「再エネ財団から意見聴取控える」という問題ではない

河野太郎規制改革担当相が設置したタスクフォース(TF)で民間構成員が提出した資料に中国国営企業の透かしが入っていた問題で、環境省は国会で質問に対し、「懸念が払拭されるまでの間(同省の有識者会議で)自然エネルギー財団から意見を聞くことは控える」との方針を示したのだそうです。ただ、くどいようですが、問題の本質は、そこではありません。太陽光を中心とする再エネ発電の非効率性と環境負荷の大きさ、なによりコストの高さ、発電量の不安定さを認識する必要があります。

透かし問題で財団側が反論

河野太郎・内閣特命担当大臣(規制改革等担当)が設置した内閣府のタスクフォース(TF)で、民間構成員(現在は辞任)が提出した資料に中国国営企業の「透かし」が入っていたことが、ネット上などで話題となっています。

これに関連し、元民間構成員が事業局長を務めている「公益財団法人自然エネルギー財団」が8日に公表した『自然エネルギー財団と中国国家電網の関係について』というページのなかで、同財団と中国企業とは資本関係などがない、などとする声明を発表しています。

この点については、おそらくはそのとおりでしょう。

ネット上では保守的な論客やメディアを中心に、同財団に対する批判が過熱しているきらいがあり、これに加えて同財団があたかも「中国政府の意向を受けて動いている」かのように決めつける意見も出ていることは間違いありません。

環境省は「懸念払拭されるまで意見聴取控える」

こうしたなかで出てきたのが、こんな話題です。

中国企業ロゴ問題「懸念払拭されるまで自然エネ財団から意見聴取は控える」 環境省

―――2024/04/09 20:08付 産経ニュースより

この「透かし問題」を巡って、産経ニュースによると、環境省は参院環境委員会で国民民主の浜野喜史氏の質問に対し、「懸念が払拭されるまでの間(同省の有識者会議で)自然エネルギー財団から意見を聞くことは控える」との方針を示したのだそうです。

これにより、同財団が政府の方針決定から排除されることで、すべての問題は解決される――。

もしも同財団が「諸悪の根源」なのであれば、そのように思う人が出て来ても不思議ではないかもしれません。

問題の本質は「透かし」ではない!

ただ、当ウェブサイトのスタンスは、ちょっと違います。

本件については『電力問題の本質は「資料に中国企業の透かし」ではない』などでも取り上げたとおり、問題の本質は、「透かしが入っていた」ことではありませんし、ましてや同財団や事業局長らが「諸悪の根源」などではありません。というよりも、「資料に透かしが入っていたこと」に矮小化されてはなりません。

この点、当ウェブサイトとしては、中国政府がさまざまなチャネルを通じ、日本のエネルギー政策に影響を与えようとしているという可能性は排除できないと考えているのですが、それ以上に重要なことがあるとしたら、日本国内で太陽光発電などが「利権」化されている、という点ではないでしょうか。

くどいようですが、そもそも電力系統に太陽光発電などの再エネ電源を、うかつに組み込むべきではありません。

太陽光発電を含めた再エネ電源は①安くなく、②非効率で、③環境に悪く、そして何より④(とくに太陽光と風力については)発電量の人為的なコントロールがほぼ不可能である、という欠陥を抱えているからです(『「原発やめれば電気代は安くなる」というのは事実誤認』等参照)。

電力系統の維持に不向き

この中でも特に深刻なものは、太陽光発電自体、電力の需給を狂わせる要因になりかねない、という点でしょう。

そもそも電力網は、供給側と需要側の電力量が一致していなければなりません。交流電源には周波数というものがあり、電力の需給バランスが崩れると周波数が狂ってしまうからです(ちなみに周波数が狂うだけで壊れてしまう精密機器も多いと聞きます)。

このため、電力網を安定的に維持するためには、四六時中、安定的に電力を生み続ける「ベースロード電源」(原子力や水力、地熱など)を基本としつつ、ピーク時とそうでないときに発電量を簡単にコントロールできる火力発電(LNGなど)をミックスする、という考え方が基本形です。

このやり方だと、「需要が増えるであろう時間帯に発電量を増やし、そうでない時間帯には発電量を減らす」、「夜間など電力が余ってしまう時間帯には、余剰電力を揚水などで消費する」といった具合に、供給側だけをコントロールすれば済みます。

ところが、太陽光発電はその日の時間帯や天候、あるいは季節や緯度などにより発電量が変わるため、正確な発電量を読むことが難しく、したがって、電力供給に占める太陽光発電の割合が高くなってしまうと、需給バランスを一致させるためのファクターが増えてしまい、電力の安定供給がいっそう難しくなります。

なにせ、太陽光発電がなかったころは「電力需要」だけを読んで供給量をコントロールしていればよかったのですが、太陽光発電が電力供給全体に占める割合が10%前後に達している昨今の状況だと、太陽光の発電量にあわせて、火力発電装置を細かく動かしたり止めたりしなければなりません。

再エネ賦課金を考えると再エネのコストは2倍近く

この点、「昼間にガンガン発電して貯めておけば良いのでは?」「日照量の多い地域で電力を作って、余った電力を遠隔地に送れば送れば良いのでは?」、などと考える人もいますが、こうした主張をする人は、「電力は貯められない」、「電力を遠方に送ると送電ロスが大きい」などの事実を理解していないのでしょう。

正直、明らかな素人発想そのものです。

問題はそれだけではありません。

太陽光発電所が各地につくられることで、自然環境が破壊され、土砂災害や火災なども頻発していることなどを踏まえると、太陽光発電が「環境に優しい」といわれても説得力は皆無ですし、なにより太陽光発電のコストは高すぎます。

現在の日本において、1kWhあたりの電気代はだいたい30円前後といわれています。

また、1kWhあたり徴収される再エネ賦課金は、今年5月以降、1kWhあたり3.49円に増額されますが、太陽光発電などの再エネの比率が全体の15%程度だと考えると、私たち日本国民は、この0.15kWhに3.49円を支払っている格好です。ちなみにこの前提だと、1kWh当たり23.3円です。

ここで、再エネ以外の電力が1kWhあたり30円だとすれば、再エネ電源に対しては、これに1kWhあたり23.3円を加算した53.3円を支払っている、という計算です。つまり、再エネ電源は通常の電源に比べ、約1.8倍もの負担を我々国民に押し付けているのです。

日本政府は何がやりたいのか?

電力の安定供給にも役立たず、環境破壊にもつながり、しかも決して安くない。

しかも太陽光パネルの多くは中国製であるとされ、太陽光発電を推進すればするほど、中国企業を潤わせることになる(かもしれない)――。

そんな太陽光発電を推進することで、日本政府は、いったいなにがやりたいのでしょうか。

まったくもって意味不明です。

いずれにせよ、「再エネTF資料透かし問題」は、「資料に透かしが入っていたこと」ではなく、太陽光発電を中心とする再エネを推進すること自体が誤っている、という点に、改めて注目する契機にしたいものです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. カズ より:

    >しかも太陽光パネルの多くは中国製であるとされ、太陽光発電を推進すればするほど、中国企業を潤わせることになる(かもしれない)――。

    再エネ政策の拡大に際しては、「国内で新規の産業を育成する」との意図もあったはずです。
    せめて補助金支給対象を自国メーカー製に限定してればシャープも生き残れたのかもですね。

  2. sey g より:

    FIT固定買取制度の解決方法はインフレと思ってました。
    一定の金額で買い取るなら電気代と給料が値上がりしたら、相対的に太陽光発電の電気代が安くなるからです。
    しかし、インフレが進むとFIP電気代にプレミアをのせて太陽光発電の電気を買い取る制度が出来ました。
    詳しくは調べてませんが、意地でも日本国民に寄生しようとする強い意志を感じます。
    寄生したらしただけ、政治家にも甘い汁が渡るのかと、今回の事件をみると疑ってしまいます。

    1. 匿名 より:

      プレミアは、時間帯価格のことなので、供給力の少ない時間に発電することに対する付加価値です。これを実現するためには充電設備などが必要なため、供給力の平滑化につながります。

      また、こんなのもあります。垂直型太陽電池。
      朝と夕だけ発電して昼間の発電力が少ない。
      https://solarjournal.jp/news/52463/

  3. 雪だんご より:

    今の所は件の財団は「怪しいけど、何か決定的な証拠がみつかった訳ではない」と
    言った状態ですね。今の所は。

    大林氏を”逃がす”のもかなり早かったし、書類を閲覧不可にするのは異様に素早かったし、
    ここまで俊敏に対応されるともっと怪しみたくなるものですが……
    多分今回は(あるとしたら)尻尾は掴ませないでしょう。
    今後”やりにくくなる”だけでも大きな成果ですが。

  4. neko より:

    太陽光発電の売電価格は10kw未満で16円/kwh 10kw以上50kw未満で11円/kwh 50kw以上250kwh未満で10.45/kwhです(2024年度)これに対し原発のコストは10.1円/kwh(2018年度)ただし固定買取期間を過ぎればより安い価格で買い取られますこれらのことを考えれば将来的には原子力発電より安くなるでしょうただし24時間発電はできませんナトリウム硫黄電池を使えば11ー13/kwhのコスト増となります

    1. 匿名 より:

      蓄電池のコスト計算の前提はどのようなのでしょう?
      夜間電力のみまかなう
      梅雨時期や豪雪を考慮し一週間の電力をまかなう
      条件次第では蓄電池容量がずいぶん変わってしまうと思います。
      蓄電池容量だけではなく太陽光発電容量も+充電電力分も必要となりますがこれもどのくらいの余力を必要とするかで変わってきますね。
      現実的には補助発電が必要な太陽光パネルだけではCO2ゼロにはぜったいなりえないとおもいますが。

      1. neko より:

        一応2000回の放充電に耐えられる。充電に必要なエネルギーがほぼただで手にはいる直流電源で起動に必要なエネルギーは無視できるとしています。だだしナトリウム硫黄電池は火災のリスクがあり管理次第では事故が起きます。梅雨時期は水力発電でカバーできます。豪雪については雪の重みでパネルが破損してしまうことがあるのでパネルを垂直に立てる事で雪が積もらないようにします。このとき雪からの反射光も発電に利用できます。もっとも雪がやんだら元に戻す必要があります。もちろんベースロード電源として原子力も必要となりますが急に出力を変えられないので何らかの調整が必要となります。

  5. 農民 より:

     財団の説明が、どれをとっても”中国の影響はない”ことを証明できていない(どころか逆にそりゃー中国噛んでるよねと思わせるものばかり)のですが、さておき。
     とにかく挙げる実績や理念が「エネルギー問題を国際間で協力して解決する、そのために太陽光等を推進する」ばかりです。後者は財団の名前からして当然ではあるのですが。他国にエネルギーを依存するな、太陽光発電には問題が多すぎる、といったこちらの主張とは全くの逆を行く財団なのだというのがよくわかりました。疑惑が晴れたとしても支持できませんね。

     風評に乗っかって叩いちゃいかんよなーと当事者の主張を見に行って、むしろ「うん、ダメだこりゃ」となったのは珍しい……と一瞬思ったものの、野党の日常にコラボ問題や川勝知事などなどもそうで枚挙に暇がありませんした。最近多くなったと感じるのは、主要メディアを介さなくなったせいでしょうね。

  6. neko より:

    訂正ナトリウム硫黄電池の蓄電コストは24円ー30円/kwhでした

    1. 匿名 より:

      誤解を招きそうな発言なので訂正しておきます。

      蓄電コストではありません。設備のコストです。NAS電池が1kWの出力を出すための設備コストが24円程度。
      1kW時をためるための蓄電コストはNAS電池が2.5万円です。Liイオンは20万円。

      NAS電池は、大容量に向くが大出力に向かない、ということです。
      つまり、1件の住宅にそれぞれつけるには向かず、ある程度の大きな、例えば村や町に1つの設備を付けるのが向いています。

      1. 匿名 より:

        設備コストが24円→24万円
        充放電するコストそのもの、は、充放電の回数で設備価格と維持費を割るので単純には言えません。

  7. わさび より:

    太陽光発電は沢山の問題を抱えたまま進もうとして未来に負の遺産を築き上げるだけです。

    例えば国内でテロが発生した場合に太陽光発電が狙われる恐れがあります。送電線を切断するだけで電気の供給を止める事が可能です。

    また、花木を大量に伐採する事で生き物や昆虫にまで影響が出てしまい、場合によっては希少な日本ミツバチの住処もさらに無くなり、農作物にも影響を与えてしまうかも知れません。

    欠陥だらけの太陽光発電を無視して国際世論を気にするばかりに邁進する政府はおかしいと思います。

    ドイツの二の舞になるのは間違いありませんね。

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