日経平均株価指数が22日、およそ34年ぶりに終値ベースで史上最高値を更新しました。2009年には7,000円割れ直前まで追い込まれていたことを思い出すと、大きな転換点であることは間違いありません。こうしたなか、ネットの情報にヒントを得て、「歴代内閣株価ローソク足」なるものを作ってみましたので、本稿ではこれを紹介したいと思います。
株価はバブル後最高値
「2024年2月22日」という日付は、日本経済にとっては重要な節目として記憶されるかもしれません。たんに語呂が良いだけではなく、日経平均株価指数が34年ぶりに最高値を更新した記念日として、です。
1984年からの40年における日経平均株価指数の動きを眺めてみるとわかりますが、株価は1989年12月29日にいったん4万円台を目前とする最高値を更新したものの、その後は急落し、麻生太郎政権時代の2009年3月10日には、なんと7,000円割れ目前まで下落しました(図表1)。
図表1 約40年間における日経平均株価の推移
(【出所】WSJダウンロードデータをもとに作成)
そんな株価が持ち直し始めたのは、野田佳彦内閣(2011/09/02~2012/12/26)の末期、当時野党だった自民党総裁選で勝利を収めた安倍晋三総理大臣の「異例の再登板」が確実視され始めたあたりからでしょう。
歴代内閣株価ローソク足
ここで、株価などの世界では、よく「ローソク足」が用いられますが、ネットで見ると、ちょっと興味深いものが出ていました。それが、「歴代内閣株価ローソク足」です。
ローソク足とは、一定期間の始値、高値、安値、終値を一目で示すのに適したチャートのことで、その期間に価格が上がった場合は白抜きで、下がった場合は黒塗りで示すのが慣例です。
これを、各内閣の「期間」でも見てやろう、というのがこの「歴代内閣ローソク足」です。言い換えれば、「株価から見た各内閣の成績表」のようなものでしょうか。
さっそく、当ウェブサイトでも作ってみました(図表2)。
図表2 歴代内閣株価ローソク足
(【出所】歴代内閣総理大臣の在任期間と株価データより作成。在任期間は首相官邸ウェブサイト、株価データはWSJダウンロードデータ。なお、岸田文雄内閣については便宜上、暫定的に任期を2月22日までとみなして作成している)
株価はどう動いてきたか
図表では、竹下登内閣(1987/11/06~1989/06/03)を含め、それ以降の20人の首相に関する株価データを示しています(安倍晋三総理大臣はいったん辞職して再登板したため2回登場しています。また、「菅」が2回出てきますが、それぞれ菅直人元首相と菅義偉総理大臣のことです)。
在任期間がバブル期の最高値直前の時期だった竹下登、宇野宗佑両元首相の時代はプラスとなっており、任期がバブル絶頂期からその後の急落期に重なっている海部俊樹元首相、自民党政権を失うきっかけとなった宮澤喜一の時代には株価が大きく下落。
その後はあまり株価変動はありませんでしたが、橋本龍太郎元首相の時代に大きく下げた株価が、小渕恵三元首相の時代に戻ったものの、次の森喜朗元首相の時代に再び急落しています。
また、小泉純一郎元首相の時代は、「長期政権」だったわりには株価は大して伸びず、次の安倍晋三総理の時代には少し伸びたものの、福田康夫元首相、麻生太郎総理大臣の時代にそれぞれ下落し、民主党の鳩山由紀夫、菅直人両元首相の時代にもさらに下落している、というながれです。
ただ、野田佳彦元首相の時代の末期、アベノミクスを掲げ安倍晋三総理大臣の再登板が確実視された時期くらいから株価が上がり始め、安倍総理、菅義偉総理大臣、そして岸田文雄・現首相の時代にかけ、それぞれ株価が急伸していることがわかります。
実数で示してみた
岸田内閣に関しては任期が2月22日までだったと仮定したうえで、竹下登内閣以降の平均株価、在任中の株価の上昇幅を計算しておくと、図表3のような具合です。
図表3 竹下登内閣以降の平均株価と在任中の株価上昇幅
内閣と在任期間 | 平均株価 | 在任中の上昇幅 |
竹下登(87/11/06~89/06/03) | 28,073.51円 | +10,872.40円 |
宇野宗佑(89/06/03~89/08/10) | 33,784.69円 | +1,052.38円 |
海部俊樹(89/08/10~91/11/05) | 28,731.08円 | ▲9,768.94円 |
宮澤喜一(91/11/05~93/08/09) | 18,851.64円 | ▲4,457.81円 |
細川護煕(93/08/09~94/04/28) | 19,399.62円 | ▲767.80円 |
羽田孜(94/04/28~94/06/30) | 20,662.16円 | +918.68円 |
村山富市(94/06/30~96/01/11) | 18,244.62円 | ▲266.01円 |
橋本龍太郎(96/01/11~98/07/30) | 18,910.79円 | ▲4,176.32円 |
小渕恵三(98/07/30~00/04/05) | 16,622.99円 | +4,261.17円 |
森喜朗(00/04/05~01/04/26) | 15,416.78円 | ▲6,489.74円 |
小泉純一郎(01/04/26~06/09/26) | 11,578.72円 | +1,584.42円 |
安倍晋三(06/09/26~07/09/26) | 17,093.18円 | +878.29円 |
福田康夫(07/09/26~08/09/24) | 14,048.44円 | ▲4,320.71円 |
麻生太郎(08/09/24~09/09/16) | 9,054.00円 | ▲1,844.26円 |
鳩山由紀夫(09/09/16~10/06/08) | 10,315.66円 | ▲732.83円 |
菅直人(10/06/08~11/09/02) | 9,727.60円 | ▲587.20円 |
野田佳彦(11/09/02~12/12/26) | 8,972.34円 | +1,279.62円 |
安倍晋三(12/12/26~20/09/16) | 18,765.33円 | +13,245.17円 |
菅義偉(20/09/16~21/10/04) | 27,751.61円 | +4,969.36円 |
岸田文雄(21/10/04~24/02/22) | 29,399.48円 | +10,653.79円 |
(【出所】歴代内閣総理大臣の在任期間と株価データより作成。在任期間は首相官邸ウェブサイト、株価データはWSJダウンロードデータ。なお、岸田文雄内閣については便宜上、暫定的に任期を2月22日までとみなして作成している)
日銀や財務省の責任も厳しく問われるべき
このなかで最も大きく株価が上昇したのは、+13,245.17円だった安倍総理(※再登板以降)であり、その次が竹下元首相の+10,872.40円、そして岸田首相は+10,653.79円で上げ幅としてはこの20代のなかで3番目です。
また、在任期間が384日に過ぎなかったにも関わらず、菅総理も+4,969.36円と「株高総理」に名を連ねており、上昇幅だとこの20代のなかで4番目であることは見逃せません。
その一方で、直近40年の最安値は麻生総理の時代のことですが、これはリーマン・ショックという大規模な金融危機が発生したことによる影響が大きいと考えられます。
また、経済ショックが収束していたはずの鳩山元首相の時代に株価が1万円を割り込み、東日本大震災を挟んで菅元首相の時代に株価が8,000円台にまで落ち込み、野田元首相の時代には最低値で8,160円を記録したことを考えると、やはり民主党政権時代が株安だったことは間違いないでしょう。
このあたり、株価というものは、その時代の総理大臣の能力もさることながら、経済情勢や、とりわけ金融政策に大きな影響を受けるものです(※著者私見)。
したがって、とりわけ第二次安倍内閣以降の株高は、「黒田日銀」の効果という側面も大きく、その意味で、黒田前総裁が就任する以前の歴代日銀総裁の金融政策、さらには大蔵省・財務省の財政政策などを巡っては、後世の歴史の厳しい評価にさらされるであろうことは、ほぼ間違いないと個人的には思う次第です。
View Comments (35)
金融政策の影響度なら「歴代日銀総裁チャート」もアリなのかもですね。
もしくは政権チャートに、総裁ごとの「(人事)異動平均線」の追記とかも。
・・・・・
*白川から黒田へのリバーシ。(日銀総裁)
「黒星」なのに好景気とは、これ如何に?
成就の時は「ダルマに目玉」と云うが如し。
>海部俊樹政権(89/08/10~91/11/05)
ひどかったな、あのころは。
湾岸戦争勃発するも国際社会において立ち位置が定まらず、いいように小突かれ使われて、日本の国運衰退を決定的にした。悪夢の始まりそれが海部政権時代。
海部俊樹政権は、前例のないことは決められない、典型的な平時の政権だったということでしょうか。
岸田首相時代の株価は、この後、どうなるかは分からないので、参考資料程度ということでしょうか。(もし岸田総理が今、辞任すれば、株価の最高値を作った総理として、株式市場の歴史に名前がでてくるようになるのでしょうか)
次の政権がもっといい数字を叩き出して踏み台政権呼ばわりされる可能性が高いです。されば今まこそ首相交代のころ合いでは。
昔、会社員の頃、自社の顧客満足度調査を相当な費用を使って調べたことがある。でも結局は市場占有率と相関が高いことがわかっただけだった。長期的な企業の評価も株価との相関は高いと思っている。そういった意味で「歴代内閣株価ローソク足」は面白く、参考になるデータでした。
株高が岸田内閣の功績だとも?
馬鹿らしい、アベノミクスのおかげでしょう。
同意します。そういう意味では岸田さんは運がいいよなあと思ってました。
野党がそういう悔し紛れの捨て台詞をコメントしてるそうですね。
「意地でも岸田に得点させたくない!」
のかもしれませんが、それは即ち野党が延々と主張し続けてきた
「アベノミクスは失敗!」
を自己否定しているわけでして。
長期記憶がないのか有権者をバカにしてるのか、とにかく呆れました。
CRUSHさま
野党がおバカなのは昔からで、今更あきれるには及びません
このところの株高は岸田内閣の功績よりも,中国からの外資の逃避先になっている影響が大きいということはないでしょうか.
ザイム真理教をぶっこわーす!
財務相まるで首相であるかのように振る舞っている。政権が内包するほころびがそこに現れている。それを衝けば首相交代が早まる、きっと。
ブログ主さま。面白い視点でのご投稿ありがとうございました。これは思いつかなかったです。
思いつきつながりで、今回の株価更新。ひねくれたジャーナリストやマスコミはどうせ卑下すると思ってましたが、NHKは前回の株価更新時代の各国の株価を比較すると、日本はやっと1倍に戻しただけだが、それ以上の国がいっぱいある。と嬉々として報じてました。よくもまぁこいつら思いつくなぁ、と。
Sky様
>日本はやっと1倍に戻しただけだが、それ以上の国がいっぱいある
これはまあ事実は事実で、特段文句を付けるところじゃないと思いますね。
日経平均の一方向的な上げ基調が顕著で、最高値超えも視野に入ってきた頃から、この手の指摘はずいぶんあちこちで出ていましたから、別にNHKの思い付きというわけでもないでしょう。
文句を付けるとしたら、そこじゃないと思いますね。
本当に大事なポイントと言ったら、
・私たちの暮らしの質、安全、安心と言った観点から見て、34年前と今でちっとも進歩がないのか?
・株価が1/5レベルまで低下していた一時期、日本の状態と言ったら、ズタボロの悲惨な状態だったのか?
・この間、株価が5倍、十数倍に上昇した欧州、米国での暮らが、果たしてユートピアに向かって一直線の状態なんて言えるのか?
こんな視点を完全に欠落しているからこそ、マスゴミなんて言われる所以だと思うんですがね(笑い)。
グラフを見れば一目瞭然な様に、全ては安倍政権の金融緩和から始まった
安倍首相だって二度の消費増税を始めとして、満点では全く無かったが、
国民が経済面で及第点を与えていたからこそ8年間の長期政権を保てたのだろう
この、「安倍政権が日本経済の歴史的転換を担った」って事を、
左傾メディアは誰も言わないね、言う訳無いけど
ここまであからさまに明確な事なんだけどねぇ
満点では全く無いゆえに、称賛は違うとは思うが、
「アベノミクスは失敗した」ってもう当然の事みたいに言ってる連中は、
死ぬまでそれで行くのかな? まあ行くんだろうな
無かった事にして生きて行くのだろう
大事なのは「人の失敗を絶対に忘れない」事ですよ、皆さん
なんか性格が悪い人の様に聞こえますが、この事は大事です
失敗に対して訂正もしない論者の言う事は信頼性が全く無いです
そんな連中に騙されない様に、人の失敗を忘れない事は大事です
日本人は人の良い人が多くて、自分の過去を無い事にして、
厚顔無恥に世にはばかる手合を優しく見逃す例が多いですが、
人が良いとは騙されやすいウスラバカと言い換える事も出来ます
自分が、日本社会が間違いを犯さない様に、そういう世間の優しさに付け込む、
厚かましい連中を見過ごしてはいけません
アベノミクスによる上げ基調を消費増税とコロナで冷やして、それが落ち着いて更に中国が転けてマネーが日本に入ってくるようになったから、でしょうか。
安倍·菅時代の貯金で総選挙に圧勝して、株価が上がりやすい最高の環境で総理をやって、支持率がこれだけ低迷してる岸田総理は自民党で最低の総理ランキングの常連になると思いますね。
客観的にそれが公平なのか分からないが、岸田総理によって自民党は凋落したという歴史的評価が確立すればそうなるんじゃないかな。
伊江太さま
コメントありがとうございました。
高値更新その日の報道でそのような広い視座での文句は出来なかったのでしょうねぇ。
しかし更新その日、当日の報道で他国に比べて大したことない、という下げをわざわざするのは流石NHK。と思った次第。何で素直に報道できないのでしょうねぇ。
他のすべての新聞社のケースと同様に中の人に問題があるからでしょう。
おそらくは、国営放送化を阻む最大要因なんでしょうね。(公務員の国籍条項)