外国人観光客でホテルデリバリー巡るトラブルが急増?
日本にやってくる外国人観光客(インバウンド観光客)が増えるなかで、オーバーツーリズム(観光公害)などの問題が深刻化しています。これらの問題に対処するためには入国税などのかたちで外国人にもコスト負担をお願いするしかないのかもしれません。ただ、あらゆる問題を外国人観光客の急増と結び付けるというのも少し無理があるかもしれません。こうしたなかで取り上げておきたいのが、ホテルへのフードデリバリーです。
目次
外国人観光客はコロナ禍以前の水準に近づく
以前の『訪日外国人、3ヵ月連続で「200万人の大台」を突破』などを含め、当ウェブサイトでしばしば取り上げている通り、日本に入国する外国人の総数が順調に増えています。
日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2023年8月の入国者数(※速報値)は216万人で、入国者が200万人の大台を突破するのは3ヵ月連続のことです(9月分のデータについては10月18日16時15分に公表されるそうです)。
図表1は、日本を訪問した外国人の合計を月別にグラフ化したものです。わかりやすく2023年のものを赤線で示しているほか、比較のために、コロナ前の2017年、18年、19年の3年分のデータについても併記しています。
図表1 日本を訪問した外国人の合計
(【出所】JNTOデータをもとに著者作成)
これで見ると、すでに訪日外国人の総数はコロナ前の水準に近付いており、とくに5月以降に関しては、少なくとも2016年時点の訪日客水準を超えており、この分で推移していけば、コロナ前の最大値近くに到達するのも時間の問題でしょう。
中国人入国者激減を補う中国人以外の入国者
ただし、福島第一原発のALPS処理水の海洋放出を巡り、中国政府が日本向けの団体旅行を事実上制限している状況にあります。コロナ前の時点では訪日客の最多を占めていた中国人旅行者が本格的に戻って来ていない(図表2)点は、今後のインバウンド人数を予測するうえでの波乱要因かもしれません。
図表2 訪日外国人(2019年8月と2023年8月の比較)
国 | 2019年8月 | 2023年8月 | 増減 |
1位:中国 | 1,000,639 | 364,100 | ▲636,539 |
2位:台湾 | 420,279 | 396,300 | ▲23,979 |
3位:韓国 | 308,730 | 569,100 | +260,370 |
4位:香港 | 190,260 | 206,300 | +16,040 |
5位:米国 | 117,828 | 138,400 | +20,572 |
6位:タイ | 49,589 | 33,200 | ▲16,389 |
7位:ベトナム | 43,709 | 50,900 | +7,191 |
8位:フィリピン | 31,470 | 38,600 | +7,130 |
9位:フランス | 30,851 | 25,900 | ▲4,951 |
10位:カナダ | 27,568 | 36,900 | +9,332 |
その他 | 299,211 | 252,031 | ▲47,180 |
総数 | 2,520,134 | 2,156,900 | ▲363,234 |
(【出所】JNTOデータをもとに著者作成)
ただし、現在のインバウンドに関しては、コロナ前と比べ、「中国以外」からの入国者が増えているという状況にあり、なかでも韓国からの入国者の急増が目立ちます(※ほんの4年前に「ノージャパン」をやっていた同じ国とは思えないほどです)。
いずれにせよ、円安などの影響もあるのかもしれませんが、押し寄せる外国人観光客が増加するという状況はしばらく続きそうです。
オーバーツーリズム問題
ただ、当ウェブサイトとしては、基本的に外国人観光客の急増は、日本経済に必ずしも望ましい影響を与えるとは限らないと考えています。
もちろん、外国人観光客が日本にやってくることで、日本にはたしかに観光収入がもたらされます。
観光庁の『訪日外国人消費動向調査』によると、2023年第2四半期(4-6月期)の訪日外国人費目別旅行消費額は1兆2319億円にも達しており、今後もこのペースが続けば、外国人が日本に落としてくれるカネは年間5兆円前後にも達するでしょう。
また、多くの外国人観光客が日本で楽しい時間を過ごすことで、日本という国のファンになってくれる効果も決して小さくありませんし、このことは日本が万が一有事に巻き込まれた際に、「日本を助けるべし」とする国際的な世論を喚起するのにも役立ってくれるかもしれません。
しかし、こうしたメリットの反面、一部の国からの入国者は日本で不法就労を試みたり、難民申請を通じて日本に居座ろうとしたりする現象が知られていますが、それだけではありません。
最近、無視できなくなりつつある弊害が、オーバーツーリズムという「公害」でしょう。
京都を含めた一部地域では、タクシーがつかまらない、通勤電車や通勤バスなどの公共交通機関が外国人観光客により大混雑する、といった現象も生じているようです。とりわけ大きなバックパックを背負った外国人観光客は車内の混雑に拍車をかけます。
また、マンガの舞台となった江ノ電の鎌倉高校前の踏切付近に外国人観光客がたむろするようになり、地域の交通安全にも支障が生じ始めているほか、ゴミを捨てる者や私有地に無断侵入する者もいるなど、住環境も悪化しつつあるようです。
入国税もひとつの対策?
こうしたなかで、ちょっとだけ余談を述べておくならば、オーバーツーリズム対策のひとつとしては「入国税」などの仕組みの導入が考えられるかもしれません。
たとえば以前の『欧州の事例に学ぶ入国税の現実性』では、コロナ禍後のオーバーツーリズム(観光公害)対策を巡り、欧米諸国で進む「入市料」や「事前予約制」、「クルーズ船入港禁止措置」などの事例をいくつか紹介しました。
現在の日本では出国税が一律でひとりあたり1,000円徴収されていますが、これについて当ウェブサイトではかなり以前から、「日本人を含めて一律に徴収される出国税ではなく、外国人に対してのみ課せられる入国税に切り替えるべきではないか」、と提唱してきました。
すでに一部の自治体で存在している宿泊税や入湯税などを、外国人観光客に対しては引き上げるなどの措置を講じても良いかもしれません。年間3000万人の外国人が日本を訪れるなら、入国税や宿泊税などであわせてひとり1万円負担してもらえば、税収は3000億円(!)です。
そしてその税収をオーバーツーリズム対策に充当する、という考え方です。現在だと円安効果もあるため、円建てで外国人に多少の税負担をお願いしても、それらを含めて割安感があれば、多くの外国人が日本を訪れてくれることでしょう。
おりしも日本のGDPがドイツに抜かれ、世界第4位に転落したとする話題もありますが、円建てで見て、外国人観光客にとって日本旅行の「お得感」が強まっているということでもありますので、やはり政府には、是非とも入国税を検討していただきたいところです。
ホテルでフードデリバリー巡るトラブルが急増?
ところで、外国人旅行客を巡るトラブルという話題は最近、よく目にするものですが、それと同時にちょっと冷静になって、何でもかんでも外国人入国者と結び付けるべきなのか、考察しておきたい話題もあります。ウェブ評論サイト『デイリー新潮』に先週金曜日付で掲載されたこんな記事も、そうした話題のひとつかもしれません。
「オマエらの客が注文したから来たんだぞ!」外国人観光客の増加でフードデリバリーサービスのトラブルが多発中 高級ホテルのロビーで繰り広げられる修羅場
―――2023年10月06日付 デイリー新潮より
作家・ノンフィクションライターの方が執筆した記事ですが、都会のホテルでフードデリバリーサービス業者と外国人観光客がトラブルになるケースが増えている、というのです。
記事によると外国人観光客の増加を受け、Uber Eatsを含めたデリバリーサービスの配達先としてホテルが増えているものの、「ほとんどのホテルではセキュリティの観点から、宿泊客以外の者が宿泊フロアに立ち入ることを制限しているため」、なのだそうです。
といっても、「融通が効くビジネスホテルや庶民的な旅館などはその限りではない」、などともありますので、おそらくこの記事が問題にしているのは、そこそこのランク以上のホテルの話なのでしょう。
あくまでもこの記事によれば、トラブルはこんな具合です。
- 宿泊客がPCやスマートフォンなどを使い部屋番号を伝えて注文し、クレジットカードで決済を完了させる
- 配達員はホテルの規則を知らないまま食事を部屋まで届けようとする
- ホテル側は宿泊フロアに行こうとしている配達員に気づき、制止しようとする
これが「三つどもえ」、という意味でしょう。
なかには堪忍袋が切れた配達員がホテルスタッフに対し罵声を浴びせることも「よくある光景」だというのです。
さらにトラブルになりやすいのが、「10分自動キャンセル」という仕組みです。
「とあるフードデリバリーサービス」(Uber Eatsでしょうか?)では、基本的に指定された建物に到着して10分以内に商品を手渡せないと自動キャンセルになってしまうため、配達員が必死になって突破を試みる、などと記載されています。
また、配達員が依頼主である外国人宿泊客にコンタクトを取ろうとしても、その外国人宿泊客が日本語を解さないために電話に出たがらず、配達員も英語が話せるとは限らない、といった事情もあるため、配達できないというトラブルが頻発している、というのです。
さらには、そうやって自動キャンセルになってしまった食品はホテルの敷地などに投棄されることも多く、ホテル側は見回りと清掃をしなければならないほか、ホテルのロビーで配達員に怒鳴られたホテル従業員がショックのあまり、そのまま退職してしまうケースもある、などと記載されています。
外国人観光客の急増でこうしたトラブルが増えているというのなら、これも大問題、という気がしてなりません。
キャンセルで損害被るのは配達員でなく宿泊客の側
もっとも、この記事自体、少し冷静になると、不自然な点が数か所あります。
まず、「自動キャンセルシステム」のくだり、Uber Eatsのことを指しているのならば、配達員が無理をしてまで届けようとするというのは、不自然です。
Uber Eatsのシステム上、「自動キャンセル」処理を適用するためには、たとえば「配達先に到着してインターホンを押したが、応答がない」、「配達先の住所のマンション名や号室が記載されておらず、電話、チャットなどで連絡を試みても連絡がつかない」などのケースがあるようです。
これらの場合、システム上、配達員の側には配達料の支払いが行われるだけでなく、配達員はその食品を自由に処分して良い(たとえば食べてしまっても良い)ようですので、不利益を被るのは配達員ではなく、依頼主である外国人観光客の側です。
そもそも論ですが、フードデリバリーサービスについて、ホテルの部屋まで届けてもらえるのか、それともロビーなどで受け取らなければならないのかについては、注文する宿泊客の方が確認しておかねばならない話です。
その確認を怠り、料理が届かなかったとしても、それは自己責任でしょう。
あるいは、「配達員がホテル従業員に罵声を浴びせる」というくだりも、やはり不自然ではあります。宿泊フロアへの部外者の立ち入りを認めていないホテルであったとしても、通常であれば、配達員がホテルのロビーに来た時点で、室内電話で宿泊客を呼び出そうとしてくれるケースが多いと考えられるからです。
いずれにせよ、ホテルの個室まで配達員がフードを届けられなくても、多くの場合、約款上は全額、注文者が負担しなければならないわけであり、この問題まで「外国人観光客の問題」と位置付けるには、少し無理がありそうです。
配達員の問題も確かにあるかもしれないが…
ただし、記事に出て来る配達員にも、問題はあります。
記事によれば、配達員としてはフードをホテル側に「預かってくれ」と言い出すケースもあります。
「ホテルには『食べ物は衛生上の理由から預からない』という大原則がある。スタッフが事情を説明して拒否すると、ここで怒鳴る配達員もいる。『ゴルフバックや荷物は預かるじゃないかッ!』と食い下がるのだ」。
「ちなみに、注文がキャンセルになると、料理なら配達員が食べても構わない。だが、ホテルの敷地内に捨ててしまう配達員もいるという。<中略>配達員にも事情がある。キャンセルとなった料理は食べられるとはいえ、一日に何度も中華料理を口にするのは不可能だ」。
配達員がホテル従業員に対し粗暴にふるまう、料理をそこらへんに不法投棄してしまう――。
たしかに、これらの問題は発生しそうです。
もっとも、こうした問題を回避するためには、ホテル側もチェックイン時に宿泊客に対し、フードデリバリーは宿泊フロアには立ち入れないこと、サービスを利用するならばロビーで受け取らなければならないこと――などを説明し、同様の案内文をホテルの部屋に設置しておけば済む話であるようにも見えます。
もちろん、ホテルの宿泊客によっては、疲れ切っているなかで、フードデリバリーを利用したいというケースだってあるでしょう(たとえば「到着便が遅れるなどし、日本に入国し、ホテルに到着した時間が非常に遅く、どうしても空腹である」などのケースがそれにあたるかもしれません)。
著者自身もかつては頻繁に海外旅行に出かけていたので、旅行しているときにそうした状況に陥ることも多々ありました。当時はスマートフォンも現在ほどは普及しておらず、フードデリバリーサービスもありませんでしたが、もしそのようなサービスがあれば利用していた可能性はあります。
もっとも、ホテルのルームサービスは(多少割高ではあるものの)そういう人のために提供されているものですし、特に日本の大都市部は一部の欧米諸国などと異なり治安も良好であり、たいていのホテルは周囲にコンビニエンスストアなども充実しているため、わざわざデリバリーサービスを利用する必要はないかもしれません。
いずれにせよ、ホテルのフードデリバリーを巡るトラブルは、インバウンド観光客の急増という論点とはあまり密接な関係はないように思えるのですが、いかがでしょうか。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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外国人観光客による問題と、外国人観光客に関わる日本人達による問題とがあって、この記事の問題は後者の問題だから外国人観光客に直接の責任は無いって事ですね。
このデイリー新潮の記事は、信憑性に疑問がありますね。
この記事、疲弊するのは現場のスタッフばかり、といういつものパターン。
高級ホテルが、この問題に早急に対処しないとは考えられない。支配人はどうしているのか?ということになる。こういう問題を解決するのが支配人の仕事だし、高級ホテルならば、迅速に対応する優秀な支配人がいるはず。ロビーで「突破と阻止」が繰り広げられている事態を放置する支配人がいるとは思えない。
規則があったとしても、例えば、取り敢えず、ホテルスタッフが部屋まで同行するとかの対応をすることもできる。注文した客が受け取れないという事態を放置するというのも、サービス業としてはどうなのか、ということになる。時代に応じて規則も変えていかなければならないはず。
そんなことで、この記事の内容、取材不足で、読者には情報不足を感じさせるものです。
こんな記事を載せているメディアは、もっと良いメディアが出てくれば。淘汰されていくのではないか?以前から、デイリー新潮は、取材不足の中途半端な記事を載せるメディアという印象はありましたね。
入国税を取るのは良いんですが、税収の使い道がちょっと悩ましいですね。
個々の業者に補助金を出すというわけにもいかないでしょうし、特定の地方自治体に交付するのも不公平感が沸き起こりそうです。治安のさらなる向上を目指して、警察(海保を含む)関連予算を増額するのも、まず間違いなく、一部方面から悲鳴交じりの絶叫の如き大反対があるでしょう。さりとて、シレっと一般財源として一般会計に組み込むのも、イマイチ芸がありません。
……あ、良いこと思いついた。
「滞在される外国人の皆様のさらなる安全を期して」などと称して、入国税収を防衛予算の一部に充当すると宣言するのです。3000億円もあれば、戦闘機の10機くらいは買えますし、防衛施設の更新、自衛隊員諸君の処遇改善など、いくつかの効果が見込めます。さらに良いことには、防衛予算に充当することを宣言しておけば、なにかとウザったい某国や某々国からの入国者を減らす効果が見込めます。日頃の言動からして、両国政府とも国民に日本の防衛力向上に寄与せよなどとは言えないはずで、むしろ国民の日本旅行を禁止する方向に向かうでしょう。どうせ他の国は、税収が何に使われようと気にしないでしょうし、むしろ日本の防衛力向上を歓迎すると見込まれます。一石何鳥かの迷案のように思えますが、いかがでしょう?
なかなか興味深い話ですね
ホテルでフードデリバリーを頼むという発想がないけどなぁ
ホテルでは、館内施設を極力利用した。同じ店、同じ席、、するとチェックインのとき連絡がいくのかいつもの席は予約席になっていて、そこに案内をされた。館内の施設営業に間に合わないときは、駅なりコンビニなりで買い物をすませホテルにいくと無料の温泉利用券をもらえるようになった。だからホテルも定宿だったな。デリバリーはここ数年間の業態で利用したことはない。ホテルに泊まってまで利用したくはないな。PIZZA-LAくらいならある。自宅だけど。
どうせカネがたりなくなり制度変更になるなら始めから入国税は高目に設定するがよい。ただし日本人は除くが必須。日本人と結婚した外国人も同じ条件でいい。在日と云われる人々は本当に定住をみとめられたのは一世なのだから徴収すればよい。差別を叫ぶなら祖国に帰ることをお勧めする。オレなら3000円位に設定する。中国、韓国、ロシアは10.000円。ここで得たカネは少子化にあてるなり防衛予算にあてるがいい。かわりに消費税を3%に下げ、食料品は無税にするのだ。どうだろうか。旅行に行けるのは富裕層。貧乏旅行もあるけれどカネがあるからの旅行だろう。予算から日本でやってはいけない事柄集をパンフレットをつくり入国時にくばればいい。竹島、尖閣、北方四島、旭日旗も説明すればいい。
私は日本で五つ星ホテルなんて利用したことはありませんが、もし利用できたら、それなりの服装・マナーを理解して、高級ホテルの雰囲気作りに参加して宿泊します。
高級ホテルのロビーでくつろいでる時に、自転車で玄関に乗り付けてラフな格好で汗の匂いをプンプンさせて「出前で~す」のような人間がさらに客室まで出入りしていたら、そのホテルは二度と利用しなくなるでしょう・・・。
(名門ホテル、いつかは贅沢して宿泊したいですが)