ウクライナ戦争では中身ペラペラでスッカスカの声明文を出す。福島第一原発処理水放出ではダンマリ決め込む。社会との対話を騙るわりにはツイッターのリプ欄を閉鎖する――。これらはすべて、日本学術会議のことです。正直、この組織に年間30億円近い予算が投入されていると知ると、なかなかに驚きます。そんな学術会議の「民間法人化」の議論が始まったようです。
目次
学術会議の在り方に関する有識者懇
内閣府ウェブサイトに先月29日付で、こんな資料が出ていました。
第1回日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会資料
―――2023/08/29付 内閣府HPより
これによると、内閣府は29日9時半から2時間、日本学術会議の組織形態の在り方を検討する「有識者懇談会」の初会合を開催したそうです。
同会合に提示された『日本学術会議に関するこれまでの主な経緯について』というPDFファイルなどによると、1948年の学術会議法公布以降の学術会議の変遷が簡単にまとめられているほか、2003年や15年、21年の資料などが再録されており、たびたび改革が提案されてきたことがわかります。
現在の問題点は「会員選考プロセスが不透明」
そして、昨年12月6日に内閣府が公表した『日本学術会議の在り方についての方針』というPDFファイルによると、「日本学術会議の会員選考プロセス」として、こんなことが記載されています。
「会員等以外による推薦などの第三者の参画など、高い透明性の下で厳格な選考プロセスが運用されるよう改革を進めるとともに、国の機関であることも踏まえ、選考・推薦及び内閣総理大臣による任命が適正かつ円滑に行われるよう必要な措置を講じる」。
わかりやすくいえば、「現在の会員選考プロセスが会員相互間で行われており、第三者が参加しておらず、透明性が低い」、という指摘でしょう。
「国の機関」であるくせに、会員候補者を選ぶのが日本学術会議自身である(日本学術会議訪第17条)というのもおかしな話です。もし学術会議の現在の会員が特定思想を持った者たちで占められてしまえば、そのような思想の持ち主で学術会議が染まってしまいます。
税金を投入する以上は、会員の選定手続の透明性が高く、選考プロセスも厳格であることは当然の話であり、その意味で、学術会議の現在の在り方は問題が非常に多いといえるでしょう。
何をやっているのかよくわからない組織
また、同資料には、こんなことも記載されています。
「日本学術会議は独立して職務を行うことから、他の行政機関以上の徹底した透明性が求められる。外部評価対応委員会の機能を強化し、構成及び権限、主要な評価プロセスを明確化すること等により、活動及び運営についての評価・検証が透明かつ厳格に行われることを担保する」。
これについても、まったくそのとおりでしょう。
過去に当ウェブサイトで取り上げた話題に限定しても、たとえば学術会議が10年以上、政府に対して提言をろくに出していなかった事実が判明したことがありました(『政府への勧告を10年以上サボる日本学術会議に行革論』)が、同組織の問題点は、それだけではありません。
たとえばあの悪名高きレジ袋有料化については、学術会議元会長が「自分たちが提唱した」と述べていますが(『レジ袋有料化も日本学術会議の提唱がきっかけ=元会長』)が、そのわりにレジ袋有料化によってどれだけ環境保全に効果をもたらしたのかに関する定量的な調査研究などは公表していません。
さらにびっくりするのが、ウクライナ戦争を巡っては、日本学術会議がこんな「中身スッカスカ」のペライチA4資料を公表した、という「事件」でしょう(『ウクライナ戦争巡る日本学術会議の「ペラいち」声明文』)。
図表 日本学術会議が公表した「A4ペラいち」のイメージ図(※クリックで拡大)
(【出所】日本学術会議HP)
もちろん、ここで大切なことは「文章量の多寡」ではなく、日本学術会議自身が「科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、科学者の総意のもとに、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与すること」に寄与しているといえるかどうか、です。
社会との対話騙りながらリプ欄閉鎖
しかし、政府に対しろくに提言も行わず、あの悪名高いレジ袋有料化などは自慢げに「自分たちの仕事だ」と宣言し、さらにウクライナ戦争では中身のないスッカスカな資料を出しておしまい。
その学術会議に対し、国民が苦言のひとつでも述べようと思っても、ツイッター(現・X)の投稿ではリプライ欄を閉鎖してしまう(『「国民との対話」騙る日本学術会議がリプ欄閉じて炎上』等参照)というから、驚きというほかありません。
リンク先の動画の字幕を文字起こししておくと、こんな具合です。
今私たちの暮らしは
学術の知見ぬきには
成り立ちません
それだけに
学術に携わる我々は
広く社会と
対話しなければ
なりません
政府と日本学術会議が
信頼関係を取り戻し
学術が
本来の役割を
果たせるような
状況を作るために
力を尽くしたいと
思います
…。
この文章、句点も読点もなく、やたらと改行が多いのは、字幕をそのまま書き写したからです。
ただ、それよりも、「学術に携わる我々は広く社会と対話しなければならない」と言いながらリプ欄を閉ざしてしまうというのは、渾身のジョークにしか見えません。
福島原発処理水でダンマリ
さらに理解に苦しむのは、福島第一原発の処理水放出に関し、学術会議側が声明らしい声明を、現時点にいたるまで、ほぼ何も発していないことでしょう。
福島処理水の放出は科学的知見から設定された基準値を遵守して行われるものですが、これについて「基準値は科学的なものである」、「海洋放出は科学的プロセスに従っている」、などの声明を出すだけでも、風評被害の防止に一定の役割を果たします。
毎年30億円近い予算を浪費しながら、こうした仕事もろくに行わない学術会議に、なにか存在意義はあるのでしょうか。
さて、この29日付の会合を巡って、産経ニュースなどは、「民間法人化」を視野に入れたものであると報じています。
政府、日本学術会議「民間法人化」視野に議論開始
―――2023/8/29 18:48付 産経ニュースより
産経によると初会合では学術界や経済界からのメンバーに加え、学術会議の梶田隆章会長も出席。学術会議を現行の「国の機関」から民間法人に移行する案を含め、「組織の在り方に特化した議論を進め」、「年内には一定の方向性を示したい」(政府高官)としています。
国民からの信頼?それより民営化を!
そのうえで、有識者懇を所管する後藤茂之経済再生担当相は初会合で、次のように述べたそうです。
「学術会議が一層国民から理解され、信頼される存在で在り続けるためにどうあるべきか、率直に議論いただきたい」。
正直、国のために何も役に立っていないどころか、福島第一原発の処理水放出に関してもだんまりを決め込む組織を、心ある大多数の国民が理解し、信頼することはあり得ないでしょう。
この点、学術会議は税金で遊んでいる組織という意味において、NHKと非常によく似た組織といえるかもしれません。
もちろん、NHKの受信料は、法的には「税金」ではありませんが、「テレビを持っただけで支払う義務が生じる」という意味では税金とよく似ていますし、国民のためになる仕事をほとんど行っていない利権組織という意味では、両者の性格はソックリです。
その意味で、今回の「学術会議の民営化」という議論が成功すれば、将来的なNHKの解体にもつながる可能性があるのかどうかについても、個人的には注目したいと考えている次第です。
View Comments (14)
そりゃ年間30億貰えれば、立派な利権になる。左翼陣営を利してでも存続を図るだろう。レジ袋有料化が本当に学術協会の提言なら支持する要素はなにもない。国民の不興を買った小泉進次郎は、いまだ浮上できていない。学術協会の人選も不透明で学閥ありきが罷り通る可能性もある。一説には中国に情報が筒抜けていた話もある。まずは、レジ袋有料化の効果を可視化するレポートをだしてもらいたい。民営化での自助努力は大いに結構。大賛成だ。イタズラに税金投入すべきではない。
「基準値は科学的なものである」、「海洋放出は科学的プロセスに従っている」、などの声明を出すよりも思想信条が優先するのであれば、それはもはや「学術」とはいえないのでは??
>学術会議が10年以上、政府に対して提言をろくに出していなかった
つけ加えるなら、新型コロナについても、実質的に何もしていません。
医師会等との力関係もあるでしょうが。
「日本学術会議、コロナに関する政策を提言できず」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD073JL0X01C21A2000000/
日本学術会議に切り込み入れたのは菅さんの手腕です。これがなかったら、民営化なんていう議論は出てくることさえなかった。
日本学術会議「我々は、日本政府を擁護し日本国の国益になる事、および、中国・ロシアを非難することは決していたしません!」( -`ω-)キリッ
そう言う事だよね。お里が知れてます。
続けたければ自己資金で。税金を入れる事は断固反対します。
左翼というのは自分で稼ぐ能力がないので、公金に集るというような話をどこかで聞いたことがあります。
学術会議側が民営化を受け入れたとき、それは新たな公金チューチュースキームが完成したときと言っても過言は無いでしょうね。
左巻きの文科省あたりの天下り先になり、無駄に、そして今まで以上に税金が投入される民営学術会議の出来上がり。
TOYOTAやSONYが、何人の天下りを受け入れたって、民間企業の経営判断だからなんにも問題ありません。
どうぞどうぞ。
税金を投入するな!がポイント。
なんでそれが公金チュウチュウに??
学術会議はトヨタやソニーのような営利団体ではないですからね。
しかし組織を運営するにはお金がかかる。
その資金はいずこから?
会員が会費を払うことでまかなうのでしょうか?寄付を募るのでしょうか?
補助金、助成金と称した公金に頼るのでしょうか?
金を集めて自立する才覚のある組織なら、とっくに民間法人化しているのではないでそしょうか。
民間として存続するとしても結局活動原資は助成などの公金という形に落ち着くと予想したのです。
そのために官僚主導で法案が出来、天下り役人が入り込んだりして30億じゃ効かないほどの大金が科研費などから吸われていく。
なんてことを考えた次第です。
日本学術会議の醜態は、日本の学者の未熟さと卑しさを象徴しています。
この方たちが、やる気のある若い人たちの妨げになっていないことを願うばかりです。
こんなところに金を出す政治家と役所も同罪です。
一刻も早く民営化して頂いて、自分たちの力で運営すれば良いと思います。
>もし学術会議の現在の会員が特定思想を持った者たちで占められてしまえば、そのような思想の持ち主で学術会議が染まってしまいます。
この点は強制加入団体である日弁連にも通じますね。
日弁連の左翼的政治活動を黙認するな 「日弁連意見書」の実態…「詐欺同然」と言いたくなる
2017/4/20 01:00
https://www.sankei.com/article/20170420-N3UA5THESNKMNNUN2AY57MRGDQ/
今の日本学術会議のあり方って、欧米のリベラル派から見たら 「政府から独立していない御用学者の集まり」 に見えるんじゃないか?
リベラル派はすぐに 「ドイツではー!!」 とか 「アメリカではー!!」 とか言う出羽守のくせに、それは気にならないのか?
私が思うに
日本学術会議のメンバーに文系は必要ありませんね。
特に憲法学者、変わりもしないものを学問?阿呆ちゃうか?と思います。
日本学術会議を擁護する気は全くなく、むしろ消えてなくなれという思うものですが、
学術会議に文系が参加するのに拒否感はありません。憲法学を含めてです。
直近のコロナの際は、医学だけの話より、国内に適した法律や、社会の在り方、経済、経営、産業構造等あらゆる分野の泰斗が様々な提案を行う機会であり、それを行っていれば世の中の見る目は違っていたでしょう。
実際は、小学校の担任の先生が学童に言うようなことだけで、実のある提言はありませんでした。
政府のワーキンググループに呼ばれもしなかったことに反発すらしませんでした。
今となれば、ワーキンググループの提案や試算に間違いがあったかもしれませんが、当時は各々のメンバーの能力とその時点で入手できる情報から、良かれと思う方針を作り、国民に従うことを求めました。ある意味超法規的な社会の変革まで行いました。
途中からメンバーも増加し、経済や経営等の分野のメンバーも加え、異常事態対応からの回復方法の模索もしました。
この過程に理系分野も文系分野も学術会議は関わっていません。
映画「シンゴジラ」で「首を斜めに振る」と称された御用学者の立場にさえ立てていません。
それゆえ、文系に限らず全メンバーが必要ありません。
こんな連中が、日本の学問分野を代表するなどと他国の学者にみられることが不愉快で仕方ありません。
一郎様
ご意見ありがとうございます。
如何せん私は理系原理主義者なものでして大変失礼いたしました。
一之介様
異常な長文で妙な圧を感じさせてしまったら、申し訳ありません。
私も理系の人間で、おっしゃることは菅首相とのゴタゴタが発生した頃には同じように感じました。
コロナの際に、法律や経済、税制でいろいろ無茶な対応をしなければならないときに、その分野の学者が所属してる学術会議が何も実績を出さないことに絶望しました。
会長に理系のノーベル賞学者を迎えながら、文系学者を働かせられないなら理系だけを残す必要もないなと暴走しました、
一之介様のご意見を批判する気は全くございません。
ご丁寧なご返信いただきありがとうございました。