「避難所で調理の負担が女性に集中」…それ普通では?

能登半島地震の復興支援が進んでいます。こうしたなか、被災地では女性にばかり料理の役割などが偏っていることへの不満も生じているとのことです。ただ、いみじくもこれについて説明しているご本人は、男性はが仕事に行っていたり、自身の片付けに行っていたりするとと認めており、このことから被災地では単純に「適材低所」の人員配置がなされているようにしか見えないのは気のせいでしょうか。

岸田首相や馳知事らの災害支援の適切さ

早いもので、能登半島地震の発生から、もうすぐ2ヵ月が経過します。

この地震、能登半島の地理的な条件の悪さ――とりわけ「山がちな半島であり、海岸線も入り組んでいて、各地が地理的に孤立しやすいこと」――もあいまって、どうしても支援が遅れてしまったことは事実でしょう。

ただ、岸田文雄首相を筆頭とする日本政府関係者、あるいは馳浩・石川県知事ら地元自治体関係者を巡っては、一部メディアなどからは「初動が遅れた」などと批判されていますが、『「岸田首相と日本政府の初動が遅かった」は事実なのか』などでもまとめたとおり、これは事実ではありません。

現実には地震発生直後からの岸田首相ら関係者の動きは、災害支援としてはモデルケースといえるほどに、極めて迅速だったからです。

事実関係を無視する残念な人たち

この点、ごく一部には、岸田首相や馳知事らの迅速な行動についても、「事前に決められたとおりに動いただけに過ぎない」などとして、頑なに政府関係者らの動きを頑なに「問題だ」などと批判する、ちょっと残念な人たちもいるようです(「思い込み」、本当に怖いものですね)。

もちろん、災害時の首相や知事らの動き方については、阪神・淡路大震災や東日本大震災などの際に、政府・自治体の災害支援などの仕組みが不十分だったことの反省を踏まえたものでもあることは事実でしょう。

しかし、決められたことを決められたとおりに愚直に粛々と実施できるというのも、ある意味では才能といえるかもしれません。いずれにせよ、少なくともこの能登半島地震への対応を巡って、岸田首相に大きな問題があったとは言い難いのが実情でしょう。

さて、こうしたなかで、現在は災害発生から2ヵ月近くが経過し、災害支援のフェーズも変わりつつありますが、岸田首相の先日のXポストがこれです。

岸田首相によると仮設住宅の建築状況について、目標の2,000戸を上回る2347戸がすでに着工していると指摘。今後は「仮設期間終了後も解体せず改修のうえ被災者の恒久的住まいとして活用する」という、いわゆる「ふるさと回帰型」の木造仮設住宅の建設も進めると述べています。

災害回収の場合は長年住めることもある

これに関連し、石川県ウェブサイト『応急仮設住宅(建設型)について(災害救助法:令和6年(2024年)能登半島地震)』によると、仮設住宅にはだいたい3つの類型があるのだそうです。

ひとつめは、学校のグラウンドや公園等の公有地に建設する、従来型応急仮設住宅です。これらはプレハブや移動式などで建設されるものですが、これについては入居期間(※建築工事完了日から2年以内)が終了すれば速やかに撤去されます。

これに対し、入居期間が過ぎても撤去されないのが、ふたつめの「まちづくり型応急仮設住宅」、みっつめの「ふるさと回帰型応急仮設住宅」と呼ばれるものです。

このうち「②まちづくり型応急仮設住宅」は、市街地やその近郊のまとまった空地などに長屋型の木造応急仮設住宅を整備し、入居期間終了後は市町営住宅に転用する、というものだそうです

また、「③ふるさと回帰型応急仮設住宅」は、現在は能登半島から離れ、「みなし仮設住宅」などで生活している被災者を念頭に、ふるさとに回帰するために集落内の空地等に戸建風の木造応急仮設住宅を整備し、入居期間終了後は市町営住宅に転用する、というものです。

いずれも、公費で設置され、入居期間中の家賃や駐車場代は無料とされます(ただし 光熱水費、引越費用、共益費、自治会費については入居者負担)。こうした支援が進むことは、被災者がふるさとに回帰のうえ、生活を再建するという効果が期待できます。

もちろん、国や自治体の支援で至らぬ点もあろうかとは思いますが、現状では国、地方などの制度をうまく使い、被災者に対する支援が進んでいることは間違いありません。

メディアがこうした状況を正当に報じようとしない点は、不思議と言わざるを得ないでしょう。

料理が女性に偏り――答えはすでに出ているが…

さて、その一方で、産経ニュースに20日掲載された、こんな記事が少し気になります。

避難所の炊事「男性もカレーくらい作ってほしい」 女性に偏る傾向、役割固定化に懸念の声

―――2024/2/20 14:05付 産経ニュースより

産経の記事によると、現地では避難所の運営を巡って、一部被災者に「特定の役割が固定化される」ことへの懸念が高まっているのだそうです。

いったい、なにが問題なのか――。

具体的には毎日の食事作りが女性に偏っているという傾向があり、ボランティアの聞き取りに対して「参政もカレーくらい作ってくれたら良い」、などと打ち明ける声もあるのだとか。そのうえで民間の支援団体も「持続可能な避難所運営ができるように、役割分担やルール作りの調整役が必要だ」と訴えている、というのです。

ところが、記事をよく読んでいると、支援団体代表は、このように述べたのだそうです。

仕事や家の片付けがあるからなのか、避難所には日中、働き盛りの男性の姿が見えなかった。残っているのは高齢者が多く、体を動かしているのは30~50代くらいの女性らが中心だった」。

ずばり、これが答えではないでしょうか。災害に際し、男性は力仕事に駆り出されるからこそ、料理を作るのが女性などに偏るのも、ある意味では当然ではないでしょうか?

そもそも、男性であれ、女性であれ、避難所の運営などでは、それぞれ適材が適所を受け持つべきではあります。一般論として女性よりも男性の方が力仕事などに向いている以上、一部の仕事が男性に、一部の仕事が女性に偏るのは、ある意味で仕方がない話ではないか、などと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. クロワッサン より:

    労りや感謝より不平不満が先に来てるなら、「しょうがない」とかにはならなさそうですね。

  2. 農民 より:

     「重要な仕事を抱えた女性避難者が、女性という一点だけで仕事への復帰を許されずにカレー作りに駆り出された」「体は弱い料理人の男性避難者が、男性という一点だけでカレー作りを許されずに瓦礫撤去に駆り出された」というのであれば、問題が明確で再考が必要ですが。「そんなケースは少ないだろう極論で詭弁だ!」というのであれば、「そんなケースが少ない」のが避難所でこうなった理由ですしね。
     前記事でちょうど”公平”の考え方の例として、男女の機会均等と結果均等についてコメントしましたが、こちらの話題でもまた結果の公平のみを考えているフシがありますね。ファシリテーターを配置したところで、他の諸問題は解決されるかもしれないものの、記事の事例に於いては結果は変わらない気がします。リンク先記者は、さっと見る限りは女性視点だけでなく男性視点の問題提起もよく扱っておられるようなのですが。

  3. 攻撃型原潜 より:

    元の記事を読む限りでは、インタビューされた女性は避難生活が大変な中でつい「男性も時には手伝ってほしいわー」と軽く愚痴った程度であったように見受けられます。
    それを聞いた記者が今流行りのジェンダー平等の論調に膨らませたきらいがあり、記事後半の結論部は第三者意見の一部を都合よく切り張りして、それが主観でなく客観的事実であるかのように錯覚させる内容であり、悪く言えば中立と見せかけて読者を誘導する質の悪い記事です。

    1. 雪だんご より:

      愚痴に尾ひれをつけて膨らませたならまだしも、
      「そんなインタビューは実行されていないし、された相手も存在しない」が
      十分にあり得るのがオールドメディアですからね。

      とはいえ、こんな記事はさすがにただのPV稼ぎの炎上狙いだとは思いますが。

      1. 攻撃型原潜 より:

        「そんなインタビューは実行されていないし、された相手も存在しない」
        → むしろインタビューされた相手は存在しないほうがよいです。狭い避難所社会の中で、もし実在すればすぐに「誰がこんな余計なことを言った」と割り出されて村八分になり避難所にいられなくなる可能性が高いです。
        この記者には報道後にインタビューされた人に対してどのような影響があるかの配慮は微塵も感じられません。

  4. 迷王星 より:

    私は男で自宅では掃除(の一部)以外の家事一切(炊事,洗濯)を妻任せにした生活を結婚以来何十年と続けていますが,この記事に関しては性別によって単純に分担が振り分けられることへの避難所の女性(の一部)の不満は理解できます.

    端的に言えば,炊事など避難所内の作業の分担の女性にとっては,恐らく殆どの女性避難者が忙しくて避難所から外へ出ることもなく(食材買出しの為に外へ出かける機会が得られるのは女性全体から見ればかなり少ない比率で済む),避難者の愚痴などを一日中聞かされながら避難所の中で過ごさねばなりません.

    更に言えば,避難所で炊事(や新たに導入された洗濯機の面倒を見るのも任されるならば,恐らくは洗濯も)をしているのでは,復興に向けて少しずつ進んでいるという実感は全く得られず,望みもしない一日中炊事などの避難所作業を何時まで続けなければならないのか,と途方に暮れても不思議ではありません.しかもそこに一部の避難民の愚痴を一日中聞かされねばならないのです.

    要するに避難所内部の仕事は賽の河原で石を積むような感覚に陥ったとしても不思議でなく,とても鬱な気持ちにさせられる陰な仕事なのだと推察できます.

    それに対して瓦礫の処理などの被災地の後片付けは肉体的には炊事よりもずっとキツイでしょうが,外という解放感のあるエリア(勿論,同時に被災で建物や様々な物が破壊されてしまったという悲惨な現実を見ざるを得ないのも事実です)での作業で,しかも作業をすればするほど,例えば瓦礫が減っていくとか僅かずつでも確実に状況が改善して行くのを直接に感じることが出来るという意味で陽な仕事だということです.

    作業の肉体的な強度だけに基づいて陰/陽という精神的な面を全く考慮に入れない役割分担の決め方については,速やかに改善(例えばローテーションで分担する)が不可欠だと思います.

    この固定的な作業分担が求められる期間が数日ならば,作業の肉体的強度だけで決めることに私も異議を挟みませんが,今回のような非常に大きな自然災害で相当な期間が確実に見込まれるとなると,肉体面だけで分担を決めるのでなく精神面への配慮は必須だと考える次第です.

    1. はるちゃん より:

      仰る通り、毎日終わりの見えない同じ作業が延々と続くのであれば誰しも気が滅入ると思います。
      これは男女関係なしですね。
      仕事のローテーションも必要という事ですね。

    2. ken より:

      本当にその通りだと思います。私が阪神淡路大震災で見て感じたのは、男性は力仕事に向いてますから瓦礫の片付けなどは早いんですけど、普段から家事してないので いる物 いらない物、壊れた物の分別ができずに結局、奥さん頼みの人が非常に多くて。そのうえ炊事ですからね。

  5. CRUSH より:

    「女性の社会進出ガー!」

    とかいつも言うくせに、朝日新聞社には女性の取締役ゼロ!
    みたいな構図ですかね。

    この手の「弱者を助けろ!」という正論ぽい暴論は、その発言に対して責任とれる署名入りで書かれているのをあんまり見かけないですよね。

    常に「誰かの意見なんですけど」という伝聞引用。
    あほらし。

  6. がみ より:

    なぜ青森県からボランティアに来ている

    『「男女共同参画地域みらいねっと」代表理事の小山内世喜子』

    だとわかっていてマスコミは被災者の意見として取材して誤解を招くような記事にしなければならないのでしょうか?

    高齢者や炊事や避難所清掃をするかたが日中避難所にいるのはわかります。
    震災初期から1ヶ月半が過ぎても避難所で昼間男性がくつろいで居たらとんでもない暴言を吐きそうな気がする御仁です。
    それ被災者の声ではありません。
    被災者であっても女性であっても動ける方には出来る作業があると思うのですが?
    もちろん男女に関係なく休憩や休日も必要です。

    なぜ避難所にいないだけでサボってる呼ばわりするレイシストを選んでインタビューするのか理解出来ません。

    持論に無理矢理結びつけて憶測で被災者を糾弾するのはいかがなものかと思います。
    仕事行ってちゃいかんのですか?
    1日も早く日常を取り戻したいだろうし、その為に支援しているんじゃないんですか?

    1. ken より:

      阪神淡路大震災の被災者で、復興支援にも関わった者です。言いたい事もよく分かります。亡くなった家族のいる方は墓やら手続きで大変でしょうし、入院した家族のいる方は、病院も近いとは限らないので避難場所に昼間いないこともしょうがないと思います。しかし、避難場所で、やらければならないことがあるなら、それしないで仕事行っちゃだめです。誰かに必ずしわ寄せが行きます。皆が平等に仕事も避難場所の運営も両立できるように協力しなければ。

  7. 匿名 より:

    家庭と違い数十人分というご飯を食中毒なく作るというミッションは大変であります。
    時間もさることながら、分量が家庭とは比にならないのでレシピも存在するか怪しいです。
    飲食、給食、栄養士の職の人の指導が無ければぶっつけ本番失敗しながら改善の道を進むしか無いでしょう。
    カレーなど作ろうものなら、鍋についたルーを洗うだけで10ℓの水でも足りないでしょうし、即効で下水への管が閉塞しそうです。こんな時こそ新聞の出番であり、活躍時です。新聞最高!定期購読していない人はケルヒャーで高圧洗浄で管でも洗いなさい。

  8. 匿名 より:

    クマの保護、環境保存、男女役割平等も極限状態の現場に完璧を求めるなんて
    傲慢な話ですよね
    むしろ現場の苦労や悲しみを踏みにじる悪意しか感じません

  9. 人工知能の中の人 より:

    記者が男女格差問題提起に結び付ける書き方しか知らんのかと実状をとらえているかはなはだ怪しい記事だ。

    家族の分だけの家事なら慣れていようが避難所全体の分量となると大変なのはわかる。正直な話文句があるなら他の人同様に仮設住宅に移ってしまえば避難所で集団生活しなくて良いのです。残った女性とて食事当番よりも仕事して金を稼ぎたいし家のこまごまとした片付けしたいでしょう。それらができず避難所生活を継続せねばならないのにはいくつも理由があるはずです。

    そういうの全部無視して「原因はジェンダーギャップだー」とまとめる記事は信用に値しない。

  10. まんさく より:

    女性に隔たるの話ですが、発言者を見ればさもありなんな発言です。女性の事ばから隔たって見ているとこうなると言う見本ですね。被災地まで来て活動家みたいな事やってたら煙たがられるだろうな。

  11. 一之介 より:

    なんでも平等の弊害ではないでしょうかね?
    歴然とした事実として性差というものがあります。特に腕力的なことについて。
    適材適所で協力し合えばいいんじゃないでしょうか?と、思います。
    腐ったフェミニストは中々理解しようとしないのかもしれませんけれども。

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