一見好調なロシアの現状の正体は「典型的な戦時経済」

「軍需品の生産で潤うロシア経済」という構図が見えてきました。先月の時点で、2023年におけるロシアの経済成長率が米国や欧州諸国のそれを上回ったらしい、という情報が出ているのですが、これに関しては軍需産業への政府支出がGDPを押し上げた、とする分析も相次いでいます。なにより、ロシアは現在、通貨安を食い止める意図もあってか、政策金利を16%にまで引き上げているのです。

ウクライナ支援が必要な理由

最近の一部報道では、とりわけ年明けあたりからウクライナで砲弾不足が深刻化していて、戦況は予断を許さない状況にある、などと伝えられています。欧米ではウクライナに対する「支援疲れ」も見えていて、なかには「ウクライナはロシアに占領された一部の領土を放棄して講和してはどうか」、などとする意見も出てきました。

ただ、じつはこの「一部の領土をロシアに譲って講和してはどうか」、という意見は、ロシアを含めた無法国家群にとっては、非常に歓迎すべきものであることも間違いないでしょう。

とにかく戦争をして軍事占領した地域を自国領土に編入できるという前例を作ってしまえば、今度は北海道が次の侵略対象になるかもしれませんし、さらには中国あたりがロシアのマネをして、台湾・沖縄侵略などを開始する可能性もゼロではありません。

だからこそ、ウクライナ戦争はウクライナとロシアの戦いではなく、「西側諸国の無法国家との戦い」でもある、というわけです。

ロシア経済の現状

ロシア経済は意外と好調!?

さて、現在のロシアはいったいどうなっているのでしょうか。

これに関しては、どうやらロシアの経済成長率は、「一見すると」堅調であるようです。

ロシアを含めた新興国のGDPについては、個人的には世銀の名目GDP統計などをい要することが多いのですが、2023年のデータについてはまだ収録が終わっていないようですので、ここではVOAのこんな記事を紹介します。

Russia’s Economy Grew in 2023, Despite War and Sanctions

―――2024/02/08 03:04付 Voice of Americaより

VOA自体が米国のメディアであるという点で、ロシアに対しネガティブなことが記載されている可能性がある、という点を了解したうえで、数値など、記事に書かれている事実関係の部分のみを抜粋・意訳すると、こんな具合です。

  • 2022年におけるロシアの経済成長率はマイナス1.2%だったが、ロシア政府統計局が2月7日に公表した統計によると、2023年におけるロシアの経済成長率は3.6%とプラスに転じ、米国や欧州のそれを上回った
  • 3月に選挙を控えている同国のウラジミル・プーチン大統領はこれについて、ロシア経済が西側市場から移行し、自給自足の拡大に成功しており、同時に西側諸国以外の諸国と新たな貿易関係を育成していると述べた
  • ロシア経済は若干の減速が見込まれるものの、2024年も成長を続けると予想されており、その成長率は国際通貨基金(IMF)予測で2.6%、ロシア政府予測で2.3%とされている

…。

経済制裁は穴だらけ

なんだか、ずいぶんと堅調です。

ロシアといえば2022年2月にウクライナへの軍事侵攻を開始して以来、西側諸国から厳しい経済・金融制裁を受けており、たとえばロシアの主要銀行は国際的な送金網であるSWIFTNetから排除されてしまいましたし、航空、自動車、船舶といった輸送用機器(民生品含む)の部品類の供給も滞っています。

こうした経済制裁が効いているに違いない、などと思っていると、やはりこの経済成長率には驚きます。

ただ、考えてみればわかりますが、ロシア制裁を行っているのはおもに西側諸国であり、一部の国は、最初からロシア制裁には加わっていません。経済制裁は穴だらけなのです。

しかも、ロシア制裁に加わっていない国のなかにには、たとえば中国やインドなどの「経済大国」も含まれていますし、グローバル・サウスと呼ばれる国のなかにも、ロシア制裁などどこ吹く風、といったケースがあることは間違いありません。

結果的に、西側諸国が半導体などの戦略物資のロシア向け供給を止めようとしても、中国やインドなどを迂回して戦略物資がロシアに流入することを完全に止めることなどできません。

北朝鮮に経済制裁を加えても、中国、ロシアなどを経由して物資が供給されてしまうというのと、構図としてはよく似ているかもしれません。

ロシア向け制裁が無意味なわけではない

もっとも、一部のメディアなどは、こうした状況を拡大解釈し、「ロシアに経済制裁を加えても意味がない」、などと決めつけたり、あるいはそう仄めかすかのような記事を配信したりしていますが、これは逆にミスリーディングです。

現実問題として、経済制裁が「まったく効かない」ということは、考え辛いからです。

ロシア向けに中国、インドなどを経由する、といった「迂回ルート」はいくらでもありますが、だからといって、明らかに物資が第三国を経由しているという兆候があれば、各国輸出管理当局の監視の目も光ります。

また、昨年は日本政府がロシアに対する中古車の輸出を制限する措置を講じたことがありましたが、『日本のロシア向け中古車輸出が前月比で3分の1に激減』などでも取り上げたとおり、これによりロシア向けの中古車輸出が激減した、という事例があります。

日本車といえば、中古といえども性能は高いため、それらが戦場に投入される可能性もあるわけですから、中古車のロシア向け輸出を止めたという日本の輸出管理当局の判断は適切なものだったといわざるを得ません。

もちろん、日本が中古車の対露輸出を制限したとしても、中国製の自動車がロシアに輸出される可能性だってあるわけですが、その一方で輸出制限がかかれば、地理的に近い日本からの中古乗用車の供給が絞られる格好となり、ロシアにとっては自動車を調達するコストが上昇することになるからです。

したがって、「ロシアに対する経済制裁がまったく無意味だ」、という話にはならないのです。

ロシアの成長の正体は「軍需産業」

こうしたなかで、先ほどのVOAの記事は、ランド研究所で上級エコノミストを務めるハワード・J・シャッツ氏がVOAに対し、ロシアの経済成長の理由が「大規模な財政刺激策によるもの」であり、おもに軍事支出がその要因だと述べた、などとしています。

シャッツ氏によると、ロシア政府の連邦予算は2021年の24兆8000億ルーブル(約2700億ドル)から2022年には31兆ルーブル強、さらに2023年には32兆4000億ルーブル(約3538億ドル)へと増えていると指摘したのだとか。

ちなみにシャッツ氏によると、これらの支出先は防衛産業であり、また、軍隊に参加する人々へのボーナスや傷痍軍人、遺族らへの支給金なども含まれているとしつつ、これらの財源については国富基金(ソブリン・ウェルス・ファンド)の取り崩しや借金などによって賄ってきたのだそうです。

わかりやすくいえば、「たくさん武器を作り、傷ついた兵隊さんやその遺族におカネをたくさん支払った結果」がGDPの大幅な成長につながった、ということでしょうか。

同様に、英国国防省の「インテリジェンス・アップデート」の3月1日付ポストにも、やはり軍需産業の状況が取り上げられていました。

防衛産業拡大でウクライナを圧迫するロシア

記載されている内容を意訳し、箇条書きにすると、こんな具合です。

  • ロシアの防衛産業では2023年、産業従事者数が350万人に拡大するとともに、既存の生産ラインの拡張、遊休状態の生産能力の稼働などにより、生産量が大きく拡大したが、その多くは新規生産ではなく、既存設備の改修や近代化などで、たとえば2023年に生産された主力戦車の大部分は改修車両だった
  • 大砲の弾薬生産は 2023 年に急増したが、2024 年にはさらに増加する可能性がある。防衛産業はロシアの対ウクライナ作戦の需要に完全には応えられないが、2024年を通じてウクライナに対して物的優位性をもたらすことができるのはほぼ確実だ
  • ただし、生産能力の制約により、軍需生産は今後 12 か月でピークに達する可能性もある

…。

米国政府系のメディアであるVOAと同様、こちらのインテリジェンス・アップデートも英国政府が出しているものであるため、ロシアに対して不利なバイアスがかかっているという可能性には、もちろん注意は必要でしょう。

ただ、個人的に、とくにこのインテリジェンス・アップデートに関しては、事後的に情報が正しかったという実績も多いと考えていますし、また、ウクライナにとって不利なことも赤裸々に記述されているため、少なくともロシア政府の「大本営発表」と比べれば、情報としての角度は高いものと考えています。

要するに、ロシアは2023年を通じて、軍需産業分野において、かなりの生産能力増強を実現したのであり、その結果がGDPに反映されている、という仮説が成り立つ次第です。

通貨安と高金利

実際のところ、断片的に出て来る情報を見ると、ロシア経済の状況が楽なものではないこともまた間違いなさそうです。

たとえばロシアの政策金利は、ウクライナ戦争直前は9.5%でしたが、改選とほぼ同時に20%に利上げされ、その後はいったん利下げされたものの、昨年夏以降再び利上げされ、現在は16%という水準にあることが確認できます(図表1)。

図表1 政策金利比較(ロシアvs米国)

(【出所】The Bank for International Settlements, Central bank policy rates time series  データをもとに作成)

一般に高金利とされる米国の状況をさらに上回る高金利ぶりです。

この点、金利が上がれば国民経済が疲弊することで知られていますが、いったいなぜこんな状況になっているのでしょうか。

そのヒントのひとつが、ルーブル安です(図表2)。

図表2 USDRUB

(【出所】The Bank for International Settlements, Bilateral exchange rates time series  データをもとに作成)

ルーブルは開戦直後、1ドル=120ルーブル以上のルーブル安に苦しみましたが、その後の利上げの影響もあってか、いったんは1ドル=60ルーブル台か、それを割り込むくらいの水準まで回復しました。

ところが、昨年夏あたりから、再びルーブル安が進行し、1ドル=100ルーブルの大台を付けることもあるのです。

当然、ルーブル安になれば、いかにロシアが中国、インドなどとの交易を拡大していたとしても、その交易条件は悪化してしまいます。このため、通貨安を食い止めるために、やむなく利上げを行っているのではないか、といった仮説が成り立つのです。

典型的な戦時経済

こうした状況で見ると、現在のロシアが典型的な戦時経済にあることは明らかでしょう。

戦時下では軍需産業が伸びるため、見かけ上は経済成長率が上昇しますが、社会全体で軍需品の生産が優先されるため、人々の生活が豊かになるとは限りません。むしろ、戦時経済下では民生品の生産能力が圧迫されます。

しかも、通貨防衛のためでもあるのでしょうか、ロシア経済自体、相次ぐ利上げで疲弊しているという可能性も濃厚です。

このあたり、ウクライナでの戦況は予断を許すものではありませんが、ロシア経済の先行きについては楽観できるものでもありませんし、むしろ戦争が長引けば、ロシアの経済力はさらに低下していくことでしょう。

個人的には、ここから先は西側諸国がどこまでウクライナを支えられるか、という問題もさることながら、セカンダリー・サンクション(二次的制裁)などを通じ、ロシアが必要とする軍需転用可能な物資のロシア向け輸出をどこまで塞ぐことができるか、という勝負ではないかとも思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

    日本の経済学者で、「戦時経済指標と国民生活との関係」について論じることができる人は、いないのでしょうか。
    蛇足ですが、ロシアの場合は、モスクワを中心とする部分と、その他の部分を分けて考える必要があるのではないでしょうか。

    1. はにわファクトリー より:

      戦時経済と戦後復興に関しては本邦はそれなりに記録が残っています。
      広大なロシア領にあって二分線を引くなら境界はとっても西寄りに偏っています。・ペーテルブルグ2大都市と、それ以外です。
      ロシアの戦後処理を考えているひとたちがきっといる。ロシア国内にあっては刷り過ぎたルーブルを償却することにいつかなりますが、新ルーブルへの切り替えを強行突破するのか、もっと別な解決を探すのか。欧州の真意ハラはどこに。ということになりそうです。本邦にあっては砕氷船築造早よう着手。

    2. はにわファクトリー より:

      編集ミスでモスクワが抜けました。

    3. 引きこもり中年 より:

      よく考えてみれば、現在ロシアはウクライナと戦争中ではなく、特別軍事作戦中なので戦時経済ではないのですね。

    4. はにわファクトリー より:

      詳しいわけではありませんが「復金」「ルーブル国債世界持ち合い」のような幻聴を聞いた気がします。

  2. ちょろんぼ より:

    露が戦時経済で一時的に潤っている事と思われます。
    政府の収入の予算として、軍事費増大により
    税収よりも赤字国債発行が
    多くなっているのではないかと思うのです。
    引受先はどこなのでしょうか?
    まさか日銀引受(?)みたいな感じでしょうか?
    国民に回すとしても、多くの国民はそんなに貯蓄がなさそうだし。
    償還対策はしているのでしょうか?
    新札発行でのデノミ化? ウクライナから資産を持ってくる?
    疑惑が増すばかり、どっかの立憲共産党みたいな。

    1. はにわファクトリー より:

      葉っぱのお金(画像検索)という妄想が沸いて誘惑に負けて実行してしまいました。
      「どうぞ!ねこの郵便局で使えます」画像にとても和みました。

  3. HY より:

     以前は「アメリカの軍産複合体が設けるために戦争をする」「アメリカは戦争で経済を回している」という言説がとても盛んに交わされており、今回のウクライナ戦争も「アメリカが経済を回すためにロシアに仕掛けた」という説が専門家から大真面目に出されていました。
     実際GDP3%の軍事費を支出するアメリカが軍事で経済を回しているのは事実ですし、世界恐慌からの世界大戦という歴史を見ても「戦争=経済的苦境に陥る」は必ずしも成立しないと言えるでしょう。要は平時経済からいかに戦時経済へ移行できるかが、その国が「戦争国家」どうかわかる試金石となると考えられます。即ちロシアは戦時経済移行に成功し、ウクライナを支える欧米日のうち米国以外は平時経済から脱却できないというのが現状なのでしょう。
     こうして見てみるとプーチンはウクライナ支配という長年の悲願を達成するだけでなく、終身大統領を目指すだけでなく、戦争によってロシア経済を回すためにウクライナ戦争を仕掛けたという、新しい解釈ができそうです。これは同時に中国経済が低調になっているゆえに「台湾有事なんて起こらない」と主張する、専門家たちに大きな一石を投じるものであります。

    1. HY より:

      誤)軍産複合体が設けるために戦争をする
      正)軍産複合体が儲けるために戦争をする

       失礼しました。

      1. すずめ より:

        ロシアの生産年齢人口ってどのくらいでしょうか・・・これが低ければ戦後の経済成長は難しくなるんでしょうね。

      2. はにわファクトリー より:

        ロシア 人口ピラミッド(画像検索)と入力してみました。おもすれー。

        Youtube 動画(6分20秒)が掛りました。
         ロシア連邦の人口ピラミッド(1950-2100)
        約4年前 2020/5/1 の投稿、再生回数はわずか3千6百回です。元データは「世界人口推計2019年版」コロナ効果は計算に入っていません。
        開戦3年目に入った特別軍事作戦で失った兵士の数は一説によれば30万人。人口動態を大いにゆがめているのは間違いないところ。出生数が減り、勤労者の絶対数不足で社会が回らなくなる。国外に逃れた人口は相当なものらしい。ジョージア、タイ、スリランカ、イラクあたりにたくさんいてそうです。戦争が終われば戻って来れるんでしょう。

  4. CRUSH より:

    戦時の統制経済といえば、
    1)この世界の片隅に
     統制経済での公定価格配給と闇市との光と影がビシっと描かれていました。
    2)まんちゃら小日向くん
     左翼系に走ってしまった石坂啓の初期短編(だったっような?)。
    大陸で仕事してた日本軍慰安婦の話がありました。
    家が買えるくらいに貯めた軍票が敗戦で紙切れと化したので、復員船のデッキから全て捨ててしまうシーンが印象的。
    3)円とドル
     元日銀総裁の吉野俊彦の著作。NHKブックスなのですが色々出てるようですな。
    これと『誰がケインズを殺したか』は、専門書籍じゃないけど、若い頃になんどもなんども読み返しました。
    恰好つけずに平易でわかりやすい。
    主題が今でも色褪せてない。
    それに尽きます。
    金本位制の頃は1ドル=1円くらいだったので、そこから何があってどう為替が変化したのか?
    戦時中の円ドル取引はどうだったのか?
    戦後に1ドル=360円を決めるにあたって誰が何を調べてどう決めたのか?
    などが淡々と書かれています。

    まあ、
    「WEBに訊かずに、身近な老人たちに訊いてみろよ」
    くらいな気分です。

    1. はにわファクトリー より:

      軍票ですか、国内経済と戦地占領地運営を金銭面でリンクさせないための葉っぱのお金でしたね。でも紙幣なんてもともと紙切れですもんね。
      敗戦直後講和条約発効に至るまでの国内政治のありようの一面は、中公文庫版池田勇人「均衡財政」の付記「占領下三年の思い出」に活写されています。そこに復金のことも米価統制廃止に失敗した顛末も洗い晒し書かれています。
      池田は大病を患ったために戦中は中央から離れており、公職追放の対象にならず命拾いをした人物。敗戦という現実に直面して元税務官の立場から国家かくのごとくあってはならずの精神で国土復興に身を投じました。
      統制経済を機能させるためには企業へ補助金をくべ続ける必要があるが、補助金枠は国家財政を歪め自由競争に裏付けれた革新の足かせになるというのが彼の信念でした。でしたので復金によって悪しくも復活した新たな統制経済構造を段階を追ってちゃらにして補助金支出を限りなくゼロにする。そのための決意表明論文が均衡財政なのでした。ご興味をお感じなら。敗戦直後の著作ですので予習して読むと興が高まります。吉田茂、白洲次郎とともにサンフランシスコ条約会場へ向かうくだりはほとんど映画のようなドラマチックさです。

      1. CRUSH より:

        おお。
        『アニメ大国建国紀』に続けてポチらせていただきました。

      2. はにわファクトリー より:

        ぽちられましたか。本きっとがっかりさせませんよ

        「均衡財政」は「占領下三年の思い出」とはまったく独立しており文体も違います。ある種の論文のようなものです。のちに池田勇人は首相になるわけですが、著者たる彼にも執筆段階ではあずかり知らぬ未来でした。

        予告編として一部だけ抜き書きしてみましょう。

        いよいよ明日は、吉田さんが演説をするという晩、ホテルの向かい側の部屋で話声がするので、行ってみると、白州君と、毎日新聞の編集局長の工藤氏がいて、みんなで過ぎてきた六年間を想い出した。その内に白洲君が、「おざいさん(吉田総理のこと)は今夜眠れないにちがいない。きっと寝室の天井を見て、いろいろ感慨にふけっているだろう」と、しんみり言い出した。その言葉で、各々が過ぎていった
        堪えがたい出来事を回想して、しーんとなってしまった。

        続きは書籍でお楽しみください。

        続きは

  5. 伊江太 より:

    旧ソ連邦の経済統計がまったくのデタラメ、モリに盛ったものだったというのは、その崩壊の直前、ゴルバチョフのグラスノスチ政策が端緒となって、白日の下に曝されました。中国のも、そのやり方をそっくり真似たものだなんて言われてますね。プーチン時代になって、また元のやり方に戻ってたって、別に不思議はないように思えます。だから、ロシアから出てくる経済統計によって、あれこれ論じるのはあまり意味がないような気がします。

    ところが、旧ソ連邦時代から、人口、保健、医療といった分野の統計は、案外正確なんじゃないかと思っています。あまり自慢にならないような統計もしっかり出してますからね(この点は、中国より遥かに立派)。人民の管理という観点からすれば、見栄を張って変な統計値を採用したりすると、却って自分の損になるくらいは分かってるんでしょうか。そっちの統計だったら信じるに足るとするならば、ロシアが対外的に発表しているGDPの数値なんかより、この国の実情を見るには、これらの統計を見ている方があるいは有用かも知れません。

    ソ連邦崩壊(1991年)の翌年から、4年間でこの国の平均寿命は約4歳短縮しています。次いでロシア金融危機があった1998年にはおなじく4年間に約2歳平均寿命が短縮しています。そして、2019年から2021年の2年間に、何と平均寿命は4歳も短縮しているのです。

    ロシア人の平均寿命には、女性に比べて男性が10歳くらい早死にという、他に類を見ない際だった特徴があります。これはロシア人男性の「命の水」、実は寿命短縮の妙薬といった方が適切に思える「火酒」、ウォッカの過剰摂取が理由と言われてますが、1991年や1998年に起きた平均寿命の急激な短縮の際には、その幅は男性の方が女性の2倍近く大きくなっています。そのわけはと言うと、庶民の懐具合が悪くなると、粗製の工業用アルコールを多量に混ぜた安酒が出回るからなんだそうです。

    ソ連邦崩壊の3年前くらいから、実は男性の平均寿命の短縮は始まっています。つまり経済悪化で国が二進も三進もいかなくなり、国民がまともなウォッカに手が出せなくなった挙げ句に、体制崩壊が来たということなんだろうと思います。ロシア金融危機のときには、こんな前兆は観察されませんので、これはそれこそ「ある日突然に」だったようです。そのツケは後から、主に男性が支払ったということなんでしょう。

    ところで2020年に始まる平均寿命の短縮。一応、武漢肺炎のせいにはできます。何しろ半端な数じゃない死亡がこの国で発生しましたから。しかしそれにしても、2年間で4歳という短縮幅は、おなじく武漢肺炎の惨禍を蒙った他国と比べて、あまりにも大き過ぎるのではないかと思うのです。ネット上で得られるロシアの平均寿命の報告は2021年までですので、この先どうなるかが見物ですが、わたしはこれが上向く要素はまずない、今後もドンドン短くなっていくのではと考えています。

    思うに、2021年以降の平均寿命の短縮には、2014年のクリミア併合以来続いてきた西側の経済制裁の影響が、ようやくジワッと効いてきたことが関わっているんじゃないか。ウクライナのネオナチ化、NATO入り阻止みたいな、取って付けたような理由を並べているが、本当の理由は、ソ連邦崩壊に至ったような、国内の経済、社会状況ボロボロの状況に陥りつつあることに焦ったプーチンが、対外強攻策で打開を図ったのが、真相なんじゃないか。そんな気がするのです。

    1. はにわファクトリー より:

      このままじゃじり貧だ、俺たちを軽く見やがって、西側はロシアを食いつぶそうとしている。全部アタリなんですね。
      ・なぜじり貧なのか(その原因は)
      ・俺たちを軽く見やがって(軍事物資製造以外の工業力は壊滅へ向かっている)
      ・西側はロシアを食いつぶす(資源切り売りで上流生活できると思うのが勘違い)
      稼いだ金で国民生活を豊かにすると同時に域外積極投資で世界に_ポジティブ_に関わるメンタルへとロシアがギアチェンジしないうちは、何度やっても同じ失敗を招くだけです。精神的な生まれ変わりって難しいですよね。

  6. KY より:

     >中国製の自動車がロシアに輸出される可能性

     使用中に何時爆発するか判らない危険物を輸出するなんてフレンドリーファイヤーするも同然。

    1. 誤星紅旗 より:

      開戦当初の『電撃戦』で北部ベラルーシ国境からキエフへ侵攻したロシア軍部隊が大渋滞で進めない状況が報じられる中、粗悪な中華製タイヤのパンクが相次ぎ更に混乱に拍車をかけていたような記憶も。
      https://kuruma-news.jp/post/505930

  7. 匿名 より:

    >「一部の領土をロシアに譲って講和してはどうか」という意見は、
    20世紀の悲惨な戦争の犠牲者の歴史を無視した19世紀の帝国主義そのもので、歴史ドラマを見ているようですね。
    歴史の残酷さに目を背けていると、歴史を学ばず繰り返すようになるのですかね。

  8. 暇か?課長さん より:

    ロシアの若者たち、子供たちの将来が心配です。
    彼らの就職口や進学、海外留学なんかは大丈夫なのでしょうか?
    いわゆる西側諸国の外資系企業への就職は難しいだろうし、今後最先端の工業部品等も入手しにくくなるでしょう。(中国経由では可能かも)
    また、西側諸国の学校への留学等は難しくなるでしょうね。
    旧ソ連時代に戻ろうとするかの様なこの国の指導者たちに率いられている国民は不幸だと思います。知らんけど。
    国民による大統領の支持率は本当に高いのでしょうか?

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