「モノを持ちすぎる生活」も…いずれ整理整頓が必要に
大震災で倒壊した家屋から家族写真がヒラヒラと舞っているのを見て、「モノを持つことの儚(はかな)さに気づいた」という人もいる一方、大震災を機に家財置き場を提供してくれたご一家のご厚意に甘え切ってモノの処分を全然しなかった人たちもいるようだ―――。震災などの災害は余分なものを持たないことの大切さを意識するきっかけとなり得ますが、それだけではありません。実家を片付けたり、高齢で一戸建てを引き払ったりする場合にも、やはりモノの整理は大きな論点です。
目次
未曽有の大災害となった都市直下型の阪神淡路大震災
いまからちょうど30年前、1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災は、公式には死者6,432人(これには災害発生後相当期間を経て疾病等により亡くなった912人を含みます)、行方不明者3人、負傷者43,792人と、戦後最悪の被害を更新した大災害として知られます(注1)。
この記録は、19,272人が亡くなったとされる東日本大震災が2011年3月11日に発生するまで破られませんでした(注2)。
なお、ここでいう「被害者数」は、阪神・淡路に関しては内閣府防災サイト『阪神・淡路大震災の概要と被害状況』P5の2000年1月11日付集計値を、東日本に関しては環境省・2014年3月31日付『我が国における主な被害地震(明治以降)』P2を、それぞれ参照しています。
この阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)は、マグニチュード7.3、最大震度7というインパクトもさることながら、被災地に日本有数の港湾・工業地帯が含まれており、人口密集地帯を直撃することでさまざまな教訓が残りました。
とりわけ、幹線道路や高速道路、在来線・私鉄・新幹線、さらには都市型の地下鉄といった交通網が各所で寸断されたのに加え、上下水道・都市ガス・送電網といったライフラインも完全に麻痺するなかで、現代社会が都市直下型の災害にいかに弱いかを現代人は思い知らされた格好です。
村山政権にも問題があったが…「仕組み」の未整備
また、当時は社会党の村山富市委員長が首相として「自社さきがけ連立政権」を率いていましたが、その震災対応の稚拙さを巡っては、危機管理の専門家らからずいぶんと批判されています。
ただ、村山氏の肩を持つわけではないのですが、震災対応に関していえば、仮に当時の政権を担っていたのが村山氏ではなく自民党の首相だったとしても、同様に稚拙だったのではないかと思えてなりません。
これについては今から約10年前の産経ニュースのこんな記事が興味深いところです。
阪神大震災21年 教訓を緊急事態に生かせ
―――2016/01/17 05:02付 産経ニュースより
産経は記事で、村山氏が所属していた社会党が長年、自衛隊を憲法違反としてきたことから、震災での自衛隊出動を躊躇したのではないか、といった「うがった見方」もあるとしつつも、こう断じています。
「問題はこうした未曽有の緊急事態に即応する仕組みが整っていなかったことにある」。
すなわち、戦後、警察は都道府県警になり、消防は市町村単位となったことで、災害対策も第一義的に自治体が担うこととされているわけですが、現実に阪神淡路大震災の当日、故・貝原俊民・兵庫県知事(当時)も県庁への登庁に時間を要し、自衛隊への災害派遣要請が地震発生から4時間後となりました。
これも貝原氏が悪い、という話ではなく、単純に当時は緊急事態への対応の仕組みが不十分だったのです。
これに対し、2024年1月1日に発生した能登半島地震では、少なくとも岸田文雄首相(当時)や馳浩・石川県知事ら政府・自治体関係者の動きは迅速でしたが、これも過去に阪神淡路や東日本などの巨大地震の教訓が生きているためでしょう。
しかし、震災からの「復旧」は進んでも、多くの場合、「復興」にはかなりの時間を要します。
実際に神戸の場合も、(少なくとも著者自身が知る限りにおいては)華やかな都会の雰囲気をまとった震災前の活気を取り戻すことに苦慮していますし、「株式会社神戸市」などと都市経営の手腕が絶賛された時代に開発された北区・西区などを中心とするニュータウンなども、人口がジワリと減少傾向にあります。
正直、著者自身などは「神戸の姿は20年後の東京ではないか」、などと考えていたこともあるのですが、いずれにせよ、いちど活気を失った都市が活気を取り戻すのはなかなかに大変なようです。
モノを持たない生き方に目覚めた人、厚意にただ乗りした人
ただ、これも神戸や阪神間に暮らす著者自身の親戚や知り合いなどの事例で申し上げるならば、30年前の大震災を契機に多くの人が生き方を変えたフシがあることもまた事実です。
神戸市東灘区で被災したAさんという人物は震災の直後、近所を視察した際、倒壊した家屋から家族写真などがヒラヒラと舞っているのを見て、「モノを持つことの儚(はかな)さを感じた」と言います(※ちなみに幸いなことに、その家屋に暮らしていたご一家は全員ご無傷だったのだそうです)。
このAさんは震災前、洋服だ、珍しい食器だ、マンガ本だといったさまざまな「モノのコレクション」に囲まれて暮らしていたのですが、震災を機に身の回りのモノを見直し、所有物が多すぎることに気づき、使うもの・使わないものを選り分けて大胆に処分したそうです(今でいう「断捨離」でしょうか?)。
その一方、逆の事例もあります。
被災し、自宅が倒壊したBさん一家(※幸いながら全員ご無事でした)は、倒壊した自宅から、衣類だの食器だのといったさまざまなモノをサルベージ。知り合いでアパートを経営するCさん一家がご厚意でたまたま空室だったアパートの一室にそれらのモノを一時的に預かったのだそうです。
ただ、Bさん一家はそれで「安心」(?)してしまい、Cさん経営のアパートにこれらの家財を預けたままにしてしまったのだとか。
結局、Cさん一家にとっては、Bさん一家のモノで溢れかえっている部屋は他人に貸し出すこともできず、かといって被災したBさん一家から家賃を取るわけにも行かず、困ってしまったのだそうです(ちなみに著者自身もこのBさん一家には迷惑をかけられたことがあります)。
いずれにせよ、大震災のようなイベントが発生すると、人々は生き方を見直す良いきっかけとなるのかもしれません。
そういえば、著者自身も自戒を込めて申し上げるなら、自宅にもオフィスにも、まったく使っていないまま古びてしまった(けれどなんとなく捨てられない)文房具の山であったり、壊れたマウス、キーボードであったり、もうほとんど読まなくなった書籍・雑誌であったり、といったガラクタが積み上げられている一角があったりします。
改めて、これらについては頑張って片付けたいと思う次第です。
モノを片付ける大変さは実家じまいも同じ
さて、身の回りのモノを整理しなければならないというのは、じつは常に人生につきまとうテーマのひとつではないかと思います。
著者自身の場合はやはり地震などの大災害を機に「不要なモノを整理すること」の大切さを意識したのですがその後、「身の回りを片付けること」を強く意識したイベントが何度かあったことも事実です。
こうした観点から、ちょっと気になる記事を紹介しておきたいと思います。
80代70代の高齢親が引っ越し。「ものを減らしたはず」の新居にあったものに驚愕
―――2025/07/06 20:02付 Yahoo!ニュースより【ESSE-online配信】
配信した『エッセ・オンライン』は、「節約術、収納テクニック、プロの簡単レシピ、時短家事のコツなど、暮らしをワンランクアップさせるお役立ち情報」を配信するサイトだそうですが、リンク先記事もなかなかに興味深いものです。
記事末尾の執筆者名に「非ミニマリスト フネ」とありますが、このフネさん(50代で『エッセ・オンライン』のライターの方だそうです)が体験したご高齢のご両親の引っ越しについて、実際に行ったことや苦労したポイントをレポートする、という趣向です。
記事によるとフネさんのご両親はお父様が86歳、お母様が78歳で、これまで30年間暮らしていた郊外の一軒家を離れ、駅近マンションに引っ越したのだそうです。
記事のポイントは大きく4つあるのですが(①自宅の売却、②新居の購入、③クルマやピアノの処分、④モノを処分すること)、これらの詳細についてはリンク先で直接ご確認ください。それぞれのポイントが端的にわかりやすくまとめられています。
ただ、この記事のなかで特に触れておきたいのが、やはりモノの処分でしょう。
フネさんによると、自動車やグランドピアノといった大物については、名義変更や買取などで時間がかかるため、「早めに動くことが大切」。
その一方で深く同意せざるを得ないのが、「思い出の品」や衣類といった、「自分では多くもっていると気づかないものの処分」が「大変だった」という記述です。
子どもの学生時代の成績表だ、作品だといった思い出の品は子ども自身が引き取るのが筋ですが、着物を含めた衣類、さらには新居に移ったはずなのにウォークインクローゼットにズラリと並ぶ「とあるもの」(※なにが並んでいたかは記事で直接ご確認ください)。
記事を読んでいる側も、思わず苦笑してしまいます。
まずは身の回りから~自戒を込めて~
ただ、これもご両親の問題ではなく、単純に私たち人間が「モノを捨てられない」という存在なのだ、ということではないでしょうか。
ちなみにフネさんは記事で、「家の処分はとにかくやることが多い」ので「元気なうちに」、と指摘しているのですが、もっと言えば、人間だれしも永遠に生きるわけでなく、いずれ年を取るわけですから、普段から身の回りのモノを整理するのが大切ではないかと思います。
な~んて、著者自身も偉そうにご高説を垂れる立場にはありません。
まずはデスク周りを片付けないといけないというのは重々承知しているのですが…。
本文は以上です。
金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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モノは極力持たない方がいいですよ。棄てるのも複雑で金もかかり嫌になります。
ご主張、全く同意です、自分も親の介護で実家へ帰り、まずやったことは断捨離でした、とにかく捨てた売った譲ったでホントに4トントラック1台分以上は処分しました、
断捨離、最高!
しかし反面、ミニマリストなる珍妙な生き方には不自然さを感じたりもしますし。
何なのでしょうかね
最悪なのは首都直下地震で住めなくなったマンションの撤去費用と建替え費用。MAする時と同様に冷静に判断すべき。ノンリコースローンであれば問題ないのかもしれませんが、通常の住宅ローンでは危なすぎます。
老母の住んでいた実家の整理の記憶。
若くして実父が亡くなった当初より少なくとも5割は荷物が増えていた感じでした。
一軒家に独り暮らし→空虚感&TV視聴時間増大&遺族年金→TVショッピング&自分をお客様として扱ってくれるデパート買い物(マズローの承認要求)&心配性かつボケで同じものを複数買う→30年の蓄積で実父生存時より少なくとも5割は荷物が増える
という構図の様子。
ま〜服装関係や装飾品などの多さときたら。驚嘆しました。
実家の整理の期間は自治体が引き取り許容範囲と定める極限値の排出物を毎回毎回毎回毎回出して、それでも長期間掛かりました。
下手に痕跡を遺したくないので、下取り業者は利用しませんでした。
妙に頭が冴えて記憶が良い時があり、後で色々と文句言われましたが、そんなの知ったことかと。こっちの身体が壊れるのが先かという感じで兎に角大変でした。随分と老後の貯金や年金資金を浪費したのは事実。せめてもの救いは概ね国産品だったので日本のGDPに貢献していたのと、詐欺には遭遇しないで済んだことかと。にしても、あ〜勿体ない。