日解散、来月8日投開票という短期決戦が見込まれるなかで、現時点での調査結果がこれというのも、同党の先行きの厳しさを象徴しているように思えてなりません。

小選挙区という特徴を踏まえる必要がある

ただし、ここでもうひとつ留意しなければならないのは、衆議院議員総選挙は小選挙区での勝敗がモノをいう、という点です。小選挙区は全国で289区設けられており、定数(465議席)のうちの6割以上を占めているため、小選挙区を制した政党が与党になるのです。

しかも、小選挙区では当選者が1人ですので、当選するためにはライバル候補よりも1票でも多くの票を取らなければなりません。そして、その選挙区で当選できなかった候補に投じられた票はすべてが死票になってしまうのです。

こうした選挙制度、「不公正だ」、「中選挙区に戻せ」、といった批判があることは事実でしょう。

ただ、「選挙区で1人しか当選できない」というのは、都道府県知事や市区町村長でも同じですし、参議院にも俗に「一人区」と呼ばれる、改選議席が毎回1議席の選挙区があります。さらには諸外国でも下院で小選挙区制度を採用する事例は数多くあります。

また、わが国の場合は比例代表への重複立候補も認められており、惜敗率などの条件を満たせば復活当選が可能です(俗にいう「比例ゾンビ」)。比例代表に配分された定数は合計176議席で小選挙区よりも少ないですが、いちおう、死票に対する救済措置として機能しているのです。

こうした状況を踏まえると、現在の日本の選挙制度をどうすべきかを議論するよりも、現在の日本の選挙制度を「前提」として、どの政党が当選に近いか(あるいは近くないか)などを議論した方が生産的でもあります。

前回ベースで2万票移れば自民党は大敗を喫する

さて、こうした観点から、ちょっと興味深い試算をしてみたいと思います。

前回(2024年)と前々回(2021年)の衆院選における289の小選挙区の全データをもとに、こんな前提条件を置くのです。

その選挙区に自民党と立憲民主党の両党から候補が出ている場合…自民党から立憲民主党に2万票票、票が移動する

これは、「公明党の基礎票が各選挙区で単純に案分して約2万票あり、自公連立政権時代にはその約2万票が自民党候補者に投じられていたが、今回の選挙ではその2万票が立憲民主党の候補に向かう」という仮定を置いた場合のシミュレーションです。

立候補者や各政党候補者の得票などが2024年のケースとまったく同じで、上記前提条件だけを変更した場合の選挙結果が、図表1のとおりです。

図表1 自民⇒立民に2万票移動した場合(2024年のケース)
政党2024年シミュレーション増減
自民13266▲66
立民104170+66
維新2324+1
国民11110
公明440
共産110
社民110
保守110
無所属1211▲1
合計2892890

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果』データをもとに試算を実施)

いかがでしょうか。

自民党は前回、小選挙区で132議席しか取れずに惨敗したのですが、その2024年の時点のデータにさらにこの「2万票補正」を加えたら、自民党の小選挙区の議席はさらに半減して66議席になってしまい、これに対し立憲民主党は170議席を獲得して圧勝し、おそらく政権交代が生じます。

前々回をベースに試算してもやはり自民敗北

もちろん、この試算は極めて粗っぽいものです。

だいいち、公明党が4議席となっていますが、報道等によれば公明党は小選挙区から撤退するそうですので、この時点で不正確な試算ではありますが、ただ、イメージ的に「公明党の2万票が自民党から剥落して立憲民主党に向かう」ことの脅威は伝わると思います。

これについては、2024年の自民党が「石破ショック」で自滅したという要因を踏まえると、やや正確ではない、といったお叱りがあることでしょう。自民党が大敗した2024年をベースにするのではなく、ある程度は自民党が堅調な議席を取った2021年をベースにすべきだ、といったご指摘です。

これを踏まえて、2021年をベースにしたシナリオも作ってみました(図表2)。

図表2 自民⇒立民に2万票移動した場合(2021年のケース)
政党2024年シミュレーション増減
自民188103▲85
立民56142+86
維新1615▲1
国民660
公明990
共産110
社民110
保守000
無所属12120
合計2892890

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果』データをもとに試算を実施)

こちらのシナリオだと、自民党は小選挙区で100議席を超えるものの、立憲民主党が142議席を占有するため、やはり議席数では競り負ける可能性があります。

こうした状況を踏まえると、やはり「最大野党」と「2万票の基礎票を持つ政党」との選挙協力の成立は、自民党政権にとっては脅威ではないでしょうか。

そもそも本当に2万票なのか?

もっとも、上記試算にはいくつかの前提条件もあります。

その最たるものは、「そもそも公明党が本当に各選挙区で2万票を持っているのか」、です。

図表3は、直近の衆参両院選における、公明党と日本共産党のそれぞれの比例代表における得票数推移です。

図表3 衆参両院選における比例・得票(公明党と日本共産党)

この図表3、もともとは「公明党も日本共産党も支持層の若返りに失敗している」とする仮説を検証する目的で作ったものですが、回による多少の変動はあるにせよ、総じて両党ともに右肩下がりであることが確認できます。

そして、公明党の直近(つまり2025年参院選)における全国比例での得票数は5,210,569票でしたので、これを289で単純に割ると18,030票、つまり2万票を割り込みます。

しかも、この5,210,569票には、想像するに、公明票(あるいはいわゆる「創価学会票」)だけでなく、国土交通省関連票(たとえば観光産業などの票)も含まれている可能性もあります。

もしそうだとしたら、公明党が与党から外れたことで、これらの「観光票」が剥落し、現時点の公明票は12,000からせいぜい15,000票程度、という見立ては成り立つでしょう。

また、2021年のケースでいえば、立憲民主党は日本共産党と選挙協力を行っていましたので、その効果で日本共産党との候補一本化が成立した選挙区では「共産党票」が1万票前後が上積みされている可能性があります。

共産党効果なども踏まえて再度試算すると…?

こうした効果を踏まえ、図表2の「自民⇒立民に2万票」の前提条件を「自民⇒立民に1.5万票」と書き換えたうえ、日本共産党との選挙協力効果を白紙にしたうえで再計算したものが、次の図表4です。

図表4 自民⇒立民に1.5万票移動し、立民から共産票が剥落した場合(2021年ケース)
政党2024年シミュレーション増減
自民188135▲53
立民56108+52
維新1617+1
国民660
公明990
共産110
社民110
保守000
無所属12120
合計2892890

(【出所】総務省『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果』データをもとに試算を実施)

この場合は、自民党が2021年ケースと比べて議席を50以上減らしますが、それでも小選挙区で135議席と2024年並みの議席を獲得して比較第1党の地位を維持するという計算です。

個人的には、自民党が2021年なみの票を獲得し、かつ、「中核連」(=立公の新党)と日本共産党の教頭が不成立となる場合には、図表4のような勢力分布が実現する可能性がそれなりにあると見ています。

今回の選挙に関しては予測が難しい3つの理由

ただし、『したたか自民党…消費税の時限減税は露骨な野党潰しか』でも指摘したとおり、今回の選挙はほかにも不確実要因がたくさんあるため、予測がとくに困難です。

これには大きく3つ考えられます。

  • ①保守票の食い合い(自民党にマイナス)
  • ②左派票の衰退(自民党にプラス)
  • ③石破時代の反動(自民党にプラス)

ひとつ目は、近年、ネットを中心に絶賛支持を拡大している国民民主党や参政党、日本保守党といった政党の動向であり、とくにこれらの政党が自民党と選挙区でバッティングすれば保守票を食い合って「共倒れ」となり、立公新党「中核連」が大きく伸びるという展開が予想される点です。これは自民党にマイナス要因です。

一方、ふたつ目は、同じくネットの社会的影響力が急速に高まっていることもあり、立憲民主党を見限る有権者がSNSで増えているという点です。

じつは、2024年総選挙では、立憲民主党は2021年と比べ、小選挙区では議席を大幅に積み増しているのですが、得票数は147万票減らしています。得票が減った原因は日本共産党との選挙協力が不成立となったことも大きいと考えられるものの、左派政党界隈の合計得票数がジリジリ減っていることも事実です。

こうした傾向が続けば、「立公選挙協力」は短期的に自民党にとって脅威ですが、中・長期的に見れば、「中核連」に未来はなく、その意味では自民党にプラスです。

そして最後が、「石破自滅要因の消滅」です。

前回、2024年総選挙では、石破茂首相(当時)がマスコミの口車に乗せられ、「統一教会」「裏金問題」などを自分で勝手に争点化するなどして自滅しました(※一部では、「岸田文雄・元首相ら旧宏池会関係者が旧安倍派を潰すためにこれを利用した」、といった指摘もあるようです)。

今回、高市早苗総理大臣は、いわゆる「裏金」問題に巻き込まれた議員の二重処罰を考えていないと表明しているようですので、この「石破自滅要因」は働きません。これが自民党にプラスになる要因です。

こうした要因を踏まえると、「高市人気で自民党が故・安倍晋三総理大臣のころ以来の大躍進をする」というシナリオも、「保守票の分裂と野党の選挙戦略により結果的に石破茂・前首相のころとそっくりな大敗を喫する」というシナリオも、両方があり得るところです。

これが自民党にとって吉と出るか凶と出るかについては、今後次第、といったところでしょう。

本文は以上です。

金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない

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読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

    高市自民党の動向次第でも、自民党圧勝も自民党大敗も、あり得るのではないでしょうか。

    1. 引きこもり中年 より:

      そもそも論ですが、 開票結果が出るまで、どうなるか分からないのが選挙ではないでしょうか。

  2. 匿名 より:

    「自民圧勝も、大敗もありうる」この分析は正しいような気がします。
    そうすると、国民民主との合意を経て2026年度予算成立のめども付きかけたのに、なんで解散するの?ですよね。
    どうしても、自分に心地よいデータを重視する傾向が、人間にはあるようですが、高市さんもその罠に嵌まったかな。発足以来うまくやってきたのに、勿体ない。
     

  3. CRUSH より:

    「圧勝」
    と書けばサボって投票しない人が増えるから、
    「惨敗かも」
    と書いておく方がマシですな。

    あぁ心配だ心配だ。(棒読み)

    現状分析ではなくて、実績からだけで分析するならば、
    「小池蓮舫の女帝対決!」→嘘でした
    「石破が一番人気!」→嘘でした
    「小泉が一番人気!」→嘘でした
    「高市早苗は不人気」→嘘でした

    日本の大手マスメディアはこれまでに確実に安定して「予測を外してる」から、
    前回の小選挙区得票数に、公明党の下駄を履かせてドーピングすれば中道改革が圧勝!
    という予測も、外れる方に合理的期待が高まりますけどねえ。

    1. 名無しで結構 より:

      先日石破が池上の番組にでてましたが、ぽっぽのように元総理という肩書で中国が歓待してくれる時代が終わったから、日本のテレビ局に、スポンサーの中国様から「出してやれ」と指示でもあったのでしょうか。(小国が大国にさからうななんて言わせる局だし。)

    2. ad より:

      もはや古い話ですが、2021年衆議院選挙であらゆるメディアが世論調査に基づく予想も実データに近い出口調査ですらも外しまくった中、比較的近い予測を出した朝日新聞が評価されたという話がありましたね。

  4. 元雑用係 より:

    >国民民主党や参政党、日本保守党といった政党の動向であり、とくにこれらの政党が自民党と選挙区でバッティングすれば保守票を食い合って「共倒れ」となり、立公新党「中核連」が大きく伸びるという展開が予想される点です。

    立憲が割と強い小選挙区があるのでこの点が大きいですよね。第三局への投票は2番手・中革連を利することになりますね。

    体内には2割の善玉菌、2割の悪玉菌、6割の日和見菌がいるそうです。6割は善玉か悪玉の強い方に味方するそうです。(by はたらく細胞、もやしもん)
    まるで自民党。(笑)
    個人的な話、うちの選挙区の現職は自民日和見議員ですが、どうしようかな。

  5. 引っ掛かったオタク より:

    まー今日の会見待ちスよ
    “争点”足る新ネタぶっ込んでくれるか?
    知らんけど

  6. はちまき より:

     自民党は微増して政権維持。
     中道は微減。
     国民民主、維新の会、参政党は現状維持。
     これくらいが現実的なのでは?

  7. 匿名 より:

    特定の宗教票が日本の命運を左右するってことですね。
    これって良いことなの?
    中国から2万人帰化すれば日本を乗っ取れるってこと?
    帰化しなくても、まずは外国人参政権を導入させ2万人が移住すれば乗っ取れるのかな?

  8. DEEPBLUE より:

    中革連発足を察知した上での解散という記事がありましたね。4月解散ならもっと選挙区調整が進んでいるから今解散というのも選択肢でしょう。
    会見は立派な口上でした。少なくともスピーチに置いては高市総理は前任者より遥かに素晴らしいです。

  9. 元雑用係 より:

    私も動画で会見を見ました。やはり、露出すればするほど支持率上がる人だと改めて思いました。
    来年度予算から高市路線を反映させるということでしょうかね。
    実際、世界の激動状況を見ても、今やっとかないとあとになるほどやりづらくなるばかりのような気がします。

    「議院内閣制なので国民は首相を選べない。しかし総選挙は政権選択選挙。自民党が勝てば高市総理、自民党が負ければ野田総理、または斉藤総理です。」

    しれっとえげつないことをぶっ込んでて笑いました。
    それを望まないと思う有権者への訴求力たるや。(笑)

    冒頭と中頃でちょっと、滑舌が悪いところが気になりました。体調にはくれぐれも気をつけてほしいものです。

    1. 元雑用係 より:

      記者質問の途中で見るのをやめました。のっけから会見で本人が語っていたことを質問していたので。(笑)
      会見聞いてなかったんですかね、幹事社さん。

  10. F6F より:

    会見見ました。
    いつものように自分の言葉で話されてましたね。

    「先回の総選挙時に高市早苗は総理でも無ければその候補でもありませんでした。今回の総選挙は私を総理として国民の皆様が認めて頂けるか、と言う選挙です。」と言った意味合いのことも言われていたかと思います。
    高市総理の覚悟を示す言葉でもありましたし、今一つ支持が高まらない自民党へのテコ入れでもあるのだろうなと思った次第です。

    是が非でも高市総理には勝って欲しい、そう思います。

    だがしかし、鈴木じゅんじはまた出るのだろうか… 7区在住者としては勘弁してくれと言いたいが、さて…

  11. Sky より:

    さて、例の189人。どうするのでしょうね( -_・)?
    しれっと「昨日の敵は今日の友」とか「高市先生」とか言って「大樹」にしがみつくのか?
    前回の総裁候で石破候補推薦議員には「落下傘」が降って来ること期待しちゃいます。大分3区のように。
    まずは前回の衆院選の時に自民党公認を外され落選した元安倍首相支持者に復帰いただきたいものです。

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