マクド値上げで客足減少?マクドの値上げは良い値上げ
「マクドの値上げで客離れが進んでいる」――。そんな話が出てきました。たしかに、かつては平日昼間に65円だった時代もあるハンバーガーが、いまや170円に値上げされているわけですから、「値上げで消費者離れ」というのは、非常にわかりやすいストーリーです。ですが、果たしてこの考え方は正しいのでしょうか。
マクドファンは値上げに不満?
全国8400万人(著者推定)の熱烈なハンバーガーファンの皆さまにとっては、ビッグハンバーガー(仮)、ナックマゲット(仮)、マクドフライポテト(仮)、ハッピーセットといった、マクド・ナルド社の製品にはずいぶんとお世話になっている、というケースが多いでしょう。
ところが最近、マクド社が提供する製品の値上げが相次いでおり、以前の『今回のマクド値上げ詳細情報と「賢い購入方法」の考察』などでも紹介したとおり、最近は都心などの店舗では、一部商品にはとくに高い価格が適用されています。
こうした状況だけを見ると、不満を抱くのも無理はありません。
消費者から見れば、どんな製品でも高いより安い方が良いに決まっていますし、かつては平日昼間などの条件を満たせば65円(!)だったこともあるハンバーガーが、いまや170円で提供されていることを思い出しておくと、やはり一部の消費者にとっては、納得がいかない者でしょう。
値上げでマクドの客離れ
こうしたなかで、ウェブ評論サイト『現代ビジネス』に、マクドの客離れに関する論考が掲載されていました。
止まらぬ、マクドナルドの客離れ…「値上げ」のウラにある真意
―――2023.12.20付 現代ビジネスより
執筆したのは編集プロダクション「A4studio」です。
同プロダクションによると、マクド社を巡っては「今年に入って客数が減少し続けている」というのです。
「同社の月次報告を見ると、今年の2月以降は前年度比で全ての月で客数が減少しており、最もマイナスを記録した6月には▲5.3%を記録した」
…。
これだけを見ると、なかなかに深刻です。
これについて「A4studio」はマクドの客数が減少している理由をフードアナリストに尋ねたところ、①値上げ、②クーポンの魅力低下、③セット系メニューの層が薄くなっていること、3点が理由だとの回答を得たそうです(それぞれの詳細については記事をご参照ください)。
この「値上げをしたから客が離れた」、というのは、非常にわかりやすい議論です。早とちりの人にとっては、この部分だけを読むと、「もうマクド社は終わりだ」と思うかもしれません。実際、この「フードアナリスト」の方も、こう述べているそうです。
「値段は上がったものの、商品のクオリティは以前と変わっていないんです。味は元のままなのに値段だけが上がっている状況なので、客が離れる流れはある種当然だと言えます」。
…。
値上げの理由はコストプッシュ型、そして値上げの効果は業績にプラス
では、なぜ値上げをしたのでしょうか。
これについてこの「フードアナリスト」の方は、次のように答えたのだそうです。
「値上げの理由は、原材料費の高騰や円安に加え、クルーの賃金の上昇も要因だと考えられます。マクドナルドの店舗は、ほとんどアルバイトで担っていますので、クルーの定期的な雇用を確保していくためには、どうしても賃金を上げざるを得ません」。
つまり、典型的なコストプッシュ型の値上げ、というわけですね。
そして、忘れられがちですが、じつは最も重要な論点は、その値上げがマクド社の利益にどう貢献しているか、です。
マクド社の2023年12月期・第3四半期決算短信(JP-GAAPベース)【※PDF】によると、マクド社の業績(2023年1月1日~9月30日の9ヵ月間)は売上高が前年同期比+8.7%となる2824億円の増収となっています。
また、営業利益は334億円(+19.3%)、経常利益は321億円(+20.6%)、純利益は201億円(+19.6%)と、典型的な増収・増益であり、利益率自体が改善していることがうかがえます。
マクドの値上げは「良い値上げ」
すなわち、現代ビジネスの記事にある「客数が減った」という情報が事実なのだとしても、現実のマクド社は増収・増益を達成している、というわけです。
このあたりは、少なくとも2022年第3四半期・23年第3四半期の比較だけで見れば、「値上げにより客数が減った効果」を、「値上げにより利益率が改善した効果」が大きく上回ったと結論付けられ、したがって、マクド社の値上げは「良い値上げ」だったといえます。
いずれにせよ、「値上げでマクド離れ」というストーリーは、現時点の状況だけで見れば、成り立たないと考えて良いでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
先ず、マクドナルドのハンバーグが、兎に角好きな人達は居る。そんな人達は、値段が上がってもマクドナルドを食べる。一方、マクドナルドが好きでもないけれど、値段が安いから食べていた人達も居る。
マクドはそんなに好きという訳でもないが値段が安いから食べていた客層を、ある程度、捨てることにした。
そうした方針を決めて、値上げをしたら、利益(率)が増えて、業績が良くなっちゃった!ってことのようですね。
追記します。
「良い値上げ」の意味は、こういうことですね。
然し乍ら、このサイトは本当に勉強になりますね。
元記事の現代ビジネスのアナリストの分析は、在り来たりですし、「良い値上げ」なんて言葉は出ていないです。
だから、仮に、現代ビジネスの元記事を読んでいたとしても、従来通りの在り来たりの分析なので、読み過ごしていたと思います。
日本マクドナルドは東証に上場する会社だ。
「値上げしないので客数は維持できてます。でも利益は減りました」これでは経営者の首が飛ぶ。
ビッグマック指数で言えば、日本マクドナルド
「この安値でよう頑張っとる」になるんじゃないでしょうか。
日本人とは胃袋のサイズが段違いの、海外からの観光客に限って言えば、
入りが大幅増だったなんて?(笑)
>入り
って何ですか?
済みません、教えてください。
さより様
(客の)入り、来客数とでも言えばよかったですね(笑)
大入り満員の、入り、でしたか?マクドナルドの客数減少と掛けているのですね。
マクドよりモスが心配
…とか言いつつこのところバーキン寄り
元々マクドナルドが「安い」と思ったことはありませんねえ。単にお腹を満たすということならば、立ち食いうどんのほうが勝り、牛丼はさらにその上を行きます。だからというわけでもありませんが、日本でマクドナルドや他のハンバーガーショップに行くのは、せいぜい数か月に1度くらいです。時々、「ああ、ハンバーガ-が食べたい」という発作が起きたときくらいかな。
でも、海外に出たときは、利用頻度が上がります。何を食べるか迷った時、考えるのが面倒な時、そしてホテルからの徒歩圏内にあった時、マクドナルドを使うことが結構あります。特別に美味いとも思いませんが、味は想定できますし、価格も大したことありません(日本では安いと思ったことないのに、海外では安いと感じる不思議!)。
例えば、香港に行く場合、たいてい午後便を使うので、ホテルに着くのは9時とか10時になります。一応機内食は食べているのですが、なんとなく小腹が空いた感じがするので、尖沙咺の24時間営業のマクドナルドに行ったりしますね。
余談:
日本の店でフライドポテトを注文するとケチャップが付いてきますが、ドイツのマクドナルドではマヨネーズが付いてきました。個人的にはマヨの方が好きです。
香港へ行っても、ドイツへ行っても、マクドナルドがある。これは、外国のドラマを見ていて(勿論、舞台は外国)、あるシチュエーションで、聞き慣れた音楽が聞こえて来たと思ったら、ドラマの中で、主人公に電話がかかって来た時の、アイホンの呼び出し音だった、ってくらいに異国情緒から覚めてしまうことですかね。
後、外国ドラマの中に映る、パソコンの壁紙の絵が自分のパソコンの壁紙と同じだった時。
何だかんだという言って、我々世界市民は、アメリカのグローバル企業が用意したデファクトスタンダーな生活方式の中で、人生を送っているようですね。このサイトのコメント投稿者の中にはアメリカ大嫌いな方もいるようですが、そういう方は、早速、ウンドウズを使うことを止めることで反米の立場を鮮明にされたらよろしいのでは?
何だかんだという言って → 何だかんだと言って
デファクトスタンダー → デファクトスタンダード
です。
アイホン → アイフォーン
です。
需要の価格弾力性ということだと思いますが、需要の価格弾力性を活用して、マクドは、価格差別もやっているようです。新宿会計士先生の科学的経営ということだと思います。今後は、データを集め、データサイエンス的にリアルタイム価格差別をやるかもしれませんね。マクドナルド。
日本では、総原価に適正利益(率)を付加したものが、価格だと思いそのような経営をやっているが、これは、大きな間違いです。
些か観念的にはなりますが、価格とは、市場において最大利潤を獲られる金額のことであるべきです。
所が、律儀ということを命題として、マーケティングが苦手な日本式経営では、市場調査をしません。
よって、不当に安い価格で販売していたり、もう少し価格を下げれば、爆発的に売れるのに、総原価プラス適正利益に拘る日本の経営者は、容易に価格を下げません。価格を少し下げれば、爆破的に売れて利益は最大化するかもしれないのに。
これが、価格弾力性が無いということです。価格弾力性が無いのは、日本の経営者の頭の中です。
>日本では、総原価に適正利益(率)を付加したものが、価格だと思いそのような経営をやっている
いつの時代のどこの世界の日本ですかね。
よっぽど市場範囲(規模ではない)の小さいtoBとかでないとそんな殿様商売通らない。
少なくとも一般消費者向けの商売でそんな経営をしている企業は生き残ってないでしょう。
市場調査して製品概要と販価を想定し許容できる原価を設定する方が一般的じゃないですかね。
設定した原価の中でより売れるものに仕上げていくのが開発の肝。
自動車も家電も食品も雑貨も大抵そう、中古売買でも想定売価と在庫期間から利益率考慮して仕入れ価格を決めている。
>総原価に適正利益(率)を付加したものが、価格だと思いそのような経営を
やってたのは西ドイツ時代のダイムラーベンツが有名ですがもう遠い過去の歴史です。
大多数の中小企業、少なくとも物造り物売り企業にそんな殿様商売思考の経営など無理です。
誤)大多数の中小企業
↓
正)大多数を占める中小企業
文脈を逆に読んで書いて貰ってもね。
>そんな殿様商売通らない。
こんな所で、殿様商売なんて死語を持ち出して来て、当たり前の事を書かれてもね。
日本の経営者は、未だ消極的な意識があり、もっと高く売れるものも安く売っているということです。
日本で、大体、殿様商売なんて出来るビシネスなんてないですね。
良く文脈を読みましょう。
言ってることがかみ合ってないね
需要の価格弾力性の考え方は、新聞の値上げにも適用されたのでしょう。ただ、マクドナルドと違うのは、差別価格を行っていないところです。新聞社も科学的経営をするのであれば、差別価格を適用すべきなのかもしれません。新聞業界の既得権として再販維持価格制度があり、柔軟な価格政策がとれないのかもしれません。もっとも価格を柔軟にしても業績が上向くとは思えませんが。大胆に新規事業をやった方が良いと思います。新聞社は。
新聞社も、差別価格を大々的にやっていた時期がありました。購読勧誘の際の景品です。TVや小型冷蔵庫を貰った購読者もいたという噂があった位でした。
当時は、新聞は最裏面のTV番組欄を見る為に購読するという人が多かったが、今、TV番組予定はTVそのもので見る事が出来るから、今新聞購読する人は、記事を読みたいから、購読しているのか?新聞を購読するという悪習?を止めてから随分経つので、現状が分かりません。
ただ、今、このような差別価格をやったら、新聞業界の崩壊を早めるだけでしょうね。
>新聞業界の崩壊を早めるだけ
これは、需要そのものが減少している、需要が固定している、中では、価格弾力性が働かない、ということなんですね?
新聞業界は、差別価格というお遊びもできない程に、低落しているということですね。
消費者にとっては値上げは歓迎できないけど、企業としては必ずしも損とは限らない。
結果的に利益が増すのならそれはそれでOKと言って良し。
長期的に見ればイメージが悪くなる可能性もあるけど、それはまだまだ分かりませんね。
少なくとも短絡的に「マクドナルドはもうおしまい」と言うのは避けたい所。
マクドナルドが値上げしてくれないと、他社もなかなか値上げに踏み切れないでしょう。
ならば、「さすがはNo.1企業。社会的責任を十分認識している」とでも褒めてあげるべきなのかもしれませんね。
余談:
むかぁ~し存在した100円マックのマックポークが結構好きでした……
価格は市場(しじょう)が決めるもので、市場(いちば)のセリと同じ。少しずつ価格を上げて行き、もうこれ以上価格を上げると逆に売り上げが減るというぎりぎりの点まで値段を上げるのがミクロ経済学的に正しい。それを実際にするかどうかは経営者の判断。利益率より市場シェア、顧客数獲得を優先すれば安売りチキンゲームになりやすい。マクドナルドの値上げをひとつの実験として観察したい。
決算短信から人件費はわからないんですが、コスト増要因の一つに「人件費上昇」を含めていましたね。
先日コメント欄で紹介された経産省の資料にもありましたが、原材料費の価格転嫁は進んでも人件費上昇は鈍い傾向が出ていました。
現代の記事は明るい話題だと思います。