増税は観測気球の段階で撃墜して燃やし尽くすのが大事
JNNの調査では、内閣支持率は75.8%と相変わらず高水準ではあるものの、前月と比べると6.2ポイント低下しました。この要因が何なのかについて断言することは控えますが、可能性があるとしたら、最近の増税議論かもしれません。実際、高市早苗総理大臣は6日、自身のXで高校生扶養控除縮小について「決定事項ではない」と述べているなど、政権側もネット世論を気にしているフシがあるのです。
目次
JNN調査で75.8%=内閣支持率
高市早苗総理が就任したのは10月21日のことですが、それ以来、いくつかのメディアが実施する世論調査を見ていると、内閣支持率は高止まりしています。
こうしたなかで、JNNが週末に出してきた世論調査で、支持率が75.8%だったことが判明しました。
これも含めた直近の主要メディア世論調査結果を一覧にしておきましょう(図表)。
図表 内閣支持率(2025年11~12月)
| メディアと調査日 | 支持率(前回比) | 不支持率(前回比) |
| 朝日新聞(11/15~16) | 69.0%(+1.0) | 17.0%(▲2.0) |
| 共同通信(11/15~16) | 69.9%(+5.5) | 16.5%(▲6.7) |
| 時事通信(11/7~10) | 63.8% | 10.8% |
| 読売・NNN(11/21~23) | 72.0%(+1.0) | 17.0%(▲1.0) |
| 産経・FNN(11/22~23) | 75.2%(▲0.2) | 19.6%(+0.5) |
| 日経・テレ東(11/29~30) | 75.0%(+1.0) | 18.0%(▲1.0) |
| JNN(12/6~7) | 75.8%(▲6.2) | 20.7%(+6.4) |
(【出所】各社報道)
支持率はなぜ落ちたのか…考えられる可能性は「増税」?
JNNの前回調査(11月1日~2日実施)では、支持率は82.0%と、ここに挙げたリストの中では唯一80%を超えていたのですが、これが6.2ポイント下がったものの、やはり7割の大台を維持しているのが印象的です。
しかも、ここ最近は、先月7日の高市総理による「台湾発言」などを受け、中国が日本に対する非難のレトリックを強化しており、かつ、少なくない日本のメディア/(自称)知識人らも高市総理を舌鋒鋭く批判しているなかで、この支持率を維持しているというのは、なかなかに驚異的でもあります。
ただし、JNN調査における支持率の「絶対水準」自体は高いものの、支持率が6.2ポイント下がったという点については、少し考察しておく必要もあるかもしれません。
これについて、なぜ内閣支持率が(依然高い水準にあるとはいえ)低下したのかについて、その要因を断定することは控えたいと思います。
これに加えて普段から当ウェブサイトにて報告している通り、メディアが実施する世論調査は必ずしも全幅の信頼を置くことができるというものではありませんし、単月の支持率調査について支持率変動の意味を論じてどこまで意味があるのか、といった議論もあるでしょう。
ただ、それでもなぜ支持率が変動したのかに関する「可能性」を議論することくらいなら自由ですし、実際、それらについては、さまざまな要因が考えられるでしょう。
敢えて著者の主観で原因(の可能性)をひとつ挙げておくならば、増税の動きにあります。
高市総理「高校生扶養控除縮減決定の事実はない」
そのヒントとなるのでしょうか、高市総理が6日、自身のXにポストした、こんな内容が目につきます。
一部ネットニュースで、高校生扶養控除の縮減が決定したかのように報じられているそうです。…
— 高市早苗 (@takaichi_sanae) December 6, 2025
「一部ネットニュースで、高校生扶養控除の縮減が決定したかのように報じられているそうです。/子育て支援については、政府・与党として、『こども未来戦略』に基づいて児童手当の拡充などを推進しつつ、今回の経済対策・補正予算においても、物価高の影響を強く受ける子育て世帯にこども一人当たり2万円の給付を実施するなど、全力で取り組んでいます。/他方、来年度税制改正に向けては、与党の税制調査会において、一昨年に児童手当の拡充が決定されて以降の検討事項となっているため、『高校生扶養控除』に関する議論が行われています。/しかし、私が縮減に関する指示を出したということもありませんし、与党税制調査会で本件について決定した事実もありません。」
ふだんネットをあまり見ず、新聞、テレビなどを中心に情報を得ている人たちにとっては、「藪から棒に何を言い出すのか」、と思う向きもあるかもしれません。
観測気球が上がっていたことは事実
しかし、じつはネット上ではここ最近、自民党税調などから増税に関する観測気球のようなものが頻繁に上がっており、(あくまでも報道ベースですが)高市総理が述べた「高校生扶養控除縮小」だけでなく、増税に関する様々な話題が相次いでいるのです。
山手線の駅名を冠した怪しい自称会計士も自身のXでこれについて連続的に自民税調を批判するコメントをポストしていたりもします。
自民税調、やっぱり頭おかしい。
⚫︎年少扶養控除復活せず
⚫︎高校生扶養控除の縮小
⚫︎ふるさと納税上限設定
⚫︎賃上げ税制大企業除外
⚫︎教育贈与非課税の終了
⚫︎出国税を3千円に増税
⚫︎復興税を防衛税に流用
内閣支持率が高いからって調子乗るな。
自民税調、財務省とともに燃え上がれ。— 新宿会計士 (@shinjukuacc) December 5, 2025
自民税調、やっぱり頭おかしい。
⚫︎高校生扶養控除の縮小
⚫︎ふるさと納税上限設定
⚫︎賃上げ税制大企業除外
⚫︎教育贈与非課税の終了
…。
高市さん。
旧宏池会出身のあの税調会長を今すぐ更迭したら?— 新宿会計士 (@shinjukuacc) December 4, 2025
観測気球は上がった瞬間撃墜して燃やし尽くす
これについては、一部では「観測報道の段階で批判するのはおかしいじゃないか」、といった意見があることも承知していますが、これは適切な考え方ではありません。
ありとあらゆる増税に関する話題は、観測気球が上がった瞬間に撃墜しておくことが重要だからです。
じつは、高市総理が「高校生扶養控除」について言及したのも、こうしたネットで広まる増税への批判を強く意識しているという証拠ではないでしょうか。
そして、これは大変に良いことです。
ちなみに自民党の税調会長も本件について、なにやら意味不明の言い訳を出しています。
『高校生扶養控除』の見直しについて高市総理ツイートに補足を。税調会長の私としても総理の発言通り、本件に関しては党内そして与野党で議論中です。元々『高校生扶養控除』の見直しは、2年前に検討事項となって以来の案件であるため、来年度税制改正に向けても与野党の税制調査会において議論を継続… https://t.co/4iE7BW9H1D
— 小野寺 五典 (@itsunori510) December 7, 2025
山手線の駅名を冠した怪しげな自称会計士はこの人物からブロックされているため、X上ではメンションができません(かつて石破政権時代にこの人物の増税に関する発言を批判したことが彼の逆鱗に触れたからでしょうか?)が、当ウェブサイト上では遠慮なく引用させていただきたいと思う次第です。
いずれにせよ、増税に関しては、観測気球が上がった瞬間に撃墜し、合わせて燃やし尽くすことで、増税に関する議論自体を許さないことが重要です(場合によっては増税の議論を主導している政党と政治家をピンポイントで狙い撃ちにし、公選法が許す範囲において、落選運動を展開しても良いかもしれません)。
とりわけ自民党は石破茂・前首相があれだけネットで批判されるということを経験したわけですから、「議論自体は以前から決まっていた」、は言い訳になりません(少なくとも当ウェブサイトとしては、石破前首相と同じようなことを言い出せば、高市総理であろうがなんであろうが遠慮なく批判させていただくつもりです)。
そして、以前の『レジ袋有料化的な愚策はSNS時代にゴリ押し不可能に』などでも指摘したとおり、時代は大きく変化したわけですから、政治家もネット世論と無関係に有権者が望まない政策をゴリ押しすることができなくなりました。
日本は中国と違って「自由・民主主義国家」ですので、自由主義の原則に従い言論で、民主主義の原則に従い投票で、私たちひとりひとりがこの国をより良い方向に導いていくことが可能ですし、また、そのようにすべきであると改めて宣言したいと思う次第です。
本文は以上です。
金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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小野寺さんが税調会長ということが間違いではないでしょうか?他に人材いないのでしょうか。基本的に働いて、働いて、働いて経済成長して税収を稼ぐと言っている状況で、観測気球を打ち上げている場合ではないでしょう。インセンティブ増税とか、インセンティブ減税とか、自分の頭で考えて、新機軸を打ち出したらどうですか。これまでの頭悪すぎの税制を抜本的に変えるチャンスですよ。小野寺さん頑張ってください。
小野寺氏は、マクロ経済は欠片も理解していない人なので、期待するだけ徒労に終わるかと。
岸田派とのバランスと言うことだったが 実際は使えないやつという実態を晒すという深謀遠慮だったりして。
X見てても、この記事って本当に不思議に思ってました。
1.高市総理の指示の下、増税路線を検証している
2.高市総理の指示を無視して、自民税調が暴走している
3.何も決まっていないにも係わらず、財務省がリークして既成事実化しようとしている
一部では、岸田派(宏池会)が高市総理の命令を無視して暴走している、と言う噂もあるけど、小野寺氏ってそんな人かな、とも思ってしまいます。
私は、今回の補正予算のリークもそうでしたし、3じゃないかな、と思ってます。財務省の姑息なやり方。今回の高市総理のXの発言もよかったと思います。
いずれにしても、増税の目はすぐに潰していくことには大賛成です。
穿った見方ですが、
「増税か?減税か?」
という土俵に載せようとしていること自体がすでに煙に巻かれているような。
「何に使ってるから、そんなに足りない足りないと言ってるのか?」
が、攻め落とすべき本筋の本丸。
片山大臣が、これからはすべての予算折衝で費用対効果の説明を求める!
といってましたが、アレこそ、それ。
手品師が「右手を見ろ!」と騒いでる時は、左手でなにかを仕込もうとしてる時なのですな。
いつも楽しみに拝読しております。
時節柄「撃墜して燃やし尽くす」タイトルに思わずドキッとしてしまいました。増税の種ならどんどんレーダーでロックオンして躊躇なくミサイル発射ですね。もしかしたら小野寺氏に命中してしまうかもしれませんが・・・。