動き出す日本版ESTA…ビザ免除対象国見直しも必要

日本版ESTA、あるいは「JESTA」の2030年からの導入を目指し、政府が調査費の計上を目指しているとする報道が出てきました。以前の和田政宗氏の説明通りの動きです。これはこれで「入口段階で」望ましくない外国人の排除につながるため、歓迎すべき動きではあります。ただ、そもそもビザ免除対象国は妥当なのでしょうか?

速報:2ヵ月連続して訪日外国人が過去最多を更新

本日の「速報」、でしょうか。

日本政府観光局が21日に発表した2024年7月の訪日外国人(速報)は3,292,500人と、2ヵ月連続して過去最大を更新しました。内訳で調べてみると、中国人の入国者数が増え、韓国人の入国者数を追い抜いたことなどが寄与したようです(図表)。

図表 訪日外国人・国籍別内訳(2024年7月)
人数構成割合
1位:中国776,50023.58%
2位:韓国757,70023.01%
3位:台湾571,70017.36%
4位:香港279,1008.48%
5位:米国251,2007.63%
6位:フィリピン55,5001.69%
7位:タイ53,5001.62%
8位:ベトナム49,7001.51%
9位:豪州48,6001.48%
10位:カナダ48,2001.46%
その他400,80012.17%
総数3,292,500100.00%

(【出所】日本政府観光局データをもとに作成)

このデータについては、機会があれば一両日中に、またじっくりと分析してみても良いと思っています。

和田政宗氏のESTAに関する説明

それはともかくとして、訪日者数が増えていることは、観光産業として見れば、本来ならば歓迎すべきことかもしれません。ただ、当ウェブサイトとしては、訪日外国人が増えることを手放しに良いこととは考えていません。不法滞在などの問題も生じるからです。

以前の『「入口と出口で不法滞在者を減らせ」…和田議員の説明』では、自民党の和田政宗参議院議員がウェブ評論サイト『月刊Hanadaプラス』に寄稿した記事をもとに、「日本版ESTA」という話題を取り上げたことがあります。

この「日本版ESTA」とは、不法滞在など「好ましくない外国人」を、「入口段階」で排除する仕組みと理解することができます。

ESTAは自国に渡航しようとする外国人の入国の適格性を事前に判断するためのシステムであり、先行して導入している米国の事例でいえば、「ビザ免除対象国」の国民は米国行きの便に搭乗するよりも72時間前までに電子申請する必要があります(※日本語にも対応しています)。

これについて、「入国ビザとなにが違うの?」と思う方もいるかもしれませんが、じつはESTAと入国ビザは別物で、もともと日本国籍を有している人などは、観光、商用などの短期滞在を目的に米国に渡航しようとする場合、入国ビザの取得は免除されており、この扱いは現在でも維持されています。

より詳しくいえば、「ビザ免除プログラム」を使って渡米するための条件として、2009年以降、このESTAの渡航認証という仕組みが導入されたのです。

ESTAでは、事前に渡航者情報(氏名やパスポート番号、生年月日、国籍、連絡先メールアドレスなど)や滞在先などの必要事項を入力し、クレジットカードで料金(21ドルだそうです)を支払えば、問題がなければ渡航許可通知が届くそうです(通常、数日の時間がかかるようです)。

そして、米国に向かう航空機などでは、搭乗手続の際におそらくカウンターでその本人がESTAの認証を取得しているかどうかをチェックしているのだと思われ、この段階でESTAの認証が確認できなければ、そもそも航空機などに搭乗できないようです。

想像するに、ESTAでは、その裏側で米国の入国管理当局者が申請された情報などをもとに何らかの「ブラックリスト」などと照合しているのだと思います。

米国でかつて何かよからぬことをしでかして逃亡したような場合などは、ESTAが拒絶される可能性もあるでしょう。

想像ですが、たとえば「米国内で借りたレンタカーで交通違反をしてしまい、罰金を科されたものの、支払わずに逃げた」、などの事例だと、ESTAを申請しても認証が下りないような気がします(あくまで想像です)。

入口段階での排除も重要

こうした仕組みは、非常に重要です。

わが国の事例でいえば、旧民主党政権時代あたりから、「とにかく日本に入国し、難民申請を繰り返し、事実上、無限に日本に滞在する」、「難民申請中でも就労可能」といった運用がなされていたため、とにかく日本に入国さえしてしまえば、その後は難民申請を繰り返すことで、事実上、日本で働くことができていたのです。

これについては安倍政権時代の2018年1月以降、一定要件を満たさない場合は就労許可が出なくなり(法務省『就労制限の対象となる難民認定申請者について』等参照)、これに今年施行された改正入管法では難民申請回数に事実上の制限が設けられました。

一部情報によると、強制送還の件数も着実に増えているそうです。

ただ、やはり「不法滞在状態になってしまってからの強制送還」だと、取り締まりには限界があり、だからこそ和田政宗氏が主張する通り、ESTAを含めた「入口段階」の制限が必要だったのです。

こうしたなかで、この「日本版ESTA」に続報が出てきました。

<独自>外国人観光客に渡航前審査導入へ 「ビザ免除」悪用の不法滞在排除狙う

―――2024/8/21 14:00付 産経ニュースより

産経によると日本版ESTA(記事では「JESTA」と呼称されています)の2030年までの導入に向け、まずは来年度予算で調査費の形状を目指すそうです。「2030年までに日本版ESTAの導入を目指す」というのは、4月時点の和田氏の説明通りです。

ビザ免除対象はこれで良いのか

ただ、冷静に考えてみると、ノービザで日本に入ってくる人たちに、「望ましくない人たち」が含まれている可能性は疑わねばならず、そもそもビザ免除措置を導入している相手国が適切なのか、という点については、冷静に考える必要があります。

外務省『ビザ免除国・地域(短期滞在)』によると、日本は今年4月1日時点で、世界71ヵ国・地域に対するビザ免除措置を導入しています。

ビザ免除国・地域一覧(2024年4月1日時点)
アジア…9ヵ国

インドネシア、シンガポール、タイ、マレーシア、ブルネイ、韓国、台湾、香港、マカオ

米州…16ヵ国

米国、カナダ、アルゼンチン、ウルグアイ、エルサルバドル、グアテマラ、コスタリカ、スリナム、チリ、ドミニカ共和国、パナマ、バハマ、バルバドス、ブラジル、ホンジュラス、メキシコ

大洋州…2ヵ国

オーストラリア、ニュージーランド

中東…4ヵ国

アラブ首長国連邦、イスラエル、カタール、トルコ

アフリカ…3ヵ国

チュニジア、モーリシャス、レソト

欧州…37ヵ国

アイスランド、アイルランド、アンドラ、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、キプロス、ギリシャ、クロアチア、サンマリノ、スイス、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、セルビア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ブルガリア、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、北マケドニア、マルタ、モナコ、ラトビア、リトアニア、リヒテンシュタイン、ルーマニア、ルクセンブルク、英国

(【出所】外務省『ビザ免除国・地域(短期滞在)』。ただし、国・地域によっては滞在可能日数が90日ではなく、それよりも短いこともあります。また、英国のように滞在可能期間が6ヵ月、という事例もあります)

この点、現在問題となっている一部の国の場合は、そもそも論としてビザ免除対象国から外すべきではないか、といった議論が、霞が関からはあまり聞こえてこないのは不思議です。

そもそもこれらの国々、ビザ免除プログラムを適用するのが妥当なのか。

ETSAなどのあらたな仕組みの構築ももちろん必要ですが、「そもそも論」としてわが国の治安を守るという観点からは、ビザ免除国の範囲を不断に見直すというのが基本形ではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. カズ より:

    少なくとも、日本国内での不法行為者(含む竹島上陸)の再入国は禁じて欲しいですね。

  2. naga より:

    2030年の実施を目指すとは 随分と悠長なことです。

  3. 一之介 より:

    何で実施までに6年もかかるんですかね
    めっちゃ楽な仕事ですね。役人?さん美味しすぎてヤメられまへんね。と、思ってしまいます。
    まあ、道路一本つくるのに半世紀かかる国やし、知事の反対で国家的事業が頓挫するくらいですからね仕方ありまへんかな。アホらし。

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