支持率高止まり…パンダ再来日の努力は7割が「不要」

台湾答弁問題で中国が対日批判のレトリックを強め、さまざまな対抗措置を打ち出しているなか、高市早苗内閣の支持率は高止まりしたままであることが判明しました。朝日新聞の調査によるとパンダ再来日に向けた中国への働き掛けも「必要ない」とする回答が7割に達しているそうです。ただ、内閣支持率と比べて自民党支持率が追いついているとは限らない点も気になります。

内閣支持率を定点観測する意義とその限界

当ウェブサイトではメディアが実施する世論調査に基づく内閣支持率に関する話題をときどき掲載しています。

ふだん、メディアの報道を「信頼できないこともある」と批判することも多いなかで、それでも敢えてこの話題を取り上げるのには理由があります。それはやはり「定点観測」としての有効性です。

メディア各社の主張を信頼するならば、内閣支持率は多くの場合、俗にRDD、つまり「ランダム・デジット・ダイヤリング」などと呼ばれる方式で無作為抽出されたサンプルに基づいて調査されており、調査結果は各メディアの普段からの報道スタンスとは無関係であるはずです。

ただ、(これは著者の私見ですが)過去には支持率を「いじる」ために、与党で不祥事が報じられた直後のタイミングを選んで調査を実施するなどの「工夫」が行われていたフシもありますし、また、後述する通り、現実の支持率はメディアにより結構なバラツキがあったりもします。

さらに、多くの調査は電話のみで行われており、それも少し前までは携帯電話ではなく固定電話のみが選ばれていたそうで、ネット調査などと比べ、サンプルに偏りが存在しているという可能性は否定できません(しかもおそらく年齢補正なども実施されていません)。

このことから、支持率調査にはその信頼性を疑うような状況証拠が存在していること、決して全幅の信頼を置いて利用できるというような代物ではないことについては注意が必要でしょう。

内閣支持率は今月も高止まりか

前置きはこんなところにして、週末にまたいくつかのメディアの支持率調査が出て来ていますので、これらについて現時点における状況を紹介しておきましょう(図表)。

図表 内閣支持率(2025年12月)
メディアと調査日支持率(前回比)不支持率(前回比)
JNN(12/6~7)75.8%(▲6.2)20.7%(+6.4)
時事通信(12/5~8)59.9%(▲3.9)13.6%(+2.8)
読売・NNN(12/19~21)73.0%(+1.0)14.0%(▲3.0)
朝日新聞(12/20~21)68.0%(▲1.0)19.0%(+2.0)
日経・テレ東(12/19~21)75.0%(±0)18.0%(±0)
共同通信(12/20~21)67.5%(▲2.4)20.4%(+3.9)

(【出所】各社報道)

端的にいえば、支持率は総じて高止まりです。

もちろん、メディアによっては前月比で支持率が微減しているというケースもありますが、支持率横ばい(日経・テレ東)、支持率微増(読売・NNN)などの事例もあるため、少なくとも現時点において支持率は危機的水準とはかけ離れていることになります。

しかも興味深いことに、若年層に限定したら支持率は9割近くに達するという情報もあります。

高市政権への“若者支持率”88% 海外でも好意的評価の一方で…「偽サッチャー」批判も “台湾有事”発言への評価も二分の現実【サンデーモーニング・風をよむ】

―――2025/12/21 15:30付 Yahoo!ニュースより【TBS NEWS DIG Powered by JNN配信】

中国問題は支持率低下要因とならず?

このあたり、個人的な感想ですが、「新聞・テレビといったオールドメディアが批判する政権の支持率は高くなる」という法則がそのまま成り立っているフシがありますが、それだけではありません。

とくに若年層を中心に内閣支持率が高止まりしているという点は、オールドメディアの「ご注進報道」の国民世論への影響力が低下していることを示唆しているのです。

高市早苗氏が内閣総理大臣に就任したのは10月21日、つまり2ヵ月前ですが、この間、やはり台湾答弁を巡って中国が激怒する、といった出来事があったのが印象的です。

高市総理は11月7日、立憲民主党の岡田克也衆議院議員の質問に答える形で、台湾有事が日本にとっての存立危機事態に該当する可能性があると答え、これに激怒した中国政府が日本に対しさまざまな「対抗措置」を講じるなどしています(これらが「対抗措置」になっているのかどうか知りませんが)。

中国が日本に対して講じた「対抗措置」の例
  • 日本向けの団体旅行の自粛
  • Xを使った日本人への脅し
  • 日本製のアニメの上映延期
  • よくわからない会合の中止
  • ロックコンサート公演中止
  • 日本人歌手の歌中断→退場
  • 自衛隊にFCレーダー照射
  • パンダの貸与期限の不延長
  • 北京の各国大使に日本批判

(【出所】報道等をもとに作成)

むろん、これらの「対抗措置」とやらが、果たして本当に対抗措置になっているのかどうかという点は疑問です。とくに「歌っている途中の日本人歌手を強制的に降壇させた件」や「自衛隊機に対する火器管制レーダー照射」は、どちらも長い目で見たら中国自身に対するセルフ制裁となり得るものです。

国民の7割「パンダ再来日で中国への働きかけ不要」

これに関連してちょっと興味深いのが、こんな話題かもしれません。

パンダ再来日で中国に働きかけは「必要ない」70% 朝日世論調査

―――2025年12月21日 21時35分付 朝日新聞デジタル日本語版より

朝日新聞デジタルが21日に報じた記事によると、「パンダ再来日へ、政府は中国側に働きかけたほうがよいか」とする質問に対し、「その必要がない」が、じつに70%に達したのだそうです。

これは朝日新聞調査による内閣支持率(68%)を2ポイントも上回っています。

このことから、中国による「パンダ回収措置」は日本国民にとっては打撃と認識されていない可能性が高いのに加え、高市内閣を支持していない人も、中国の日本に対する対抗措置が理不尽なものであると認識しているという可能性が浮上するのです。

このあたり、『日本人の変化に取り残されるメディアと野党と中国政府』などでも指摘してきたとおり、おそらく少なくない日本国民は高市内閣を無条件に支持しているわけではなく、とくに「年収の壁」を「年収の崖」に変えたことなどは、少なくない国民がXなどを通じて不満を表明しているのが現状といえるでしょう。

また、自民党は石破茂・前首相の時代に失った信頼を、これから取り戻せるかどうかは微妙ですし、現実問題として、自民党に対する政党支持率は、どのメディアの調査で見ても、内閣支持率を大きく下回っているのが現状です。

自民党は首の皮一枚

このことから、少なくとも次の可能性が高いのではないでしょうか。

  • 高市内閣に対する現状の非常に高い支持率は石破内閣の不支持率の裏返しであり期待先行である
  • 高市総理の台湾答弁を巡る中国の激しい反発は内閣支持率を下げる要因となっていない
  • メディアの調査に「内閣を支持している」と答えた人のすべてが自民党を支持しているわけではない

すなわち、中国に対する政策など、外交安全保障面では、有権者は高市総理を深く信頼している(あるいは少なくとも中国に折れるべきではないと考えている)反面、減税を含めた経済政策のハンドリング次第では、支持率が落ちるリスクを孕んでいる、ということでしょう。

そして、自民党にしても、2024年9月の総裁選で189人の国会議員が石破茂氏という「禁忌肢」を選んでしまったこと、今年10月の総裁選でも党員票を無視して145人の国会議員が小泉進次郎氏に投票していたことを忘れてはなりません。

高市総裁誕生…とりあえず首の皮一枚つながった自民党』でも指摘しましたが、自民党はまさに「首の皮一枚つながっている」だけの状況であり、同党が信頼を回復していけるかどうかは今後の同党の努力にかかっています。

こうした状況で、いまいくら内閣支持率が高止まりしていたとしても、「税社保取り過ぎ問題」などの国政諸課題への対応を間違えると、自民党が選挙で勝てないという状況が継続するかもしれません。

なお、くどいようですが、当ウェブサイトは「自民党応援団」でもなければ「反自民党」でもありません。良い政策は良い、悪い政策は悪いという具合に、「是々非々」で評価することを旨としており、このスタンスについて変更するつもりはありません。

そして、SNSの普及でオールドメディアの影響力が低下するなか、政治ウォッチングがますます難しく、しかし面白くなっていることだけは間違いないといえるでしょう。

本文は以上です。

金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない

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読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

    毎度、ばかばかしいお話を。
    ①パンダ好き日本人:「日本人の70%がパンダ再来日不要だなんて、世の中、間違っている」
    ②オールドメディア:「高市早苗総理を支持している日本人は質が悪い。(こう言わないと、中国様と、うちの社長と、愛読者と、立憲の岡田と、田〇がうるさくてしかたがない)」
    ③中国:「この世論調査の結果が、民主主義が悪いことの証明である」
    この話は、2025年12月22日時点では笑い話である。しかし、明日はどうなるかは分からない。

    1. 引きこもり中年 より:

      オールドメディアとしては「核兵器を保有するかもしれない高市総理を支持しますか」と尋ねればよかったのでは。(でも、可能性だけなら、どの総理にもありますね)
      もっとも、「それでも高市総理を支持します」という結果が出ることを恐れたのかもしれませんが。
      蛇足ですが、これから立憲は「核兵器保有するかもしれない高市総理」として攻撃していくのでしょうか。

    2. 引きこもり中年 より:

      朝日新聞は、被団協に「高市早苗総理支持率が高止まり」したことへの、批判コメントをもらいに行くのでしょうか。

  2. はにわファクトリー より:

    何言ってやがる。
    中国の激しい反発をことさら取り上げ続けるオールドメディアへの懐疑は不信感へ変化した。

  3. 引っ掛かったオタク より:

    まー“報道”ベースなんでハナシ半分7掛け2割引きではアリマスが、
    「自民党内に早期解散総選挙の声」
    ???
    おー自民党よぉ、オマエラ徳俵の上で両足棒立ちヤジロベーしとる自覚持てヨ
    場内の空気と取組相手のポンコツさで勘違いしとったぁアカンど!?
    知らんけど

  4. 匿名 より:

    自民党の支持率は内閣支持率ほどは高くないそうで、もしも今、解散総選挙をやったら、どういう結果になるのか興味があります。

    昨年の衆院選では、小選挙区制のおかげで第2党の立憲民主党が漁夫の利を得ましたが、当時はまだ国民民主党、参政党、日本保守党などのメディア露出は少なく、特に高齢者は、そういう選択肢があることを知らなかった人も多かったでしょう。

    立憲民主党自身もやらかしている今の状況で衆院選をやって、自民党が落とした議席は、また立憲民主党へ行ってしまうのか?それとも保守系小政党が議席を獲得するのか?小選挙区制で単純に議席を削減することは、保守系小政党にダメージが大きいかもしれませんからね。

  5. Sky より:

    地元選出の自民党衆議院議員。
    石破政権時代は石破先生と自身のウエブサイトで呼び、今は高市先生。
    典型的な風見鶏議員なのでしょう。
    国会議員になるには何処がおトクかってことで自民党に所属を決めた議員希望者が自民党には多いのでしょう。尊敬に足る人ではないのでしょう。
    しかしこういう連中でも民主主義の議会内閣制度の中では貴重な一票ですので、石破内閣の様な与党左派勢力が支配する議会でなければ使い道があります。
    もしも衆院解散があるのであれば、現高市内閣ならば、地元投票先が風見鶏議員である事を承知の上で保守与党安定多数狙いで投票するのだろうなぁと思っています。
    まずは衆議院議員3分の2まで保守与党議員数が集まる。参議院議員の与党議員数がアレですが、ひょっとしたら参議院で与野党連携もあり得るかもしれない。そうしたら色々なオプションが行使できる必要条件が満足できる可能性が出てくる。そこまで踏み込んでほしいです。

  6. 農民 より:

     パンダ外交は前世紀中頃から行われていますが。建前上は友好の印としてとのことですが、友好あっての「結果」というよりは、友好ムードを「熱狂のもとに強引に成立させるため」「宣伝するため」という政治臭漂うものです。各国政府と中国とが互いに”うまく”やっておきたいという思惑あればこそ。
     こんなもんが、いざ深刻な摩擦の際に役に立つことなどそもそも有り得ません。中国政府はもう本当に当時の記憶など無いのでしょう。「言う事聞かないとパンダを取り上げるぞ!(政府支持率下がるぞ!)」なんて当初の目的には含まれておらず、よほど情報操作が成功していない限り、脅迫になどなりえません。なまじっか、ネットの登場前後の頃はマスコミが(なぜか)中国の思惑通りに乗っかったため脅迫として成立してしまった。その中途半端な成功体験で今こうしているのでしょうけども。
     また当初から脅迫利用するつもりだったとしても、娯楽の少ない時代の発想です。現代において動物園は多種多様な娯楽の中に埋没し、どこも経営難です。すでに「パンダ様のおかげでウハウハだ!」なんてものではありません。
     本当に「新しいものを産み出す」ことをしない国ですね、現中国って。

     いっそ「数々の非を認めて頭を下げて今後気をつけますと誓約するならパンダ借りてあげるよ?」とか”働きかけ”をすると良いかもしれません。お値段は1/10くらいで。

  7. DEEPBLUE より:

    朝日新聞補正で7割という事は、実質8割9割でしょうね。自民党の支持率ですが、岸破派の影響力を弱める為に選挙で高市チルドレンを増やせば自然と上がると思います。

  8. 元雑用係 より:

    また答え合わせですね。
    レーダー照射もパンダも左巻き大合唱中の「核武装が~!」も内閣支持率には影響なかったと。
    岡田屋さんこんなこと言ってたようなんですが。

    https://x.com/Sankei_news/status/2002611381540094310
    台湾有事を巡る高市首相の答弁について、従来の政府見解と異なると改めて主張し、「『二度といわない』というぐらいのことをいわないと国民は納得できない」と述べ、さらなる対応を求めた。

    どちらの国民が納得できないとおっしゃってたのやら。
    しょうもないネタですみません。

    1. Sky より:

      勤め先は企業ガバナンスの一環で利益相反の恐れのある行為をキツく禁止しているのですが、岡田家的には【李下に冠を正さず】って気にならんのですかねぇ?

  9. naga より:

    普通に考えればパンダは何の障害もなく居ることができるなら居た方が良いだろうが、安全保障を害してまで必要ないということですね。それにパンダはチベットの動物ですから中国のいうことに従ってパンダを連れてくることは、中国の奴隷的労働で穫れた綿で作られた服を買う等と似たようなことではないかと思います。

  10. 丸の内会計士 より:

    サステナ開示規制は、マジでヤバイですね。上場企業の役員もほとんど理解していないのでは。監査対象ではないので、会計士もスルーしているのかどうか。時価総額が大きいところは、規制対象になっているので、ヤバイ状況を理解して、撤退を意思決定している感じです。サステナ開示規制で撤退しますとは、対外的には言えないので、必死でステルス撤退を続けるしかないようです。ISSBも何を考えているのか、習近平閣下の了解をもらって制度導入したのかどうか。中国は、マジでヤバイ。

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