所得収支の「巨額黒字」で日本の経常収支は過去最大に
財務省が11日までに発表した国際収支統計によると、日本の2023年10月から24年9月までの1年間における経常収支は28兆3695億円の黒字で、データが存在する1996年以降で見て最大となりました。巨額の第一次所得収支黒字が経常収支黒字を押し上げている格好です。「悪い円安」論がウソであることは一目瞭然、といったところではないでしょうか。
経常黒字は過去最大水準
財務省は11日までに、2024年9月までの国際収支状況に関する統計データを公表しました。
これを加工したものが、次の図表1です。
図表1 国際収支の状況(前年10月~当年9月)
(【出所】財務省『国際収支の推移』データをもとに作成。以下同じ)
財務省のデータは1996年1月以降の毎月のものがあるのですが、そのままでは見辛いため、図表1では「前年10月から当年9月まで」のデータを集計して合算しています。
これによると2023年10月から24年9月の累計の経常収支は28兆3695億円の黒字で、これはデータが存在する1996年以降で見て最大です。「悪い円安」論がウソであることは一目瞭然、といったところではないでしょうか。
やれ「輸入品物価が上がった」だの、やれ「海外旅行に行き辛くなった」だのといった具合に、新聞、テレビなどの報道を眺めていると「日本は昔と比べてずいぶんと貧しくなった」といった印象を持つ人も多いかもしれませんが、現実には経常収支が過去最大なのです。
圧倒的な所得収支黒字
では、経常収支を押し上げている要因は、何でしょうか。
グラフからも明らかなとおり、最大の黒字ドライバーは「第一次所得収支」の巨額の黒字でしょう。
日本の経常収支構造は、1990年代あたりは「貿易収支で黒字を稼ぎ、サービス収支で赤字を垂れ流す」、といったものでしたが、その貿易収支は2012年以降は一部の時期を除いてほぼ恒常的に赤字を垂れ流すようになりました(図表2)。
図表2 国際収支の状況(貿易、サービス収支のみ)
どうしてここまで巨額の貿易赤字を垂れ流すようになってしまったのか―――。
とりわけ2022年や23年に関しては、その原因は明らかです。
基本的には、日本は1990年代以降、最終製品の輸入国に転落していること(とくに対中貿易赤字は巨額です)、そして2011年以降、当時の民主党政権によってなかば超法規的に原発の稼働が止められ、石油・石炭・LNGといった鉱物性燃料の輸入が増えているからです。
そして、2022年2月にロシアがウクライナに軍事侵攻したことなどの影響もあり、世界的に石油などの資源価格が急騰し、また、米FRBの利上げなどを理由にして円安が進み、最終的には巨額の貿易赤字がもたらされたのです。
もしも第一次所得収支の黒字がなければ、日本は経常収支の赤字国だった、ということでしょう。
旅行と知財の影響でサービス収支は徐々に改善
ただし、サービス収支に関しては、「旅行収支」や「知財収支」の黒字が年々拡大していることも事実です(図表3)。
図表3 国際収支の状況(前年10月~当年9月)
旅行収支が4.4兆円のプラスで、これに加えて「知的財産権等使用料」のプラスも大きく、このことから現在の日本が旅行先としての魅力を高めていること、知財の使用料などで稼いでいること―――といった構造が出ていることは間違いないでしょう。
ただし、第一次所得収支と比較させておくと、やはりサービス収支の内の旅行黒字や知財黒字は規模として非常に小さいことも指摘しておく必要がありそうです(図表4)。
図表4 国際収支の状況(前年10月~当年9月)
不確実性もあるが…円安は日本経済に多大な恩恵
いずれにせよ、円安が日本経済に大きな恩恵をもたらしているという状況については、基本的な事実としてしっかり抑えておくべき論点ではないかと思います。
この点、現在の日本が貿易黒字で稼ぐ国ではなく、海外向けの投資残高で巨額の黒字を稼いでいることは間違いありません。ただし、円安が長期化すれば、やはり貿易収支についてもいずれ改善していくものと推定されます。
とりわけ中国などからの最終製品の輸入コストが上昇してくると、これにより輸入するよりも日本国内で生産した方が安い、といった事態も生じてきます(これがいわゆる輸入代替効果です)。そうなると、輸入が削減され、貿易収支も改善に向かいます。
このあたり、米国で来年、ドナルド・J・トランプ政権が発足すると、為替相場にどのような影響が生じて来るか、といった情勢もなかなか読めないところではあります。また、日本国内の労働力不足・人件費高騰、あるいは電力不足問題などを踏まえると、日本経済にはさまざまな課題が山積していることも間違いありません。
しかし、以前の『【総論】円安が「現在の日本にとっては」望ましい理由』などでも取り上げたとおり、少なくとも円安が日本経済に対し、ただならぬレベルで大きな恩恵をもたらしていることは間違いありません。
このあたり、一部メディアがさかんに「悪い円安」論を唱え、また、最近だと国民民主党の掲げる減税策に「財源がどうたら」「税収減がこうたら」と反対論人を張っていますが、これについては当ウェブサイトとしても、経済学の基礎知識を適切に用いて議論を続けていきたいと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
第一次所得収支は在外子会社からの配当だろう。
支払い時に所在国で源泉税がかかるが、円安の今が移すチャンスと考えているのではないか。
日本に移して使い道あるのかな?
自社株買いか?
お、やはりこの話題が取り上げられましたね。
「悪い円高」
とコメントしてた人たち。
それを大きく報じたメディアさん。
これにはどうコメントするのかしら。
アーニャわくわく。
原発も次々に再稼働に入るなら、原油代金として経常収支が悪化していた要素もなくなるし、トランプがウクライナを調停に入るなら、そもそも原油価格も下がりそうだし。
「日本終わった」
「円は紙くずに」
なかなか日本は沈没しそうにないですけども。
中国は経済の不振を外国への安値販売(デフレの輸出)で乗り切ろうとしています。
アメリカは中国の安値販売に関税の大幅な引き上げで対抗しようとしています。
中国はアメリカの関税を逃れるため、東南アジアに製造拠点を移して迂回輸出で対抗しようとしています。
多分アメリカは、迂回輸出に対しても関税で対抗すると思います。
また、中国の安値販売は東南アジア諸国も対象となると思われますので、東南アジア諸国も関税で対抗することになると思います。
中国はこれに対抗するため、中国国内の外資系企業を人質に取るものと予想されます。
また、八方塞りの状態に追い込まれた中国は、国内の不満を抑えるためにも外国に対して軍事的な圧力を強めるものと思います。
トランプ大統領誕生で、東アジアの緊張は一気に高まります。
トランプ大統領は、果たして習近平国家主席を抑え込めるでしょうか?
日本の選択肢は、アメリカと足並みが乱れる事のないようトランプ大統領との連携を緊密にする必要があります。
また、原油の輸入が困難になる事態に備えて、原子力発電所の稼働を急ぐ必要があります。
日本は、この事態に石破政権誕生というかなり危うい事態に陥っていますが、来年の参議院選挙までには軍事と経済の危機管理に対応できる体制に立て直す必要があると思います。