ランチ代補助金より税社保下げよ
「40年間据え置かれてきたランチ代の補助を増やす」。会社が役員や使用人に対し支給した食事代については、月額3,500円までであれば給与として課税されないという制度がありますが、この上限を増やすという動きが出てきました。辞任した江藤農相の後継者として取りざたされている小泉進次郎氏が任意団体に対し層約束したそうです。ただ、日本社会の問題は「ランチ代」ではありません。
どうして手取りが増えないのか
この人手不足の折、企業経営者としては従業員をつなぎとめるために、さまざまな対策に腐心をしていると考えられます。
わかりやすいのは人件費を上げることですが、これには限界があります。税・社保が高すぎるからです(図表1)。
図表1-1 人件費400万円の場合の手取り
図表1-2 人件費800万円の場合の手取り
たとえば普段から当ウェブサイトで説明している通り、現在の日本の税・社保制度だと、企業が人件費を400万円支払っていたとしても本人の手元に残る金額はその3分の2の270万円、人件費が倍の800万円だった場合は、従業員の手元に残る額は517万円に過ぎません。
つまり、(その人の年収にもよりますが)企業が支払った人件費の3分の1、酷いケースだと4割前後が税、社保などとして召し上げられられてしまうのです。
人件費を100万円増やしても…税社保にゴッソリ持って行かれる
このとき、企業がこの人に対する人件費を100万円増額したらどうなるでしょうか。
結論からいえば、残念ながら、本人の手取りは100万円増えるわけではありません(図表2)。
図表2-1 企業が人件費を400万円から500万円に増やした場合
図表2-2 企業が人件費を800万円から900万円に増やした場合
(【試算の前提】図表1と同じ)
概算ですが、人件費が400万円から500万円へと増えたとしても、本人の手取りが増えるのは約65万円に過ぎず、残りは社保(会社負担分と本人負担分あわせて約27万円)、所得税・復興税・住民税・森林税など(約8万円)に消えます。
人件費が800万円から900万円に増えた場合はもっと酷く、本人の手取り増に廻る部分は53万円と半額少々に過ぎず、社保の負担増(これは年収400→500万円の場合とほぼ同額)に加えて、税負担が大きく増えることが影響しています。
いずれにせよ、政府が「賃上げ」という企業努力に「タダノリ」しているなかで、企業や従業員が頑張って生産性をあげ、人件費や年収の原資を確保しても、政府が脇からすべてゴッソリかっさらっていってしまう、というわけです。
食事代補助は3,500円を超えると給与扱い
そうなると、企業経営者としては、賃金・給与以外のかたちで従業員をつなぎとめる方策を考える必要が出てきます。
これらには借上社宅制度や賞与のべスティング制度など、いくつかの方法がありますが(※「賞与のべスティング」は賞与の一部を支払わず、一定期間経過後に確定した権利を退職時に支給するなどの制度です)、もうひとつ知られているものが、食事代の補助です。
ただ、この食事代補助も、やり過ぎると税務当局が「それ、給与でしょ?」とツッコミを入れてくる可能性があります。
国税庁『タックスアンサー』の第2594番の『食事を支給したとき』によると、従業員らに対する食事の支給は、次の2つの条件を満たさないと、給与として課税されてしまうのだそうです。
- ①役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること
- ②食事の価額から役員・使用人が負担している金額を引いた額が月3,500円以下であること
…。
なかなかに、厳しい要件です。
ランチ代補助の拡充を約束=小泉氏
しかもこの非課税額、40年間も3,500円で据え置かれていたのだそうですが、これについてちょっとした動きが出てきたようです。動いたのは自民党の小泉進次郎・前選対委員長です。
「40年間放置は政治に責任。必ず動く」 自民・小泉進次郎氏がランチ代補助の拡充約束
―――2025/05/21 07:00付 Yahoo!ニュースより【産経ニュース配信】
産経ニュースなどによると、党内の「物価上昇に合わせた公的制度の点検・見直しプロジェクトチーム」の座長を務める小泉氏は20日、全国で食事補助を提供する中小企業や外食提供会社など約1100社・者でつくる任意団体「食事補助上限枠緩和を促進する会」からの要望に対し、こう述べたそうです。
「必ず(6月に政府が示す経済財政運営指針の)骨太の方針や予算に反映させ、ピンポイントで必ず実現に向けて動く。前進させる」。
余談ですが、小泉氏といえば、「失言」が問題視され、21日に石破茂首相に辞表を提出し、受理された江藤拓・農林水産大臣の公認として起用される方針が固まった、などと報じられている渦中の人物でもあります。
正直、この食事代補助が40年間、月額3,500円で据え置かれているというのも驚きですが、個人的には議論が「ランチ代」に矮小化されるのを危惧しています。当ウェブサイトではもう何度も指摘していますが、現在の日本は税、社保が高すぎ、人々の可処分所得が圧迫されているからです。
これは端的にいえば、財務省を筆頭とする官僚機構の増税原理主義の暴走に加え、政治が責任をもってそれらを抑制してこなかったことのツケではないでしょうか。
ちなみに江藤氏は「おコメは買ったことがない」「支援者からもらっている」などとする失言が辞任の原因だと伝えられていますが、その程度の失言で辞任しなければならないのだとしたら、「日本の財政状況はギリシャよりもよろしくない」などと発言した者は、なおさら辞任しなければならない気がしますが、いかがでしょうか。
本文は以上です。
金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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国民民主党の手取りを増やすand労働供給を増やす政策をまるパクリして欲しいです。昼飯の補助とかやっている場合ではないのでは。
>40年間据え置かれてきた
……所得税の壁は据え置かれてても問題視しなかったの?
ガソリン暫定税率、コメの小売価格なんかも同じくらいの期間放置で、今になって歪みが弾けそうです。あとね……
日 本 国 憲 法 は 7 8 年 間 も 据 え 置 き さ れ て ま す よ。
あと、ランチ補助の”財源”どこよ。無いんだろ?財源不足論だの何年据え置き論だの、自民党もすっかりブーメラン使いになり下がりましたね。
朝、昼と勤労意欲が無くなる寄稿、ありがとうございます。m(_ _)m
♪帰りたーーくなったたよーーー♪
>「必ず(6月に政府が示す経済財政運営指針の)骨太の方針や予算に反映させ、ピンポイントで必ず実現に向けて動く。前進させる」。
キリッ!
って感じですかね。(笑)
あれもだめ、これもだめ、と財務省様がつくる壁にピンホールのようなスキマを見つけた、なんてところでしょうか。
財務省の掌の中で、是非政治生命を賭けて実現してください。ショボいですけど。
オレたちの進次郎。期待を裏切りませんね。
あーコーヤッテ細々項目並べとくコトで「アレ緩和した」「コレ譲った」述べてさもカードいっぱいキッタやんけ空気を演出したいんやろけど、“忖度メディア”が相対的に弱体化しよるさかいなァ
このままメタ正義観氾延進んだら逆効果にしかならんでしかし
もーショーモナイ細目廃して基礎控除だけドカンと最低賃金だけを上げてきたラインまで引き上げ~ヨ
今夏参院選前に野党案丸パクりで『基礎控除上げ』と『消費税減税』ブチかましたら選挙もワンチャン有るかもしれんで
知らんけど
そもそもですが、私の職場には食事補助なるものがありません。食事補助の上限を上げても裨益一部の人しか裨益しないのではないでしょうか。食事補助って一般的なんでしょうか。
買い物袋の次は従業員への食事補助ですか。178万円や米価の暴騰が大きな課題になっている時に。
3500円が5000円にでもなれば、鬼の首でも取ったようなドヤ顔になるのが目に浮かびます。
石破内閣ってこんなんばっかりですね。
よくもまあ、こんな重箱というか弁当箱の隅の減税ネタを見つけてきたものですな。
新聞記事中の「食事補助上限枠緩和を促進する会」も、急に注目されては困惑しているかも….
はるちゃん様への直接の返信ではありませんでした。失礼いたしました….
>江藤氏は「おコメは買ったことがない」「支援者からもらっている」…
いいなぁ〜
5キロ¥4,890の棚に残ったわずかな米袋を横目に、今日も割引シールの貼られた商品を求めてスーパー内を駆け巡る
「食事補助上限枠緩和を促進する会」も国家に巣食う公金チュウチュウ族の一変種。
大多数の国民はこんなものを求めていない。
それよりも頭のおかしい宮澤某ほかが推し進めた
頓珍漢な基礎控除を改めるのが先。
投票の際に考えたいこと
① その候補者が石破君のように平然とウソをついているか
② 票集めのためだけに風呂敷広げて見せてるのか
③ 公約を実現する能力があるのか
④ 党内力学で公約がつぶされないのか
⑤ その党の国会内勢力で公約を政治に反映できるのか