日本学術会議の問題を「カネ」という側面から見れば、「国がカネを出すならクチも出す」、「クチ出ししないならカネも出さない」、という点に尽きると思います。こうしたなか、日本学術会議は9日の総会で、政府が現在進めている民間法人化などの改革案に反対する声明を採択したようです。「カネを出せ、クチを出すな」、は、なかなかにムシが良い発想です。
目次
日本学術会議問題とは?
日本学術会議という組織があります。
当ウェブサイトでこの組織について取り上げた最も古い記事は、今から約3年2ヵ月前の『菅総理「日本学術会議の任命拒否」は当然過ぎる判断だ』ですが、この組織についてはその後も当ウェブサイトにて、しばしば取り上げています。
この組織の問題点をごく簡単にいえば、当初の立法理念どおりの役割を果たしているのかが極めて疑わしい、という点に尽きると思います。
昭和23年(1948年)に制定された日本学術会議法の冒頭には、こんな前文が置かれています。
「日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし、ここに設立される」。
「科学は文化国家の基礎である」。
これは、まったくその通りでしょう。
しかし、日本学術会議がこれまで、科学に基づいて、わが国の発展や人類社会の福祉に貢献し、世界の学会と提携して学術進歩に寄与してきたと、果たして胸を張って主張できるものでしょうか。
ALPS処理水で学術会議は声明を出したのか
いくつか事例はあるのですが、個人的に最も強く指摘しておきたいのが、今年8月24日に始まった、福島第一原発にかかるALPS処理水の海洋放出の問題でしょう。
この問題、端的にいえば、「科学対非科学」の争いのようなものです。
というのも、福島第一原発から海洋放出される処理水に含まれるトリチウム量は、科学的に設定された一定の基準値を大幅に下回っており、かつ、原子力施設からトリチウムを海洋や大気に放出するのは、世界中で一般的に行われている慣行にも合致しているからです。
しかし、日本の一部オールドメディアはこれまで海洋放出に関する風評被害をばら撒いてきましたし、、とりわけ日経新聞や朝日新聞は、科学を正面から否定するかの主張を掲載したりしています。
科学を隠れみのにするな
―――2023年8月23日 2:00付 日本経済新聞電子版より
科学振りかざすだけではなく…増え続けるタンクを考える
―――2019年9月26日 10時02分付 朝日新聞デジタル日本語版より
さらには、今回の海洋放出は、国際社会との間では国際原子力機関(IAEA)などとの密接な協議を行いながら行われるものであるにも関わらず、主要国の中では中国やロシアなどが日本の海洋放出に反対しているとされます。
そして、ときとして科学的根拠を欠きながら、「海洋放出反対」などと叫んできたこれらのメディアや国家を、科学的根拠によって戒めるべき役割を担っていた機構のひとつがあるとしたら、それは間違いなく日本学術会議だったはずです。
ところが、日本学術会議のウェブサイトを見ても、少なくとも海洋放出が始まった8月24日以降、この日本学術会議が「福島第一原発のALPS処理水放出は科学的に見て安全である」とする宣言を公表したという事実は見つかりません。
一説によると年間10億円前後(※)という国費を投入されていながら、この組織はいったい何をやっているのでしょうか(※もっとも、予算は年により異なるようであり、最近だと10億円を割り込んでいるとする資料もあります)。
「社会との対話窓口を閉ざす」「レジ袋有料化を提言」
ちなみに日本学術会議といえば、ほかにも強烈な話題は多々あります。
たとえば以前の『「国民との対話」騙る日本学術会議がリプ欄閉じて炎上』では、日本学術会議がツイッター(現・X)やYouTubeに投稿した「我々は広く社会と対話する」などとするメッセージのリプライ欄が閉ざされていたことを取り上げました。
「我々は国民と対話する」などと騙るわりに、SNSや動画サイトではリプライ機能や読者コメント機能を無効にするというのは、いったいどういう了見なのでしょうか。それとも自分たちが厳しい批判を受ける立場だということを、案に理解している、ということでしょうか?
また、『ウクライナ戦争巡る日本学術会議の「ペラいち」声明文』でも紹介したとおり、2022年2月24日にロシアが開始したウクライナへの違法な軍事侵攻を巡って、日本学術会議が公表したのは、「A4判のスッカスカの声明文」でした(図表)。
図表 日本学術会議が公表した「A4ペラいち」のイメージ画像(※クリックで拡大)
(【出所】日本学術会議ウェブサイト)
何が言いたいのかよくわからない、このスッカスカな声明文を出して、日本学術会議は何がやりたかったのでしょうか?日本学術会議としては、こんな文書でなにか社会的役割を果たしているとでも主張したいのでしょうか?
ほかにも、あの悪名高い「レジ袋有料化」を巡っても、日本学術会議の元会長が「あれは自分たちが提言したものだ」と言い出したりする(『レジ袋有料化も日本学術会議の提唱がきっかけ=元会長』等参照)など、正直、この組織が社会にとって無益であるだけでなく、むしろ有害ではないか、との疑いは払拭できません。
インナーサークルで選ぶ仕組み:有権者は口出しできない
ではなぜ、こんな腐った組織ができあがってしまうのか。
そのヒントは、日本学術会議のメンバーの選び方にあります。
日本学術会議法第7条によると、こんな趣旨の内容が規定されています。
- 日本学術会議の会員は、日本学術会議側の推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する(同第2項)
- 会員の任期は6年とし、3年ごとにその半数を任命する(同第3項)
ちなみに同法第17条によると、推薦の基準は、こうです。
「日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする」。
要するに、次の会員の候補者は日本学術会議のインナーサークルで決められ、その候補者が内閣総理大臣に提示される、という仕組みです。
このあたり、内閣総理大臣は間接的に私たち日本国民から選ばれた国民の代表者ですが、その国民の代表であるところの内閣総理大臣(あるいは国会議員など)が候補者の選定に関わることができないというのは、間接的には、「国民が学術会議の運営にクチ出しできない」、という意味です。
公費という国民のカネが投じられているのに、国民がクチ出しできない――。
なんだか強烈です。
学術会議側は改革案に反対する声明
2020年秋の人事では、菅義偉総理大臣が推薦されたリストに掲載されていたうちの6名を任命しなかったものとして、日本学術会議や一部メディアが「学問の独立に政府が介入した」などとして大騒ぎしていたものですが、そもそもそれ以前の問題点として、会員の選任手続自体が不透明です。
正直、国費を投入するならば学術会議のメンバーの選任手続に公的に透明なプロセスは必要ですし、もし学術会議側がインナーサークルとして今後も存続していきたいと思うならば、これ以上、国費は投入すべきではありません。
こうした観点からは、現在、政府が検討している、日本学術会議を国から独立した法人に移行するなどの案(『注目に値する「日本学術会議の民間法人化」議論始まる』等参照)は、まことに理に適った改革案であるといわざるをえません。
ところが、これに関連し、日本学術会議側からは反対の声明が出てきたようです。
日本学術会議のより良い役割発揮に向けた基本的考え方―自由な発想を活かした、しなやかな発展のための協議に向けて―【※PDF】
―――2023/12/09付 日本学術会議HPより
これは9日に行われた総会で採択された声明だそうです。A4ペーパーにぎっしりと書かれた声明であり、ウクライナ戦争についてのスッカスカな声明文と比べると、ずいぶんと内容は充実(?)しています。これを可能な限り要約すると、こんな具合でしょうか。
- ①政府介入は必要最低限にし、柔軟で自律的な組織運営を保証すべき
- ②会長と会員の選好の自立性、独立性は確保しなければならない
- ③政府の改革は日本学術会議の機能強化につながるものでなければならない
- ④国は日本学術会議への財政支援を継続せよ
…。
ようするに、「今まで以上にカネを出せ、今まで通りクチ出しするな」という、非常にムシの良い「声明」です。
ですが、これまで日本学術会議がろくにナショナルアカデミーとしての役割を果たしてこなかったことを思い出しておくと、こうしたムシの良い主張が、社会で理解を得ることができるものでしょうか。
同じ構図はNHKや財務省にも?
もっとも、日本学術会議問題について調べていくと、個人的にはいろいろと引っ掛かりを覚えることもまた事実です。
日本学術会議の問題を「カネ」という側面から見たら、「カネを出すならクチも出す」、「クチ出ししないならカネも出さない」、という点に尽きるわけですが、この構図、形を変えれば、ほかのさまざまな組織についても同様に成り立ちます。
たとえばNHKの場合、雑にいえば、「テレビを設置したら受信料を払わなければならない」という仕組みが採用されているわけですが(『情報漏洩事件から垣間見えるNHK「深刻な腐敗ぶり」』等参照)、私たち視聴者はNHKにカネを払っているわりに、NHKの番組内容に口出しすることは認められていません。
これが当ウェブサイトでしばしば指摘する、「私たち国民にはNHKを倒産させる権利がない」、という問題点です。
これが民放各社などであれば、極端な話、視聴者が「不視聴運動」などによって倒産に追い込むことは可能です(※といっても、そのような事例はまだ出ていませんが…)。また、新聞社の場合も同様に、読者は「おカネを払って新聞を買う」行為を止めることで、新聞社を倒産に追い込むことができます。
NHKの場合は、法律によってその存在が保証されているため、どんなに劣悪な番組を放送しようが、視聴者としてはNHKに倒産などのペナルティを与える手段がありません。
だからこそ、NHKも公正な土壌で競争するのであれば、たとえば「民営化する」、「スクランブル放送化する」などの対応が必要なのです。
そして、こうした「有権者の監視が行き届かない組織」という問題点を抱えているのは、NHKだけではありません。国民が選んだわけでもない官僚が国のサイフの入口と出口を一手に支配し、国家財政を私物化しているという意味では、財務官僚・財務省にも、まったく同じことがいえるのです。
その意味では、日本学術会議に有権者の監視を入れるという改革がうまくいけば、その次のターゲットがNHK、さらにその次のターゲットが財務省である、という言い方もできるのかもしれません。
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毎度、ばかばかしいお話しを。
日本学術会議:「「日本学術会議にカネは出せ。日本学術会議にクチは出すな」は、日本学術会議内部では通用するのだ。愚民は黙っていろ」
もしかしたら、これは日本学術会議内部では否定することのない既得権益になっているのではないでしょうか。
毎度、ばかばかしいお話しを。
日本学術会議:「今、話題のパーティー券を売って、金を集めよう」
近年、日本学術会議が、例の任命拒否問題と、民間法人化議論以外の話題で、少しでもニュース種になりそうな動きを世間に見せたことがあっただろうか?
「科学が文化国家の基礎」という理念のもとに設けられている己の役割を、多少なりとも自覚しているのなら、この絶望的なまでに低い存在感を、恥と思わずして何と感じているのであろう?
現状の組織も、民間化される非営利法人も不要。有志の科学者が集まり、ときどきの科学的重要問題について勉強会、討論会を開き、適時声明を出しておれば、それで十分。真に「文化国家の基礎」たり得る提言ならば、社会に間違いなく大きな影響力を及ぼし、それによって科学者の有用性を改めて社会に認知させていく機能を果たすでしょう。
日本の国家や国民の役に立たない穀潰し組織は潰してどうぞ。
こいつらも単なる共産党の公金チューチュースキームの一つに過ぎない。
日本の役に立たないだけならまだしも、日本の脚を引っ張り、中国の人民解放軍とは協力関係にあるとか、外観誘致も甚だしい。
>こいつらも単なる共産党の公金チューチュースキームの一つに過ぎない。
菅義偉さんが、安倍さんの路線を受け継いで共産系の任命拒否を明確にしたのも大きな業績ですね。
そうなんですよ、第三者機関である学会や委員会からの推薦を政府は拒否しない(1984年)のであって、当事者である会員と準会員の推薦(2005年)はその範疇ではありません。
これを知った時、擁護派は学者の国会などと評しながら民主的な投票権ないじゃないかとあきれたとともに、学術会議のサイトに書いてあるようなことさえ指摘しない日本のマスメディアに私は遅まきながら終わってたんだと結論を下した次第です。
他でも言っていることだが、こういう国民、社会に対して害を為す組織団体人物については徹底的にぐうの音もでないほど反論、攻撃して、跡にはぺんぺん草も生えぬほど完膚なきまでに叩き潰し、世間に晒し上げることが肝要。力を持たない1人ひとりが事あるごとにいちいち継続的に声を出し矛盾を突き、反論し、正論を主張すること。甚だしくも思い上がり世間を舐めた反社にも匹敵する組織に対する一切の情けは国民の為ならずと肝に銘じたい。
それにしても菅総理(当時)の何という仕事ぶりよ。マスコミが血迷ったように総攻撃したのももっともだ。
「代表権なきところに課税なし」とはよく言ったものだ。
国会、議会に対しては選挙で、株式会社にあっては株主総会でいわゆるスポンサーの権利行使が保障されている。裁判官に対しても形だけであっても国民の審判がある。その点、官僚組織、NHK、学術会議など、国会審議はあれど、彼らがスポンサーである国民の直接の声を無視して存在できる状況はどう考えても制度的欠陥である。
そもそも、菅総理が任命拒否した際に、「任命拒否理由を説明せよ」とせまったが、その前に彼らは推薦理由を国民に丁寧に説明したのか? 思い上がり、勘違い、世間とのズレも甚だしい。社会不適合人物、団体である。解体もしくは改変すべきは当然だ。
相変わらず学術会議は無能かつ腐っていますね。
しかしマスコミは菅政権の頃の様に擁護する気はない模様。
「もうどうやっても学術会議が世論に守ってもらえる事はない、むしろ世論は敵」
と判断しているのだとしたら、正確な読みだと評価できます(皮肉ですが)。
学術会議がXアカウントのリプを未だに制限し続けている事も併せて、
現状認識”だけ”はお上手な様で……
あれあれ?
あの時スガ総理が
任官拒否してくれたおかげで
潜り込み損ねたその顔ぶれと
報道された松宮氏の暴れようで
政府機関である学術会議の赤黒い汚染が
白日のもとに晒されました。
当時は早速赤いお旗のもとから
巣をつつかれたようにネットに涌いてきて
「学術会議が司法の場に打って出る(?)」W
だとか馬脚を表し騒いでいましたがその後今まで
どうも食器棚の陰に潜んでたような印象です。
だいたい、
言論の富に自由な日本ですから、
たとえ歪んだスタンスでも主張したいなら
まじめな国民の税金使った政府機関の学術会議ではなく
別途「どぶサヨ学術会議」を立ち上げて赤い旗を立て
手弁当か赤旗の儲けでやればいいことです。
そもそも
「アカデミズムの弾圧だあ」とか言ってましたが
アカデミズム とは本当の学問のことであり
「赤で水ムし」のような周囲が距離を置く
人たちのことではないのになあ?というのが
選挙結果でも明らかな多数派国民良識層の
間での感想です。
いずれにしても
今回の食器棚の陰から這い出てきたような今回の声明は、
ふつうにまじめに働き納税する多数派国民の
税金で支える政府機関である学術会議に巣食っている、
オウム真理教と同じ公安指定の、もっとクレクレ的共産党界隈による
赤黒い汚染に虫ばまれた状態を自己申告されてしまった
ようなものと感じます。
基本的には「○○してくれない」を叫び続ける「くれない病」「くれない族」なんでしょうね。くれない(=紅)で「赤」とも通じるところがあります。
あ なるほどたしかに (^^)
私は 働けるのに働かず
元気にデマのようなデモに参加して
生ポ【もっとクレクレ主張】が
典型的な共産党支持者さんの生きザマ
なのかとかねてから聞き及んでいました。
運営資金を税金に頼っている時点で独立性など無い事が理解できないのでしょうか?
どういう頭の構造なのでしょうね?
精神年齢が疑われます。
このような常識の欠けた方々の意見など聞くに値しません。
日本はいつになったらまともな民間の組織が出来るのでしょうか?
江戸時代にはそれなりに民間の独立した自治組織があったのですが。
地方自治も政府依存症という同じ病に侵されているように思います。
もうこの際、色々なAIに議論させてた方が良くない?
と思う今日この頃。
日本の科学力低下も何割かコイツらの仕業でしょう