色々気付いてしまったスポンサー…TVCMの未来は?

ついに、その論点に気づいてしまったか―――。テレビ業界が恐れるのは、スポンサーにとってCMをテレビに出稿してもさしたる効果が得られない、ということに、スポンサーが気づいてしまうことなのかもしれません。そして、フジテレビで起きたような問題は、他の局でも同様に生じ得るなかで、テレビからのスポンサー離れは必然といえるかもしれません。ただ、その大きな責任は、14年前のフジテレビお台場デモでも変われなかったテレビ業界自身にあるという言い方もできるでしょう。まさに自業自得です。

年初の論考で予言したテレビ局の経営問題

年初の『テレビ局に襲い掛かるワイドショー問題とスポンサー凸』では、テレビ局の経営問題について議論しました。

簡単にいえば、テレビ局は現在、収入が減っていて番組制作予算も減らされるなかで、比較的安価で制作できるワイドショーにシフトしてきたものの、問題のある放送内容も多く、スポンサーが離れていく可能性がある、ということです。

これに関し、そもそも論として、考えておかねばならない要因は、少なくとも3つあります。

ひとつめは、テレビCMの効果が高いのかどうか、という論点です。

さまざまな調査によれば、現在、テレビをメインで視聴しているのは高齢層が中心であり、視聴者層が極端に偏っているのに加え、その高齢層でさえインターネットの利用率が徐々に上がり、若年層に至ってはテレビの視聴時間自体が非常に短いのが現状です。

これに加え、ネットだと当たり前の「ターゲット広告」―――視聴者に合わせて表示する広告を変更すること―――が、テレビだと技術的に実現することが非常に難しいため、CMを出稿する企業としても、ターゲット層に合わせてCMを表示させることが、ネットと比べて難しいと考えるのではないでしょうか。

コンプラ意識の向上、そしてSNSでの炎上リスクの意識

ただ、CM出稿に関する問題としては、ほかにも考えておく必要があるものがあります。

ふたつめは、スポンサーの視線です。

スポンサーも近年、コーポレート・ガバナンス・コードなどに従い人権の重視やコンプライアンス意識などが高まっていますが、芸能人の自宅にカメラを引き連れて突撃するテレビのワイドショーにCMを出稿すること自体、コンプラ違反に該当する可能性があります。

そしてみっつめが、SNS視線です。

近年、ネットやSNSの社会的影響力が高まっているためでしょうか、スポンサー企業としても、ワイドショーなどの変な番組にCMを出稿すること自体、自社製品の宣伝ではなく、むしろ不買運動などを招く可能性を意識するようになりつつあります。

このため、「企業側がごく近い将来、テレビへのCM出稿を今後、控える動きに出るのではないか」、とする見立ては、さほどンと外れではないというのが著者自身の見立てでもあります。

フジテレビ問題でさっそく予言が成就?

さて、この『テレビ局に襲い掛かるワイドショー問題とスポンサー凸』を当ウェブサイトに掲載したのが1月3日だったわけですが、このなかで「予言」した内容が、案外早く実現する可能性が出てきました。

フジテレビ問題がそれです。

CM問題は地方に波及…契約解除や返金請求の動きも?』などでも報告しましたが、タレント男性と女性との性的トラブル問題にフジテレビ従業員が関与していた疑いをめぐって、現在、多くのスポンサーがフジテレビへのCM放送をいっせいに差し止めている状況にあるのです。

正直、ここまで急速にフジテレビのCM差し控えが広がるとは思ってもいなかった、という人も多いでしょうが、それだけではありません。

結局のところ、テレビ業界はこれまで、あまりにも人権やコンプライアンスに無頓着(むとんちゃく)であり過ぎたという問題を抱えていたのが、ここにきて、一般社会(特にスポンサー)との認識との乖離(かいり)となって顕在化してしまったのではないでしょうか。

そうなると、問題はフジテレビだけにとどまらない可能性があります。

そもそもCM出稿の効果が疑わしいこと、企業の人権意識と合致しないこと、SNSでの「炎上リスク」があること―――、といった諸点は、フジテレビだけの問題ではないからです。

当然、テレビ業界(※NHKを除く)全般にも思わぬ余波を広げていくことになりそうです。

スポンサー企業に、色々と気付かれてしまう

こうしたなか、『SHIZUOKA Life』というウェブサイトが12日付で、ちょっと気になる記事を配信していました。

「色々と気付かれてしまう…」 フジテレビ問題で膨らむ 他局や地方局の不安と本音

―――2025/02/12 20:47付 Yahoo!ニュースより【SHIZUOKA Life配信】

同サイトによれば、フジテレビ問題が「企業がCM出稿をやめる口実になりかねない」と指摘。フジテレビ以外のキー局に勤務する局員がこう述べたと紹介しています。

実は、今回の問題がCM出稿を辞める口実になると考える企業が少なくありません。テレビ離れが加速していて視聴者の年齢層は高齢者に偏っていますし、若い世代はCM中にスマホを見る人も多いと思います」。

そもそも、テレビCMに費用対効果があるのか疑問に思っている企業は多いんです。ただ、今までの付き合いなどからCM出稿を辞めるタイミングや理由がありませんでした」。

しかし、フジテレビに限らず、他局も多かれ少なかれ同じような企業体質だとスポンサーに見られているフシがある、といった事情もあり、この局員は「いつ矛先がフジテレビから別の局に向けられるかわからない」としたうえで、こうも述べるのです。

フジテレビの問題によって、これまでスポンサーが何となく不安や疑問に思っていたことが浮き彫りになってしまったと感じています」。

おそらく、これが正鵠を射ている見方でしょう。

なお、『SHIZUOKA Life』は静岡のメディアということもあり、記事の関心は地方局にも向けられるのですが、このくだりについては原文をご参照ください。

結局はテレビ業界の自業自得

いずれにせよ、フジテレビの問題はフジテレビだけにとどまらない、という見立ては、まったくその通りでしょう。

『SHIZUOKA Life』はくだんの局員が「フジテレビだけではなくテレビ業界全体の大ピンチ」、「斜陽業界だと感じていましたが、衰退するスピードが速くなりそうです」とため息を漏らした、としているのですが、結局のところ、現在の苦境はテレビ産業自体がもたらしたものです。

というよりも、2009年の政権交代を招いたさまざまな偏向報道のあたりから、あるいは今から14年前の2011年8月に発生した「フジテレビお台場デモ」のあたりから、一般視聴者はテレビ業界に対し、強い不信感を抱いていたことは間違いありません。

その後のネットの発展と新聞、テレビの社会的影響力の減衰は、結局のところ、テレビ業界自身が自浄作用を働かせることに失敗したためであり、その意味ではテレビ業界の自業自得のようなものではないか、などと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. はにわファクトリー より:

    未練が商売をダメにする。要約するとそれっぽちの話です。

  2. foo より:

    TVCMの効果・・TVを殆ど見なくなったせいもありますが、印象に残るCMは確かにないですね。
    昭和のCMは印象に残るCMが沢山ありました。替わって、特売のチラシは頻繁に見ます。

  3. sqsq より:

    宣伝部部長、朝出社すると机の上に「至急社長室へ」とのメモ。
    社長室へ行くと「おい、昨日フジテレビでうちのCMやってるの見たぞ」「ほとんどACジャパンなのにうちの社名が目立つじゃないか」
    「今騒いでるフジテレビの問題知らんのか!」
    散々怒られて自席にもどり、課長に「おい電通呼べ」「フジテレビのCM全部ストップ」

  4. 引きこもり中年 より:

    毎度、ばかばかしいお話を。
    フジテレビ相談役:「うちにTVCMを出さないと、そのスポンサー企業の名前だけをTVCM枠で放送するぞ」
    蛇足ですが、フジテレビ以外のメディア各社も、社長より相談役の方が偉いのでしょうか。

    1. 引きこもり中年 より:

      >https://bunshun.jp/articles/76743
      文春砲によりますと、2004年1月に放送されたフジテレビの番組で「火渡りで男性が大やけどし、後に死亡した」そうです。
      もし、当時のスタッフ、関係者を含めて、また謝罪会見になったら、フジテレビ側は(内心では)「どうして、20年以上前のことで、謝罪しなければならないんだ」と不満たらたらでは、ないでしょうか。(もしかして、「老人が死んだくらいで、何なんだ」かもしれません)
      まあ、また10時間会見をすれば、視聴率がとれるでしょう。
      蛇足ですが、もし現在進行形のフジテレビの問題を、有耶無耶にすることができれる者がいれば、その者は次の次のフジテレビ社長になるのでしょうか。

  5. 丸の内会計士 より:

    企業は、アプリで直接、消費者とつながるようになるので、今どきテレビCMに広告宣伝費を使うような企業の広報部長は、社長からド詰めにあうのでは。時代の流れなので、懐かしのテレビ全盛時代には戻らないと思います。もう二度と。

  6. 雪だんご より:

    やはり、どのオールドメディアも「フジテレビを救えるものなら救いたい」が本音でしょうね。
    あのモリカケ騒動で向けていた(無駄な)情熱の百分の一も出しておらず、
    フジテレビのピンチを渋々報道してはいるが、批判や糾弾はほとんど見えてこない。

    このままスポンサーが戻らず番組も作れないままの期間が長引けば長引く程、
    フジテレビは株主に「もう店を畳め」と迫られるのかな?版権やら不動産やらを
    処分すれば、最後に株主にパーッと儲けさせるくらいは出来そうですし。

  7. CRUSH より:

    USAIDの件で、NHKにも火の粉が降りかかってるみたいなので、より大きな火事になればフジテレビの火事から野次馬はいなくなるような気がしますよ。たぶん。

    フジテレビのみなさん、もう少しの我慢だよっ!

  8. ムッシュ林 より:

    テレビCMは確かに時代遅れですね。今はテレビもネットで見たいものだけ見てますし、YouTubeの間のCMとかの方がまだ見る機会多いかもしれません。
    フジテレビも某新聞社のように不動産屋として生きていくのがよいかもしれませんね。

  9. 引っ掛かったオタク より:

    「スイッチONで広く同時に同じモノを垂れ流す」「選択肢は有るが種類は一桁」と云ふ“広く国民に情報を共有させ得るメディア”が『高度情報化社会(w』拡張拡大進展伸展転換展開に流されメインストリームから墜ち往こうとしておりマスなう
    コレは盛者必衰の理ソノモノにして疑問無きタイムゴウズバイbyeナレドモ今後は更に更に大小無数のエコーチェンバーとヤマアラシ蛸壺人が世に溢れ、文字起こしもおぞましき悪夢の予感が現実となったトキ、“日本”は「かつて存在した地名」とすら残らず霧消しましょうや…ややや願わくばナルベク為るべく成るべく鳴るべく知覚の外にてナラムコトヲ

    知らんけど

  10. Sky より:

    USAIDのNHKへの飛び火。
    当のNHKがニュースでSNSのフェイクと断じて報じてました。
    慎重に裏をとったと思うが大丈夫?
    認める場合は報道内容には微塵も影響を与えてないとしらを切る?

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