少子化の時代に大学は増える一方
旺文社によると、この50年間で大学の数も大学生数も倍増したそうです。こうしたなか、読売新聞は日曜日、旭川市にあった旭川大学を巡って、同市が公立化したとする話題を取り上げています。少子化の折に大学の数が増えていること自体、問題はないのでしょうか。
私学振興助成法という問題
以前の『私学利権?一部私学が外国人留学生獲得にご執心の理由』でも指摘したとおり、文部科学省が管轄している予算には、俗に「Fラン」などと呼ばれる、教育レベルが決して高いとはいえない私立大学などに対する教育経費の補助金も含まれています。
この「教育経費の補助金」とは、いったい何か――。
わかりやすくいえば、私学振興助成法という法律の規定で、大学などの私立学校に対し、教育経費の半額を補助することができる、という制度のことです。
私立学校振興助成法第4条第1項
国は、大学又は高等専門学校を設置する学校法人に対し、当該学校における教育又は研究に係る経常的経費について、その二分の一以内を補助することができる。
私立学校振興助成法第9条
都道府県が、その区域内にある幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校又は幼保連携型認定こども園を設置する学校法人に対し、当該学校における教育に係る経常的経費について補助する場合には、国は、都道府県に対し、政令で定めるところにより、その一部を補助することができる。
日本共産党は「違憲ではない」
この法律を読んで真っ先に思い浮かぶ疑問は、「これって違憲じゃないのか?」、ではないでしょうか。
というのも、憲法第89条では、私学に対する公金の支出は禁止されているようにも読めるからです。
日本国憲法第89条
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
これについてはもちろん、「解釈上は違憲ではない」とする考え方が多数を占めているようであり、たとえば日本共産党あたりはこれを合憲だと言い張っているようです(詳しくは『「私学助成は憲法違反」か?』等参照)。
論旨はムチャクチャで支離滅裂ですが、結論的には「私学助成を憲法違反だとする議論は、ためにする議論といわざるをえません」、だそうです。これが「自衛隊は違憲だ」と教条的に主張している、同じ政党による主張だと考えると、片腹痛いところです。
日本共産党が「違憲ではない」と強弁している時点で、何となくお里が知れる、といったところでしょう。
Fラン大学の闇
ただ、これを「違憲か、違憲ではないか」と論じたところで、現実問題としてはあまり意味がありません。
実際問題として、この私学振興助成法上の規定に基づき、「私立学校であれば」、教育経費の最大半額の補助が行われているというのが実情です(ちなみに助成金を受け取る私学には公認会計士などによる監査が義務付けられているなど、公認会計士業界にとっても有難い制度でもあります)。
そして、問題があるとすれば、どう考えても大学としてのレベルを満たさないような私学がこの補助金制度によって生き永らえている一方、本来ならば配分されているはずの研究予算が十分にいきわたっていない、という点ではないでしょうか。
敢えて実名は挙げませんが、2017年には文科省の事務次官(※退職済み)らが率先して国家公務員法に違反する天下りを斡旋していた事件が発覚するなど、大学の許認可利権と文科省が癒着しているのではないかと疑われる事案もあります。
あるいは、一部には官庁だけでなく、新聞社などからも積極的に大学教授職への天下りを受け入れている学校もあるようですが、これなど新聞、テレビを中心としたオールドメディアがあまり触れようとしない「Fラン大学の闇」のひとつといえるのかもしれません。
大学数の急増は公立でも!
ただ、大学の乱立に関していえば、私学以外にも話題が出ているようです。読売新聞が17日付で報じた、地方自治体が設置する公立大学が今年度、100校に達するなど、「少子化にもかかわらず公立大が増え続けている」とする記事が、それです。
[スキャナー]公立大学、全国に100校…若者引き留め期待で30年で2・5倍
―――2023/09/17 09:15付 読売新聞オンラインより
読売によると、「100校目の公立大」として紹介されているのが、今年4月に定員充足が困難となっていた私立旭川大の運営を引き継ぐ形で開学した、北海道の旭川市立大です。地元の大学存続が「市にとって重要課題となっていた」ものです。
また、今回の公立化に伴い、年間80~120万円だった授業料が約54万円に下がるなどしたそうであり、今春の入試の志願者は2022年度の1.7倍に急増した、などとしています。記事ではまた、公立大の数は1989年度時点で39校だったとしていますので、この30年あまりでざっと2.5倍になった計算です。
もちろん、今回の「旭川市立大」のように、完全に新たな大学が設立されたというわけではない、という事例もあるのでしょうが、それにしても大学の数は多すぎるのかもしれません。
旺文社「大学数は半世紀で倍増」
これについては株式会社旺文社の「教育情報センター」が2020年11月2日付で公表した『50年間で大学数・学生数とも倍増!』【※PDFファイル】の記述も参考になるかもしれません。
50年間で大学数・学生数とも倍増!
―――2020/11/02付 旺文社教育情報センターHPより
旺文社によると、大学については学校数、大学生の人数ともに、この50年間でほぼ倍増したのだそうです(図表)。
図表 大学生の人数、大学の数
1971年度 | 2020年度 | |
大学生の人数 | 1,469千人 | 2,916千人 |
大学の数 | 389校 | 795校 |
(【出所】株式会社旺文社ウェブサイト・PDFファイルP2)
ちなみに学生数は国立大学生が283千人(+189.3%)、公立大学生が109千人(+320.8%)、私立大学生が1,056千人(+195.8%)だそうで、学校数は国立が+11、効率が+61、私立が+334といずれも増加しているのだとか。
さらに、2019年度には「専門職大・短大」というカテゴリーも誕生したそうであり、これについては公・私立あわせて同年だけで11校が開設されていますが、旺文社は「今後増える予定がある」としています。
このあたり、先日の『NHK出演者「日本には選択と集中が必要」→批判殺到』でも指摘したとおり、正直、教育は「選択と集中」が難しい分野のひとつではあります。
しかし、それと同時に「教育のレベル」では、比較的足切りがしやすいはずでしょう。
たとえば、明らかに合格するために必要な偏差値が低い大学と、それなりに偏差値が高くないと入学できない大学であれば、教育機関としての「成果」もまったく異なるものとなるであろうことは、想像に難くありません。
教育経費の補助も選択的に!
このように考えていくと、たとえば私学に対する補助金についても、一律に教育経費の2分の1を補助するのではなく、何らかの客観的基準(たとえば大学入試センター試験や共通テストでの合格得点や『ネイチャー』などへの論文の投稿数など)を設け、その基準で補助金を配分する、といった方法も考えられるかもしれません。
(※ちなみに個人的には、本当に優れた教育機関であるならば、補助金などなくても企業などから寄付金を引っ張ってくることができるはずだと考えていますし、教育機関の財政的独立という観点からも、教育経費は企業やOBなどからの寄付や財団の運営などで賄うのが健全ではないかとは思いますが、この点は割愛します。)
いずれにせよ、大学の数が多すぎると、留学生をむりやり水増しするなどして学生数を維持しようとする大学が出現するのは当然のことでしょうし、こうした大学を教育予算という形で公費により維持するというのもおかしな話ではないかと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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私の勤務する職場では新卒や中途採用は重要課題です。内定に繋がるような有能な学生を紹介した社員には感謝金が支給される制度まであります。
ここで重要なのは、内定にこぎつけられるだけの能力を秘めた学生であることが条件であり、結果的に昨今は日本国籍の学生だけでは充当できず外国籍の社員が増えつつあります。
採用に足るだけの能力向上を果たせられない学校やそこの学生では、採用する企業側にとっては存在意義が無いように思います。であれば就学する学生側に仮に意味があってもWin-Winでないので、大学新設など長続きはしないと思います。
生かすも殺すも偏差値次第。最近、安芸高田市の市議会をyoutubeで
みておりますが少子化の為か広島県立向原高等学校の存続も危機だそうです。
ある議員がふるさと納税の収益をまわせと訴えておりましたが市長はキッパリ
断っておりました。
しかし石丸市長、お若いのに立派です。頭が下がります。m(_ _)m
それに引き換え拙者は・・・
レベルの低い大学が存在するのは知ってるけれど、どんな授業やってんだろう。
借方が左側、貸方が右側を覚えるのに、借方と貸方の違いは「り」と「し」の違い。
「り」は左向きに書き終わり、 「し」は右向きに書き終わるから。
こういうことを教える大学があるらしい。
>※ちなみに個人的には、本当に優れた教育機関であるならば、・・・
ここんとこだけど、授業料安くする代わりに卒業後何年間は所得の何%かを納入するとかすれば、大学も学生の就職斡旋のインセンティブになって、授業とかもちゃんとやるようにならないかな?
オレいま62歳。高校卒業で約半世紀。昔は大学と云えばそれなりに「おおっと!」という畏敬の念が持てたものだ。親の経済力や本人の学力にも依るところが大きく脳出血でたおれ仕事と収入のないオレには娘には夢も希望も持たせることができない。大学も存在価値が薄れたものだ。余程のバカでない限りどっかしらの大学に入れる。勿論一生懸命勉強した上での一流学校もあるだろう。むかしは良くいったものだ。「大学?学校?勉強するところでなく、一生付き合える友達を創るところだからな!」あぁ友達も作らせられない。
>「大学?学校?勉強するところでなく、一生付き合える友達を創るところだからな!」あぁ友達も作らせられない。
大学の中には、お金持ちが行く大学で、実社会に出てからもその大学のコネを仕事にフル活用する仕組みのある大学もあるようですが、それは、ごく一部です。
大学にしても、高校にしても、良い人間が集まる学校であれば、一生付き合える友人は出来るでしょう。しかし、あまりレベルが高くない大学高校であれば、質の良い友達ができる可能性は低いでしょう。(あくまで可能性の話です)
個人的な経験から言えば、良き人の集まる場所であれば、良い友人は年齢に関係なく出来ます。友達は、いつでも出来ます。基本は正直に生きていることです。
尚、大学・学校は、基本的に勉強する所です。そこで、しっかりとまでは行かなくても、基本的基礎的な知識とものの考え方を身に着けることは、その後の人生をそこそこ自分の考えを持って生きていくためには必要だと思います。(例えば、愚かな政治家をきちんと判別できるようになります。)
勉強はどこでも出来ます。
例えば、コンビニでアルバイトをしても、心構え一つで、勉強のネタはかなりあります。
世の中には、サイゼリアで仕事の基本を学んだとか、ディズニーランドでサービスの基本を学んだとか、という人は沢山います。
実際、優れた企業で働くことは、大変な勉強になります。
ありがとうございます。読んでいて希望を見た思いです。そうですね。どこでも勉強はできるし、人とは出会える。ありがとうございました。
大学は組織のリーダーやマネージャークラスを育成するのが目的と考えたら、大学定員が18才人口の5割を超えるなんてありえません。最大でも3割もあれば十分です。
いつも言う事ですが、居酒屋の店長になるために大学に行く必要があるのかと言う事です。居酒屋店長を低く見ている訳ではないですが、大学に進学する必要はないでしょう。
最近リスキリングとかの話が出てますが、役に立たない大学をリストラする事を考えた上でのリスキリングならまだしも、こんなところで無駄金使った上に専門学校もとかありえません。
子供を産めない理由の一つは養育費であり、その中の教育費が一番の重荷になってます。2/3は大学に行けない、行ける学力がある人は全員無償で学べるとすれば、安心して子供を産めます。
役人の天下りのための大学はさっさと潰すべきです。それが一番の少子化対策だと思います。
>居酒屋の店長になるために大学に行く必要があるのかと言う事です
たぶんないと思うけど。そういう仕事でも雇う方は学歴を見ている可能性がある。
地方の存在意義が謎な大学は、地元に若者を繋ぎ止めるのが主な役割でしょうか。皆で都市部の大学へ遠出し、出先を中心に就職活動をしがちですし、保護者(地方県民)の負担も大きいですから。
採用する人材の能力を採用前に測りきれるわけもないため、現状で企業がとりあえず大卒でラインを引くのも一概に不合理ではありませんが。無駄な大学を減らし無駄な4年間(友達も思い出もできるという価値観もありますが……職場ででも可)を削ぎたいのであれば、企業の採用法が革新されないとという気はします。ステータスオープン!とかいうあのしょーもない世界になれば可能なんですけど。ディストピアっぽいな。
大卒農家(しかも実家)も結構居るんですよね、脱サラだったりですが。
>大卒農家(しかも実家)も結構居るんですよね、脱サラだったりですが。
大卒・脱サラが、今後の農業の有り様を変えていくでしょう。
サラリーマンを経験しているということは、いろんな意義があります。
数値管理や組織運営や文書化など、仕事を体系的に動かすことを知っているということです。これは、平サラリーマンの経験しかなくても、組織内で働けばそのような仕事にやり方を求められますから、身についているはずです。
実際、実家の経営危機を立て直すために、脱サラをして、現代的な経営手法で実家の家業を立て直したという例は、本当に沢山あります。
一例:町工場の娘
https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/14/P50560/
私も脱サラ農家一代目ですが、純粋農家とは(世代差もあるが)考え方がかなり違うなというのは実感がありますね。
作業マニュアルを作ったり、選別基準を明文化したりという程度の話でも、個人農家ではあまり実行していないのが現状に感じます。ただ実際には対応が状況で変化しすぎる(例えば選別基準でも、需給により多少の損傷でも販売ができたりできなかったりする等)ので、活用しづらい・不要と感じる面もありますが。
勤怠は、会社勤めに近い感覚でやった方が働きに来てくれる方にとってはやりやすいようです。ただ、気象条件や体調によって休憩時間を延ばしたりといった柔軟さも必要です。朝は4時前後から作業を始めたり、昼休憩なんかは1時間半~2時間と一見不要なほどとるのも、前時代的に見えても、継続して肉体労働をするには合理的だったりと、良し悪しは様々です。
ただ単に企業風にすれば良いというものでもなく、古いままで良いわけでもなく。昭和からの経験と、平成令和の新しい価値観が混じり合う時代ですから、合理的に良いとこ取りをしていきたいところです。昔ながらの農家で豪邸を維持している方も居れば、企業出でSNSを駆使して様々な手法を試して尽く失敗している方も居るんですよね……おそらく前者はなんだかんだバランスがとれていて、後者はバランスを欠いているのかと。
学歴はどうあれ社会経験のある者は一緒に働きたいですが、大学で4年間思い出を作ってきた子と働けるかというと……やってみなければわからないのでバクチですね。上述の議論には当てはまらないので。大卒を基準にする労働市場というのは、あまり長くは続いてほしくないものです。
私はメーカーに勤めているのですが、私の地元の私立の理系大学の卒業生の質だんだん落ちています。
30年ほど前に開学した大学で最初はわりと質の良い学生がいたのですが、長期低落傾向がずっと続いています。
大学が増えて選択肢が多ければやはりそれなりの学生も分散するのだろうなあと推測します。
大学を新設するのは「ポスドク」の就職先確保がある、それ以前に小中学校の「学級定員の減少」を図り学級数を増加させる事も「教育学部」卒業生の就職先確保がある。
純粋に子供の将来を考えてるのではなく文科省の予算増と大学生の「就職先確保」の利権構造。