末路はアジアのベネズエラ?鈴置氏が予言の韓国の未来
「アジアのベネズエラ」。韓国観察者を名乗る鈴置高史氏が数年前から警告してきた韓国民主主義の自壊が現実味を帯びて来たのかもしれません。大統領弾劾の裏にある左右対決、そして年金資金すら溶かしかねない通貨防衛。そんな韓国社会の現状を巡り、鈴置氏はなぜ2022年時点で『韓国民主政治の自壊』を予言し得たのでしょうか。その答えは「ファクトをきちんと見る」に尽きるのだと思います。
ファクトとロジックを重視する鈴置論考
当ウェブサイトは「政治経済評論」を名乗っていますが、その際に気を付けているのは、「客観的に確認できる情報源」を証拠として可能な限り示すことにあります(それができているかどうかは別として)。
そして、著者自身はそのスタイルについて、「実名も顔も出していないウェブ評論家」がウェブ評論を行ううえでは正しいアプローチだと考えています。なぜなら、どこの誰が書いたのかわからない文章に説得力を持たせるには、結局、文章自体に理論性(ロジック)と客観的証拠(ファクト)がなければならないからです。
ただし、このアプローチは、著者がみずから生み出したものではありません。
日本経済新聞社の元編集委員で、現在は「韓国観察者」と名乗っている鈴置高史氏の論考のスタイルを、そのまま真似ているだけなのです(真似られているかどうかは別として)。
当ウェブサイトで鈴置論考を定点観測的に取り上げているのには、いくつか理由があります。その最たるものは、記事の中に「誰にでも確認可能な証拠」が山ほど取り上げられており、それらの情報源も明示されているなど、論考自体に大変強い説得力がある、という点です。
世の中の「ジャーナリスト」の皆さんには、これができていないケースが多く、酷いものになると、自身の意にそわない社会現象などに対し、「科学を振りかざすな」、「科学を隠れみのにするな」などと逆ギレするような記事を見かけることもあります。
しかし、意見が対立している場面において、どちらの意見が正しいかを決めるよりどころとなるのは、科学です。科学には実証的アプローチ、理論的アプローチなどがありますが、どのようなアプローチをとるにせよ、科学は複雑な問題を解明する重要な手掛かりとなる手段であり、その科学を否定する論者に説得力などありません。
実際、鈴置氏の論考に用いられているものは、「仮説→検証」という観点においては、科学的なものです。鈴置氏自身が「韓国観察者」と名乗っていることからもわかるとおり、韓国を「観察する」というアプローチ自体が実証的なものでもあります。
『韓国民主政治の自壊』、世に出るのが少し早すぎた
ただし、鈴置論考にひとつ難点があるとしたら、ときとしてその論考が「早すぎる」こともある、という点でしょう。
その典型例がひとつあるとしたら、2022年6月に刊行された『韓国民主政治の自壊』という著作です。
現代日本人が必ず読むべき韓国観察者・鈴置高史氏の3部作その②『韓国民主政治の自壊』https://t.co/9WZ3vNRMlU
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) January 15, 2025
読者の皆さまもご承知の通り、韓国では昨年、尹錫悦(いん・しゃくえつ)大統領が戒厳令を発しようとして失敗し、逆に議会によって弾劾訴追されてしまったという国です。
しかも、『大統領弾劾訴追で朴槿恵氏の職権停止=8年前の未定稿』などでも述べたとおり、韓国という国ではしばしば、自分たちで選んだ大統領を国会が弾劾訴追しているという国でもありますし、酷いときには国民がデモで国会に弾劾訴追を強要したりすることもあります。
鈴置氏の著作は韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)政権の「従中・反米・親北」時代に出版されたものではありますが、「民主主義が機能せず自壊する」とする鈴置氏のこの著作、もちろん、現在の韓国の政治を眺めるうえでもそのまま役に立つのではないでしょうか。
なぜ鈴置氏は3年前に予言し得たのか
さて、その鈴置氏が韓国の民主主義の崩壊を予言していたことに関する、一種の「メーキング」的な論考が出ていました。ウェブ評論サイト『デイリー新潮』に14日付で掲載された記事がそれです。
ベネズエラ化する韓国 3年前に鈴置高史氏が「民主主義の崩壊」を予言できたワケ
―――2025年01月14日付 デイリー新潮『鈴置高史 半島を読む』より
今回の論考も5000文字を超える非常に長い文章ですが、軽妙な(しかしところどころピリリと辛みが効きすぎる)タッチで文章負担を感じさせずに読者に一気に読ませるものです。リード文に「無政府状態」、「内戦」などのやや過激な文言が踊りますが、それだけ現在の韓国が緊迫している、ということです。
とりわけ圧巻なのは、冒頭の韓国の「左右対決」とウォン安防衛について触れた箇所でしょう。
尹錫悦氏の発した戒厳令と、それに対する尹錫悦大統領逮捕に動いた公捜処、これを阻止した大統領警護処、さらには左派の李在明(りざいめい)「ともに民主党代表」の有罪確定をもくろむ保守派。年金基金のドル売り―――。
短い記述ですが現在の韓国の混乱がてんこ盛りでわかりやすく説明されています(※余談ですが、個人的には、日本のオールドメディアがこれらをろくに取り上げない時点で、もう日本社会は新聞、テレビを中心とするオールドメディアを必要としなくなってしまったのではないかとすら思う次第です)。
ただ、今回の鈴置論考の見どころは、なぜ鈴置氏が2022年の時点で(というかそれよりも以前の時点で)韓国の混乱を予言し得たかに関する部分でしょう。
日本の「韓国専門家」(?)のほとんどが、韓国を「成熟した民主主義国」と持ちあげていたなかで、その韓国の「民主政治」が「自壊する」と予言したのは見事というほかありません。これについて鈴置氏はこんな趣旨のことを述べます。
- ファクトをきちんと見れば『成熟』どころか『後退』あるいは『崩壊』は明らかだった
- 文在寅(ムン・ジェイン)政権下の2020年、法務部長官が指揮権を3回も発動した
- 1987年の民主化以降の指揮権に関する不文律をあっさり壊した
日本の政界用語でいうところの「憲政の常道」を破壊するような行動です。これに追い打ちをかけたのが昨年12月の尹錫悦大統領による戒厳令であり、すなわち左右双方が(日本的な言い方でいう)「憲政の常道」を破った、というのが鈴置氏の指摘です。
アジアのベネズエラ
考えてみれば、それも当然です。
独裁国家だと大統領が自分にとって気に喰わぬ政治家を手当たり次第に逮捕・投獄・弾圧したりしますが、尹錫悦氏の行動も、一歩間違えばこれと同じようなものだといえるからです。あるいは、左派も右派も、「寄ってたかって法治を壊している」格好だといえば良いでしょうか。
「憲政の常道」が韓国で根付かない理由などについて、鈴置氏は論考のなかでほかにもいくつか重要な指摘をしていますが、これについては鈴置論考で直接確認してください。
それよりもやはり「韓国のベネズエラ化」あるいは「アジアのベネズエラ」というパワーワードは、やはり気になるところです。
産油国だったベネズエラが、戦争を経験したわけでもないのに、いまや大量に難民を送り出す貧困国に落ちぶれたこと。同様に半導体大国である韓国だって、民主主義の自壊により政治が混乱し、米国との関係が破綻して最貧国に陥ることが絶対にないといえるわけもありません。
現代日本人必読の「鈴置3部作」
ちなみに先ほど挙げた『韓国民主主義の自壊』は、2018年10月に刊行された『米韓同盟消滅』、2024年9月に刊行された『韓国消滅』とともに、当ウェブサイトでは「鈴置3部作」と勝手に呼称している著作でもあります。
現代日本人が必ず読むべき韓国観察者・鈴置高史氏の3部作その①『米韓同盟消滅』https://t.co/c6lyFLiH3E
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) January 15, 2025
現代日本人が必ず読むべき韓国観察者・鈴置高史氏の3部作その③『韓国消滅』https://t.co/pd7KY0H6pi
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) January 15, 2025
そして、当ウェブサイトでは何度となくお伝えしてきたとおり、鈴置氏を「韓国観察者」と呼ぶのは、やや不正確でもあります。というのも、鈴置氏がたしかに直接「観察」している対象は韓国・朝鮮半島ですが、その視座は非常に広く、韓国論に人口動態論や米国、中国というファクターを必ず追加しながら議論しているからです。
これでピンと来る人もいるはずです。
とりわけ韓国が外交上、米国、中国との距離の取り方に失敗している、というのは、韓国という国家自体の運営の失敗を示唆するものであり、わが国だって韓国のことを笑っていられない、ということでもあるからです。
したがって、個人的に鈴置氏といえば、じつは「韓国観察者」であるとともに、「日本観察者」でもあるといえる、などと確信している次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
日本は命懸けで支えてあげなあきまへんわな
宿命でっしゃろ
毎度、ばかばかしいお話しを。
中国皇帝:「韓国も、党による一党独裁になれば、先進国になれる」
韓国も喜ぶでしょう。
(韓国だけではありませんが)今、「民主主義という看板を掲げているが、その民主主義とは何だ」が問われているのではないでしょうか。
北隣に「民主主義人民共和国」の看板がありますね。
韓国いらない。中国にくれてやれ
ベネズエラで止まればいいけど、
あっというまにベネズエラ。
油断してたらジンバブエ。
その下はもう北朝鮮しかない。
ボートピープル対策しなきゃ。
現職大統領の逮捕に意外性は全くないですが、浅い韓国史の一里塚にはなるのでしょうね。
>注目すべきは保守の警告は「左派が政権を握ると国が潰れる」ことに留まり「法治破壊の危険性」に及ばなかった点です。
今回の攻防でもこれがなかったんですねー。
ルールを軽視するんだからカオスにしかなんない。勝者総取り。上か下か。弱肉強食。
コップの中で続けてください。難民出さない程度に。
ボートで漂流中に遠くに見える陸地が韓国なのか北朝鮮なのかを見分けるには、
海岸を警備している兵士が海の方を警戒しているのが韓国
陸の方を警戒しているのが北朝鮮
なんてネタ話があるようですが、これからは韓国兵も陸の方を警戒するかもしれませんね。
いつもお疲れ様です。
とりあえずAmazonのリストに入れましたよ。政治経済関係の本は欲しいものが多くて、会計士さんのものも含めてすぐ辞めるわけではないのが申し訳ないですけど。
韓国を通し日本を観る…なんとなくわかるような気がしますよ。旧民主党政権や現政権は自分から進んで半島や大陸に跪こうとしているように感じられますし、そもそも45.8.15から現在まで教育や報道などでそうなるよう仕向けているのでは
ベネズエラには原油がありますし親米反米の理念闘争がありますが、韓国のは単なる私利私欲によるアフリカ化な気がしますね。
鈴置氏には日頃から参考になる事が多いですが、ここ20年の政治的堕落に関しては韓国人を過大評価し過ぎだと思います。