フジメディアの経営を不動産だけで支えることは不可能
現在、フジテレビの親会社である㈱フジ・メディア・ホールディングスの有報などを用いた分析を行っているのですが、そのごく一部を報告しておきます。端的にいえば、同社には換金可能な有価証券なども多く、1年や2年ならCMゼロでもやって行けそうですし、フジ・メディアは不動産事業などで儲けていることは事実ですが、それと同時にメディア・コンテンツ事業は売上高の規模も大きく、経費率も極めて高いため、不動産事業だけで同社の経営を支えることはできません。
CMゼロの具体的影響は?
世間ではフジテレビ問題を巡る話題が今日も騒がれているようであり、なかには同社の財務状況に照らして、CMがゼロでいつまでもつか、といった議論もなされているようです。
これについては著者自身としてもちょっとした原稿を現在執筆しており、公開できるタイミングになったらお知らせする予定ですが、現時点での結論だけ述べておくと、フジテレビ、あるいは同社を含めたテレビ業界は、CMゼロが長期化すると、意外とあっさりと経営が行き詰まります。
経費率が高すぎるためです。
株式会社フジ・メディア・ホールディングスの2024年3月期有報によれば、同社には「メディア・コンテンツ事業」、「都市開発・観光事業」という、大きく2つの主要事業セグメントがあります(本当は「その他事業」もありますが、売上高、セグメント利益ともに小さいため、本稿ではとりあえず無視します)。
この点、売上高でいえば、「メディア・コンテンツ事業」は4337億円と、会社全体(5664億円)の76.56%を占めており、圧倒的な重要性を持ちます。これに対し「都市開発・観光事業」は1283億円で全体の22.65%に過ぎません(足しても100%にならないのは「その他事業」や「調整」などのため)。
しかし、セグメント利益でいえば、「メディア・コンテンツ事業」は、なんとたった157億円で、会社の営業利益(335億円)に占める割合は46.86%に下がり、これに対して「都市開発・観光事業」は195億円と、なんと営業利益全体の58.29%を叩き出しているのです。
営業経費率の高さが問題
わかりやすく、図表に示しておきましょう(売上高、営業利益はセグメント情報から拾い、営業経費は両者の逆算で求めています)。
図表 フジ・メディア・ホールディングスの2024年3月期セグメント損益(百万円)
事業セグメント | 売上高 | 営業経費 | 営業利益 |
メディア・コンテンツ | 433,663 | 417,957 | 15,706 |
都市開発・観光 | 128,316 | 108,779 | 19,537 |
会社全体 | 566,443 | 532,924 | 33,519 |
(【出所】売上高と営業経費は株式会社フジ・メディア・ホールディングス有報・セグメント情報、営業経費は逆算で算出。なお、「その他事業」セグメントなどを無視しているため、両セグメントを合算しても会社全体の数値とは一致しない)
そして、この図表からもわかるとおり、「メディア・コンテンツ事業」の売上高に対する営業利益の割合(俗にいう利益率)は、なんと、3.62%に過ぎません。言い換えれば、経費率が96.38%、ということです。もし売上が1万円だった場合、経費が9,638円で儲けは362円しか残らない、ということです。
逆に、CM差し止めラッシュが生じ、売上が1万円からいきなり5,000円に半減したとしても、経費を減らすことは難しいのが実情です。番組作りをいきなりやめることなどできないうえ、日本の雇用体系では、従業員をいきなり解雇したり、いきなり給料をゼロにしたりすることが難しいからです。
したがって、最悪の状況だと、テレビ事業の売上が激減しているにも関わらず、営業経費は約4000億円発生し続けるかもしれず、「メディア・コンテンツ事業」は年間で2000億円レベルの赤字を垂れ流すかもしれません。いくら不動産事業で稼いでいたとしても、それだけで会社全体は支えられません。
また、フジ・メディア・ホールディングスには(一般に換金性が高いとされる)現金預金・有価証券・投資有価証券なども豊富であるため、銀行などからの借金を全額返済したとしても2000~3000億円程度の手元流動性があると考えられます。
このため、CMゼロでも1~2年は資金繰りがもつ、という計算ですが、それも限界があるでしょう。
明日はわが身のメディア業界
というよりも、今回「炎上」しているのはフジテレビですが、『「明日はわが身」のメディア業界』などでも指摘したとおり、「炎上」するような話題など、メディア業界にはいくらでもあります。
- 新聞による歴史問題の捏造。
- 新聞による珊瑚問題の捏造。
- 新聞による原発証言の捏造。
- テレビ局による選挙介入。
- テレビ局によるカルト宗教の犯罪幇助。
- テレビ局による軍艦島映像捏造。
- テレビ局による漫画の原作改変。
- 通信社による政治家の発言捏造。
まさにマスコミさん、「明日はわが身」、ですね。
そういえば、本日をもって産経系の夕刊紙『夕刊フジ』と中日系の『東京中日スポーツ(トーチュウ)』が休刊となるそうですが、オールドメディア産業の苦戦も結局、ネットの普及と発達により、「情報を配信するという事業」そのものが一般に広く開放されたという事情は大きいでしょう。
というよりも、いままでは各種規制・利権(たとえば電波利権、新聞利権、記者クラブ利権など)で守られてきたメディア業界も、なし崩し的な業界自由化の波に洗われています(昨年からのSNSの社会的影響力の高まりもその事例のひとつでしょう)。
いずれにせよ、一説によると売上高の7~8割をCMに依存しているとされるテレビ局・テレビ事業が、ここまでスポンサー離脱に弱かったというのは、なかなかに興味深い話だと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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広告代理店手数料20%もとられるとこういうことになる。
TVの次は財務省、厚生労働省にメスが入ることを期待します
つまり未来の無い不採算部門を一足早くやめられるじゃないですかやったね。
富士フイルムみたいになれると良いですね、フジだけに。