SNSで高評価されたければ良い情報を投稿すれば良い
とある政党が「SNSボランティア」を募集しているようです。その政党、あるいはその政党の公認候補者のSNS投稿などを見て、「これ見ると比例はXX党一択かな」、「この議席、もっと必要でしょ」、「XX支持者じゃないけどこれは大事」、といった具合に「それぞれの感想を一言添えて発信をお願いします」、とあります。因果関係が逆転していると言わざるを得ません。SNSでは良いポストにたくさんの「いいね」がもらえるのであって、ポストに「いいね」をたくさんつけたらそれが浸透するわけではないからです。
目次
明日は参院選!
日本の将来を占ううえで極めて重要な選挙である第27回参議院議員通常選挙の投票日が明日に迫ってきました。
といっても、「おもな争点」や「各政党の獲得議席予想」などについてはいつものとおり、当ウェブサイトで示すことはしません。当ウェブサイトはあくまでも「評論サイト」であり、「政治活動サイト」ではないからです。
もちろん、著者自身も有権者のひとりですから、どの候補者・どの政党(あるいは政党の候補者)に投票するつもりであるかについては決めていますし、何もなければ明日、投票所に出かけてその通りに投票するつもりではあります。
というよりも、読者の皆様に対して普段から投票を呼び掛けている立場である以上、著者自身が棄権することはあり得ません。必ず投票するつもりですし、また、読者の皆様にも改めて、三連休の中日(なかび)ではありますが、是非とも投票所に足をお運びいただきたいと思います。
「良い候補がいない」「私が投票しても変わらない」は理由にならない
ただ、こんなことを述べると、過去にはこんな趣旨のコメントもいただいたことがあります。
「だって、素晴らしい候補者がいないんですもん。ゴミみたいな候補者しかいなかったら、棄権したり、白票を入れたりするのも立派な意思表示ですよ?」
こうしたコメントに騙される人もいるかもしれませんが、結論的にいえば間違っています。
詳しくは明日、説明する予定ですが、選挙とは「よりどりみどり、素晴らしい候補者のなかから理想の候補者を選ぶ手続」であるとは限りません。むしろ、「ゴミのような酷い候補者」がたくさん出ている選挙であれば、そのなかで「一番当選させたくないゴミを落選させる手続」だと考えた方が良いかもしれません。
これに加えて、ネット上でとあるユーザーがポストした画像の中に、繁華街で若い人がこんな趣旨の内容を述べている、というものもありました。
「僕が投票しなくても政治は勝手に動くじゃないですか」。
これも、正しくありません。「投票しなくても勝手に動く」のではなく、「投票していない有権者の意見は無視される」、が正しいといえます。
つまり、「良い候補がいない」、「私が投票しても変わらない」、は、あなたが選挙で投票をしない理由にはならないのです。
いずれにせよ、政治は他人事ではありません。
税制、社会保障制度はもちろん、さまざまな経済・金融・財政政策、私たちの国の安全を守る防衛力、外交やさまざまな制度に至るまで、私たちの生活は政治から密接に影響を受けます。これについて高い関心を持たなければならないのは、当たり前の話です。
当ウェブサイトとしては、棄権や白票を投じる行為を深く軽蔑したいと思いますし、また、良い社会人がそんな恥ずべきことをやらないことを強く勧奨したいと思う次第です。
投票率がほんの数ポイント上がるだけで、組織票には大きな打撃
ただ、これについては論より証拠といえます。
先日の『公式データで読む「都議選の得票と議席の意外な関係」』でも述べたとおり、選挙というものは投票率がほんの数ポイント上がっただけで結果に大きな影響が生じる(可能性が高い)からです。
日本のように成熟した国の場合、選挙というのは1回や2回で世の中が劇的に変化するというものではありませんが、それでも選挙を何度も繰り返して行けば、民意に沿った政党が生き延び、民意に背く政党は淘汰(とうた)されていきます。
とくにここ1~2年、社会のSNS化が急速に進んでおり(※著者の私見です)、従来型の「官僚発と思われる情報」(※著者の私見です)を垂れ流してきた新聞、テレビを中心とするオールドメディアの報道が急速に社会的影響力を失っています。
つまり、『参院選の隠れたテーマは官僚メディア抜きでの世論形成』でも指摘したとおり、今のわが国の国民世論は、徐々に官僚やオールドメディア抜きで形成され始めており(※もちろん、これも著者の私見です)、この状況で、参院選を2回、衆院選を1回経験すれば、国会の勢力もずいぶんと変わるでしょう。
世の中は少しずつしか良くならない
もちろん、それが「良い方向に」変わるという保証などありません。
過渡期にはおかしな政党が出現する可能性だってありますし、そうした政党が一時的に勢力を伸ばす可能性もあります。
ただ、仮に今回の選挙でAという政党が大躍進し、Zという政党が壊滅的に惨敗すれば、他党がAという政党の真似をし始めるかもしれません。そうなると、また次の選挙ではAに加えてAと考え方が似ているBという政党が躍進し、壊滅したZに主張が似ているYという政党もまた壊滅するかもしれません。
じつは、選挙を通じて世の中は少しずつしか良くならないのですが、それでも選挙を通じて世の中は少しずつであれ確実に良くなります。1回や2回の選挙で世の中は劇的には変わらないかもしれませんが、私たちは選挙に行かなければなりません。
自由民主主義国家は、言論と投票を通じてしか世の中は良くならないからです。
いずれにせよ、私たち有権者は、せっかくSNSを中心とするネットという媒体を手に入れたわけですから、これを最大限活用しない手はありません。
とある政党の「SNSボランティアのお願い」
こうしたなか、SNSという観点から興味深い話題がひとつあるとしたら、とある政党が発信した、こんな「お願い」です。
「選挙でXX党が躍進するために『SNSに強い党』になることが極めて大切です。『動画や政策メッセージなどのコンテンツを自分で作成して拡散』となると敷居が高いと思っている人でも、今からでもスマートフォンで簡単にできることがあります」。
要するに、ネットでその政党の政策などに関するコンテンツ(動画サイトやSNSなど)を見かけた場合は、そのコンテンツに高評価を付けたうえで、それぞれの感想をつけて拡散に協力してくれ、という依頼です。
調べてみると、同じ政党によるものとみられる、こんな趣旨の「お願い」画像もXにポストされています。
SNSボランティア
国会議員、候補者の姿や政策をSNSで発信。動画も「切り取り」大歓迎です。
投稿・ポスト例
- 「これ見ると比例はXX党一択かな」
- 「この議席、もっと必要でしょ」
- 「XX支持者じゃないけどこれは大事」
など、それぞれの感想を一言添えて発信をお願いします。
…。
因果関係が逆転していませんか?
なんというか、このあたりに同党が議席を減らしてきた原因が凝縮されているように見えるのは気のせいでしょうか。
そもそも「内容が良いポストにたくさんの『いいね』がつく」のあって、「SNSで『いいね』をつけてくれることを要求すれば『いいね』がたくさんつく」のではありません。
実際、その政党のXの投稿をいくつか確認してみると、たしかに「いいね」はたくさんついているようでしたが、そのわりにインプレッション(表示回数)が少なかったり、「いいね」とコメントやリポスト(RP)の数のバランスがおかしかったりしますので、Xではその政党の呼びかけが広く有権者に刺さっているフシはありません。
というよりも、「SNSで情報を発信して支持を集めよう」というアプローチ自体、因果関係が逆転しています。
『否応なく訪れる…SNSを制した者が選挙を制する時代』などを含め、当ウェブサイトではこれまで繰り返し指摘してきたとおり、SNS「を」使って情報発信することよりも、SNSを使って「何を」発信するかの方が重要だからです。
ここから先はあくまでも著者自身の想像ですが、あとから振り返って、今回の参院選は昨年秋の衆院選に続き、オールドメディアではなくSNSなどネット空間の言論が選挙に決定的な影響を及ぼし始めた選挙として記憶されるのではないでしょうか。
いや、今後の多くの選挙は、おそらくそうなるでしょう。
もちろん、SNS空間では外国政府などが「工作活動」を行っているのではないかと思しき証拠もありますし、明らかなフェイク、根拠のない誹謗中傷なども溢れかえっています。
ただ、これらに関しても、結局は私たち日本人が賢くなり、自分自身で情報を解釈する力を高めていくよりほかに方法はないでしょう。
いずれにせよ、繰り返しで恐縮ですが、有権者の方のなかで、まだ期日前投票などを済ませていない方は、是非、明日、投票所に足をお運びください。明日が忙しいという方は、本日中に期日前投票などを済ませてください。
心の底より改めてお願い申し上げる次第です。
本文は以上です。
金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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「SNSでは情報の流れが双方向なので、検証と淘汰が作用する。」
「だからSNSの方が、一方通行の垂れ流しメディアよりも結果的に信頼できる情報が多い。」
という状況認識ができてないから、マヌケなお願いをしてしまうのでしょうかね。
あるいは有権者を、判断能力が ないおバカさんだと見なしているのかな。
とりま、どこに投票しようが分母が大きくなると「政党要件2%」のハードルがジリジリ高くなるから、救国行動になることは間違いないでしょうね。
どことは言いませんが。
私は一昨日に期日前投票で国民の義務を果たしてきました。
今回は投票率がかなり高くなると、オールドメディアが情勢調査で語っていました。
話ズレますが、今回各社の情勢調査を纏めた一覧表がネットに飛び交うのを見て、選挙分析はオールドメディアに残された数少ない有力コンテンツなんだなーと思いました。違法性の疑いがあるのがアレですが。
情勢分析は選挙の答え合わせがあり、マスコミ内部でも当たれば○、外れれば×の評価となるようなので、誘導目的の誤報はないそうです。
選挙運動というと拡声器で候補者名をがなり立てますが、SNS戦術が拙い政党はSNSを拡声器の延長くらいにしか認識していないっぽいんですよね。
今話題のロシアのボットもSNSを拡声器化するための工作ですし、発想が同根なのかも。
有権者のニーズにあった発信をすれば自然と拡散するのでしょう。選択的夫婦別姓とか言ったって関心層は1%なんだから拡散するはずもなく、失言の釈明が釈明になってなきゃ拡散されない(この場合は炎上で拡散されるけど)。同じ言葉でも時と場所が変われば拡散されたりされなかったりの生モノ要素もあるし。要は双方向のコミュニケーション。
どの党も、献金やボランティアやってくれる支持者支援者と対話してニーズを認識して公約を掲げたりするでしょうが、それと同じだと思うんですけどね。
ごく少数の金持ちや人持ちを相手にしてる政党はSNSでは勝てないかも。
SNS選挙が浸透すると最大多数の最大幸福が実現しやすくなるかもですね。
「英語で話せる人」が必要な場面で「英語を話せる人」を探し回るような違和感。
>因果関係が逆転していませんか?
そうですね。「川下からのアプローチ」は不毛ですね。
景気が上向いたから、賃金が上がるんであって、その逆は無し
いいこと呟いたからいいね♡がつくんであって、その逆は無し
・・・・・
夢想:いいね♡の数で「わが党は左団扇だ!」
実態:いいね♡の数は「わが党の左内輪だ!」
・・。
いつも楽しみに拝読しております。
広く世間に良い理念やコンテンツを提供しようという意図はなく、結局意中の人たちだけで内輪受けの話題で盛り上がって何となくSNS対策をしているつもりになっているんでしょう。大手新聞社のWeb会員が増えないのと同じ状況に見えました。
ブログ主様のご指摘のように、今回の選挙はネット空間の言論が選挙に決定的な影響を及ぼすことになるのは間違えないと思います。この政党はその認識はありつつも、いつもの上意下達の独裁的なやり方変えられなかったようですね。組織票が多いこの政党や連立与党の政党が民意が大きく動く時にどうなるのか、選挙結果のもう一つの興味でもあります。
明日の参議院選挙の結果がどうなるか、その結果、政界がどうなるかは現段階では分かりませんが、8月1日からのトランプ大統領関税と合わせて、日本の政界に激震が走るのではないでしょうか。
今時こんな『お願い』したところで動員だろって晒されて終わりなのわからないんですかね。
他の党が同様のことしてたら絶対にあげつらって責め立てるタイプの人達のくせになぜこんなことができるんでしょうか。
自分を客観的に見られないゆえの行動か。はたまたわかってても地道にあきらめずに、という信念の下なのでしょうか。