「参院選後の改悪」確実?見透かされる稚拙な石破首相
現在の日本では、ただでさえ社保や税の負担が重すぎるうえに、厚年や健保は保険料が高い人ほど保障が薄いという、なかなかに狂った制度です。しかも、厚年については上限が引き上げられるとともに、国年の保障水準を引き上げるのに厚年の資金が流用される、といった厚年加入者を舐めた構想も出てきています。おそらく画策しているのは厚労官僚と財務官僚あたりだえろうと思われますが、これに対する石破政権の対応が、なかなかに稚拙です。参院選後に間違いなく制度改悪を行うと有権者に見透かされているからです。
目次
現役層に重過ぎる社保負担
昨日の『社会保険料の雇用主負担の金額は「形を変えた人件費」』でもお伝えしたとおり、現在の日本は「三公七民」、いや、下手をすると「四公六民」、「五公五民」という重税国家になり果てているフシがあります。
その中核を占めているのが、社会保険料や所得税、住民税、消費税、法人税といった税金の「取り過ぎ」問題でしょう。
ことに、一般会計ではほぼ毎年のように巨額の剰余金を計上しており、しかもほぼ毎年のように過去最高税収記録を更新し続けています(『財源論者に不都合な事実…来年度税収見通しは過去最高』等参照)。
この事実をもってしても、今すぐ減税(というよりも税の適正化)が必要ですが、それだけではありません。
社会保険料のうち、とくに大きな負担を国民、とりわけ現役層に強いている厚年保険料や健康保険料については、本人負担分がそれぞれ9.15%、4.99%(※東京都政管健保の場合。なお、今年3月以降は料率がこれより少し下がります)、あわせて14%前後にも達しているのです。
社保雇用主負担で読む重税社会
そして、さらに厄介な問題が、社保の雇用主負担というものです。
これは、社会保険料のうち、厚年と健保、介護保険については従業員負担分と同額を雇用主(会社など)が負担しており、これとは別に「子ども・子育て拠出金」なる項目についても、強制的に徴収されている、というものです(令和7年3月分以降に関しては、標準報酬月額の0.36%だそうです)
また、雇用保険については従業員が0.6%ですが、雇用主は0.95%を負担させられており、合計すると、従業員の本人負担分よりも多い金額を雇用主は負担させられているわけです。
たとえば年収300万円・ボーナスなしの会社従業員は、月給が25万円であるはずですが、現実に給料日に振り込まれる金額は25万円ではなく196,175円です。53,825円も差っ引かれていますが(内訳は社保が38,850円、諸税が14,284円)、それだけではありません。
会社はこの人を雇うために、「法定福利費」名目で給料25万円に加えて社保40,500円、合計290,500円を負担させられているため、この人の「実質人件費」は250,000円ではなく290,500円と見るべきです。
また、実質的な天引き額も53,825円ではなく、これに社保会社負担分40,500円を合わせた94,325円と見るべきなのです。
つまり、本人負担分、雇用主負担分と合わせた社保、それに所得税などの諸税を合計すると、この人は毎月94,325円を国や自治体、保険組合などに取られている計算であり、実質的な負担率は「月給25万円に対する53,825円」ではなく、「実質人件費290,500円に対する94,325円」です。
まさかの「三公七民」「四公六民」
- 月給25万円の人は53,134円を天引きされ、196,866円が振り込まれる。
- しかし会社はこれと別に社保を40,500円支払っている。
- →このため、この人の実質月給は290,500円で、実質天引き額は93,634円(実質負担率は32.23%)
ちなみにこのようにして求めた「実質負担率」は、月給20万円の人であっても31.71%であり、月給130万円だと負担率が40.04%で4割を突破してしまいます。江戸時代もびっくりの、まさかの「四公六民」です。
【※試算の前提】
①被用者は40歳以上で東京都内に居住し、東京都内の企業に勤務
②給与所得以外に課税される所得はなく、月給は年収を単純に12で割った額でボーナスはないものとする
③配偶者控除、扶養控除、ふるさと納税、生命保険料控除、配当控除、住宅ローン控除などは一切勘案しない
④年収が約106万円以上である場合、厚年、健保、介護保険に加入するものとし、その場合は東京都内の政管健保の令和6年3月分以降の料率を使用するものとする(※ただし計算の都合上、「標準報酬」を使用していないため、端数処理などで現実の数値と合致しない可能性がある)
⑤雇用保険の料率は1000分の6とし、便宜上、少しでも収入が発生したら自動的に雇用保険料が発生するものとする
⑥「社保本人負担分」とは厚年、健保、介護保険、雇用保険の従業員負担分合計、「諸税」とは所得税、復興税、住民税の合計とし、住民税の均等割は5,000円(森林税含む)、住民税の所得割は10%とする
⑦「社保雇用主負担分」とは厚年、健保、介護保険、雇用保険の雇用主負担分と「子ども・子育て拠出金」の合計とする
⑧本来、住民税の所得割は前年の確定所得に基づき翌年6月以降に課税されるが、本稿では当年の所得に完全に連動するものとし、かつ、年初から課税されているものと仮定
社保は保険の体をなしていない
ところで、「社保は自分が病気になったり老齢になったりしたときに保障してもらうための仕組みだから、税金じゃなくて保険だ」、などと称する人がいることも事実ですが、これは正しい理解ではありません。
そもそも論として、厚年は現在の現役層にとって、現役時代に支払った保険料に対する老齢時に受け取れる金額が少なすぎるという問題点を抱えていますし、健保も高い保険料を負担させられている人ほど、いざ病気になったときの保障が薄い、という問題点を抱えているからです。
たとえば、年間の厚年保険料を「年収×18.30%」と仮定し、それを43年間払い続けるとすれば、「生涯保険料」を出すことができます(18.30%は厚年保険料の自己負担分と雇用主負担分の合計)。。
ここで、年収100万円の人の生涯保険料は787万円であり、厚労省の『公的年金シミュレーター』で試算した66歳以降の年間見込受給額は117万円ですので、この人は年金受給開始時点から6.73年生きれば、支払った生涯保険料以上の年金をもらえるという計算です。
しかし、年収990万円の人の場合、生涯保険料は7790万円(!)と計算され、仮に6.73年で元を取ろうと思えば毎年1158万円の年金が支給されなければおかしいはずですが、厚労省の『公的年金シミュレーター』で試算すると、もらえるのはたった297万円。
これだと、支払った生涯保険料を取り返すのに26.23年(!)という歳月がかかる計算であり、また、これに期待運用利回りや割引キャッシュ・フローなどの論点を考慮すれば、まったくもって割に合わない投資であると断じざるを得ないでしょう。
いわば、国家による高所得者に対する搾取そのものです。
石破政権が年金法案提出に難航
さて、こうしたなかで、厚生年金の資金を国民年金に流用したり(これにより厚年加入者の年金額が減らされる可能性がある)、厚年の最高料率を引き上げたりする、といった具合に、現役層にさらなる負担を強いる制度改悪が、厚労省、財務省により画策されているようです。
ただ、これらの一部に関しては、自民党が年金法案を巡り、「期限となる14日までの提出」は困難として、夏の参院選後への先送り論も出てきたと産経が報じています。
「国民の理解得られず」自民、年金法案期限内提出は困難と野党に伝達 首相の求心力低下も
―――2025/03/11 18:53付 Yahoo!ニュースより【産経新聞配信】
産経は11日、自民党の坂本哲志国対委員長が同日、立憲民主党の笠浩史国対委員長と国会内で会談し、年金制度改革関連法案について「党内の意見調整に時間が必要」などとして、14日までの提出が困難と伝えたと報じました。
この法案は厚生年金の積立金を使い基礎年金(国民年金)の給付水準を底上げするのが柱、などとしていますが、これもとんでもない話です。厚年の資金を国年に流用するというのは、厚年の加入者に対する詐欺そのものだからです。
正直、年金については事実上、現役世代から高齢世代に対する「国家ぐるみの仕送り」と化しており、とりわけ現役世代にとっては負担と給付水準がまったく釣り合っていないなどを踏まえると、制度そのものが破綻をきたしているという言い方もできます。
本来ならば制度の企画立案権限を官僚から取り上げ、政治主導で、たとえば徐々に積立金方式への転換を図る、といった工夫も必要でしょう。
稚拙と言わざるを得ない石破首相…多くの国民に制度改悪見透かされる
ただ、それ以上に問題なのが、多くのメディアに、「自民党は参院選を気にして年金や高額療養費問題を先送りにしている」、などと書かれてしまっていることでしょう。
いや、メディアがそのように報じなくても、ごく常識的な知見がある有権者が見たら、誰だってそう思うでしょう。
つまり、今夏の参院選で、自民党が公明党と合わせ、参院側でも過半数割れするほどの惨敗を喫することがなければ、そして石破茂体制が参院選以降も続いていれば、石破政権は間違いなく、この年金・高額療養費問題で現役層にさらなる負担を強いる制度改悪を断行するに違いない、と思われてしまったのです。
これが、自民党にとって、いかなる結果をもたらすか。
結論からいえば、稚拙というほかありません。年金、健保などの社会保障改革を望まない、少なくない有権者が、自民党を貸せてしまえば負担が上がり、給付が減ると見透かすようになってしまったからです。
この点、先日の『今夏の参院選で「自公過半数割れ」の可能性はあるのか』でも取り上げたとおり、前回参院選(2022年)と前回衆院選(2024年)の結果をもとにしたシミュレーションでは、昨年衆院選程度の落ち込みならば、自公が過半数割れを起こすことは考えづらいといえます。
しかし、前回衆院選比例代表で617万票を獲得するなどし、現役層を中心に猛烈に支持を獲得しつつある国民民主党が、自民、維新支持層を侵食し、比例代表で1000万票前後を獲得するような事態となれば、話は変わってきます。
現在の情勢だと、国民民主党が改選後20~25議席を獲得するような状況ともなれば、自公がギリギリで参院側でも過半数を維持できない可能性が出てくるからです。
今夏に向け要注目
そして、国民民主が躍進し、自公が過半数割れすることが、現在の日本にとって良いことなのかについても、まったく別問題です。とりわけ参院には解散総選挙という仕組みがなく、与党が過半数割れした状態がいちど出現してしまえば、この状態は最低でも3年、最悪の場合は6年間以上継続します。
その意味では、与党の政治的基盤を著しく弱体化させたという点において、石破茂首相、あるいは昨年9月の自民党総裁選で石破氏に投票したすべての自民党国会議員は、まさに自分たちが故・安倍晋三総理大臣時代の遺産を食い潰しているだけだと知るべきでしょう。
いずれにせよ、今夏の参院選に向け、引き続き、大きな波乱が予想される展開が続きそうです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
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これはダッチロール飛行ではない
即身仏化が進行する石破茂政権
ときどき念仏のような言葉が口から聞こえているがもはや誰も聞いていない
その通り。
嘘をついているときは、必ずそんな言い方をしていてます。
即身仏だなんてそんな尊いものに喩えないで!
即身仏って人々の苦しみを救うために修行してミイラ化して仏様になった人でしょ。全然違う😣
「「参院選後の改悪確実」と一般人に見透かられるようなら、石破総裁では参院選を戦えない」という声が、自民党参議院議員からおきるのではないでしょうか。
起きないと思います。発言している議員自体は居ますが岸田から数えて最悪の5年間何も変化なし。自民党が割れるぐらいしか解決策出ない。無能な自民長老や卑劣な宏池会に自浄能力は無い事はこの数年で既に証明済みです。
今の自民党政権は戦後最悪ですね。安倍政権などで後から鉄砲撃つ名人がまさかの総理大臣!真正の左翼マインドで今の支持者はアタオカレベルでしょう。とっくの昔に支持やめました。
とにかく国民負担率を人並みの生活ができる水準に下げないとOECD最下位の個人所得が更に低下することになります。また周辺国家の危うさ、特に中華の領土侵略と思想汚染は目に余るものが…。これを何年放置できるでしょうか?既に令和のクーデターのレベルに来ているのでは?
左派勢力が調子こいて、世の中の秩序を破壊しまくっていた2010年前後からの暗黒時代。彼らの暗躍により安倍元総理が暗殺されるまで至り、憲法改正が視界から消え去ってしまっただけでなく、自民党自らが悪性腫瘍の如き人物を総裁総理に選出する事態にまでなってしまいました。
民主政治の本家米国でも同様に左派勢力は調子こいてましたが、力を失い、正常化、復帰しつつあるのに、日本は保守の政党そのものが腐敗してしまったため、あの立憲民主党から分離した国民民主党にも劣後してしまう始末。
日本にもヴァンス氏マスク氏のような有能で働く志士が居て欲しい。
DOGE! DOGE! (かぼす) DOGE!
USAID 仕分け、日本で残れるのはどこか
やりすぎ注意、暗殺注意報発令中
参院選では与党がぎりぎり過半数確保できるとの見通しですが
過半数に至らないように計画的に投票するつもりです
もっとも私の持つ票はたった1票ですが・・・
壊死歯氏の国会腐れ答弁を聞いていると
投票率を下げるために意図的に行っているのかもしれません
そうなると案外の策士であるのでしょう
ついでに、昨年9月から12月にかけて店頭より米が消えて価格はうなぎ登りになっているのに、農水省は米の店頭価格が倍近くなっても「コメは足りている。新米の時期になれば流通量が増えて価格は下がる」と言い続け、結局米の市場価格が上がり切った今頃になって「備蓄米を競売で出します。流通の段階で21万トンが何処かへ消えたようだ。」などと言い出す農水省も何とかしてほしい。
国民は既に政府の言うことを信用しておらず、今年は早々に生産農家と契約を結ぶ業者が多く出ているようです。おそらく今年の8,9月頃には同じことにならないかと心配しています。
ところで、消えたコメは誰が食っちまったんだい? 皆がパニック買いたとか、中国人が買い占めて高値で販売しているとか根拠不明の噂が絶えませんが、きちんと調査したんだろうか(どの噂も数十万トンもの量の説明には無理がある)
理由が分からないまま、備蓄米を放出したら値段が下がるだろうとか、会社員だったら即マネージャー交代なんですが、不思議と政府御用達の記者クラブ界隈は騒ぎませんね。
書き忘れ)
参院選がコメ不足が再燃するであろう8月以降でなく、7月でよござんしたね。
宏池会の操り人形であり、何でも言うことを聞いてくてる石破内閣のうちに法案を通そうと目論んだ役人が、マスコミも庇い切れないほどのあまりの批判の大きさにたじろいだ石破首相が、役人に対するせめてもの抵抗として参議院選挙後への先送りを決断せざるを得なかったと言うことでしょうね。このままでは命の危機に晒されている人を切り捨てた極悪人との評価を免れませんので。
しかし、秋に再検討するなどと言っていますが、先送り見え見えですので、騙される人などいないと思います。
自民党も最早賞味期限が切れています。私は、少数与党が常態化する時代が来ると思っていますが、役人にとってはやりにくい時代が来ると言う事でしょうね。
正直な話、「C-17欲しい」以外の政策は生みの親である岸田前首相時代からの政策であって石破首相も院政の駒に過ぎないんですよねえ・・・。
結局は岸田派に打撃を与えるくらいの大敗北を参院選(下手するとその後の衆院選も)で与えないといけない。