経費不正使用はNHK自体の「在り方」と直結する問題
新聞・テレビ業界を取り巻く課題のひとつは、広告費の激減にあります。しかし、NHKはこうした業界の荒波とは無縁です。なぜならNHKは法律の規定に基づき、「受信料」という名目の「事実上の税金」を半強制的に取り立てる権利を持っているからです。ただ、こうしたなかで生じてくるのは、人件費や経費の乱脈ぶりです。とりわけ、NHK記者の経費私的流用事件自体も、「NHKの在り方そのもの」が原因であるように思えてなりません。
2024/03/19 12:34追記
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目次
マスメディアを取り巻く広告費の現状
先日の『最新版「日本の広告費」から見える新聞・テレビの危機』でも取り上げたとおり、株式会社電通が公表した2023年版の『日本の広告費』のデータによると、とりわけ新聞とテレビの広告費が順調に減り続けています(図表1)。
図表1 広告費の推移(ネットvsマスコミ4媒体)
(【出所】株式会社電通『日本の広告費』および当ウェブサイト読者「埼玉県民」様提供データをもとに作成)
マスメディアのなかでも新聞、テレビの2媒体に対する広告費が前年割れを起こしているというのは、オールドメディアを取り巻く状況が極めて深刻であることを示しています。というのも、インターネット広告費が力強く伸びているからです。
新聞部数もテレビ視聴時間も減り続けている
わかりやすくいえば、新聞やテレビの広告媒体としての魅力ないし価値が低下している、ということだと考えて差し支えありません。新聞は部数が減り続けています(『「新聞がなくなったら社会に莫大な利益」とする考え方』等参照)し、テレビも視聴時間が減り続けている(図表2)からです。
図表2-1 2013年における年代別・メディアの平均利用時間(平日、単位:分)
図表2-2 2022年における年代別・メディアの平均利用時間(平日、単位:分)
これについてはそもそもの新聞、テレビの「役割」から考えていく必要があります。
インターネットが存在しなかった時代、私たち一般大衆が社会のことを知るためには、新聞やテレビなどのメディアが流す情報が頼みの綱でした。テレビはお茶の間の真ん中に鎮座し、多くの家庭では朝晩、新聞が届くのを楽しみに待っていたのです。
土曜日の夜、家族みんなでアニメやドリフ、ひょうきん族、映画などを見ていたという家庭も多いでしょうし、日曜日にはサザエさんやクイズ番組、そして映画などを楽しみにしていたのではないでしょうか。
中間流通業者が情報に勝手に色と臭いを付けてきた
ところが、いつの間にかテレビはお茶の間の真ん中から駆逐され、各家庭には新聞が届かなくなり始めています。いうまでもなく、インターネットがあればとても便利に情報収集ができること、そしてなにより、新聞・テレビが垂れ流している情報が不正確であることに人々が気付き始めていることがその原因ではないでしょうか。
もちろん、広告費や新聞部数、テレビ視聴時間などが激減しているというのは、あくまでも「事実」であり、これらのデータからはその「原因」が完璧にわかるわけではないのですが、それでも自然に考えて、情報の流通が新聞、テレビの独占ではなくなったことがその主因であることは、想像に難くありません。
本来、新聞もテレビも、「情報の中間流通業者」に過ぎないのに、「社会の公器」だの、「第四の権力」だのとおごり高ぶっていたのが、ここにきて、新聞やテレビが垂れ流してきた情報のクオリティが非常に低いこと――あるいは、なかば意図的に情報が捻じ曲げられていたことに、一般人が気付き始めているのです。
私たちは本来、水道の蛇口をひねったら無色透明の水が出て来ることを期待しているはずなのですが、日本のマスコミという「水道」からは、変な色や臭いがついた水が出てくるのです。
その結果が新聞部数の激減であったり、テレビ視聴時間の低下であったり、そしてなにより、新聞・テレビ広告費の減少であったりするのではないでしょうか。
NHKの異常な人件費
ただ、民放テレビ局の場合は、こうした広告費の減少は経営問題にも直結するのですが、テレビ業界にはひとつ、「世の中のテレビ広告費が減少しても絶対に安泰」、という業態がひとつあります。
それが、NHKです。
NHKはいうまでもなく、「(自称)公共放送」として、放送法の規定により、テレビを設置したすべての家庭から受信料という「事実上の税金」を半強制的に徴収する権利を与えられています。民放テレビ局が広告収入の減少で苦しんでいたとしても、NHKの収入と経営は安泰、というわけです。
そうなると、やはり生じてくるのが、組織の腐敗です。
以前の『NHK「特殊負担金」論を上書きする「相応の負担」論』などを含め、これまでにしばしば取り上げて来たとおり、NHK職員の人件費は、単純計算でひとりあたり1550万円を超えています(図表3)。
図表3 NHKの人件費(2023年3月期・単体ベース)
区分 | 金額 | 職員1人あたり |
職員給与(①) | 1108億3437万円 | 10,757,486円/人 |
役員報酬(②) | 4億0127万円 | ― |
退職手当(③) | 280億7908万円 | 2,725,331円/人 |
厚生保健費(④) | 214億3797万円 | 2,080,751円/人 |
①~④合計 | 1607億5271万円 | 15,602,514円/人 |
①、③、④合計(⑤) | 1603億5143万円 | 15,563,567円/人 |
(【出所】NHK財務諸表等をもとに作成)
ここでいう人件費は、企業会計の用語でいう給与・賞与・諸手当、法定福利費、福利厚生費、退職給付費用などを含む概念ですが、ここで「職員給与」のみを抜き出しても、それでもやはり単純計算で1人あたり1076万円(!)という金額に達します。
何とも気前の良い話です。
隠れ人件費は社宅?それとも経費?
ただ、この「人件費」が、じつはそれよりも高いのではないか、といった疑惑もあります。NHKがもしかすると、職員らに対する「隠れ人件費」をさらに負担している可能性があるからです。
その「隠れ人件費」として真っ先に思いつくのは、NHK職員が無料ないし市場価格と比べ格安の値段で入居できる社宅の存在です。
この社宅についての実態はよくわかっていません。
これまでにいくつかの週刊誌などが報じたところによると、たとえばNHK職員は東京都心部で数十平米の物件に数万円の家賃で暮らせる制度がある、といった情報もあるのですが、これが事実ならば凄い話です。
家賃相場はピンキリですが、たとえば東京都心部だと家族が暮らすマンションの賃料は数十万円、あるいは高級タワーマンションのなかには、月間の家賃が90万円前後、といった事例もあります。
仮に――もしも「仮に」、ですが――、NHK職員が、月額家賃55万円相当の物件に自己負担5万円で暮らしていたとしたら、この職員は給与・賞与・諸手当等とは別に、50万円の特別の給料をもらっているようなものだ、という言い方もできるでしょう。
ただ、NHK職員を巡る「隠れ人件費」疑惑は、それだけではありません。
取材と称し、タクシーを私的利用していたり、飲み代を経費として申請していたりする、という事例も、相応にあるのではないかというのが、当ウェブサイトでもこれまでしばしば指摘して来た論点です。
NHK記者私的流用事件に続報も…NHKの在り方の問題と直結
こうした疑惑が「確信」に変わった事件が、昨年の『記者の私的飲食疑惑調査も…NHK「利権構造」の問題』でも触れた、私的飲食疑惑です。
これは、NHKの30代の記者が私的な飲食を取材経費として不正請求していたとされる問題ですが、産経ニュースに18日、その「続報」が掲載されていました。
NHK記者の経費流用は計1000万円超に 新たにタクシー、ハイヤー代284万円を認定
―――2024/3/18 18:01付 産経ニュースより
産経によると、NHKは18日、この記者(※現在は懲戒免職済み)が不正請求していた経費は、すでに判明している飲食費など410件約789万円に加え、タクシー、ハイヤー代272件約284万円、合計約1073万円に達すると発表したのだそうです。
また、別の記者2人についても「実際と異なる参加者を記載して申請する」などの手口で、1人は1件1万5千円、もう1人は8件・約31万円の不正を確認し、「全額弁済させ、同日付で訓告処分とした」、などとしています。
なんとも呆れる話です。
ただ、論点については正直、「不正請求していたのはこの記者だけか」、という点ではないでしょうか。
産経によるとNHKは次のようなコメントを発表したそうです
「受信料という公金で運営されているNHKの職員として、不正な経費請求は、絶対に許されない行為であり、全額弁済させた。第三者委員会から答申を受けた調査報告書をもとに策定した再発防止策を徹底し、このような事態を二度と起こさないよう、真摯に取り組んでいく」。
非常に甘い認識です。こうした不祥事が発生するのも、結局のところ、NHK自身が経費の使い方を決めているという、現在のNHKの在り方という問題に直結しているからです。
NHKは公共放送に値するのか
そもそもNHKは自身を「公共放送」だと称しているわけですが、NHKが垂れ流している番組に公共性があるかどうかについては、誰がどう担保しているのでしょうか?そして、NHKが垂れ流した番組に、実際に公共性があったのかどうかについては、誰がどう検証しているのでしょうか?
放送業界内では「放送倫理・番組向上機構(BPO)」という、事実上、テレビ業界の身内で固めた「ダミー組織」は存在しますが、このBPOがNHKを含めたテレビ局の問題報道を防ぐうえでまったく役に立っていないことは、『BPO「NHK放送倫理違反」指摘も…肝心の処分なし』などでも取り上げたとおりです。
正直なところ、NHKに対しては変な番組を垂れ流しても「おとがめなし」、という状況が続いているわけであり、こうしたガバナンスの不在は、NHKという組織を腐敗させていることは間違いありません。
この点、変な番組を垂れ流した場合、民放テレビ局の場合は「広告収入激減」という形で、いずれは市場からの退出(=倒産)というペナルティを受けるわけですが、NHKの場合は私たち一般国民が「番組を視聴しない」という形でNHKを倒産させるということができません。
やはり、NHKに対して経営内容を適正化させるのであれば、現在のような「人件費・経費などの乱脈な使用」、「野放しとなっている番組内容」といった状況を放置しておくべきではないと思うのですが、いかがでしょうか?
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
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会社のお金の私的流用は営利企業の社長なら結構やってそうだから、NHKの職員を一旦全員解雇して、個人事業主として再契約を結び直せば良いんじゃないですかね?
そうすれば税理士を必要とする人も増えるし、不正流用もそれなりの金額で収まるんじゃないかと。
>NHKの場合は私たち一般国民が「番組を視聴しない」という形でNHKを倒産させるということができません。
多くの人が未だにチューナー付きのテレビやチューナー付きのBDレコーダを使っている現状では、「番組を視聴しない」という形でNHKを倒産させることは、確かにできないでしょうね。
しかし、というか、だからこそ、自分は、世の多くの皆様に、チューナー付きのテレビやチューナー付きのBDレコーダを捨てて、チューナーレステレビに置き換えることを、声を大にしてお薦めしたいと思います。実際に自分がこれを実行した結果として、本当にやってよかったと心の底から実感しております。
以前もコメントいたしましたが、チューナーレステレビでも、TVerなどが普通に利用できるので、民放の視聴にはほとんど支障がありません。NHKを視聴する気がさらさらないのであれば、これで十分と思いますし、使い勝手も申し分ありません。ほかにもYouTubeやAbemaTVなどのコンテンツにも無料でアクセス可能なので、コンテンツ不足の不満もありません。
まさに、「NHKがなくても国民生活はまったく心配ない」のです。
NHKにへばり付かれて受信料を無心され続ける不快感から解放されるだけでも、チューナーレステレビに置き換えるメリットは絶大です。「NHKを視聴できる環境を手放す」人々が増えれば、NHKの収益源を減らすことができますので、NHKを倒産に導くことも不可能ではありません。
皆様には、「NHKを視聴できる環境を手放す」ことによって得られるメリット、幸福感を、最大限に享受していただきたく、改めまして、チューナー付きのテレビやチューナー付きのBDレコーダを捨てて、チューナーレステレビに置き換えることを、声を大にしてお薦めしたいと思います。
コロナ禍の頃に、Eテレの障碍者向け福祉番組を使って反アベの番組を放送して、ネットで大炎上したことがあったけど、そういう事は、制作部門より上の編成部門もOKを出していなければ、できないですからね。頂点から末端まで全てが腐敗している組織ですね。
正直に言ってマスメディアが、自由民主党の事をどうこう言える立場ではないという事ですね。
まあ、バイアスをかけた報道をしたり、立憲民主党の不祥事を意図的に報じない辺り、お察しなのですが…。
政治資金パーティーの変わりがないだけで、アンダーグラウンド政治と形態的に近い活動になっているのではないですかね。税金の変わりが受信料とか・・・。自社努力で売り上げを上げた企業などと違って、資金的に余裕があり時代錯誤な組織運営がまかり通るところはこのような問題を起こすのが多いように思えてなりません。ましてや支持率なんて気にしていない組織なんざ・・・
> 訓告処分
懲戒解雇でないのが驚きですね。
公務員でも生徒に猥褻行為をした教師が首になっていなかったりしますね。