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世界の自由度ランキングで日本は9年連続で高得点獲得

記者クラブ制度が日本社会の自由度を引き下げている

フランスの「国境なき記者団(RFS)」の「報道の自由度」が低いと喜々として報じるメディアがほとんど報じようとしない話題があるとしたら、米フリーダムハウスの「世界の自由度」に関する調査レポートでしょう。日本は昨年に続き、今年も96点を取り、上位にランクインしました。ちなみに日本が96点を得るのは2016年以来9年連続のことでもありますが、メディアがこれを積極的に報じないのには理由があります。

フリーダムハウスの最新版レポート

本稿では、米国の非政府組織フリーダムハウス(Freedom House)が公表した2024年版の「世界の自由度」に関する調査を確認してみましょう。

国別の詳細レポートについては現時点でまだ表示されていないようなのですが、PDF版のレポートについては、現時点において、 “FREEDOM IN THE WORLD 2024” で閲覧することができます。また、データ自体は “Publication Archives” のページでダウンロード可能です。

これについて、確認すると、興味深いことがわかります。2024年版のレポートを得点順に並べ替えると、日本は「自由度」の評点が100点満点で96点と非常に高く、210ヵ国・地域の中で上から11番目なのです。

ランキング一覧

図表1は、上位の国23ヵ国を列挙したものです。

図表1 自由度ランキング上位23ヵ国
国とランキング 2024年 2023年
1位:フィンランド 100 100
2位:ニュージーランド 99 99
2位:スウェーデン 99 100
4位:ノルウェー 98 100
5位:カナダ 97 98
5位:デンマーク 97 97
5位:アイルランド 97 97
5位:ルクセンブルク 97 97
5位:オランダ 97 97
5位:サンマリノ 97 97
11位:ベルギー 96 96
11位:日本 96 96
11位:ポルトガル 96 96
11位:スロベニア 96 95
11位:スイス 96 96
11位:ウルグアイ 96 96
17位:豪州 95 95
17位:エストニア 95 94
19位:バルバドス 94 94
19位:チリ 94 94
19位:チェコ 94 92
19位:アイスランド 94 94
19位:台湾 94 94

(【出所】Freedom House, Publication Archives データをもとに作成)

また、日本より上位の国は10ヵ国あるのですが、このうち97点の国は6ヵ国あります。日本の評点が96点ですので、これらの国は、評点としては日本とたった1点しか変わりません(ただし、日本と同点の国も日本以外に5ヵ国あります)。

また、G7、G20というカテゴリーで見て、日本よりも上位にある国はカナダのみであり、とくに日本・カナダ以外のG7諸国は、たとえばドイツが93点で24位、英国が91点で35位、イタリアが90点で38位、フランスが89点で44位、米国が83点で58位――などとなっています。

ここでいう評点は、「政治的な権利」が40点満点、「市民の自由」が60点満点で、それぞれ4点満点の設問を10個・15個設けていて、それを積み上げた数値のことです。

チベット、シリア、北朝鮮…不自由な国の一覧

一方で、評点が低い方をとりあえず10ヵ国・地域ほど並べてみると、図表2のとおりです。

図表2 自由度ランキング下位10ヵ国・地域
2024年 2023年
210位:ナゴルノカラバフ -3 37
209位:チベット 0 1
208位:シリア 1 1
208位:南スーダン 1 1
206位:クリミア 2 4
206位:トルクメニスタン 2 2
204位:東ドンバス 3 3
204位:北朝鮮 3 3
204位:エリトリア 3 3
201位:西サハラ 4 4

(【出所】Freedom House, Publication Archives データをもとに作成)

ナゴルノカラバフが「マイナス3点」となっている点については、理由はよくわかりません(エラーでしょうか?)が、北朝鮮などがランクインしているのは、ある意味で想像通りです。

RSFとの違いは?なぜこんなに差が出るのか?

ちなみにこの手の国際的な非政府組織が公表するランキングのなかには、フランスに本部を置く「国境なき記者団(Reporters sans frontières, RSF)」なる組織が公表する『報道の自由度ランキング(classement mondial de la liberté de la presse)』あたりが有名でしょう。

こちらのRSFのランキングの方では、日本はとくに第二次安倍政権発足以降、順位が非常に低くなっていることでも知られていますが(2023年実績だと68位)、このRSFランキングをもとに「日本は報道の自由がない国だ」、などとする報道が、新聞、テレビなどから出てきます。

しかし、こうしたRSFランキングを喜々として報じるメディアに限って、フリーダムハウスのレポートで日本がほぼ毎年のように、90点台後半という高い得点を叩き出している事実を報じようとしません。

なぜこんなに大きな差が出るものなのでしょうか。

そのヒントはおそらく、評点の透明性にあります。

フリーダムハウスのランキングの場合は4点満点の全25問を足し上げて100点満点になるように評価していて、なぜその得点となったのかに関する詳細レポートが公表されますが、RSFのランキングの場合は「どういう基準・尺度で」「どうやって」評価したかというプロセスが開示されません。

どこの誰がどうやって評価したのかよくわからない代物で、「日本はまた自由度が下がりました」、などといわれても、困惑する限りでしょう。

日本社会の問題のひとつは「記者クラブ制度」

さて、フリーダムハウスの方のランキングでは、日本は非常に高い点数を得ています。2013年は88点、2014年は90点、2015年は94点と得点を上げ、2016年以来、9年連続して96点を記録しています。

ただし、日本に問題がないわけではありません。昨年の『国境なき記者団の「報道の自由」調査は信頼できるのか』でも説明したとおり、昨年のランキングでは、日本は次の4点について、満点の4点を取ることができませんでした。

  • D1…その国に自由で独立したメディアは存在しているか?
  • F4…その国の法律や政策、慣行は、その国を構成するさまざまな層の人々の平等な取扱いを保障しているか?
  • G3…その国の個人は、結婚相手や家族の大きさの選択、DVからの保護、服装の自由を含めた個人の自由を享受しているか?
  • G4…個人は機会の平等と経済的搾取からの自由を享受しているか?

このうちD1については、こんな内容が指摘されています。

Under the traditional kisha kurabu (press club) system, institutions such as government ministries and corporate organizations have restricted the release of news to journalists and media outlets with membership in their clubs. While the club system has been criticized for privileging the major dailies and other established outlets that belong to it and potentially encouraging self-censorship, in recent years online media and weekly newsmagazines have challenged the daily papers’ dominance of political news with more aggressive reporting.

意訳すると、こんな具合でしょうか。

伝統的な「キシャ・クラブ」(プレス・クラブ)制度は、省庁や企業などが発表する情報を、会員である記者や報道機関に制限する仕組みである。この制度は、大手日刊紙を含めたクラブ所属メディアを優遇し、自己検閲をも助長する可能性があるとして批判されてきた。

もっとも、近年ではオンラインメディアや週刊誌が政治報道の分野において、これまでの日刊紙の支配に挑戦すべく、より積極的な報道を行っている。

すなわち、日本社会の自由度を下げている犯人は、じつは新聞、テレビを中心とするマスメディアであり、これに対しネットで出現しつつあるメディアなどが、新聞、テレビを中心とする支配体制に挑戦している、といった記載ぶりとなっています。

そういえば、記者クラブ制度の問題点についてはRSFレポートでも毎年のように指摘されていますが、その記者クラブ制度という利権を持っているためでしょうか、日本のメディアが記者クラブの問題点を報じることは、ほとんどありません。

何のことはありません。

日本社会を息苦しくしている真犯人は、記者クラブ制度などで情報を独占的に入手するという特権を持っている新聞・テレビなどのマスメディアなのであり、日本社会の自由に脅威をもたらしているのは、自民党というよりはむしろ、新聞社やテレビ局なのでしょう。

新宿会計士:

View Comments (9)

  • 記者クラブ、この悪名高い制度がなければ、今少し上位に位置してたかもしれない、ふとそんなことを思いました。

  • 報道の自由度ランキングに言及する人たちですが
    なーぜーかー順位にしか言及しない事が殆です。
    こと政府批判に利用している人はまず中身に言及せずに順位を叩き棒にしている事をよく見かけます。
    そして政府に対して記者クラブを解散させろなどはまず言わないです。

    この手の順位ですがどのように測定されたものかと言うのは非常に重要です。
    アンケートのような主観的な物なのか、定められた基準を定量的に当てはめた客観的な物か
    また判断材料が恣意的に偏っていないか等。
    論文を書いたことがある人なら教授から口酸っぱく言われた事でしょう。

    好ましい結果だけをチェリーピッキングして記者が叩き棒に使っているのは
    日本のマスコミのレベルが低い証だなと悲しくなります。

  • *言論の自由度

    客観的評価(フリーダム)では高順位。主観的回答(国境なき)では低順位。

    国境なき記者団の調査は、各国メディア関係者の主観に基づく「自己採点方式」です。

    【客観的評価>主観的回答】であれば、即ち言論の自由が担保されてるってこと。
    【主観的回答>客観的評価】であれば、独裁国家の思想弾圧が想起されるのかと。
    ・・・・・
    一見すれば、「我が儘を言えるのは、自由だからだ!」・・って思うんですけどね。

  • 日本における少数そんなこんなの
    特定野党や韓流の どぶサヨ方面が
    自分たちに都合がよく捻じ曲げられた順位だからと
    どの国からも国境で追い出される
    鼻つまみ者国境なき記者団とやらを
    変に持ち上げるのは所詮そんなこんなの
    彼らだというだけです。

    ただし、日本の報道メディアを名乗るものが
    実は日本マスゴミ問題を指摘されているのに
    あたかも中立や多数派 正義のフリをして
    どぶサヨ韓流立ち位置での報道をしているのは
    言論テロリストはまず報道をのっとろうするような
    悪しき画策であり、
    真面目な国民が見過ごさず許さずに排除して
    正しい報道のあり方を取り戻す必要を感じます。

  • 記者会見で国境なき記者団のランキングを持ち出して政権批判する新聞記者に対し、

    フリーダムハウスのランキングと指摘事項を持ち出して反論した政治家がどの程度居るのでしょうね。

    記者クラブを積極的に無くしたい政治家じゃなければ触れそうにないですけど。

  • なんの事はない。いつも通りオールドメディアが主張する
    「日本には言論の自由が足りない!」と言うフレーズは
    「日本には(我々による)言論の(独占的)自由が足りない!」と言うだけの事。

    彼らがいよいよ廃刊や倒産に瀕した時、日本の『報道の自由度ランキング』が
    どれだけ”低下”するのか楽しみです。

  • 私見ですが、
    「記者クラブ制度」
    これ自体が悪いとは僕は思いません。

    例えば交差点の信号機。
    定められたルールで、定められた通りに当局の信号を垂れ流してたら、それで必要十分。
    記者クラブってのは、信号機を一番安く多量に世の中に流通させるための工夫。

    なのに、信号機のぶんざいでなぜか自分の解釈を混ぜて点滅したがる奴が居てることが、問題。

  •  民主党政権時代に「報道の自由度ランキング」が上昇したってマスゴミは騒いでましたが「書いたらその社は終わり発言」にビビったり、ルーピーの脱税疑惑をスルーするなど時の権力に迎合して自分たちでランキングを下げるような事をしておいて何寝言言ってたんでしょうね。

    • ちなみに民主党政権時代には、マスコミ関係者に向かって停波をちらつかせて時々恫喝してましたし、番組内容に問題があれば停波できるという見解を示してもいましたね(これは無理矢理高市さんを叩くためのネタに使われましたね)
      あとは、各社の新聞を貼り出して気に入らない記事を書く新聞には×を付けて晒すってこともやってましたね