ロシアの友好国だったはずのアルメニアがICCに加盟
ロシアの長年の友好国だったアルメニアが国際刑事裁判所(ICC)ローマ規程を批准したそうです。これにより、ローマ規程は来年2月1日以降、アルメニアで効力を生じるのだとか。もしウラジミル・プーチン容疑者がアルメニアに足を踏み入れたら、逮捕される可能性がある、ということです。
中央アジアのアゼルバイジャンとアルメニアは長らく、領土問題で争ってきました。
とりわけ以前の『アゼルバイジャンの軍事侵攻原因は「ロシア弱体化」か』でも取り上げたとおり、9月にはアゼルバイジャンが停戦合意を破ってナゴルノ・カラバフ地域に侵攻し、事実上、占領しています。一説によるとナゴルノ・カラバフから追われたアルメニア系住民は12万人に達するとの話もあります。
なぜ、このタイミングなのか――。
これについてはおそらく、ロシアの弱体化が関係しているのでしょう。
ウクライナ戦争が長期化し、苦戦する一方で、西側諸国からの厳しい経済制裁も影響し、国力は相当に下がっているであろうことは、想像に難くありません(ただし『「ロシアで家計負担増」…影響はむしろこれから本格化』でも取り上げたとおり、統計的には、ロシア経済にはまだ余裕がありそうにも見えますが…)。
伝統的に見れば、アルメニアはロシアが、アゼルバイジャンはトルコなどが、それぞれ支援してきたという関係にあるのですが、アルメニアにとっては自国を守ってくれないロシアに対し、かなりの不満を抱いているであろうことは想像に難くありません。
こうしたなか、国際刑事裁判所(ICC)が17日、ちょっと気になる発表をしました。
Armenia joins the ICC Rome Statute
―――2023/11/17付 ICCウェブサイトより
ICCによるとアルメニアが14日、ICCの「ローマ規程」の批准書を正式に寄託したのだそうです。
これに伴い2024年2月1日以降、アルメニアがICCの124番目の加盟国となるそうです(ICCはアルメニアが「東欧地域」での19番目の加盟国、としています)。
これに加えて15日には、ICCはアルメニアから「同国議会で10月3日、ローマ規程批准に関する承認を採択し、同13日には大統領が署名したことで、同17日に発効している」との連絡を受けた、などともしています。
さらに、アルメニア政府はICCへの書簡のなかで、同国は2021年5月10日にさかのぼり、ICCの管轄権を遡及的に受け入れるとも宣言。「アルメニア共和国は、裁判所に全面的かつ遅滞なく協力することを約束する」と宣言したそうです。
これにともない、もしもロシア大統領であるウラジミル・プーチン容疑者がアルメニアに足を踏み入れた場合は、アルメニア当局によって逮捕される可能性が出てきた、ということです。
ちなみにICC加盟国は欧州、南米、日本、豪州、カナダ、アフリカなどに点在していますが、意外なことに、中央アジア地域ではアフガニスタンなど一部地域を除いてICCには加盟していません。ロシアや中国、インドなどの影響力が強いためでしょうか。
図表 ICC加盟国(2023年9月時点)
(【出所】ICCウェブサイト)
しかし、アルメニアがICCに加盟することで、プーチン包囲網がジワジワと広まる可能性もあります。
こうした「ちょっとした動き」は、意外と気になるところといえるかもしれません。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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ICC加盟でアルメニアが、(少なくても)ロシア友好国ではなくなった、ということは、アルメニアもロシア以外に安全保障の保険を求めるのでしょうか。
もしかすると、トルコに大幅譲歩してでもNATO加盟を目指すのかもしれません。なにしろ、アルメニアとロシアは直接には国境を接していないので、ロシア軍の地上特別軍事作戦は、あり得ませんから。(もちろん、本当にアルメニアがNATO加盟できるかは別の話です)
蛇足ですが、中国が(一帯一路を守るためにも)旧ソ連圏の安全保障をする、と示唆するかもしれません。
>『【モスクワ共同】アゼルバイジャン検察は1日、同国からの独立を主張してきたナゴルノカラバフのアルメニア系住民の行政府幹部ら300人以上を犯罪に関与した疑いで国際手配したと明らかにした。インタファクス通信が伝えた。』2023/10/01 徳島新聞デジタル版
https://www.topics.or.jp/articles/-/968545
ちょっとネットで検索したら、こんな記事が見つかりました。アゼルバイジャンは国際刑事裁判所ローマ規程の締約国ではありませんから、こんな指名手配に何の意味もないことを強調する権威付けを得るために、アルメニアがICCに加盟したなんて動機も考えられますが、やっぱり、トルコの後押しでアゼルバイジャンがナゴルノカラバフを軍事的に奪ったことに対して、ロシアが何らの応援もしてくれなかったことへの、意趣返しという性格が強いはなしなんでしょうね。
ロシアも嘗められたもんですが、ロシア、トルコ、アゼルバイジャンなど軍事強国に挟まれ、これらの国と民族的、宗教的葛藤を抱える、アルメニアのような小国は、国際情勢には極めて神経質であり、また情報収集力もそれだけ高いはずです。もうロシアに先はないと見極めているかも知れないですね。
成る程ですね。
国際手配に対して、ICCですか?
ICCは、戦争犯罪の個人の罪に対するものですから、軍事力で及ばないアゼルバイジャンに対する少しの牽制にはなるかもしれないですね。
何しろ、軍事大国はみなICCには加盟しない位に、少々不気味な法律というか条約ですから。
確か、ミロシェビッチも捕まってしまいましたね。そういう実例もありますから。
ウサギの国に熊さんが入ると捕まっちゃう訳ですねw
ウサギ達に熊さん、捕まえられるか?という問題がありそう。これは、案外、ICCの穴かもしれない。