ベネチア「入市料」参考に、日本も「入国料」検討は?

ベネチア市で1日あたり5ユーロの「入市料」が来年、導入されるようだ、とする話題を目にしました。これについては2022年に導入が発表されていたものですが、実際の導入が延期されていたものです。こうしたなか、ベネチア市の地形を調べたら、たしかに「入市料」の徴収に適していることがわかりました。周囲を海に囲まれているのです。逆に欧州各地の都市は、こうした「入市料」の徴収に適していません。このように考えると「入国料」の徴収に適している国がひとつあります。

入市料が来年から開始か=ベネチア

先日の『欧州の事例に学ぶ入国税の現実性』では、コロナ禍後のオーバーツーリズム(観光公害)対策を巡り、欧米諸国で進む「入市料」や「事前予約制」、「クルーズ船入港禁止措置」などの事例をいくつか紹介しました。

このなかで、ベネチア市が2022年、「入市料」や「入市予約制度」などを導入すると発表したものの、これについては実施が現時点で延期されている、とする話題を取り上げています。

これに、「続報」が出てきました。

ロイターによると、同市議会が火曜日、観光客に対する入市料を試験的に実施する方針を表明したそうです。

Venice to start charging visitors entry fee next year

―――2023/09/06 03:08 AM GMT+9付 ロイターより

具体的には、観光客が急増する春場の祝日期や夏場の週末などの30日間に限定し、14歳以上のすべての旅行者に対し、市内の一定地域に入る場合に1日当たり5ユーロの入市料を支払う義務を課す、という内容だそうです。

この狙いについて、ベネチア市観光評議会のシモーネ・ベントゥリーニ評議員は「ベネチアで暮らし、学び、働いている人たちと旅行者の権利の近郊を図るもの」で、「税収を増やすことを目的としたものではなく、入市料は制度の運営費用を賄うことにのみ使われる」、などと説明したそうです。

ベネチアは日帰り観光客からも料金徴収が容易

これに関する欧州のいくつかのメディア報道によれば、「入市1回あたり5ユーロ」、といった情報もあったのですが、複数メディアの報道などから判断するかぎり、おそらくは「1日5ユーロ」で正解なのだと思います(※もっとも、現時点ではまだ延期される可能性もゼロではなさそうですが…)。

ただ、これについては正直、ベネチアだからこそできる制度なのかもしれません。

地図で見ると、ベネチア市の歴史的な運河地区は周囲を海に囲まれています。

このため、周囲を陸で囲まれている地区と比べれば、「市内」に入る人から料金を徴収するということは比較的容易でしょう。

想像するに、1日5ユーロということは、入市に際してまずは入口に遊園地に入るようなゲートを設けておき、1泊する場合はホテル代に上乗せするなどのかたちで宿泊者から徴収すれば良い、という発想ではないでしょうか。

パリやローマ、シェンゲン圏の悩み

しかし、これがパリやローマなどのように、周囲から自由に入れる都市の場合は、入市料というのは現実的ではありません。もちろん、宿泊税の形で滞在費用を徴収することはできますが、「日帰り旅行客」から料金を徴収することはできません。

しかも、欧州諸国の多くはシェンゲン協定に参加しており、シェンゲン圏内であれば、国境検問はありません。

そして、シェンゲン圏に入域した人がその後、シェンゲン圏内のどの国に向かったかを把握することはできませんので、たとえば「自国に入国し、パリを観光する人」から宿泊税以外の形でフランス政府またはパリ市当局が入市料を取り立てることは、事実上、困難です。

パリ観光をする側にとっては、極端な話、パリで宿泊せず、パリ市近郊で宿泊すれば良いからです。その方が、宿泊費も比較的リーズナブルかもしれません。

日本は入国料(入国税)の導入に適した国

このように考えていくと、ベネチア的な入国料の導入が容易な国があります。

日本です。

日本は四方を海に囲まれているため、入国手段は空路(航空機)か海路(フェリー、クルーズ船など)に事実上限られており、少なくとも道路から自動車、自転車、徒歩などでは入国することができないからです。よって、日本に観光ビザで入国する外国人に対し、一定の入国税を課すことは容易でしょう。

(※厳密には商用目的と観光目的の入国者を判別することが難しいなど、若干の課題はありますが…。)

こうしたなかで6日、日本政府・観光庁もオーバーツーリズム対策会議を開いたことが報じられています。

オーバーツーリズム対策第1回会議開く 観光客急増で混雑緩和・マナー啓発など推進(観光庁)

―――2023年9月6日付 旬刊旅行新聞より

『旬刊旅行新聞』の報道によると、会議の名称は「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に関する関係省庁対策会議」で、は観光庁の髙橋一郎長官が議長を務め、内閣官房、警察庁、デジタル長、総務省、文化庁、経産省、環境相、国交省各局が出席したそうで、「今秋までに具体策を取りまとめる方針」だそうです。

同紙はまた、インバウンド観光客の人数がコロナ前の8割近くの水準に回復しているなかで、「一部の地域では混雑やマナー違反による地域住民への影響や、旅行者の満足度低下につながるとして問題視されている」、などとしています。

ただ、同紙を読んでも具体的な対策などの方向性は見えてきませんが、これは同会議で、まだほとんど具体的な議論が出ていなかったためでしょうか。

しかし、正直、インバウンド観光客で市内交通が大混雑している京都市の事例を見るまでもなく、インバウンド急増の悪影響は、一部地域に観光客が集中することなどに出ていることは間違いありません(この点については欧州諸国などでも似たような悩みを抱えているようです)。

この点、「外国人に対する代替的な観光名所の開発と提案」も大切かもしれませんが、やはり外国人がその国に観光にやってくるということは、「その観光名所を是非とも自分で見てみたい」と思ってやって来ている、という意味でもあるのでしょう。

このように考えていけば、やはり一番手っ取り早いのは、現在の日本人に対しても一律で課されている出国税(1,000円)を撤廃し、外国人観光客向けに、その出身国の国籍に応じた入国税(5,000~10,000円くらいでしょうか?)を導入するというものではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 通りすがり より:

    広島県の宮島は現在入島税を取ってます。

    >対象は、島民や島へ通勤・通学する人を除く来島者で、1回100円をフェリー代に上乗せして徴収する。 往来の多い人は年500円を一括徴収し、それ以上は課税しない。 障害者や未就学児、修学旅行や遠足などの学校行事で訪れる場合は免除となる。

    だそうです。

  2. たろうちゃん より:

    出国税かぁ。日本人が出国するに税金とは銭ゲバだな。外国人の入国税はわかる。これから日本国中を観光してもらうに環境保全に必要なら徴収してもわかる。だけど温泉なら入浴税?入湯税かがかるし、なにかの建造物には拝観料や施設利用税がかかる。外国観光をするのは富裕層が多いとはおもうがカネに余裕がある層が多いのなら思い切り入国税を10.000円に設定して出国税は廃止すればいい。出国税は日本をたのしんだ外国人には失礼だとおもう。なんか、最後っぺみたいだし。なんでも、かんでも税金ばかりだ。それならNHKの視聴料金を廃止しろ!バカ役人!

  3. KA より:

    それも一理ありますが、
    マナー違反や犯罪を犯したら罰金ていうのをやって欲しいです。
    外国籍の人が街にゴミを捨てたら1万円。
    違法滞在100万円って感じで。

  4. ムッシュ林 より:

    外人に入国料を課すのは、増税考えるよりよっぽどマシですね。年間2000万人の入国者から一人1000円取るだけで200億円ですから。といっても増税よりははるかに歳入は小さいですけど。

  5. クロワッサン より:

    入国税は指紋採取の時みたいに差別だなんだと文句が付きそう。

    そう言えば、NHKでバルセロナでのオーバーツーリズムが取り上げられてました。

    地元住民の憩いの場となっている閑静な公園が映えスポットとして紹介された為に観光客でごった返し、近隣の家々は立ちションされたり車に放火されたり、酷い迷惑を蒙っているとの事。

    公園も柵を付けて夜間立ち入り禁止にしたけど、観光客が柵を乗り越えて不法侵入しまくって。

    住民が「住民に対する敬意を払え」って怒ってましたが、そりゃそうですよね。

  6. はるちゃん より:

    私は、出国税の廃止と入国税の徴収には賛成ですが、入国税は1,000円程度で良いのではないかと思います。
    観光公害は、特定の場所に観光客が押し寄せることが問題なのであり、日本人からすれば、他にも沢山見どころがあるでしょうと言いたい気持ちです。
    京都を例にすれば、清水寺や金閣寺に銀閣寺、嵐山、嵯峨野と天龍寺は銀座や渋谷並みの混雑ですが、大徳寺、妙心寺、東福寺、相国寺、仁和寺、大覚寺などはそれほどでもありません。
    知られていない味わい深い名所が他にも沢山ありますので、そちらにに誘導する努力が欠けているのではないでしょうか?
    私の家の近くも、コロナが一段落して、外国人が歩いているのを見かけるのが日常の風景になりました。
    聞こえる言葉は英語に中国語、韓国語が多いですが、ラテン系(フランス語以外にスペイン語かポルトガル語?)の言葉や東南アジアの言葉も聞こえます。
    私としては、まだまだ日本を知らない外国人が多いと思いますので、より多くの外国人が京都を含む日本各地を訪問してくれることを期待しています。

  7. 匿名 より:

    入国税の徴収には賛成です。
    ツアー客だけでなく
    違法移民を企てて、ツアー客を装って金もなく日本に来る外国人を
    追い返す手段と費用にもなるので
    徴収額も
    1万ぽっちじゃなくて、帰りの飛行機代の1割くらい徴収すべきです

  8. より:

    出国税の廃止や入国税の設定もまあいいと思いますが、一番現実的な解は、現在京都市で実施されているような宿泊税を、1. 実施個所を増やす、2. 外国人向けには若干高めに設定する、といった感じでしょうか。
    現在、京都市ではホテルに泊まると、1泊100円の宿泊税を取られます。他にもこのような宿泊税を課している都市は今でもあるかと思いますが、これをほぼ全国に拡大し(日本はそこらじゅう観光スポットだらけなので)、外国人向けには300~500円に設定するのです。なお、ガタガタいう向きもあると思われるので、宿泊税徴収は内外問わず一律とし、その代わり日本国民向けにはなんだかんだの名目で事実上の免税/減税措置を行うというのでもいいかもしれません。な~に、日本のお役所はその手の小細工は得意ですから。

    入国時のハードルを上げるよりも、実効的であるような気もします。

  9. 引っ掛かったオタク@触法外国人への対応費用もチャント積んでや~ より:

    訪日外国人も入出国時や滞在中には我々日本人及び日本在住外国人が納めている租税で運用されている公的インフラやら公的サービスやら公的資金も投入されている社会インフラを利用享受しとるわけで、一定のコスト負担はしてもらってもよろしかろうであります
    ついては”コスト”算定はビニイリサイニイリ丁寧によろしこ官僚ず
    なーにどの細目までを反映させるかは政治で決めてもらうから、忖度無しに計上積算しとくれやす

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