電気事業連合会の提言集で原子力と火力の重要性を指摘
政府に対する耳の痛い提言
原子力を安定電源として位置付けたうえで、火力も脱炭素化の技術開発をしつつ、主力な電源として位置付けるべき――。こんな趣旨の提言を、電気事業連合会が27日に公表しました。『エネルギー基本計画の見直しに向けて』と題した資料では7つの重要論点を指摘していますが、いわば、政府に対する耳の痛い指摘であり、日本の電力政策の見直しを促すものだといえます。
電気事業連合会の提言資料
これは、久しぶりに「勉強になる」資料かもしれません。
電気事業連合会が27日、『エネルギー基本計画の見直しに向けて』と題した資料を公表しました。
エネルギー基本計画の見直しに向けた業界の考え方について
―――2024/05/27付 『電気事業連合会からのお知らせ』より
資料は電気事業連合会が取りまとめたもので、A4ヨコ型で2ページにまとまっているのですが、これが大変にわかりやすいのです。敢えて当ウェブサイトなりにごく大雑把に要約すれば、「ガタガタになった日本の電力政策を建て直せ」とする、電気事業者側からの政府に対する耳の痛い提言ではないでしょうか。
「安定供給・安全保障が毀損する恐れが顕在化」
冒頭には、こんな趣旨の記述があります。
- 2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、世界規模での資源争奪戦で燃料価格が高騰。日本は資源に乏しい上に脱炭素化の潮流も加速し、エネルギー供給構造は複雑さを増している。
- 国内では東日本大震災以降、エネルギーミックスのバランスが大きく崩れており、需給逼迫や中長期的な電力の供給力不足などが課題。「S+3E」のうち、安定供給・安全保障が毀損する恐れが顕在化している。
文章に出て来る「S+3E」とは、「安全性」、「安定供給・安全保障」、「環境への適合」、「経済効率性」のことです。
S+3Eとは?
- Safety 【安全性】
- Energy Security 【安定供給・安全保障】
- Environment 【環境への適合】
- Economic Efficiency 【経済効率性】
重要な論点としての7項目
そのうえで、電気事業連合会は「エネルギー基本計画に向けた重要な論点として、次の7項目を列挙しています。
エネルギー基本計画の見直しに向けた重要な論点
- 将来の不確実性を見据えたシナリオ設定
- 安定供給とエネルギー安全保障の重要性の明確化
- 再生可能エネルギーの推進
- 原子力発電の活用の明確化
- 火力発電の維持・確保、脱炭素化の推進
- 電化の推進
- GX実現に向けた環境整備
それぞれの項目について、『背景と課題』、『今後求められる事項』を列挙する、というものですが、目に付いた項目を紹介すると、こんな具合です。
将来の不確実性を見据えたシナリオ設定
- 安定供給の観点からは、将来の電力需要の増加に確実に対応できる供給力の確保が求められる
- そのためには、まずは長期的な電力需要想定の策定が必要
同連合会によると、電源開発には、たとえば太陽光が約8年、風力が約10年、原子力が約20年…、といったぐあいに、電源の建設には「数十年単位のリードタイムが必要」であるとされ、「事業者が適切に投資判断できるための環境整備、全体の需給構造の把握が求められる」、と記されています。
裏を返せば、こういうことではないでしょうか。
「現在の電力政策は数十年単位の需給見通しもなく、事業者が適切に投資判断できるための環境も整っていない」。
原子力規制委員会を筆頭とする政府各省庁・各部門の怠慢を、厳しく叱り飛ばしている格好です。
原子力の推進、火力の投資
続いて、『安定供給とエネルギー安全保障の重要性の明確化』の項目にも、なかなかに厳しいことが書かれています。
安定供給とエネルギー安全保障の重要性の明確化
- 日本経済と国民の暮らしを支えるために、「安定供給・安全保障の確保」の重要性を改めて明確にする
- エネルギー安全保障の観点から、国や公的機関による主体的な資源・燃料確保策が必要
これも裏を返せば、こういう指摘ではないでしょうか。
「現在の日本政府はエネルギーの安定供給・安全保障の確保をないがしろにしており、国・公的機関は資源・燃料確保の責務を果たしていない」。
また、電気事業連合会は『再生可能エネルギーの推進』の節で、こう指摘します。
再生可能エネルギーの推進
- 主力電源として、安定供給と経済性を考慮した再生可能エネルギーの技術開発を促進
- 最大限の導入に向けた取組の推進とともに、適切な電力系統の整備や費用負担の在り方の整理が必要
これも、太陽光や風力など、「天候で出力が変動する」という性質の再エネに関しては、課題が非常に多い、という指摘でしょう。再エネを推進するならば、その分、電力系統の安定を維持するためのコストも上がるよ、という警告です。
無責任に再エネを推進し、その結果、電力系統の維持が難しくなっている現状において、「電力系統を維持するためのコスト」は、何らかの形で天かが必要だ、ということです。
そして、重要なのは『原子力発電の活用の明確化』です。
原子力発電の活用の明確化
- エネルギー安全保障に起用する脱炭素電源として位置付けたうえで「最大限の活用」を明確にする(再稼働や新増設・リプレースの必要性)
- 建設リードタイムが特に長い原子力は、投資・コスト回収促進につながるじぎょうかんきょうの整備やファイナンス支援等の制度措置の構築が必要
正直、これを民間事業者の側に言わせるというのは、やはり、国の無責任さの象徴でしょう。
民主党政権の負の遺産は、「再エネ賦課金」、「再エネ推進」などの政策だけではありません。原子力発電所の運転を止めてしまったことで、原子力発電という電源が事実上失われ、また、設備更新も滞ってしまっているのです。
当然、この十数年、原発の稼働が停止している間も設備の劣化は進みますし、設備更新が進まないなかで、いわゆる「60年ルール」のために、稼働できる原発がどんどんと減ってしまうことも懸念されます。
ただ、日本の電力政策のおかしな点は、これだけではありません。火力を目の敵にするかのような脱炭素化の推進も、やはり、見直しが必要な論点のひとつではないでしょうか。
『火力発電の維持・確保、脱炭素化の推進』の節には、こんな趣旨のことも記載されています。
火力発電の維持・確保、脱炭素化の推進
- 安定供給を維持するために、既設火力発電の位置付けを明確にすることが必要
- 脱炭素燃料を混焼する火力発電をトランジション電源と位置付け、カーボンニュートラル実現の役割を担うことを明確にする
- 水素・アンモニア・CCUSの推進へさらなる制度措置が必要
電力系統を維持するうえで、火力発電が極めて重要な役割を担っているという論点については、以前の『【総論】電力系統の維持に適さない太陽光発電の問題点』などでも指摘してきたとおりですが、電気事業連合会としても火力を敵視するのではなく、ガス排出量を抑制する火力発電の開発を提唱しているのです。
これをどう読むか
電気事業連合会も立場があるためでしょうか、政府や一部無責任な環境活動家らに対する批判のトーンはかなり抑制的です。また、電力事情に詳しくない人が読むと、「なんだかよくわからない」と思うかもしれません。
しかし、電力政策や安全保障を専門としている立場の人が読めば、この提言の「裏」にある、政府などの政策への怒りが伝わってくるのではないかと思います。
太陽光、風力といった再エネが、じつは電力系統の維持に脅威となっているという実情もありますし、そもそも再エネの多くは安くなく、これに対ししっかりと安全対策を施した原子力発電、環境に関する研究開発をしっかり行った火力発電こそが、私たちの生活を支えるのです。
そういえば、環境活動家の方々は、なぜか日本をやたら舌鋒鋭く批判するわりに、日本の10倍以上の地球温暖化ガスを排出している中国のことをほとんど批判しない(『中国が化石賞を受賞しない理由は「弾圧される可能性」』等参照)という特徴があります。
その意味では、環境活動家こそ、無責任の極致だと考えておいて差し支えないのではないか、などと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
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電力が逼迫した際に無理に発電所を動かすのではなく
一度停電を発生させるべきです。
電気が来ることが当たり前に思っている国民に電気が使えない痛みを与えないと
永遠と自称環境活動家が幅を気がせ続けるでしょう。
電力の安定供給は苦労して獲得していることを理解しなければなりません。
反原発派や自称環境活動家が一番火病るでしょうね。自分たちの主義主張を完全に棚に上げて。
ブログ主さま
本件、取り上げていただきありがとうございます。
電気事業連合会。
ここは偏向マスコミが発信する偏向報道に対し以下のページを設けています。一読の価値あり。
関連報道に関する当会の見解
https://www.fepc.or.jp/about_us/pr/opinion/index.html
例のしびれる社長メッセージの会社をはじめ常連さんが登場しています。
太陽光発電は夜間には発電できない
かたやEV推進をめざす政策をかかげるも、ガソリンの熱量を代替する電力供給についてのビジョンははとんど見ない、精々夜間電力の活用等で本格的にEVが普及した場合のエネルギーの裏付けにはならないと思う。
論点がずれるが「悪い円安」論者は日本の利上げをあたかも唯一の円安解決策のように主張する。もし日本の原発がすべて稼働し化石エネルギーの輸入が減り貿易収支が改善した場合為替はどの程度円高に触れるのだうか?
電気は来て当たり前。
これを達成するための裏方の努力を忘れていませんか。
24時間365日休みなく設備を動かし点検し原料を供給し、暑い日も寒い日も風の日も安定して電気を届けています。
本当にありがたいことです。
さて電気の質とは電圧と周波数の安定です。
電源種類が増えればそれだけ質の確保が難しくなります。特に変動が大きい自然エネは
追伸 自然エネを声高くしている方は「中国」には非難しないんですよねえ
CO2発生量は2~3倍 公式発表より多いそうです。
嘘つきと言い訳が文化ですからね