中国の対日制裁発表からたった1週間で国際社会が団結

中国が喜々として打ち出した対日輸出制限措置が、思わぬ効果を生みました。G7、インド、豪州、メキシコなどの財相が米国で集まり、(中国の名指しこそ避けたものの)レアアースなどの分散調達に向けて努力することで合意したのです。たった1週間でこの成果。冷静に考えたら、今回のターゲットは日本だったにせよ、各国ともに政治に経済を絡めてくる中国の無法に腹を据えかねていたのかもしれません。

中国の対日輸出制限はセルフ経済制裁

あまり手前味噌は個人的に好きではないのですが、当ウェブサイトではかなり早い時期から、中国政府が6日に喜々として公表した「日本に向けての軍民デュアルユース品目の輸出を制限する」とする発表が「セルフ経済制裁」だと断じて来たのではないかと思います。

この話題を巡っては、日本(や一部外国)のメディアは「高市(総理)が中国を完全に怒らせた」、「中国がついにレアアース輸出カードを切ってきた」などと大騒ぎしていたようですし、酷いケースになると「中国のレアアース報復に反撃カードなし」、「高市氏は崖っぷち」、といった、大変一面的な報道もあったようです。

ただ、当ウェブサイトではちょうど1週間前の『ついに中国政府が禁断の対日セルフ経済制裁を発動か?』で第一報的に取り上げたとおり、「中国の措置は中国にとってのセルフ経済制裁だ」と結論付けるものです(記事表題でもそのように記載させていただいています)。

すなわち、当ウェブサイトではいち早く、次のように指摘しました。

  • 対日輸出管理強化は、短期的には日本企業を困らせることができるかもしれないが、中・長期的には間違いなく、中国自身に対するセルフ経済制裁となる
  • 制裁には具体的品目は示されていないものの、「バイオテクノロジー、航空宇宙、通信分野」―――などの製品が「軍民両用品」として分類されるとしており、とりわけPC、スマホ、映像機器、衣類、雑貨などの輸入が滞ることになれば、短期的に日本にはかなり大きな影響が生じかねない
  • しかし、これらの多くは中国以外でも生産が可能な品目であり、極端な話、一定の課題(コスト競争力、電力・労働力不足問題など)さえ解決すれば、日本でも生産が可能な品目ばかりである

…。

日本企業がこれから中国撤退に動く可能性が高い

こうした文脈で、いわゆるレアアースについても「多くの場合、残土処理などの問題から採算性の観点で中国以外の国が生産から撤退したというものであり、これらについてもコストと時間の問題であって、供給自体は中国以外の国からの調達が可能と考えられる」と指摘しています。

そのうえで、個人的にあのタイミングで指摘しておいて良かったと思うのが、こんな内容です。

そして、『具体的な品目が何なのかはよくわからないが、とにかくデュアルユース品目の輸出はいつでも止められる』というスタンスだと、日本企業(や日本以外の国の企業)にとっては、なかなかに恐ろしくて、中国をサプライチェーンから外すという動きを取らざるを得なくなるのです」。

じつは、この点こそが、著者として最も強く主張したい内容であり、『おそらく日本は国を挙げて中国に消極的制裁を実施する』という記事にも結実した議論でもあります。

当ウェブサイトの用語でいう「消極的経済制裁」あるいは「サイレント型経済制裁」とは、「これから経済制裁を実施する」などと宣言することなく、静かに日本企業が中国から引いていき、結果的に日本が中国に対し、経済制裁を実施したのと同じような効果が生じることを意味します。

日本の主だった上場会社は多くの場合、「サラリーマン社長」が経営しているため、不確実性をことのほか嫌うという特徴があります(※著者私見)。株主総会でも何を聞かれるかわかりません。

このため、「何が条件となるかはわからないが、とりあえず会社がコントロールできない要因により、中国からいきなり輸入が止まる可能性がある」というのは、サラリーマン経営者らが何よりも嫌う状況であり、サラリーマン経営者から見ると、こうした状況は全力で回避しなければなりません。

結果として、昨年のフジテレビ騒動で企業がいっせいにフジテレビからCMを引き上げたように、日本企業は一斉に「脱中国」という同じ方向に走り出す可能性すらあります。

予測上回る速度で出てきた国際社会の動き

ただ、こうしたなかで、予測を上回る速度で出てきたのが、国際社会の動きです。

Secretary Bessent Convenes Finance Ministerial on Securing Critical Minerals Supply Chains

―――2026/01/12付 米財務省HPより

米国で12日、欧州連合(EU)やドイツ、フランス、イタリア、英国、日本、カナダというG7諸国に加え、インド、メキシコ、豪州、韓国の財務大臣・閣僚が集結して会議が行われた結果、レアアースを中心とする重要鉱物のサプライチェーンの確保と分散化に関して取り組むことで合意しました。

いちおう、声明の中に「中国」という単語は含まれていませんが、サプライチェーンの確保と分散という用語が出てくれば、それが中国を念頭に置いた記述であることは明らかでしょう。

なかなかのスピード感です。

中国政府・商務省が「日本に対する輸出管理の強化」を発表したのが6日であり、そこからたった1週間そこそこで主要国財相が一致団結して脱中国加速を宣言したわけですから、これは中国にとってもおそらく想定外だったのではないでしょうか。

今回のターゲットは日本ですが、中国のこの手の政治と経済を絡めるやり方で煮え湯を飲まされた国は多々あります。どの国も、中国のやり方に腹を据えかねていたのではないかと思いますし、また、国際社会で好き勝手する無法者に、これ以上、サプライチェーンの重要な一部分を握らせないという意思表明にも見えます。

おそらく中国政府は、さすがにここまでの展開は予想していなかったのではないでしょうか?

いや、普通に考えたら一気にここまで行くであろうことくらいは容易に想像できそうな気がしますが、現在の中国政府にはそこまでの思考能力がない、ということなのでしょうか?

「高市氏に打つ手なし」などと報じたみなさん

さらにいえば、「レアアース禁輸で日本に経済損失が生じる」、「高市氏に打つ手なし」、などとする報道を垂れ流したメディアやコメンテーターの皆さんは、その分析能力のなさに危機感を持つべきではないか、などと思ってしまいます。

まともな社会人経験があれば企業の意思決定の仕組みを知っているはずですし、「サプライチェーンにおける不確実性」が意味することくらいは想像が及びそうなものです(実際、XなどSNS空間ではいわゆるサラリーマン層が多く常駐しているためでしょうか、著者のような考え方は多くの支持を得ているようです)。

しかし、一部メディアの報道や一部コメンテーターの皆さんの発言を眺めていると、産業や経済の基礎統計すらろくに読んでいないばかりか、こうした「社会人の常識」レベルの知見が圧倒的に不足しているのではないかと思えてならない事例が多々あることも事実でしょう。

「なるほど、テレビを日常的に見ているような人たちとは話が通じないわけだ」、などと、著者自身も思わずつぶやいてしまったのはここだけの話です。

本文は以上です。

金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない

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読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

    中国は、レアアース規制をちらつかせることを、日本以外の国にも乱発しすぎたのでは、ないでしょうか。(となると、中国は「これは日本相手だけで、他の国にはレアアース規制カードは使わない」と宣言するのでしょうか)

  2. はにわファクトリー より:

    新聞は真実をいつも報道していると思っている人たちと話が通じないはずだ。

  3. 農民 より:

     口実さえあれば暴れるような者は、口実さえあれば見限られるものです。
     中国様にへつらえという方々の言う通りにしていたら、国際社会(しかも西側に限らず韓国すらまだ踏みとどまっている)から浮いてアチラ側になってしまうところでしたね。案外、彼らは状況をよく理解して喋っているのかも。そうなってほしいでしょうから。
     企業が1ヶ月そこそこで撤退を決定などできるわけがないのと同様、この多国間の動きも下地はとうに出来ていたことでしょう。つまりそもそも高市氏が発言撤回する芽など毛ほどもなかったと。……んじゃやっぱ状況を理解してはいないか。
     本件の着地点に加え今後の展望までもと厳しい判断を強いられているのは習近平ですね。他は厳しいながらももう道筋と覚悟は決まっているということなので。

  4. 田舎の一市民 より:

    天は自ら助くる者を助く
    覚悟があれば道は拓ける
    岸田石破では到底無理
    同じ総理でも器が違うということです

  5. カズ より:

    *レアアース、第三国には無用の産物・・。

    「我田引水・唯我独尊」の行く末は、国際社会が中国から孤立する未来!
    はたして、売り手(中国)は買い手(有技術国)を代替できるのだろうか?

  6. はるちゃん より:

    日本には過去に脱亜論というのがありましたが、うかつにも大陸とかかわったため壊滅的な打撃を被りました。
    第二次大戦後、経済優先のグローバル化政策で、日本だけでなく西欧も中国と積極的に関係を持つようになりました。しかしその結果は、強権国家を育て増長させ、かかわった国は脅される始末です。
    いま改めて日本だけでなく西欧の指導者や経済人も含めて、脱亜論を思い起こすべきです。
    ドイツなどはもう手遅れかも知れませんが。

    1. 引っ掛かったオタク より:

      コトココニイタッテ“諭吉”ヲ“栄一”ニ替ヘタルハ如何ニト…
      知らんけど

  7. 元雑用係 より:

    少しだけ報道を追ってみたんですが、今回のG7会合の発端は確かに1/6の商務部の発表がトリガのように見えます。このロイターの報道が各社に引用されていたようです。国内マスコミは報じたかどうかよくわかりません。

    G7財務相、レアアース供給巡り12日協議へ=関係筋
    2026年1月7日午前 9:13 GMT+92026年1月7日更新
    https://jp.reuters.com/markets/commodities/HOVBOX4QBNPGBFZZWPXLIRI53M-2026-01-06/
    [東京/ブリュッセル 6日 ロイター] – 主要7カ国(G7)財務相は来週12日に米ワシントンで会合を開き、レアアース(希土類)供給について協議する予定だ。3人の関係筋が6日に明らかにした。
    ある関係筋はレアアースの最低価格が論点になるだろうと述べた。
    ===

    米国も直近ではトランプ関税交渉でも煮え湯を飲まされて(腰砕け?)いましたし、中国がなにか行動すれば、対抗でいつでも動く共通認識はできているのでしょうね。
    G7以外では豪印韓・・・メキシコも。メキシコは2,3日前にトランプが軍事侵攻するって言ってたのですが。(笑)

    >「高市氏に打つ手なし」などと報じたみなさん

    直近の世界の動きを見ますと、ベネズエラ、イラン、キューバ、イエメン等々・・・
    中国の世界への影響力が激減する世界線が見えない人には、高市氏の計算された声明など読み取れないでしょうね。
    高市氏は11月首相就任。いやいや、日本はすんでの所で命拾いしたかもですね。

    ところでイランは殺害された市民が万人単位と、天安門を超える惨事となってしまった可能性が高いようです。

  8. DEEPBLUE より:

    ドイツ軍機にレーダー照射とかやりたい放題してましたからねえ中国。

  9. 事大の騎士 より:

    台湾有事発言を撤回しないのも、絶対に中国はレアアース規制をしてくると予想できるので、早い段階からこのような合意が行われるように先手を打っておいたのではないでしょうか。
    中国がレアアース規制をしても、高市総理の解散総選挙報道にかき消されて、日経平均株価は過去最高値を更新しましたし、市場がレアアース規制による影響は少ないと判断している証左かと。

  10. 丸の内会計士 より:

    企業取引のプロトコルが変わる可能性。MAの際に、サプライチェーン全体で人権侵害行為や人権侵害行為に加担するような企業との取引は行っていませんとかの表明保証を求められる可能性が出てきました。表明保証違反の場合は、買い手から損害賠償を請求されます。ファンドの皆さんは、EXITを見据えて、人権DDをしっかり行ったり、ヤバイ場合は、早急に売却することをお勧めします。安いからということで、安易に中国とは取引できません。

  11. 匿名 より:

    片山大臣 「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」を目見える形(写真)で実現していますね。

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