「保守野党」が埋没避けるには独自法案提出の活発化を

高市内閣に対する高い支持率は、高市総理に対する高い期待の裏返しであるとともに、岸破政権時代に左に寄り過ぎていた自民党が保守回帰しているためである―――。そうした仮説を裏付けるのが、国民民主党を含めた「保守3野党」に対する支持率動向であるといえるかもしれません。実際、保守野党は自民保守回帰で埋没を避けるために、国民民主党が年少扶養控除復活法案を、参政党が国旗損壊罪を、それぞれ単独提出していますが、こうした動きは歓迎すべきでしょう。

産経・FNNだと支持率4分の3超!

昨日の『高市内閣に対する高い支持率に「期待先行」の危うさも』では、いくつかのメディアが公表した内閣支持率調査を話題に取り上げました。同記事を公表したあとで、産経・FNNも調査結果を公表していたのを発見したので、これを追加した図表を再掲しておきます。

図表 内閣支持率(2025年10月)
メディアと調査日支持率(前回比)不支持率(前回比)
読売・NNN(10/21~22)71.0%18.0%
共同通信(10/21~22)64.4%23.2%
日経・テレ東(10/24~26)74.0%19.0%
朝日新聞(10/25~26)68.0%19.0%
産経・FNN(10/25~26)75.4%19.1%

(【出所】各社報道)

産経・FNNの調査だと、支持率は75.4%で、これは4分の3を超える人々が新内閣を支持している、ということです。

当ウェブサイトではほかにも、時事通信やいくつかのテレビ局の調査を紹介することがあるのですが、とりあえず高市早苗総理大臣に対する世論の評価という意味では、このあたりで十分でしょう。

メディアによる世論調査は多くの場合、電話(しかも数年前までは固定電話のみ)を使って行われており、ネットを使用していないため、全年代の意見をもれなく反映したものとは言い難い、といった問題点はあるのですが、それでもこれだけの結果が出たというのは、興味深いところです。

支持率先行に危うさもあるが…高市総理の能力に期待

しかも、『高市総理高支持率は若年層が牽引』でも指摘しましたが、高市内閣に対する高い支持率を牽引しているのは、基本的には若年層を中心とする現役世代です。

現在は若干期待先行という側面もあり、あるいは「ご祝儀」という面も強いと思われ、高市内閣で何らかの不祥事が生じたり、高市内閣の政策が人々の期待を裏切ったりしたら、高市総理に対する期待はすぐに剥がれ落ち、あっという間に低支持率に転落するという可能性はあるでしょう。

しかも、新聞、テレビを中心とするオールドメディアからの攻撃は激しさを増してくる可能性が高く、まさに「支持率下げてやる」式の報道がこれからさらに増えてくるならば、支持率が急落しかねない危うさを孕んでいる、という言い方もできるでしょう。

ただ、これについて、敢えて私見を述べておくと、高市総理という人物はそもそも記憶力の高さ、当意即妙的なキレの良さ、政策への理解力を含め、政治家としてのスペックが石破茂・前首相や岸田文雄・元首相らと桁違いです。

故・安倍晋三総理大臣、あるいは往時の麻生太郎総理大臣、菅義偉総理大臣らと比べても、実務能力の高さは際立っています(※もっとも、最近の菅総理はどうも体調がすぐれないようですが…)。

なにより、高市総理には一般国民が熱心な支持者となってくれる可能性があります。

ネットの発達に伴い、オールドメディアの影響力が急落しているという事情は、もはや無視できないからです。

とりわけ、高市氏が自民党総裁に選ばれて以降、オールドメディアの不祥事は相次いでおり(例の「支持率下げてやる」発言や著名司会者の「死んでしまえ」発言など)、オールドメディア自体が読者や視聴者らから反発を買うことが多いのです。

これに加えて自民党や政府がSNSやウェブサイトなどを活用し、歪みがない詳細な情報を国民に対し、直接発信し始めていることを踏まえると、オールドメディアは案外遠くない未来において、衰亡していく可能性が高いともいえます。

もちろん、新聞、テレビなどが「なくなってしまえば良い」という話ではありませんが、良い、悪いという話ではなく、社会全体の発展に伴ってオールドメディアが衰退していくことは間違いありません。

岸破政権は左派≒マスコミ層に偏り過ぎていた

そうなると、自民党やその他の政党も、オールドメディアの「報じ方」に合わせた政策を展開することがリスクであることを理解する必要があります。

これも著者自身の意見ですが、岸田元首相や石破前首相のころの自民党は左傾化・官僚化が酷く、とくに安倍総理の「アベノミクス」を根幹から否定するような政策が目立ったと考えています。

岸田元首相の「新しい資本主義」がその典型例ですが、それだけではありません。

石破前首相も参院選の公約として、1人あたり2万円のバラマキを掲げていましたし、あろうことか、住民税非課税世帯などにはこのバラマキの額を4万円に増やそうともしていました。ちなみに『住民税非課税世帯の8割は高齢者?再分配は正しいのか』でも指摘しましたが、非課税世帯の多くは高齢世帯です。

このように考えると、「岸破政権」は安倍総理や菅総理の時代のメイン支持層であったと考えられる保守層・勤労層ではなく、どちらかといえば高齢層や左派にかなり偏った政策を展開していたのではないか、という仮説が成り立つのです。

あるいは「高齢層」「左派」というよりも、「マスコミ層」とでも言えばよいでしょうか。

このように考察していくと、岸田元首相のころに実施された1人4万円の定額減税も、結局は「定率」ではなく「定額」に拘った財務官僚の抵抗を色濃く反映したものではないか、といった仮説も成り立ちますが、それだけではありません。

石破政権時代、国民民主党が求めた「年収の壁を103万円から178万円に引き上げること」を巡っても、当時の宮沢洋一税調会長(※岸田元首相の従兄)が握りつぶしたうえで新たな4枚の壁を設置したことを思い出しておくと、「岸破時代」の自民党は極端に左派に偏っていたのではないでしょうか。

国民民主党の支持率急落が意味するもの

さて、こうした観点で、改めて国民民主党に対する支持率調査に関するこんな記事を取り上げておきます。

国民民主と参政が失速…高市政権誕生で保守層離れたか 産経FNN世論調査

―――2025/10/27 20:43付 産経ニュースより

産経によると、同社とFNNの合同調査で国民民主党の政党支持率が前月比1.9ポイント減少し、4.6%へと失速したことを巡って、こんなことを述べているのです。

臨時国会での首相指名選挙を巡る協議で、玉木雄一郎代表が『首相を務める覚悟はある』と繰り返したが、野党統一候補が実現せず、支持離れが起きた可能性がある」。

玉木氏が首班指名選挙に先立って、野党共闘に際し、自身が「首相を務める覚悟がある」、などとXに投稿していたことは事実ですので、産経のこの記述もあながちピント外れではありません。

ただ、個人的には、国民民主党の支持率離れの原因は、それだけではないと考えています。

「岸破政権時代」の自民党がいささか左に偏り過ぎていて、だからこそ比較的中道・保守にあると見られていた国民民主党(や参政党、日本保守党など)が旧来の自民党支持層からの支持を集めて躍進した、という側面が強いのではないでしょうか。

それが高市総理の誕生により、「岸破幻滅層」(?)の一部が自民党に回帰するという動きにつながっているだけであり、こうした観点からは、自民党と「保守野党」との綱引きがこれから活発化する可能性が高い、という気がします。

念のため申し上げておくと、著者としては、国民民主党、参政党、日本保守党の3政党が必ずしも「保守政党」にふさわしいとは考えていませんが、ここではあくまでも「世論がこれら3政党をどう考えているか」という観点からの推察に基づく議論をしています。

埋没避けるために独自法案で存在感示すのは有用

ただ、この点は脇に置くとしても、こうした構図は非常に重要です。

実際、これら「保守野党」は高市総理の誕生により今後の立ち位置を考え直す必要があるからであり、実際、彼らにはそれぞれできることをやろうとするインセンティブも生じています。国民民主党が「年少扶養控除復活法案」を、参政党が「国旗損壊罪」創設法案を、それぞれ単独提出しているのはその典型例でしょう。

【法案提出】議員立法「年少扶養控除復活法案」を提出

―――2025.10.21付 国民民主党HPより

参政党単独での議員立法を初提出

―――2025.10.27付 参政党HPより

「保守野党」が保守層の期待に応える目的で、こうした独自法案を出すことは、彼ら自身が埋没することを回避するうえでは大変有益ですが、それだけではありません。国民生活に有益な法案が野党側から出てくれば、連立与党である自維両党としても、それらを無視することができなくなります。

このため、今後は高市自民と「保守野党」が切磋琢磨し、国民生活をより良くする法律を多数提出して頂きたいとも思いますし、実際にそのような構図が出来上がりつつあることもまた間違いないと思われます。

そして、保守政党同士でさまざまな争点をぶつけ合う構図のなか、新聞、テレビ(とくに左派メディア)の衰亡が今後加速していくと、左派政党もいっそう衰退していくことが期待されますし、あと数回の選挙で憲法改正も夢ではなくなるのではないか、などとも考える次第です。

いや、改憲まであと何回も選挙をやるだけの余裕は、現在の日本には残されていないのも事実ですが…。

本文は以上です。

金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない

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読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

    保守系野党が活動を活発化したら、リベラル系(?)野党は埋没するのでしょうか。そして、そうなったらオールドメディアは(野党であっても)保守系野党も(高市総理を合わせて)批判するのでしょうか。
    蛇足ですが、
    毎度、ばかばかしいお話を。
    高市総理:「今日、署名した日米合意が正しかったかどうかは、朝日新聞が批判するかどうかで分かる」
    ありそうだな。

  2. 引っ掛かったオタク より:

    まー議論が活発になるコトはヨイコトですが
    急騰した期待値も雰囲気との差が大きい程保温効かニャア冷めンのも早よおまっせ
    年末年始に国民に“実感”してもらうなら『ガソリン軽油暫定税率の廃止』が手っ取り早いンじゃけどの
    知らんけど

  3. Masuo より:

    本当にいい事です。どんどん公開して行って欲しい。

    「夫婦別姓」や「外国人参政権」の法案をコソコソと上げるような卑劣な野党になってはいけません。法案を通したいなら主義主張を堂々と公表して、多くの賛同を得て、多数派になればいいのです。くだらない揚げ足取りとヤジだけの野党にはうんざりです。

    国民民主党の件に関しては、やはり「いざと言うときに頼りにならない奴」は支持に値しないんじゃないかと思います。人間関係でも同じかな。わかってて割り切っていればいいと思うけど。
    私が国民民主党に幻想を抱いていただけで、所詮「民主党」だった、って言うだけでした。目が覚めた思いです。反省。

  4. Sky より:

    ビジョン。構想力。実務力。
    どちらも政治に限らずビジネスの場でも大事です。
    今回野党になった議員の皆様方は、そのどちらも優れた能力を持つと思われる高市内閣の一挙手一投足を特等席で見ることができる特権があるわけです。
    とくとワッチングして数年間自らを高める努力をしていただきたいものです。
    それにしても。小泉防衛大臣。
    失礼ながら「〇〇とハサミは使いよう」という格言を思い出してしまいました。
    この人の特徴を活かしたこういう人事の仕方があったとは。
    適材適所。感心しました。

  5. 匿名 より:

    アルフォートすら食べることができない。

  6. クリリン より:

    人気取り法案も構わないが、その前に参政党は国体維持の骨幹を揺るがす「女性天皇容認」や「在住外国人10%容認」を詫びて取り下げる事が先だな。

  7. 元雑用係 より:

    複数の世論調査で国民民主の支持率が下がってますが、参政も下がってるんで玉木氏のムーブの影響と言うより、高市政権発足による自民回帰なんでしょうね。
    内閣支持率の高さと比べて自民支持率の回復が今ひとつなのは、政党への不信が払拭されていないということなのでしょう。
    自民守旧派が高市政権の足を引っ張るようなことをすれば、選挙で勝てない自民党が続くかもですね。

    強固な組織がある公明党だからこそ20年以上も連立を組めたのだと思いますが、そうでない政党は連立すれば長く持たず吸収・霧散の運命ではないかと思います。党勢衰退だった維新に続く連立勢力はしばらく出てこないと思います。参議院の少数は6年続きますし、国民民主やそれ以外の政党にしても、実績を上げるボーナスタイムは当面続きますから前向きにやってほしいですね。
    自民党の安定多数がない多党制時代の新たな政治の形の模索。

  8. DEEPBLUE より:

    日本保守党は内ゲバしてるし、このまま埋没しそうですね。自民党内に昔の青嵐会みたいな人たちがいれば良いのですが

  9. 丸の内会計士 より:

    技術的な背景をベースに近未来を予測しますと、世論の賦存状況が可視化されるという世界になります。例えば、X上で発信される様々なコメントがその類似性により遠近で表現され、自分のコメントがどのような意見群のなかに存在するのかが俯瞰できるようになります。すなわち、オールドメディアを援護するようなコメントが少数であることが分かってしまいます。このような技術的な環境が政治にどう影響するのか分かりませんが、大勢側の立候補者が当選し、少数側は落選という結果になります。今後は、大勢側での競争になりますので、差別化された政策により同じ保守勢力側でも独自性を発揮して選挙でのポジションを獲得する必要がありそうです。保守系の少数政党は、積極的に情報発信すべきです。

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