東電柏崎刈羽原発の運転禁止解除か:待望される再稼働

原子力規制委員会が27日にも東京電力柏崎刈羽原発の事実上の運転禁止措置を解除する見通しだとする報道が出てきました。同原発を巡っては、2017年には再稼働に必要な審査に合格していたにも関わらず、21年に規制委が運転禁止命令を出しており、この措置の解除までにずいぶんと時間がかかった格好です。再稼働には地元自治体の同意も必要ですが、再稼働可能な原発を再稼働することは、CO2排出量削減、貿易収支改善、ロシア制裁強化などの観点から非常に有益です。

柏崎刈羽原発の運転禁止解除か

いくつかのメディアが20日までに、東京電力柏崎刈羽原発の事実上の運転禁止命令が、27日に解除される見通しだ、と報じました。

柏崎原発、27日にも運転禁止解除 東電社長と面談、改善確認―再稼働時期は見通せず・規制委

―――2023年12月20日18時43分付 時事通信より

柏崎刈羽原発の運転禁止命令、27日解除へ 規制委

―――2023年12月20日 12:58付 日本経済新聞電子版より

報道等によると、原子力規制委員会は2021年に下した事実上の運転禁止命令を巡って20日、東京電力の小早川智明社長との面談の結果、解除に向けた判断材料が揃ったとし、事務方である原子力規制庁に対して解除に向けた手続きを進めるように指示したのだそうです。

原子力規制委員会の怠慢

正直、よくぞここまで長期間、放置したものです。

もともと東電柏崎刈羽原発は2017年12月の時点で、再稼働に必要な審査に合格していたのですが、IDカードの不正使用や侵入検知装置の不具合などのトラブルを受けて規制委は21年4月、核燃料の移動を禁じる是正措置命令を出していたものです。

これだと、「安全性の本質的な部分には問題がないにも関わらず、どうでも良い(?)論点で規制委がイチャモンを付けている」ようにも見えなくはありません。原子力規制委員会の怠慢そのものでしょう。

いずれにせよ、時事通信の記事によれば小早川社長は20日、規制委との面談で、「福島第一原発事故を起こした事業者として信頼を頂くことは簡単な道ではない」としたうえで、地元の人々の信頼を得るうえで「発電所全体での改善活動の継続」が必要、とする認識を示しているそうです。

もしこれらの報道通り「運転禁止命令」が今月27日に解除されれば、あとは地元自治体の同意が得られるかどうかという論点に移ることでしょう。

関電は6月の値上げ申請せず:貿易赤字の原因は石油等

さて、こうしたなかで改めて認識しておくべきは、原発稼働の必要性です。

世界的なエネルギー危機で石油・LNG価格などが高止まりを続けるなかで、今年は東京電力などで電気代の値上げが相次いでいますが、原発の稼働が実現している関西電力の場合、6月の値上げを申請していませんでした。

東京電力と関西電力で“圧倒的な差”が…「東京23区と大阪市」の電気代を比較してみた結果

―――2023/11/02 08:54付 Yahoo!ニュースより【週刊SPA!配信】

また、日本の貿易構造を見ていただくとわかりますが、2023年1月から10月までの貿易額は、輸出額が82兆4188億円であるのに対し輸入額は90兆9858億円で、貿易収支の累計額は、8兆7130億円の赤字です。

しかし、品目別にみてみると、輸入額のうちの約4分に1に相当する22兆3725億円が、鉱物性燃料(石油、石炭、LNGなど)で占められています。もしも鉱物性燃料の輸入額が半額程度で済んでいたとしたら、日本は貿易赤字ではなく、むしろ小幅な貿易黒字だったという計算です。

太陽光で同量確保なら山手線の4.4倍の面積が必要

ちなみに東京電力のウェブサイトによると、柏崎刈羽6号機・7号機の電気出力はそれぞれ135.6万kW、合計すると271.2万kWです。

これに対し、「メガソーラー」と呼ばれる大規模な太陽光発電施設は、出力が「1M(メガ)kW」、つまり1000kW以上のものを指すようです。

ただし、太陽光発電の場合、発電できるのは日照時間に限られます。

キヤノングローバル戦略研究所の2023年1月5日付『【研究ノート】メガソーラーの所要面積試算』によれば、設備利用率は17.2%、1つのメガソーラーの所要面積は2ヘクタールとの試算が用いられています。

これに当てはめれば、柏崎刈羽6号機・7号機の設備利用率を90%と仮定すると、これと同じ発電量を確保するために必要な太陽光パネルの面積は約28,381ヘクタール、すなわち山手線の内側面積(6,400ヘクタール)の約4.4倍の面積が必要だ、という計算です。

しかも、ロシアによるウクライナ侵略などの事情もありますので、ロシアの外貨収入を削るという意味では、日本が鉱物性燃料の輸入額を減らせるならば減らした方が良いに決まっています。

こうした観点からは、稼働できる原発の再稼働を進めることは、たんに首都圏などにおける電気料金の引き下げによる生活支援というだけでなく、貿易収支の改善、CO2排出量の削減、ロシア制裁への間接的な強化など、メリットはいくらでもあります。

そもそも原発再稼働の決定権限を原子力規制委員会に委ねておいて良いのかという問題もありますが、それでも差し当たっての日本経済の課題は、稼働できる原発の再稼働を急ぐことで、かなりの程度は解決するのではないかと思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 星のおーじ より:

    自称、原子力の判る総理大臣のイラ菅が超法規圧力で各社の原発を停止させてから10年経ったんですね。東電の再稼働対応がお粗末過ぎる事はありますが、早く再稼働して、今からでも少しでもCO2減らさなくちゃ。イラ菅の圧力で止めた原発の代替で大量の旧式火力が焚かれて、盛大にCO2が排出された歴史を忘れちゃいけないと思う。

  2. KN より:

    結論が決まっていて、屁理屈をつけて拒絶するさまは、国際捕鯨委員会(IWC)や、獣医学部新設の岩盤規制を見ているようだ。原子力規制委員会は独立性を謳っているが、「資源の活用」という視点は全くないようです。
    関電のように割安料金でも圧倒的な利益率が出ている点は、もっと知られてもよい。

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