ネット時代ならではの新しいスタイル「ツッコミ視聴」
インターネット時代ならではの現象でしょうか、どうやら「ツッコミ視聴」という動画の視聴方法があるようです。これは、YouTubeなどの動画を視聴し、コメント欄でさまざまなツッコミを入れる、というものですが、これなど「誰でもクリエイターになれる」、「情報は双方向に流れる」というインターネットに合致した視聴方法であり、まさにインターネット時代を象徴する視聴方法ではないでしょうか。
目次
多様な面白さは情報発信の自由からもたらされる
新聞、テレビなどオールドメディアの社会的な影響力が低下して来るのと反比例して、インターネット―――ポータルサイト、ウェブ評論サイト、個人が運営するブログ、YouTubeなどの動画サイト、あるいはXなどのSNS―――の社会的影響力が高まっているのは、時代の流れといえるのかもしれません。
その理由についてはさまざまなものが考えられますが、敢えて雑な言い方をすれば、「多様でおもしろいから」ではないでしょうか。
こうした「多様なおもしろさ」の源泉は、おそらく、「情報発信の自由」にあります。
実際、インターネット上では誰もが気軽に「情報発信者」の立場になることができますし、情報発信をするチャネルについても自由に選ぶことができます。
文字を中心に情報発信するのが得意な人ならばXあたりが、ちょっとした長文を執筆し、投稿することが苦でない人であればブログサイト、フェイスブックなどが良いかもしれませんし、音声ならばポッドキャスト、映像ならばYouTubeやニコニコ動画、といった具合に、それこそ情報の発信手段は多様です。
それぞれのクリエイターが自身の得意分野に合わせて情報発信していけば良いのであって、こうした情報発信の手段を選択するところからそもそも自由、というのがネット空間の特徴でしょう。
ネット時代の特徴は「情報の双方向性」
そして、もうひとつの特徴は、情報の双方向性です。
新聞やテレビなどの場合だと、その新聞社、テレビ局が決めた情報しか流れませんし、ネットが出現する以前であれば、読者、視聴者がそれらに反論するのも、極めて難しいのが実情でした。新聞社は自社に対する批判を自紙に掲載しない自由がありましたし、テレビ局も自社に対する批判を放送しない自由があったからです。
これに対しネット空間の場合だと、クリエイターが発信した情報をそのまま無批判に受け取らねばならない、という義務はありません。
たとえばYouTubeやニコニコ動画だと、動画の「グッド」ボタンなどで動画を評価することができますし、コメント欄でその動画を褒めたりけなしたりすることも自由です(※ただし、YouTubeの場合、クリエイター自身がコメントを削除したり、コメント機能や評価機能をオフにしたりすることもできますが)。
また、Xも同様で、ひとつひとつのポストには返信欄が設けられているほか、リポスト、引用リポストなどの機能もあるため、あるポストが他のユーザーからの賛同をほとんど得られずに批判一色になることもよくあります(これがいわゆる「炎上」状態です)。
そういえば、余談ですが、一部の野党関係者などは気に入らないユーザーを片っ端からブロックしたり、Xのコメント返信機能を制限したりしているようですが、こうした者たちはネット社会のこわさというものを理解していないとしか考えられません。
度を越えた誹謗中傷・罵詈雑言などは削除、通報、ブロックなどの対応も仕方がない話ですが、通常の批判などに対しても完全にシャットアウトすると、そのことは却ってご自身のためにならないという気がしてなりません(まぁ、どうでも良い話かもしれませんが…)。
オールドメディアに別れを告げてQOLを高めよう
こうした余談はともかくとして、オールドメディアの社会的影響力の低下とネットの社会的影響力の著しい向上は、表裏一体の関係にあることは間違いありません。
かくいう著者自身も(かなり以前から公言してきた通り)「テレビのない暮らし」がずいぶんと長く(かれこれ四半世紀ほどでしょうか)、職場にも自宅にも、もう長いことテレビを設置していません。また、新聞の購読を取り止めてから、20年近くが経過します。
実際のところ、これで困ることは、ほとんどありません。インターネットがあれば日々必要となる情報が問題なく入手できるからです。
むしろテレビの低俗で低レベルな情報、新聞の誤りだらけで歪んだ情報が入ってこないことにより、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)が飛躍的に上昇することを踏まえると、「脱・オールドメディア」生活は皆様にも強くお勧めしたいと思います。
「狭い部屋でおカネが貯まらない独身男性」
さて、それはともかくとして、オールドメディアと比較した際のインターネット空間の良いところは、少なくとも①多様な情報が入手できること、②情報が双方向であること、の2点を挙げておきたいと思います。
こうしたなかで、本稿でひとつ紹介しておきたいのが、インターネット時代ならではの「ツッコミ視聴」テクニックです。
ひとつ題材に取り上げたいのが、とある「狭い部屋で暮らすおカネが貯まらない男性」がYouTubeに投稿しているシリーズです(調べていただければヒットする可能性はありますが、あえてそのチャンネル名については敢えて触れません)。
なぜ、おカネが貯まらないのか。
これについて、動画でこの人がそのような生活を送るに至った理由、現在の仕事内容などが開示されているわけではないため、なかば想像ですが、おそらくは「それなりの理由」があるからだと思われます。
この男性、そもそも給与水準が非常に低く、これこそが狭い部屋で暮らしている理由のひとつですが、それだけではありません。突発的なカネづかいにあります。
たとえば、とある回の動画で一日中働いているのに月給が額面で20万円だ、などとする描写があったのですが(「一日中働いていて月給20万円」という時点で最低賃金を下回っているようにも見えますが…)、そのような収入水準であるにも関わらず、「友人に誘われて飲みに行く」などのパターンが大変に多いのです。
もちろん、友人と飲みに行くのも、人生の中では大切でしょう。しかし、ご自身の最低水準の生活が成り立っていないのに、優先順序を間違えるのはいかがなものでしょうか。
しかも、この動画の主はとある目標があって現在おカネを貯めているとの描写もあるのですが、そのわりにパチンコに行ったり、コンビニを頻繁に利用していたりするようなので、正直、おカネが貯まらないのは当然と言えば当然でもあります。
「ツッコミ視聴」という新たな視聴方法
ただ、この動画を見るポイントは、おそらく、そこではありません。
「ツッコミ視聴」の醍醐味は、視聴者コメント欄を眺めながら視聴することにあります。
「友達に誘われて旅行に行き全財産を使った」とする趣旨の動画が出て以降、視聴者コメント欄には応援するコメントに加えて、アドバイスするもの、あるいは非常に厳しいものが目立つようになりました。たとえばこんな具合です。
- おカネを使って残った額を貯金するのではなく、その目標を設定して必要なおカネを逆算し、毎月の給料を積み立てる方が良いのではないか
- そもそも一般的な社会人だったら誘われたらすぐに飲みに行ったり、旅行に行ったりしないと思います
- 予算を立てて剰余金が出ているならまだわかるが、生活もカツカツなのに、その毎月の生活費から交際費を捻出することがおかしい
…。
なかには「コンビニ主体の生活ではなく、スーパーやドラッグストアなどで値段が安いものを買う、コメは家で炊いておかずだけ買う、飲み物はボトルに入れて持参するなどすれば、もう少し生活に余裕が出るのでは?」、といったアドバイスを書いている人もいます。
なんだか、コメントを読んでいる方が遥かに勉強になりますね。
次第に拡大するネット層
いずれにせよ、インターネット時代というのは面白いもので、自分から情報を積極的に取りに行くことと、取りに言った情報が信頼に値するものであるかどうかを自分で判断することが求められます。
ただ、それもさほど難しいことではありません。私たち情報の受け手側に、一般人としての常識があれば、こうした判断は比較的容易ではないでしょうか。
そして、社会のインターネット化が進むなかで、こうした「ツッコミ視聴」のテクニックを一般人が磨くようになると、次に発生するのはおそらく、今よりももっと大規模なテレビ離れ・新聞離れです。
現代社会にはおそらく、「オールドメディア層」と「ネット層」の分断が存在しており、少し前までその境界線は60歳前後ったと思われますが、これが現在、どんどんと上がっており、(著者自身の現時点の感覚ですが)おそらく70歳前後がそのボーダーラインです。
著者自身がそう思うのは、実際、著者自身が業務で密接にかかわる相手、あるいはたまにランチを同席する相手などを見ていても、比較的高齢の方を中心にスマートフォンなどを通じてネットに嵌る人が増えているからですが、これもあながち主観とは限りません。
総務省『情報通信白書』のレポートにほぼ毎年掲載されている年代別のメディア利用時間などを見ても、若年層に偏っていたネット利用が近年、徐々に高齢層にも広がっていることがわかるからです。
図表1 年代別メディア利用時間(平日、2013年)
図表2 年代別メディア利用時間(平日、2023年)
(【出所】図表1、図表2ともに過年度の総務省『情報通信白書』を参考に作成)
先ほど挙げた「おカネがない人の動画」に関しても、もし地上波テレビが似たような内容を放送したら、視聴者としてはこれに対するツッコミが出来なくてイライラするのではないでしょうか。
だからこそ、人々は地上波テレビから離れてYouTubeなどの動画サイトを好むようになっているのかもしれませんし、実際、地上波テレビ(※とくに在京民放各局)などもYouTubeにチャンネルを開設せざるを得ない状況に追い込まれているのだと思うのです。
いずれにせよ、「ツッコミ視聴」は「誰でもクリエイターになれる」、「情報は双方向に流れる」というインターネットに合致した視聴方法であり、まさにインターネット時代を象徴する視聴方法ではないか、などと思う次第です。
本文は以上です。
金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
読者コメント欄はこのあとに続きます(コメントに当たって著名人等を呼び捨てにするなどのものは禁止します)。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。
読者コメント一覧
※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。
やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。
※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。
※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。
当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。また、著名人などを呼び捨てにするなどのコメントも控えてください。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。
DEEPBLUE へ返信する コメントをキャンセル
【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
| 自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
![]() | 日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |






ツッコミ視聴が一般化した場合、テレビ局も、この視聴に対応する方法を考えざるを得ないのでしょうか。もちろん、それが上手くいくかは別問題です。
TV をまだ見ているひとだって、実際にはスマホをいじりながら、ときどき TV 画面をチラ見視聴している。
出来が悪く白けるドラマ、出鱈目ドキュメンタリー番組なんかは、番組が終了しないうちにチャットでこき下ろされてしまっている。客足が遠のいて儲からないビジネスのことは、お客が一番よく知っているのです。
本文ご指摘の通り、ネットの方が今までになかった楽しみ方や「誰でも双方向に即時に」という点で優れるのは明白ですが、古いコンテンツへのアクセスにおいてすらも優っています。
私が10代の頃などは、音楽でも映像作品でも、常にTV様の「これを最新のトレンドとする。皆揃って有り難く視聴せよ。」との御託宣に従い、意味のあるのかないのかわからんランキングに一喜一憂し、持て囃された名曲とやらも1ヶ月もすればもう古くてダサイに早変わり、もう次の御託宣による新曲を聞き始めるという、文化とは一体……という「流行」を追っていました。稀に背信に走っても、足でCDを探し回ったり。
今の10代……はまだ何かと自由にできないからまだしもですが、知人の20代なんかは全くそのような影響を受けておらず。様々なコンテンツから知った様々な音楽や映画などを基本無料で漁り、御託宣ではなく自らの感性に従って楽しんでいるようです。或いは親や上司の影響やらで浜田省吾とか渡辺美里とかレッドツェッペリンとか聴いてたり。勿論、どれもTVから降ってくるのを座して待つなどという無意味なことはせず、サブスクでちょちょいのちょい(死語)です。更にはその先の”共有”方法も充実と、時代が変わったとしか言いようがありませんね。
この状況でも「再放送は儲からないし……」などと嘆くだけで打つ手なしという哀しさ。聖夜に「コマンドー」の同時視聴で盛り上がる(ツッコミ視聴に近い)という謎文化を築く配信者も居るというのに。オールドメディアがコンテンツを活かしきれなくなってきたとも言えるか。
以前、関口宏が司会をしていたころのサンデーモーニングを相手に、上念司氏がお笑い風味の実況をしてかなりのスパチャと視聴者数を稼いでいました
左界最凶シニアリーグ・サイテーモーニングと題して、放送法違反な嘘や難癖に支離滅裂な政府批判、恣意的なVTRを偏向発言ゴール・Vゴールと称して発言者にサッカー形式で得点を宣告したり、暴挙が過ぎた場合にカードを出したり、へっぴり腰な政府支持コメントにオウンゴールを宣告します
個人的ハイライトは、ロシアによるウクライナ侵略開始直後に、青木理がロシア兵によるウクライナ民間人の生命財産に対する乱暴狼藉を無理やり虚偽プロパガンダの三光作戦と旧日本軍にこじつけ鮮やかな変わり身投げで日本批判を仕掛けたのに対し、上念審判が大技炸裂を称え3ポイントシュートを宣告した時です
他のコメンテーターが政府対応を消極的支持するオウンゴールを量産している最中だったので、左翼毒電波お笑い芸人の超一流と一流の差が出たなと思いました
それでなくとも、ドラマで工事現場の類が出てきたときに新品で汚れ一つないパリッとした作業着は白けます コスプレにしか見えなくて
2023年に60台の人が録画と合わせて1日に4.5時間もテレビを見るものだろうか。
4.5時間といえば仕事から帰宅して就寝までずーとテレビ見てるような状態だと思うが、にわかには信じられない。
私はラジオを持っていないがNHKのラジオ英語番組をストリーミングで聴いている。これはどっちにカウントされているのか。
テレビ見ない人は以下のようなコメントが頻繁に表れるのしらないでしょ。
「番組で紹介した銘柄は推奨ではありません。投資は自己責任でお願いします」
微妙なドラマやアニメに実況でツッコミを入れながら視聴するというのは、既に21世紀初頭にはありましたね。素面だと見る気がしないけどライブだと見られる。