お年玉くじ付きはがきの歴史は中華人民共和国と同年数

昨日に続き、年賀状に関する話題・エトセトラです。年賀状印刷サービスを提供するフタバ株式会社のアンケート調査によると、年賀状を10枚以上出す人は約4分の3に達しているのだそうですが、そのわりに年賀状の発行枚数は年々減っています。また、日本郵便はLINEを使った「スマートねんが」なる取り組みを数年前から行っているようですが、そのサービス内容についてはいまひとつ浸透していないようです。

右肩下がりの年賀状

日曜日の『発行枚数が最盛期から3分の1に激減した年賀状の将来』でも触れたとおり、年賀状の発行枚数は、年々、減少の一途をたどっています。

グラフを再掲しておくと、当ウェブサイトにて調査した限り、年賀はがきの発行枚数(当初発行枚数ベース)は2004年の44.5億枚をピークとして右肩下がりで減少し続けており、ついに2024年の発行予定枚数は当初ベースで14.4億枚にまで減ってしまったのです(図表1)。

図表1 年賀はがき発行枚数実績(当初発行枚数ベース)

(【出所】日本郵便ウェブサイト・過年度プレスリリース等を参考に著者作成)

2024年用は2023年用と比べて2億枚、発行枚数が減っており、このペースで減少が続けば2031年に、発行枚数はゼロになります。また、過去20年の平均値でいえば、毎年1.5億枚ずつ発行枚数が減っている計算であり、このペースで減り続けたとしても、2033年には発行枚数がゼロになる計算です(図表2)。

図表2 年賀はがき発行枚数がゼロになるまでの予想年数

(【出所】日本郵便ウェブサイト・過年度プレスリリース等を参考に著者作成。ただし、予想①は2024年の枚数が毎年2億枚ずつ減少するとした場合、予想②は2024年の枚数が毎年1.5億枚ずつ減少するとした場合)

アンケート調査ではどうなっているのか?

これは、なかなかの衝撃的な予想結果ではないでしょうか。

著者自身は年1回くらい、長らく会っていない人に、はがきに近況をしたためて郵送するという文化はあっても良いとは思っている人間のひとりですが、ただ、自身の手元メモを見ても、年賀状を送る枚数は年々減って行っているというのが実情ですし、その減り方は図表1に示したものとほぼ軌を一にしています。

(※もっとも、転居した年や転職した年などは、はがきを送る枚数が増える傾向にありますが…。)

こうしたなか、『よろず~ニュース』というウェブサイトが月曜日、興味深い話題を報じました。

近年、減少傾向の年賀状 出す枚数「1~20」が大半を占める→準備時期にも変化か

―――2023/10/23付 Yahoo!ニュースより【10:30よろず~ニュース配信】

年賀状印刷サービスを提供するフタバ株式会社が発表した、20代以上の男女200人を対象とする「年賀状に関するアンケート」で、「1~10枚」が53人、「11~20枚」が55人と、過半数が20枚までと答えた、とするものです。また、50枚以上作成する人は全体の2割未満だったのだとか。

これについて『よろず~』は、同社担当者のこんな分析を取り上げています。

SNSなどで年賀状の代わりに新年のあいさつをする方が増えていることが挙げられるでしょう」。

これについては多いと見るか、少ないと見るか。

裏を返せば全体の4分の3が10枚以上年賀状を送っている

『よろず~』の記事にはアンケート調査を実施した時期、母集団などについての記載がなく、また、選択肢に「年賀状を出さない(0枚)」という項目がないなど、データとしては少々不完全ではありますし、この結果が現在の日本人の年賀状に対する意識をそのまま示すものと考えるのは早計でしょう。

こうした点には注意は必要ではあるにせよ、個人的には、「意外と多いな」、という印象を受けました。別添のグラフを見ると、10枚以上作成している人は合計で147人、つまり全体の約4分の3に達しているからです。

もしかするとこのアンケート調査の対象者は、もともと「年賀はがきを出す」という人に限定されているのかもしれませんが、真相については正直、よくわかりません。

喪中、個人情報保護法…どうしますか?

もっとも、記事に出て来る回答内容は、それなりに興味深いものです。

アンケート調査では年賀状を準備する時期や投函する時期についても尋ねられているのですが、「投函する時期」について最も多いのが「12月21日~25日」で94人(全体の47%)、続いて「12月26日~31日」で53人(全体の26.5%)でした。

年賀状を準備・投函する時期に関しては、こんな趣旨の回答があったようです。

  • 毎年そこまで数が多いわけではないので年末ギリギリに準備しても間に合う」(30代男性)
  • 近年は面倒になり、だいぶ出す数を減らして、かかる時間も短くなったから」(30代女性)

フタバ株式会社の担当者は「喪中はがきが届き始めるのが12月ごろなので、二度手間を防ぐためそのシーズンに合わせて作成をはじめることも理由のひとつ」などと分析しているそうですが、たしかに喪中の相手にうっかり年賀状を送るのは、マナーの観点からは好ましい話ではありません。

これについて、喪中はがきとは「こちらから年賀状を送ることを控えるという挨拶状に過ぎない」という説に立てば、「年賀状を受け取る分にはマナー違反にはならない」、といった考え方もあるようです(著者自身もその説が正しいとは思います)が、現実問題として、やはり喪中の相手に年賀状を送るのは控えるべきかもしれません。

そうなると、年賀状の準備と発送という作業が、ただでさえ忙しい年末に集中する、ということになりかねず、なかなかに大変な手間でしょう。

結局のところ、先日の議論でも述べたとおり、社会全体が脱・ペーパー化しているなかで、そもそも紙媒体にメッセージを書いて、それを物理的に相手に送り届けるということ自体が時代にそぐわなくなっており、これに加えて個人情報保護法施行から約20年を迎えるなかで、個人情報の塊であるはがきが敬遠されるのでしょう。

LINEを使った「スマートねんが」

さて、こうしたなか、年賀はがきについてもう少し調べてみたところ、日本郵政グループが数年前から「スマートねんが」なるサービスを開始していたことがわかりました。これについては約2年前にプレス・リリースが出ています。

LINE でつくり LINE にとどく、DX 時代の新しい年賀状サービス 「スマートねんが」の提供開始【※PDF】

―――2021/12/08付 日本郵便株式会社ウェブサイトより

いちおう、そのコンセプト動画なども公開されていたようなのですが、現在は非公開となってしまっており、いまひとつ、コンセプトがわかりません。

想像するに、スマートフォンなどでメッセージを作り、それをLINEで1月1日以降、お友だちやグループLINEに送ることができる、というものなのだと思います。基本料金は200円で、使用できるテンプレート数に応じて値段が300円、500円と上がっていき、別料金で年賀状の印刷や投函もできる、というものでしょう。

ただ、このサービスが始まって今年で3年目になるはずですが、日本郵便株式会社のウェブサイト上、このサービスの概要については、あまり多くの情報がみあたりません。

新時代に生き残ろうとする努力はなされていることは間違いないものの、その努力が十分なのかどうかは別問題です。

年賀はがきの歴史、年数は「中華人民共和国と同じ」

さて、日本郵便株式会社が8月31日に公表した一連の資料のうち、『未来に残す年賀状文化』と題した資料によると、年賀状の「明確な起源は不明」とされているものの、平安時代後期には年始のあいさつを手紙によって交し合っていた記録が残っていると指摘。

現在発行されているお年玉くじ付き年賀はがきは1949年にさかのぼり、「年始にくじの当せんを確認することは、今に至るまで70年以上続く新年の伝統」としたうえで、これを「伝統文化」として残していく取り組みを行っている、などとしています。

ただ、逆にいえば、少なくとも「お年玉くじ付き年賀はがき」の伝統は、たかだか70年あまり、ということでもあります。これは建国以来70年以上という悠久の歴史を有する中華人民共和国とちょうと同じ長さでもあります(ついでにいえば韓国や北朝鮮はこれより歴史が1年長いです)。

正直、無理をしてまで残すべき歴史と伝統なのかを含め、やや疑問点がないではありません。

いずれにせよ、これまで年賀状を取り交わしている相手とは年賀状の交換を続けたいという気持ちもある一方で、これから新たに知り合いになる方々と、わざわざ年賀状交換を新たに開始することは考え辛い、ということも、また間違いありません。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. たろうちゃん より:

    オレは年賀状を書いた事がない。なんで来年の挨拶を前の年にしなくちゃいけないんだ?若いオレは考えた。書くとくれる、くれるから書く。可笑しいじゃないか!だから生まれてこの方商売の仕入れ先にはもらうけど、得意先にも書いたことはない。好きだった藤田典子には中学二年の春に貰ったきりでもう50年も前。そこには、これからも良い友達でいてね、、って書かれていたな。おれはフラれたのだ。それっきり。長嶋巨人の頃だった。

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