深まるロシアの中国依存…「友好国」も取引を続々中断
ロシアのメディア『ザ・モスクワ・タイムズ』の報道によると、米国財務省によるモスクワ証券取引所等に対する経済制裁の影響で、ロシアの外為市場の取引の99.6%が人民元で占められているのだそうです。それだけではありません。どうも、ロシア自身が「友好国」と位置付けて頼りにしている相手国の銀行が、ロシアとの取引を断り始めているようなのです。
目次
ロシアに対する経済制裁と「ダーティー人民元」
昨日の『ロシア産ガス価格4分の1に暴落か?人民元決済制限も』では、『UAWIRE』というウェブサイトに掲載された、こんな記事を取り上げました。
Russia faces major trade disruption as Chinese banks reject Yuan payments
―――2024/07/20 11:00付 UAWIREより
これは、『ザ・モスクワ・タイムズ』紙の報道を引用する格好で、「ロシアが中国からの輸入品を決済する際、ロシア国内で購入された人民元で支払おうとしても、中国の銀行から断られる事態が増えている」、などと報じた記事です。
これは米国財務省が先月発動した第二次制裁の影響で、ロシア国内のモスクワ証券取引所やインターバンク市場などで購入された人民元の受取を中国の銀行などが拒絶するようになっている、とする話題です(その際に出て来た「ダーティー人民元」は、一種の「パワー・ワード」かもしれません)。
モスクワタイムズ「ロシアは中国への依存を高めている」
こうしたロシアの通貨市場の状況は、個人的に「大変興味深い話題」だと思っているのですが、そのロシアの通貨市場の現在の状況について、もう少し詳しく書かれた記事がないか探したところ、発見したのがこんな記事です。
ЦБ констатировал тотальную зависимость российского валютного рынка от Китая
―――2024/07/10付 The Moscow Timesより
リンク先記事はロシア語ですが、翻訳エンジン(※)で英訳しながら読むと、なかなかに参考になります(※本当は翻訳エンジンで直接、日本語に訳しながら読みたいところですが、残念ながらロシア語から日本語への翻訳は制度が低いため、内容をできるだけ正確に読み取るうえでは英訳が確実です)。
記事表題は「中央銀行はロシアの通貨市場が中国への依存を高めていると指摘した」、といったところで、内容を要約すると、こんな具合です。
- モスクワ証券取引所はかつて、1日の取引量が300兆ルーブルを超えるなど、東ヨーロッパで最大の取引規模を誇っていたが、現在は限られた通貨の「交換所」に墜落した
- ロシア中銀の金融市場リスクレビュー7月号によると、米国がロシアの取引所や清算機関を対象とした制裁を発動したことで、人民元取引が通貨市場の99.6%を占めるに至った
- 戦争勃発以前だと、人民元取引はモスクワ証券取引所における外為取引の3.5%を占めるに過ぎなかったが、2024年初頭にその割合が50%に到達し、いまやモスクワ証券取引所から人民元を除くと何も残らない状況だ
- 同取引所のウェブサイトによると、通貨市場の残り0.4%は「友好国」通貨、たとえばベラルーシ・ルーブルやカザフスタン・テンゲなどだ
…。
人民元依存は明らかに…トルコリラ取引は急速に縮小
なかなかに、興味深い状況です。
ここで思い出すのが、以前の『上海機構参加国との取引の9割が自国通貨決済=ロシア』でも紹介した話題です。
ロシア大統領かつ国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪者として指名手配中のウラジミル・プーチン容疑者は今月4日、カザフスタンの首都・アスタナで開かれた上海協力機構(SCO)の首脳会談で、ロシアとSCO諸国との貿易において、決済の9割超が自国通貨建てだと述べています。
「SCO諸国は相互決済における自国通貨の使用を増やしており、SCO加盟国とのロシアの商取引におけるSCO諸国のシェアは、2024年の最初の4ヵ月間ですでに92%を超えている」。
SCO加盟国通貨のなかで「国際取引が可能な通貨」、などといわれても、なかなかに困惑するところではありますが、これについては当ウェブサイトにおいて「自国通貨といっても、人民元くらいしか考えられない」と申し上げてきた内容の正しさが裏付けられた格好です。
ちなみに『ザ・モスクワ・タイムズ』によると、ロシア国内では2年前の時点で、ドルやユーロといった「有害通貨」に代替し得る通貨としては、人民元と並んでトルコリラがその有力候補だったそうです。
しかし、記事によるとそのトルコリラの取引は「急速に縮小」しており、昨年時点で1日あたり約20億ルーブル、つまり毎月500億ルーブルに達していたのが、現時点では約100分の1、1日当たり2000万~3000万ルーブル程度に激減している、などとしています。
その理由として挙げられているのが、トルコの銀行も米国のモスクワ証券取引所への制裁を受けてロシアとの間でトルコリラ建ての取引を大々的に断るようになり始めたこと、およびロシア最大規模のノンバンク・ディーラーがリラ取引の終了を発表したこと――などです。
人民元取引中断ならロシアの外為市場消滅も
ほかにも『ザ・モスクワ・タイムズ』の記事では、経済制裁の影響でモスクワ証券取引所における外国為替取引の規模が3分の2に減少した、などと記載されており、具体的にはそれまで4180億ルーブルだったデイリー・トレーディングが6月後半には2820億ルーブルになったのだとか。
そして、ロシアの外為市場の圧倒的多数が人民元建てとなっているなかで、かりに人民元の取引が完全に停止した場合は、「ロシアの外為市場が実質的に消滅する」可能性がある、などとしています。
なにより興味深いのが、ロシアが当初、「友好国」だとみなしていた相手国が、ロシアの銀行との通貨取引を続々とブロックしている、という趣旨の記述でしょう。
実際、先日より当ウェブサイトでも取り上げている通り、中国の銀行自体も米国からの二次的制裁を恐れ、人民元建ての取引を断る事例が増えているようです。
諸外国を「非友好国」と「友好国」に分けたのはロシア政府ですが、そのうえで頼みの綱としていた「友好国」ですら、ロシアとの取引を(公式には)断り始めたというのは、注目に値する現象といえるかもしれません。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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とはいえ中国側も、ロシアの原油ガス石炭を喉から手が出るほど必要としています。
双方の思惑が一致して、反体制分子を兵士としてロシアに送り込み、代金の代わりにするようなことが無いように、十分に監視し牽制する必要があると思います。北朝鮮にも同じことがいえます。反社勢力が開き直ると手がつけられないですね。
通貨経済もですが、噂にのぼるロシアの原発故障による放射能漏れがさらに追い打ちをかけるのでは?
カネは無くとも、「ヒトのいのちは無尽蔵」と思っている連中ですからね。露も中も北も。
トルコリラは駄目、人民元取引中断ならロシアの外為市場消滅、、、「無血停戦交渉」なんてしますでしょうか?ちょっと懐疑的です。ウクライナは地勢上、重要な位置にあり資源豊富、工業力もある。でも格下で旧同盟国であり、かつては完全にソ連が支配していた地域です。なりふり構わずドロ沼化するのが怖いです。米国、欧州諸国も今一つ及び腰だし、日本も飛び道具(憲法改正して本邦に害を及ぼす、ならず者国家と認定し、海外派兵できる環境)がないと、厳しい経済制裁止まりでしょう。
中国もロシア依存を強めているらしい
>ロシア国内のモスクワ証券取引所やインターバンク市場などで購入された人民元の受取を中国の銀行などが拒絶するようになっている・・→(ダーティ人民元)
米国の二次制裁によるまでもなく、決済原資の資本的裏付けが疑われつつあるのではないのでしょうか?
うかうかしてると、内輪での信用創造ロンダリングで生じた「数字」を掴まされ兼ねないんですものね。
>同取引所のウェブサイトによると、通貨市場の残り0.4%は「友好国」通貨、たとえばベラルーシ・ルーブルやカザフスタン・テンゲなどだ
カザフスタンでは男性用通貨と女性用通貨が存在するのですか?(´・ω・`)?