「SNSを活用」?肝心の「中身」がなければ意味なし
SNSを通じて炎上したときに、どう対処するか。本稿では、裁判所と国民民主党、2つの事例を確認してみたいと思います。どちらも現在、ちょっとした炎上状態なのですが、裁判所はせっかくSNSを活用しているのにリプ欄を閉じてしまっており、国民からの意見を受け付ける体制にありません。一方、国民民主党は現在、公約集の「金融所得課税強化」が「炎上」しているようですが、「火消しに必死」だというのです。
目次
国民民主党が火をつけた「年収の壁」議論
国民民主党が「年収の壁」議論に火をつけてくれたおかげでしょうか、昨年10月の衆院選以降、世の中の話題はもう「手取りを増やす」にかっさらわれているフシがあります。
外交、安全保障などと並び、国内経済の振興は極めて重要な政策課題ですが、とりわけ税や社保を取られ過ぎていることに気づいた国民が増えてきたことは、本当に良いことです。
大事なことはこれを国民的な議論にまで高めていくことであり、そして、実際にSNS空間では、それこそ毎日のように、さまざまな話題が提起されています。
もちろん、当初は国民民主党が掲げる「手取りを増やす」に対しては、「ポピュリストだ」、「無責任だ」といった批判があったことは事実です。とりわけ同党は減税の「財源」については示しておらず、「財源なきバラマキだ」、といった批判がなされていることも無視できません。
ただ、著者自身の理解に基づけば、そもそも現在の日本は「税金の取りすぎ」が問題になっており、同党が主張している「手取りを増やす」、「基礎控除を75万円引き上げて123万円に増額する」などの主張も、インフレなどで全体的に増えた税金を適正化する手続きのひとつに過ぎません。
というよりも、これを野党である国民民主党が主張している一方、与党である自民党側からこれと似たような議論が出てこないことを、個人的には深く危惧し、憂慮しています。
たとえば故・安倍晋三総理大臣が現在でも存命で、自民党に対して影響力を維持していたとすれば、自民党が国民民主案を奪い取る形で、「自民党は年収の壁を200万円まで引き上げま~す!」、などと宣言しかねないほどの強(したた)かさを見せたかもしれません。
もしも安倍総理が狂人に暗殺されていなければ、安倍総理は米国のドナルド・J・トランプ大統領の再登板を心から喜んだであろうとも思われますし、場合によっては岸田文雄・前首相の後継者は、石破茂・現首相ではなく、再々登板した安倍総理だったかもしれません。
腐敗トライアングル崩壊時代のSNS戦略
ただ、残念なことに安倍総理はもうこの世の人ではなく、したがって、仮に私たち日本国民が「アベノミクス」の継続を望むなら、安倍総理の考え方に最も近い政治家を、日本国民自身が探してくるより方法はありません(少なくとも石破首相がアベノミクスの後継者であるとは著者自身には思えません)。
それが誰なのかについては、とりあえず現時点での言及は控えます。
しかし、当ウェブサイトの用語でいうところの「腐敗トライアングル」―――官僚機構、オールドメディア、特定野党という「利権機構」―――が持っていた社会的影響力が弱体化し、代わってSNSの社会的影響力が強まっているなかで、少なくとも以前と比べたら、民意が政治を動かしやすくなっていることもまた事実でしょう。
国民民主党が昨年10月の衆院選で、議席を選挙前と比べて一挙に4倍にまで増やしたのも、おそらくは減税を求めるSNS層の民意の力によるものです。
国民民主党に対して少々厳しい言い方になるかもしれませんが、「国民民主党が高く評価された」からではなく、「同党が掲げた公約のなかに、SNS層の民意に刺さる政策がたまたま含まれていた」、という方が実態に近いのではないでしょうか。
早い話が、国民民主党が自分たちの掲げた公約に不誠実であれば、同党に対する支持などあっというまに雲散霧消するということでもありますし、また、同党以外にも「働く人の手取りを増やす」などの公約を掲げる政党が出現すれば、国民民主党の地位も安泰ではありません。
今のところは、石破氏が率いる自民党、野田佳彦元首相が率いる立憲民主党、あるいは国民民主を離党した前原誠司氏が共同代表として率いる日本維新の会、といった政党が、(おそらくは減税を求めているであろうSNS層から)支持される要因を根本的に欠いているだけの話です。
このあたり、著者自身としては、本当に不思議でなりません。
せっかくSNSがここまで普及しているのですから、どの政党もSNSを活用すれば良いのではないかと思えてならないからです。
SNSの使い方を間違っている裁判所
ただ、こうしたなかで少し気になったのが、一部組織に見られる、「これからSNS戦略に力を入れまぁす!」という宣言です。
- 「わが党は、これからSNS戦略に力を入れまぁす!」
- 「本省庁は、これからSNS戦略に力を入れまぁす!」
- 「当新聞は、これからSNS戦略に力を入れまぁす!」
- 「当TVは、これからSNS戦略に力を入れまぁす!」
SNSを通じて有権者、国民、読者、視聴者とコミュニケーションをとっていただくことは結構。
しかし、なかにはSNSの使い方を根本的に間違っているケースがあります。
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— 裁判所 採用 (@saibansho_saiyo) January 30, 2025
「裁判所 採用」(@saibansho_saiyo)とかいうアカウントですが、驚くことに、リプライ欄がグレーアウトされ、このポストに対し、私たち一般国民は変身をすることが許されません。
さて、裁判所さんに、改めてお伺いします。
SNSで公式アカウントを開く意味、なんだとお思いですか?
端的にいえば、国民の生の声を聴くことと、国民とコミュニケーションを取るためでしょう。それなのに、リプ欄がグレーアウトされてしまっていると、このツイートを見た国民としては、裁判所に意見を伝えることも困難です。
(※ただし、リプ欄を閉鎖していても、引用リポストなどの手段でツッコミを入れることは可能ですので、リプ欄を閉鎖したところで、あまり意味はありませんが…。)
「炎上」した国民民主党の「火消し」の動きとは?
これに対し、SNSの先行事例のひとつである国民民主党のケースでいえば、玉木雄一郎代表(※役職停止中)自身が積極的にSNSで情報発信(@tamakiyuichiro)を行っており、また、自身も在野の様々な専門家のアカウントをフォローするなどして、情報収集に努めているようです。
※ちなみに山手線の駅名を冠した怪しい自称会計士のアカウント(@shinjukuacc)も、玉木氏からフォローされているようです。わりとどうでも良い話ですが。
ちなみにその国民民主党といえば、公約に「金融所得課税強化」、「3号被保険者見直し」などを記載していたとして、SNS上では「プチ炎上」しています(『国民民主と立憲民主の支持率「逆転」が継続=主要調査』等参照)。
「国民民主党は減税一辺倒でない」と主張してきた当ウェブサイトにいわせれば、「同党が金融所得課税の強化などを謳っていることは最初から分かっていたはずなのに、なぜ、いま炎上しているのか」が不思議でなりませんが、ここではその論点は脇に置きましょう。
注目したいのが、こんな話題です。
国民民主、火消しに躍起 金融所得課税強化巡り「増税」批判広がる https://t.co/4do2v4AHrs
— 毎日新聞ニュース (@mainichijpnews) February 5, 2025
毎日新聞が5日報じた記事によれば、同党はその「火消し」に躍起なのだとか。
とても良い話です。
SNSを通じて支持が集まったのが国民民主党ですから、SNS上で批判されるような課題が発見されたのだとしたら、それを全力で改めることにより、本当の意味での民意を正確に反映した公約がブラッシュアップされるはずだからです。
せっかくSNSをやってるならリプ欄は開放しては?
さて、それはともかくとして、SNSでの情報発信に話題を戻しましょう。
裁判所がリプ欄を閉鎖している理由は、じつは、著者自身にとってはわからないわけではありません。インフルエンサーがSNSでリプ欄を開放していると、ときどき、妙なアカウントにウザ絡みされることもあるからです(著者自身もフォロワーが2万人を超えたあたりから、ときどき妙なアカウントから絡まれることが増えてきました)。
しかし、それでもやはり、SNSにアカウントを開く以上は、可能な限り、リプ欄を閉鎖してはならないと思います。『異見にこそ価値がある2つの理由』でも指摘しましたが、著者自身は、せっかくSNSをやっているならば、少なくともリプ欄は開放する方が長い目で見てメリットがあります。
その理由は大きく2つあって、ひとつは「異見」―――持論と異なる意見―――については、①それらが新たな気付きをもたらしてくれる可能性があること、②異見の持ち主との議論をSNSでオープンベースで行うことで、結果的に自分の意見の支持者を増やす可能性があること、です。
とくに後者に関しては、「自身の見解への反論には支離滅裂なものが多い」という点をSNSにより周囲に見せつけることができれば、結果的に、自身への理解者や支持者を一気に増やすことができるため、個人的には、案外、ありがたいと思っていたりもします(笑)。
ちなみに昨年末の「減税反対派」とのあまりに支離滅裂すぎるX上でのやり取りについては、『減税法案閣議決定でまたひとつ消える減税反対派の論拠』などでも紹介しているので、よろしければご参照ください。
SNSの力で公約を修正すれば良い事例になる
いずれにせよ、SNSを使って情報発信をするという考え方自体は悪いものではありませんし、方法次第では自分たちの主張をうまく世に伝えることができたりもするわけですが、それでもやはり重要なのは、「SNSで」伝えることではありません。
「何を」「どうやって」伝えるか、です。
非常に残念なことですが、裁判所のようにSNSの特性を全く理解せず、ただ自分たちの都合に合わせて情報を発信するだけの機関は、国民からの理解を得ることが難しいでしょう。
さらにいえば、一部官庁、一部政党、一部新聞社、一部テレビ局などの場合、SNSアカウントを通じて国民の忌憚なき意見が殺到するというケースも増えており、なかには『国民の批判殺到の財務省「まさかの被害者ポジション」』でも取り上げた財務省のような「炎上」事例もあります。
しかしながら、結局のところ、たとえば国民民主党も「公約の炎上」を契機に、自党の公約で至らぬ点を発見し、それを改めるきっかけになるのだとしたら、それは最終的に同党の公約をより国民の意見に近いものにできる、ということでもあります。
いずれにせよ、(あくまでも著者自身の主観ですが、)国民民主党には至らぬ点も多々あるとはいえ、少なくとも安倍総理亡きあとの日本の政界においては、SNSなどを通じて国民と対話しようと最も努力している政党のひとつではないかと思います。
その意味では、同党が今般の「炎上」を受け、金融所得課税についての公約を改めたり、コミュニケーションの取り方を工夫したりするかどうかなどを含め、今後の動きを見守る価値はありそうです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
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毎度、ばかばかしいお話を。
○○(好きな言葉をいれてください):「SNSとは、リベラルに代わりに頭につけると、支持があがる魔法の言葉である」
まさか。
103万円問題を単なる減税ととらえると本質を見誤るのではないか。
国民民主党の言う「手取りを増やす」は単なる減税ではなく無税で働ける金額を増やすということ。仮に178万円が実現したとしても以前通り103万円しか働かなければ手取りは増えない。
しかもこの103万円という金額は30年間パート主婦には知れ渡っていて、自民党には都合の悪いことに彼女たちにはほぼ100%選挙権がある。
今の主婦たちの心境を想像すると「103万円って変えられるんだ!」「30年間変わらなかったそうよ」「選挙のたびにわけのわからないゴタクならべてたけど何にも考えてなかったんだ」
これが燎原の火のように広がり、次の参院選挙は国民民主の「ワンマンショー」になる。
いつも楽しみに拝読しております。
やっぱり国民「民主党」だったんだなということですね。詐欺のような年金を当てにしないで投資をしている国民の自助努力を理解していなくて、金融資産を持つ人=お金持ちみたいな発想なんでしょう。
次の選挙では国民民主党だから応援するのではなく、候補氏を個別によく見て「民主党」のおバカには投票しないようにする必要があると感じています。
へ、変身!?…ペッターン!!?
まわ「先例に倣え」が金科玉条に近い(カモシレナイ)官僚組織が新規施策でイキナリえーよーに出来ようとは思わンでヨカロ??すかね???
知らんけど
ケアレス誤変換でしょうが、似た感想があたまをよぎりましたわ。
イメージはジキル博士&ハイド氏。
日頃は温厚な紳士淑女だが、SNSの上では舌鋒鋭く内容の無い公式サイトを批判する!みたいな。
玉木氏はネット活動が長いためなのかネット上での振る舞い方が熟れてると感じます。
例の不倫騒動でも発覚直後(多分その日のうち)に言い訳ゼロの平謝りの動画を出したんですが、言い訳のしようが無いことなので正解だと思いました。鎮火しましたよね。
今回のも炎上したから迎合して修正しているわけでもなく、理によって自分の間違いを認めた上で方針修正の可能性に言及し始めています。まあ多分、鎮火していく気がします。
返信欄を閉じたり、ブロックしたりする人って、ネットをテレビのような一方通行の売名ツールとして見ていて、そこでは「キレイな自分」「無謬な自分」をアピールしなきゃなんないと思ってるんではないかと思うことしばしばです。「謝ったら死ぬ病」の人とも結構被ります。
でもネットは双方向なので、相手の反応を敢えて拒絶している時点で評価は下がるし、間違いを認めず言い訳しても同じです。エコーチェンバーの中でぬくぬくとしたって支持は広がらない。自分の影響力を拡大したいのであれば、やり方を間違ってるんですよね。
ネット民は、寄せられた「まともな指摘」にその人が真摯に対応するか、よくよく見ていると思います。インフルエンサーにしても政治家にしても、ネットで長期にわたって支持を維持してる人はそこらへんをちゃんとしてるんですよね。
少しずつ積み上げた信頼なので、信頼を裏切るようなことをすればあっという間に影響力は失われますけど。
でもそれって、リアルの社会の評判システムと同じにしか見えません。だとすれば、ネット上での振る舞い方も推して知るべしです。
子分:親分てえへんだ、今はもうSNSの時代だ!
親分:(にやり)なるほどな、そんなこともあろうかと、与平に指示してある。
子分:そいつぁ頼もしい。で何を?
親分:こう言いつけてある。
「与平、金は出すからひとつエスエヌエスっての買ってきておくれ。」
「アイテーってのと間違えるんじゃないよ」
与平:エスエヌエスってぇのは美味いんですかい? 親分
あっしあそんな食べ物聞いたことがねえんで、どこで買えるです?
>SNSの使い方を間違っている裁判所
彼らには、リプ欄なんて必要ないのでしょうね。
官報(上意下達)の電子版に過ぎないのだから。
・・・・・
SNSの真価は、相互に意思疎通できる機能なんですよね。
平たく云えば「そう仰る・ネット・サービス」なのかと・・。