一般人がSNSでメディアや政治家にも反論できる時代

共同通信がまたしても英語版で不適切記事→サイレント修正

一般人がX(旧ツイッター)に投稿した内容が、時として数千回、数万回と表示されるなど、影響力を与えることもある―――。そんな時代が到来したようです。自民党総裁選に批判的な日本共産党関係者のポストに「共産党の委員長は共産党員に投票権がない」と指摘する意見が拡散したり、メディアの報道に誤りを指摘するノートが付いたりするのです。

日本共産党って党首直接選挙制でしたっけ?

この世には東京・山手線の某駅名にもなっている地名を冠した怪しげな自称会計士がいるらしいのですが、じつはこの者、X(旧ツイッター)にアカウントを持っているらしく(@shinjukuacc)、調べてみたら、現時点でだいたい5,250人ほどのフォロワーを抱えています。

それはともかくとして、最近気づいたことがあるとしたら、ちょっとした「つぶやき」でも、意外と多くの人から支持されることがあり、それなりに社会的影響力を与えることもある、ということです。

こうした話題のひとつがあるとしたら、これかもしれません。

これは、日本共産党の立候補予定者の方が自民党総裁選を巡って「自民党員しか投票できない選挙の世論調査なんかやって何の意味があるのか」と疑念を呈したところ、これを引用するかたちでリポストされたもので、日本共産党では党委員長すら党員の選挙で選ばれないことを揶揄したものだそうです。

日本共産党と自民党:対照的な党首選

ちなみに『直接選挙が「非民主的」?共産党の志位委員長の謎主張』でも触れたとおり、日本共産党の委員長選挙が行われていない点について、党内からも批判が出たところ、日本共産党は昨年、その批判をした人を除名処分にしたことがあります。

日本共産党において党首の直接選挙が行われていない理由について、志位和夫委員長(当時)はテレビ番組に出演し、「直接選挙で党首を選ぶと党首に相当権限が集中する」、「必ずしも民主的だと思っていない」などとして、党首公選制の導入を改めて否定しています。

ちなみに日本共産党の委員長は今年1月の党大会で田村智子氏(参議院議員)に交代していますが、その際、日本共産党の国会議員や一般党員が、複数の候補者から田村氏を党委員長を選んだという形跡はありません。

これに対し、自民党総裁選は、国会議員は1人1票を持っているにせよ、(少なくとも第1回目の投票では)一般党員らが選挙権を持っており、この一般党員票の合計が、国会議員票の合計と同じ重みを持っています(ただし、決選投票は国会議員のみの投票で決定されます)。

故・安倍晋三総理大臣が無投票で再選された2015年9月の総裁選を除けば、少なくとも2001年以降の総裁選は、いずれも複数の候補が立ち、選挙を通じて総裁が選ばれていることに注意する必要があります(※ただし、選挙制度自体は変更されています)。

いずれにせよ、日本共産党では党首選挙が行われていませんし、それを実施すべきだと主張した党員が除名された実績もあるわけですから、その日本共産党の関係者が自民党総裁選に批判的な内容をポストしているのを見て、違和感を覚える人は多いのではないでしょうか。

怪しい自称会計士のXへのポストの表示件数(インプレッション数)が、本日午前10時頃の時点で約12万件に達しているのも、こうした違和感に共感する人がそれなりに存在することの証拠ではないでしょうか。

報道の誤りを指摘する一般人

そして、ネットが発達し、SNSを使う人が増えたことで、政治家や大メディアに対して、違和感を公然と述べることができるようになったというのも、やはり社会全体で生じている大きな変化の証拠といえるかもしれません。

こうしたなかで思い出しておきたいのが、今年5月18日に発生した、上川陽子外相の「うまずして」発言報道問題です。

上川陽子外相「産まずして何が女性か」に見る報道問題』でも取り上げましたが、これは、上川氏が静岡県知事選で、自身が支援する候補者を県知事選に当選させたいという意味で、「うまずして何が女性か」と述べたところ、共同通信がこれを出産と関わらせて報じたのです。

上川氏自身は発言の翌日、「私の真意と違う形で受け止められる可能性があるとの指摘を真摯に受け止める」と述べ、発言を撤回しているのですが、ただ、上川氏の「うむ」は「出産」ではなく「知事を誕生させる」という意味で用いられていることは明らかであり、これは明らかに上川氏の問題ではなく、報道の問題です。

しかも、『事実を整える』というウェブサイトの指摘によると、共同通信は記事配信後にタイトルや本文を差し替えたそうであり(実際の証拠については同サイトをご参照ください)、たとえば「うまずして」が、当初、漢字の「産まずして」となっていたのだそうです。

これに加えて『晴川雨読』というウェブサイトを運営する著者の方が指摘したとおり、英語版のウェブサイトだと、本文で明らかに “childbirth” という用語を使っていることが確認できます。

Japan minister queries women’s worth without birth in election speech

―――2024/05/18 20:48付 共同通信より

ではなぜ、共同通信はここで “childbirth” という用語をわざわざ使ったのか。

これについて共同通信は産経ニュースの取材に対し、「一連の発言は『出産』を比喩にしたものと考えられます」、「上川氏が『出産』と明示的に述べなかったとしても、発言の解釈として『childbirth』という表現を用いました」と回答しています。

外相「うまずして」英訳記事、男性に言及あり「明示なくても『出産』比喩」 共同通信回答

―――2024/05/21 19:04付 産経ニュースより

まさに、開き直っている格好です。

日本語版だと「炎上」するから訂正しておきながら、英語版ではそのまま誤った記事を垂れ流しているというのは、報道機関としていかがなものでしょうか。

福島処理水の英語版報道でノートの指摘

さて、こうした「前科」があるのが共同通信ですが、今度はこんな記事を配信したようです。

記事タイトルにははっきり、 “Fukushima water” と記載されていて、その誤りを指摘するコミュニティノートもバッチリと掲載されている状況です。ノートを引用すると、こんな具合です。

“Fukushima water” is an incorrect and stigmatizing word. The water is ALPS-treated water. See IAEA website:

https://www.iaea.org/topics/response/fukushima-daiichi-nuclear-accident/fukushima-daiichi-alps-treated-water-discharge

Note that Kyodo uses the correct term “処理水” (treated water) in their Japanese articles. Only in their English articles is the incorrect word used.

いわば、「共同通信は日本語記事では『処理水』の用語を使用し、英語版では誤った単語を用いている」、といった指摘です。

しかも驚くのは、これについては(著者が確認した限りでは)8月27日午前10時40分ごろまでに、記事表題と本文に含まれていたこの “Fukushima water” の表現が、 “Fukushima treated water” に差し替えられているのです。しかも、記事本文に「訂正した」との旨の記載はありません。

ただし、記事のURLをよく見ると、以下の通り、 “-fukushima-water-” がそのまま残っています。

https://english.kyodonews.net/news/2024/08/b330ff31736e-japan-pm-urges-china-to-lift-ban-1-year-after-fukushima-water-release.html

URLの文字列から復元した差替前のタイトルと、現時点で確認できるタイトルを比較しておきましょう。

  • 前)Japan PM urges China to lift ban 1 year after Fukushima water release
  • 後)Japan PM urges China to lift ban year after Fukushima treated water release

訂正するなら訂正するで、どこをどう訂正したのかわかるようにするのが報道の基本ではないかと思うのですが、違うのでしょうか?

マスメディア、必要ですか?

いずれにせよ、今までの世の中だと、新聞やテレビの報道が間違っていた場合であっても、私たち一般人レベルでその誤りに気付くことは非常に難しかったのが実情でしょう。

しかし、インターネットという「グーテンベルク革命」以来の大変大きな変革が訪れているなかで、私たち一般人は、新聞やテレビの報道に違和感を覚えた際、当局などの発表をもとに、その内容が正しいかどうかを、簡単に検証できるようになりました。

マスメディアの誤報に振り回されなくて済むようになったのです。

ただ、これは言い換えれば、新聞やテレビなどの報道を読む際、一次情報と照らし合わせながら読まなければ、正しい情報が得られないこともある、ということでもあります。あるいは、報道機関が「正確な報道」という自身の存在意義を、自身で放棄している、というべきなのかもしれません。

現在、社会で切実に求められているのは、「事実を事実として正しく伝える手段」です。そして、世の中には需要があれば、供給が出現するものです。

今後、「事実を事実として正しく伝える役割」を担うのが、果たしてXなのか、はたまた新たなメディアなのかは知りませんが、少なくとも新聞、テレビを中心とするマスメディアがを果たしていないことは間違いないと考えて良いでしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

    毎度、ばかばかしいお話しを。
    マスゴミ:「政治家に反論できるのは、我々だけの特権であるべきだ」
    だから、インターネット革命が嫌いなのですね。

  2. 駅田 より:

    もはやマスコミはアジテーターでしかないです。
    共同通信はマスコミの信頼を損ねる行為を繰り返していますが
    仲間からは庇われて問題にされません。

    腐りきっているリベラル野党とオールドメディアをなんとかしないとこのまま膿が作られ続けるでしょう

  3. Sky より:

    共同通信社の社員国籍或いは出自がどのような構成なのかは存じませんが、恐らくは英文記事は英語ネイティブの社員なり外注者なりが担当しているでしょう。当然生まれ育った文化、配信先の志向など日本人記者や日本向け志向とは異なっているでしょうし、更には共同通信社そのものが日本下げの意向がありその意向に沿った記事を配信しただけ、という可能性もありうるでしょう。
    これは欧米系メディアでも五十歩百歩で、アジア圏の記事は例えばキムだのなんだのの記者が署名者になっていることが多いので、そのキム記者の書いた記事は妙に韓国視点で日本の記事を書いていても不思議はありません。
    報道記事の場合、記述内容の問題の他、取捨選択、取り上げる大きさなどでも問題がありますが、後者の方は誤りではないだけ読者の指摘も困難で根深い問題が残ると感じます。
    更には、報道記事以外の記事や番組に関してはいわば何でもありであり、バイアスはかけ放題。殆ど野放し状態でしょう。
    民間企業の場合は仮に一般スポンサーが引いてしまっても、その場合、プロパガンダしたい側がメディア企業をお金で支配することすら可能でしょう。というか既にそうなっていると思います。
    NHKはお金で釣るのは難易度が高めでしょうが、それでも内部スタッフそのものが相当ハイレベル層まで汚染されているように感じます。
    NHK放送技術研究所は従来の研究開発の延長なんかやってる暇があるなら、コンテンツの質を担保する支援技術開発に真剣に取り組み「渋谷族」を成敗してほしいものです。ノンポリ決め込んでいる場合じゃないですよ。

  4. naga より:

    党首選を行うことが必ずしも民主的とは言えない -> 「必ずしも」を付けないと民主的とは言えない

    党首選をすべきと言った党員を即除名 -> これは民主的だそうな

    立憲や共産党には色々変なことがありますが日本のTVやラジオはこれらの人をゲストに呼んでもいい諾々と話を聞くだけのことが多いですね。稀に申し訳程度に少し突っ込むことがありますが、あれは「少し突っ込みますよ」と、予め根回ししてるんでしょうね。(エビデンス、そんなものねえよ)
    その点海外のマスコミは厳しく突っ込みますよね。

  5. 農民 より:

     この共産党議員、毎日新聞がせっかくイシバイシバと頑張っているところになぜ水を注しているのでしょう……
     あと世論調査は別に投票行動そのものではないし、閉じられた組織であったとしても世間がどう思っているかは気にするので、世論調査は無意味ではありません(有意義でもありませんが)。
     論理性も協調性も無い方なんですね。

  6. いねむり猫 より:

    日本の政治は、何をしても変わらない。
    それは、政治家は金儲けのことしか考えてない。
    今日のニュースで、二階俊博が中国友好協会の使節団を引き連れていった。
    あんなによぼよぼになっても行く必要があるのかな。
    自民党は、派閥解消とか言っていてもほとぼりが覚めると又同じことをやるね。
    麻生派が健在で、戦後の日本は国政は地に落ちた。

    1. 匿名 より:

      >政治家は金儲けのことしか考えてない
      今の政治家はみんな神奈川県相模原市に豪邸を所有しているのでしょうか?
      仮にそうであっても中韓に執着するよりも金に執着する方がまだましです。
      もちろんその様なことがないに越したことはありません。

      >戦後の日本は国政は地に落ちた
      そんなに長生きはしていませんがその短い人生の中で本当に日本が終わったと感じたことが十数年前にありました、それにっ比べれば、、、、、

      >自民党は、派閥解消とか言っていてもほとぼりが覚めると又同じことをやるね。
      同じ考え、志を持ったものが集まり数がまとまれば党を作る。党が大きくなれば細分化されグループが出来る。
      で、派閥の何がいけないのでしょうか?

    2. 匿名 より:

      文句あるならお前が政治家になって変えれば?
      他責的な思考しか出来ない哀れな奴だ。

  7. sqsq より:

    記者だと思わず活動家と考えれば合点がいくね。

  8. 引きこもり中年 より:

    本日の朝日新聞に世論調査として岸田内閣の支持率が出ていましたが、もうすぐ辞める人の支持率を聞いて、どうするのでしょうか。(もし、これが高かったら、「岸田総裁は、今から総裁選に出馬すべきだ」というのでしょうか)

  9. 名古屋県民 より:

    オールドメディアも共産党も総じて、ウソをつくから蔑まれ嗤われ嫌われてんのがなんでわかんないんでしょうかね。
    コソコソ主目的を隠して高尚そうに振る舞わんと堂々と言動に一本筋を通しなさいよ。

    NHKは被害者ぶっとらんと社長が肉筆で「NHKの総意を代表して申し上げます。私は日本など領土を持つべきでなくすべてを中国に献上すべきと考えています。」と書面を公開すればよろしい。

    共産党は党の指針として「日本国の民主主義を目指す。民とはすなわち不破哲三および志位和夫を示すものとする。」とでもHPの一番上に書いとけばよろしい。

    共同通信も「ファクトにこだわる」だの「公平さを重んじる」とかもちゃんと「我々が定めたファクトにこだわれ」「我々が定める公平さを重んじろ」と記しておけばよろしい。

    1. 雪だんご より:

      >ウソをつくから蔑まれ嗤われ嫌われてんのがなんでわかんないんでしょうかね。

      さすがに自覚はあるんじゃないでしょうかね?
      絶対に明言してはいけないタブーなだけであって。
      「私は嘘つきで、あなたに悪意と敵意があります」とわざわざ言う訳もなく。

      もっとも、自覚があっても「くそっ、愚民共が余計な知恵をつけやがって」
      くらいにしか思って居なさそうですが……

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