これまで舌鋒鋭く自民党の世襲批判をしてきた菅直人元首相の長男・菅源太郎氏が、武蔵野市議会議員補選に出馬するようです。これについて菅直人氏から「後継者」としての指名を受けている松下玲子・前武蔵野市長がX(旧ツイッター)で、菅源太郎氏の事例は「世襲っぽいけど世襲じゃないです」とする趣旨の内容をポストしました。
2023/12/19 11:00追記
本文中の誤植を訂正しました。
自民党の世襲政治家問題
「自民党は本当に腐っている」。
こんな声を、そこここで聞くようになりました。
やはり政治とカネの問題が大きいのかもしれませんが、これ以外にもよく出てくるのが、「世襲批判」です。
「世襲政治家」に明確な定義があるのかはよくわかりませんが、わかりやすいものが、「親子数代にわたり政治家」、というパターンでしょう。
たとえば故・安倍晋三総理大臣のケースでいえば、母方の祖父・岸信介(1896年~1987年)が首相経験者であり、当時は有力な首相候補と目されながらも癌で死去した父・安倍晋太郎(1924年~1991年)も外相経験者でした。
安倍総理には子供がいなかったものの、実弟の岸信夫・元防衛相の長男である岸信千世氏は今年4月の補選で立候補し、衆議院議員に当選しています。岸信千世氏自身は安倍総理の子息ではありませんが、たかだか30代前半の若者が選挙で当選したのも「安倍総理の甥」だったことが寄与しているのかもしれません。
あるいは、麻生太郎総理大臣は母方の祖父の吉田茂(1878年~1967年)も首相経験者ですし、その麻生総理は早ければ次の衆院選で引退し、選挙区を自身の長男に譲るのではないか、といった観測も出ています。
まだまだいるぞ!世襲政治家
安倍、麻生両総理だけではありません。
いま話題の「小石河連合」(小泉進次郎、石破茂、河野太郎の各氏)も、父親が政治家だったという共通点がありますし、現職閣僚や自民党幹部のなかでは岸田文雄首相や鈴木俊一財相、小渕優子・選対委員長など、挙げていけばキリがありません。
この世襲政治家に対する批判としては、やはり、裏側には「ズルい」という嫉妬の感情があることは間違いありません。私たちのような一般人には知名度も看板もカネもなく、普通に選挙に出たとしても、おいそれと当選することはできないからです。
それなのに、世襲政治家は最初から知名度もありますし、親などから引き継いだ地盤や政治資金団体などを使えば、当選することだって比較的容易です。
そして、いったん当選すれば、国会議員としての権力を使い、国民から見えないところで、裏でコソコソとズルいことをしているに違いない――、といったところが、その嫉妬の正体でしょうか。
世襲って問題なんですかね?
いちおう真面目につっこんでおくならば、まともな政治家であれば東京と地元に事務所を持っておかなければなりませんし、陳情を受けたり、地元の地方議会議員らと連絡したりするための窓口として、複数名の秘書も雇っておかねばならないでしょう。
こうした事務所の維持費だけでも大変なコストがかかりますし、まじめに議員活動をしていれば、経費はいくらでも必要なのです。
当ウェブサイトで「日本は国会議員(とくに衆議院議員)の人数が足りない」と指摘しているのは、議員1人あたりの有権者数が多すぎ、国会議員としての本職である政策の立案にまで時間を割くことができない、という事情があるからなのです(※このあたりの事情については本論から外れるので、またどこかで議論します)。
また、世襲政治家だと幼いころから政治家としての動き方を見ながら育つだけでなく、ほかの国の政治家一族などとも家族ぐるみの付き合いをすることが多く、政治家として必要な実務能力、人脈などが、最初からある程度は備わっているというメリットもあります。
たしかに「世襲批判」は非常にわかりやすいテーマでもあるため、ときどき、野党やメディアからも舌鋒鋭い世襲批判が出てくるのですが、個人的には「世襲だから」というだけの理由で政治家を批判するのはいかがなものかと思う次第です。
菅直人氏「非世襲は当たり前」
さて、世襲批判といえば、菅直人元首相の事例を挙げておきましょう。
菅直人元首相、原発訪問「ベストだった」 世襲に苦言「民主主義の健全さ損なっている」
―――2023/11/22 07:00付 Yahoo!ニュースより【AERA dot.配信】
『アエラドット』が11月22日付で配信した記事によれば、菅元首相は自身が世襲議員でないにも関わらず首相に上り詰めたことについて、こう述べています。
「非世襲で総理になったことに言及してくださる方は多いですが、当事者からするとそれが当たり前です。親が議員だから子が地盤を継ぐというのは、私の常識からすると全くおかしい。一切ダメとは言いませんが、封建社会ではないのに特に自民党にはあれだけ多くの世襲議員がいる。民主主義の健全さを大きく損なっていると思います」。
ずいぶんと、舌鋒鋭い批判です。
ですが、その菅直人氏の長男である菅源太郎氏が、立憲民主党の公認を得て武蔵野市議補選に出馬する、という話題が出て来ています。
「自分たちには甘い」菅直人氏の長男が市議補選に出馬…「いわゆる世襲にはあたらない」コメントに批判の嵐「世襲やん」
―――2023/12/10 19:18付 Yahoo!ニュースより【SmartFLASH配信】
これについて『スマートフラッシュ』などの報道によると、父親である菅直人氏は東京18区選出の衆議院議員であり、今回、長男の菅源太郎氏が出馬するのはあくまでも武蔵野市議選だから、世襲ではない、というのが両名の言い分のようです。
松下前市長のXポスト
ちなみに菅直人氏の後継者に指名されたのは武蔵野市の松下玲子・前市長ですが、その松下氏が菅源太郎氏を巡って18日、X(旧ツイッター)に、こんな内容をポストしました。
菅源太郎氏は「世襲っぽいけど世襲じゃない」、「厳密には政治家の世襲の定義にはあたらない」。
「世襲の定義にあたらない」もなにも、その「世襲の定義」自体がよくわかりませんが、明らかに詭弁でしょう。武蔵野市自体が菅直人氏の地盤である東京18区と重なっており、その地域で選挙に出馬する以上は、もし菅源太郎氏が当選した場合は、一般的には明らかに「世襲政治家」とみなされるのではないでしょうか。
とにかく立憲民主党関係者にはこの手のブーメランが多すぎて、少々困惑します。
いずれにせよ、世襲だろうが世襲ではなかろうが、私たち国民の生活を安全で豊かにしてくれるのが良い政治家ではないでしょうか。
そして、どの候補者を当選させるか(あるいは当選させないか)を巡っても、結局、政治家を選ぶ側の有権者が賢く判断しなければならないことだけは間違いないでしょう。
View Comments (24)
小生、武蔵野市民です。
日曜日から非常に五月蠅いです。
屁理屈で世襲じゃないとか言ってるけど、いつものナロナムブルですね。苛立たしい。。。
あ、イラ菅の息子だからね。
武蔵野市は立件協賛党?立憲共産党?みたいな、左翼の人が多い変な東京18区。
世論調査や選挙などで、国内平均と著しくかけ離れた支持政党分布になります。
今でも頻繁に、朝晩の駅前で9条教の爺ちゃんが古びて角が擦り切れた看板を立ててビラ配ってたり、選挙の時には本物の第4列の男・イラ菅が駅前に出てくる「化石の町」、みたいな?
それにしてもクリスマスに選挙投票日だなんで、益々迷惑千万なダメ市長・松下玲子です。
辞めたのは取り敢えず良かったけどね。
> それにしてもクリスマスに選挙投票日だなんで
細かいところですが、たぶん選挙投票日は24日(日)だと思うので、クリスマス・イブではないでしょうか?
星のおーじさま
>それにしてもクリスマスに選挙投票日だなんで、益々迷惑千万なダメ市長・松下玲子です。
年末の忙しい時期に選挙運動、クリスマスに投票なんて、それだけで選挙民の怒りをかいそうです。(もしかしたら、投票率が下がることを期待しているのかも。もっとも、怒りの期日前投票が増えるかもしれませんが)
答え合わせ:
武蔵野市議補選 改選2名 : 立候補6名
自民推薦の山崎さんが1位でした。 15,153
イラ菅の息子の世襲立民・菅さんは2位 13,894
投票総数 51,856
市長選挙も立憲共産の負け。
自公推薦 小美濃安弘 27,024
立憲共産 社民他推薦 笹岡裕子 26,685
ちなみに今回の選挙は、
イラ菅こと菅直人衆議院議員が急に引退を表明
なので急いで松下玲子武蔵野市長が辞職して後継者を表明
そのため急遽市長選挙になり、市議を辞職した2名が立候補
そのため空席となった市議2名の補欠選となった。。。
もともと左翼系の巣窟みたいな東京18区の武蔵野市=菅直人の自宅地元で、自民党が政治資金パーティ不正でガタガタになっているので、残念ながら立憲共産の勝ちだと思っていたのに、何故か自公陣営の逆転勝ちになった。。。。
東京新聞さんが詳しいです。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/297963?rct=t_news
武蔵野市長選 松下市長の後継、自公系候補に敗れる「18年間の歩み止めてしまった」
菅源太郎氏が世襲であるかどうかよりも、政治家としての資質があるのかわからない。
Wikipediaを見ると、中学不登校や高校中退などもありなかなかのお坊ちゃまに見えるのは皮肉ではないが、なんともいいづらい。
少なくとも、政治家を目指すのであれば父親の秘書ではなく、弁護士になるとか、松下政経塾や維新の会の養成塾で政治家になる修行をするとか、他の政治家の秘書を経験するとかしないと議員として国民に説得できないとおもう。
地盤看板鞄「三バン」揃ってても落選する世襲候補や立候補にもたどり着かない"世襲候補候補"もいますモンね
幸いというか残念ながらというか日本の投票率は『仮に100%になれば現状をひっくり返す可能性がいくらかでも有る程度』には低い(or の水準にある)と思っトリマス
(最強レベルの小渕優子が有権者の過半数とった選挙の対立候補見たら…ネェ…失敬)
>その「世襲の定義」自体がよくわかりません
「私が世襲だと思ったら世襲、世襲ではないと思えば世襲ではない」
・・・世の中には独裁者志向の人がたくさんいます。
毎度、ばかばかしいお話しを。
菅直人(元)総理:「自民党の世襲議員は悪い世襲議員で、我々の世襲議員は良い世襲議員だ。市民活動の仲間も、みな、そう言っている」
まあ、仲間うちなら、そうでしょうね。
岡山で立候補した時は父親の地盤ではないので「世襲ではない」と言えたかもしれないが、今回は「世襲でしょ」
昔は紅白が終わり、家の近所の神社に初詣に行ったものだ。
あまり大きな神社ではないがこの日ばかりはすごい人出で長い列ができる。
そこに毎年ある県会議員が立っていて挨拶をしている。
「あけましておめでとうございます」の次は「県会議員のxxxです」「今年は~年、昔から~年はxxと言われています」等々どうでもいいことを言い続けて、その間に自分の名前を言うのを忘れない。その横には夫人、2人の息子(中学生と小学高学年くらい)が立って、頭を下げている。初詣が終われば私は帰るが彼らは行列が途絶える朝方までやっているのだろうか。
その県会議員の地元なのだろう。息子2人は新学期に学校に行けば「あの日神社で頭下げてただろ!」などとからかわれるに決まっている。
私が息子だったら「絶対嫌だ!」と言って泣き叫んで柱にしがみついても行くのを拒否するが。
つくづく思ったものだ「こんなみっともないことして政治家でいたいのかな」
ちなみにその県会議員、数年後に選挙違反で捕まってた。
世襲議員が地盤持ってるのが強いというのは理解するが
あなた方野党の支持率がさっぱり上がらないのは世襲と一切関係ないぞと
世襲批判の前に科学技術やエビデンス意味を理解できる人材を用意しろと言いたい
毎度、ばかばかしいお話しを。
菅直人(元)総理:「俺の長男だからと言って、当選するとは限るまい」
自民党議員の長男でも、同じだと思うのですが。
蛇足ですが、今回の件、野田(元)総理は、どういっているのでしょうか。
「世襲」がダメで「後継者」はいいっのがよくわかないのです♪
血縁のあるなしだけで、前の人から地盤、看板を引き継いだり、そばで仕事を覚えるってのには変わりがないと思うのです♪
むしろ「○○氏の後継者」とか言うってことは、その○○氏の影響を受けるってことで、○○氏が院政を敷くみたいで、よっぽどダメな気もするのです♪