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核汚染水呼ばわりの中国にセルフ経済制裁が突き刺さる

本稿は、ちょっとしたメモ書きです。「これってもしやセルフ経済制裁では?」、という事例が、「福島核汚染水放流」に伴う、中国による日本の水産物の禁輸措置です。この措置で日本経済に大した打撃を与えることができないだけでなく、中国国内でパニック的な海産物回避の動きが生じ始めている、というのです。メンツを誰よりも重んじるとされる中国政府がこれをどう収集するか――たとえば禁輸措置を撤回することができるかどうか、など――も見物でしょう。

セルフ経済制裁と「核汚染水」

セルフ経済制裁とは、相手国が発動した制裁が結果的に経済制裁と同じ効果をもたらすこと」――。

外為法改正が改憲に匹敵する理由』でも指摘したとおり、経済制裁と呼ばれるものにはいくつかの手段があるのですが、そのなかでも最も「痛快(?)」な制裁の発動形態があるとすれば、それは「セルフ経済制裁」ではないかと思います。

その最近の例として、中国が日本産の水産物を全面禁輸措置にしたことを挙げておきましょう。

この措置はもちろん、中国自身にとっては「経済制裁」として発動したものではなく、名目はあくまでも「福島原発から核汚染水が放出されること」を受け、「中国人民の健康を守るため」の措置です(ちなみに「核汚染水」については最近、中国当局が頻繁に使用する用語です)。

個人的には、健康被害という観点からは、「トリチウム被害」とやらよりも、賞味期限が切れた食品を口にするほうが、数千倍、数万倍は危険ではないか、などと思う次第ですが…。

中国にとってさまざまなダメージが!

しかも、現実にこの中国の措置は、日本経済に対し、ほとんど打撃を与えることはできません。

中国の「日本産食品の禁輸措置」は日本経済に影響なし』でも指摘したとおり、2023年上半期(1月-6月)における日本から中国への輸出額(※香港向け除く)は8兆1413億円でしたが、このうち「食料品及び動物」は865億円で1%少々に過ぎません。

ただ、それ以上に大きな打撃があるとしたら、中国という国の異常性が世界に伝わったことでしょう。

著者自身が調べた限りにおいては、現時点において処理水を「核汚染水」呼ばわりしている、あるいは処理水で海洋が「汚染されている」などと述べているのは、中央政府レベルでは中国やロシアくらいなものです(ほかにも韓国の野党などが大騒ぎしているようです)。

国際社会も徐々に、これらの国々を巡って、「なにかおかしい」、「福島第一原発よりも中国の原発の方が多くのトリチウムを放出している」、などと認識するようになりつつあります。

参考:世界の主要な原発におけるトリチウムの年間処分量
サイト ベクレル
ラ・アーグ再処理施設(仏国) 1京1460兆㏃(液11400+気60) 2018年
ブルースA,B原発(カナダ) 1750兆㏃(液756+気994) 2018年
セラフィールド再処理施設(英国) 479兆㏃(液423+気56) 2019年
ピッカリング1-4原発(カナダ) 440兆㏃(液140+気300) 2015年
ダーリントン原発(カナダ) 430兆㏃(液220+気210) 2018年
ヘイシャムB原発(英国) 398兆㏃(液396+気2.1) 2019年
チェルナヴォーダ1原発(ルーマニア) 292兆㏃(液140+気152) 2018年
泰山第三原発(中国) 238兆㏃(液124+気114) 2019年
月城原発(韓国) 141兆㏃(液31+気110) 2019年
古里原発(韓国) 114兆㏃(液91+気23) 2019年

(【出所】在中日本大使館ウェブサイトに掲載のPDFファイル資料をもとに著者作成)

また、日本国内でも福島県産・東北産の魚介類や農作物全般に関し、むしろ「安全」との評価が固まるとともに、全国的に「食べて応援」という機運が高まりつつあります。福島県産食品などに風評加害をしようとしたら、却って日本国内が団結してしまった、というわけですね。

余談ですが、福島第一原発処理水放出にダンマリを決め込む日本学術会議に対しても、人々は次第に白い眼を向けて始めているようであり、学術会議解体または民営化などの議論がまとまれば、結果的に日本社会にとって非常に良い効果が生まれるのかもしれません。

中国国内で海産物忌避の動きも?

ただ、話はこれに留まりません。

その一方で、中国国内の海鮮レストランなどには、日本産だけでなく、中国産の海産物をも避ける動きが生じ始めているのだそうです。

中国の消費者「海鮮離れ」 習政権の処理水批判で

―――2023/8/30 19:03付 産経ニュースより

産経ニュースによると、中国政府が「食品の汚染リスク」を強調し続けるなか、中国各地で現在、消費者が海産物全体の安全性を警戒する展開となっているようです。産経が引用した、北京市内の海鮮市場で魚を販売する女性店主の発言は、こんな具合です。

ここ数日で売上高、販売価格、来店客が全て減った。今後どうなるのかと、ここの販売店主はみんなが心配している」。

そのうえで、たとえば中国のSNSでは「日本の海洋放出への反対が『反海鮮』に変化している」という投稿もあったそうであり、香港紙『明報』(電子版)も「反日と放射線への懸念という強い感情は全ての海鮮にまで及んだ」と伝えたのだとか。

本当に、見事なセルフ経済制裁です。

中国政府自身がさんざん、「核汚染水」の不安を煽ったわけですから、自業自得というほかありません。

こうした風評被害を食い止めるために最も手っ取り早いのは、たとえば「日本の水産物は安全」などとして禁輸措置を解除することですが、果たして中国政府にそれができるのでしょうか。一説によると、メンツ(?)を誰よりも重んじる中国当局にとっては、それは「敗北(?)」を意味するからだそうです。

食べて応援、よろしく!

さて、当ウェブサイトからのお願いです。

「おいしい福島」を「食べて応援」、なにとぞよろしくお願いします。

【参考】おいしい福島

(【出所】「おいしい福島」ウェブサイト)

といっても、なにも特別なことをする必要はありません。

日常生活で福島県を含めた風評被害地域の産地のものを見かけたら、積極的に購入する」――。

まずは、ここから始めましょう。

また、もし余裕がある方ならば、ふるさと納税で福島県各地、東北各地の自治体に寄付をしても良いかもしれませんし(※これは著者自身が実際にやっています)、もしそれらの食品を食べておいしかったと思えば、周囲の人にそれを宣伝しても良いでしょう。

あるいは、風評加害をさんざん煽って来たメディア(とくに新聞、テレビ)については、「不適切な報道をする新聞は購読しない」、「不適切な報道をするテレビは見ない」、を徹底するだけでも、かなりの効果を発揮するはずではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (34)

  • 今や中国では次の段階です
    空間線量計で上海の自宅で線量を測ったらなんと福島より高く東京の1000倍近い
    超汚染ハウスに住んでいることが判明して発狂
    建材が汚染されているとの話が出てますます不動産が売れない

      • それは、世界の常識です。
        原子力発電で、処理のやり方を知らないから垂れ流しですね。

        • 三たび、赴任が決まった私は何と不幸な事か。。。。早死しても労災は降りないんだろうなぁ。

          • 即刻、退職するのが、正常な判断です。
            意に沿まぬ仕事・転勤を命じられた時にはいつでも辞められるように、能力と貯金を貯めておく事は、終身雇用が無くなった日本では、家を買うより必要な事です。
            能力と貯金があれば、余裕を持って職業選択が出来ます。
            今の時代、会社の命令で中国に行くなんて・・・。

          • 中国のスパイ防止法の改悪により、まったくスパイなど関係のない日本人の出張者でも有無を言わせず拘束できるようになりました。日本政府は無力で救ってはくれません。18人目の拘束者にならないよう、お気をつけて、お達者で~

      • 新聞を読まない高齢者様

        中国で鉄筋入の建物の中に、放射線レベルがベラボウに高いものがあるというのは、実はそれほど目新しいはなしではないんです。中国産の鉄筋を輸入していた台湾で、ひと頃ずいぶん問題になったのですが、本家本元ではこんなはなし、伏せられてたんでしょうかね。

        理由は、アチラでは医療用途、工業用用途の放射線源の管理が実にずさんなんです。それがくず鉄に混じって溶融されたりすると、コバルト-60だの、イリジウム-192だのと言った非常に強いガンマ線を出す放射性同位元素入りの鉄筋が、出来上がるということになるのです。

        もうひとつ、中国は冬の暖房に主に石炭を使います。で、石炭を燃やすと、必ずそれに含まれる放射性物質であるウランが、排煙と共にバラ撒かれます。それで、中国の土地の自然放射能のレベルは、もともと日本より数倍高いのです。

        だから、科学知識のない中国人は、そんな機器ではトリチウムの放射線など検出できないことも知らずに、決して安くはない空間線量計(これで検出できるのはおもにトリチウムからは放出されないガンマ線です)を買い込んで、その挙げ句に、自国がもとからいかに放射能汚染されているのかを思い知らされているという、なんとも気の毒な目に遭っているわけです。

  • 個人的にこの話題に関して思ったことを書いていきます。

    ネット記事で輸入規制によって海産物、生ものを扱う業者が困るという話を聞くのですが、国内の食料自給率は低いのですから、国内消費に回せないのか、なぜ輸出していたのかを疑問に思います。

    あと、本文の内容ですが、トリチウムの心配より賞味期限切れの食品を食べる方が有害(意訳)とありますが消費期限のほうが妥当ではないかと愚考します。

    • >国内の食料自給率は低いのですから、国内消費に回せないのか、なぜ輸出していたのかを疑問に思います。

      今や、日本の最低賃金は、韓国より安い。
      また、物価も、ラーメン一杯¥3000円が常識のニューヨーク等と比べて、非常に安い。即ち、日本は賃金も物価も超安いガラパゴス国なのです。
      従って、漁協としては、日本人が買える様な安値で売るより、輸出に走るのです。
      輸出してたものを、日本人が買える価格で売り捌くと、漁協としては減収になります。
      それを「風評被害による収入減だから税金で補填する。」というのは、何だかなぁという気がします。

  • 狂牛病のとき強烈な風評被害が沸き起こり牛肉相場は大暴落した。おれは、当時箱根の某ホテルに納品していたんだが安い時分に買いまくった。業者は売れないから買い上げるオレは大事にされた。冷凍し反騰したときには川奈のホテルにも買ってもらった。中国の禁輸は新規開拓を促し、中国リスクは喧伝されるだろう。中国人自体が自国の産業を信じていない。昔の話で恐縮だが中国人の友達が中国の野菜は食べるな!と言っていたのを思い出す。何でも農薬過剰投与なんだそうだ。それが本当なら、税関の検査はザルなんだなって思う。

    • 中国には農薬を洗い落とす「野菜専用洗剤」が有ります。
      なぜ日本政府は中国野菜の厳格な検査をしないのか? とても不思議
      増税メガネこと岸田総理は二階氏を関係改善のため中国へ派遣使用としている。
      舐められっぱなしですね。
      これでは日本は脅せばなにか貰える。事が確信となって世界に喧伝されます。

      • ことなかれ主義の日本政府。食物だけじゃなく、医療関係では薬も俎上に上がるし、環境問題なら、川崎病や水俣病といとまがない。実はオレ。ストレプトマイシンの被害者だ。58年たっているから証明ができない。パソコンがない時代だから記録は5年でし処分されてしまう。いい加減なんだよ、この国は。

        • たろうちゃん様

          >環境問題なら、川崎病や水俣病といとまがない。

          ひょっとして、川崎病を公害病かなんかと、誤解していませんか?
          川崎病は、日本の医師川崎富作氏が新しい疾患概念として提唱した、乳幼児期に好発する小児の後天性心疾患です。

          • え?

            川崎病って被害者コスプレ集団に積極的に騙される精神疾患の事だと思ってました笑

          • だから川崎病なのか。確かに誤解してました。川崎の工業地帯の公害と思っていた。ご指摘ありがとうごさいます。

  • 汚染水呼ばわりで危険性を訴えているのは、国際社会では、仰る通り、中国・ロシア・北朝鮮と韓国の野党・・・あと日本の野党の一部、具体的には立憲民主党の一部、社民、共産、れいわになりますかね。(日本の特定野党は特亜と同列・・・)

    セルフ経済制裁大いに結構だと思います。
    日和らずにあと数年は続けて欲しいと思います。

  •  二階氏が訪中する予定だそうです。反中の宴はもう終わりですかね。
     たぶん岸田政権が考えている妥協案としては韓国に対してやったのと同じ、専門の視察団を招いての福島第一原発の現地調査だと思います。それで中国側が安全であると認めるまで処理水放出の一時停止といったところでしょう。場合によっては処理水放出が終わるまで居座らせるかもしれません。

  • それにつけても、わが国の農水相の馬鹿さ加減、

    今すぐクビを切るべきだ。

    • 今世の中で何が起きているかを認識も出来なければ、関心も持てない、完全な耄碌状態ですね。居るべき所は、内閣では無く、養護老人ホームかも。

    • 岸田さんは、首相になったら人事がやりたかったそうですから、素晴らしい農相を選んだと思っているのでしょう。
      普通の国民から見れば、この人大丈夫かというレベルなんですけど。
      岸田首相からみればこのレベルでもまともに見えたのでしょうね?
      岸田首相には、自分よりも優秀な人は邪魔な存在に見えるのかも知れません。
      日本の大手企業や役所によくある話ですが。

  • 賞味期限ではなく消費期限とするべきなのではと思います。

  • 日米蘭独等の西側諸国は露中北韓の国民感情や中国独自の科学を一応尊重して半導体製造装置のEUVリソグラフィの輸出を中古機や部品単位でも禁止してあげてはいかがでしょうか?

    あれは軟X線を使う工作機器です。
    微細工程加工や医療機器で放射線物質や元素レベルの物質の性質を利用するものは沢山あります。
    時計や計器の蓄光塗料などにもセシウムが使われたりしてましたし太陽光発電パネルにも…

    正義の反放射性物質主義国の露中北韓はまさか核兵器や原発を保持・維持するはずがありませんし使用・行使するはずがありません。
    廃棄しましょうね。
    ラドン・ゲルマニウムなんぞの温泉に入るはずもありません。
    いっそ電気も使うのやめたら?

  • そもそも中国には長年、大気汚染、土壌汚染、水質汚染、砂漠化問題、悪臭問題、騒音問題が改革開放後に顕著になってきました。彼の国だけに影響があるのであれば百歩譲って我慢できますが大気汚染、水質汚染は近隣諸国にも影響が出ます。大気汚染は大量の石炭使用で水質汚染はルールを守らない化学薬品、重金属を含む排水廃棄によるものです。国際会議期間中は工場稼働停止、禿山は緑色に塗装と話になりません。重工業工場の近くの村では癌患者や障害児が増えたりと環境問題を見過ごして工業化を急いだ結果です。そんな国が厳格にルールを守ってトリチウムを処分している日本に対して虚言を喚くという不思議なことが起こってます。安倍総理、菅総理であればこんな事にはならなかったと思えてなりません。

    • そういえば、10年か15年ほど前、ギラギラと7色に輝く中国の都市河川の写真がありましたっけ。今では少しはマシになったのでしょうか。もっとも、未確認情報ですが、長江では10年間漁業が禁止されたなんて話もあるので、根本的には何も変わってないという可能性も大ですが。

      現在、中国政府がキャンキャン吠えているのは、韓国なんぞの尻馬に乗っちゃった手前、今更振り上げた拳を下せなくなったという理由の他に、国内経済があまりに不調なため、国民の不満の矛先を日本に向けさせるためだという説がまことしやかに流れてますが、おそらくそういった側面もあるんでしょうね。
      ただ、中国政府としても、大規模な反日デモにまで至ると、いつ反政府デモに転じるか予測不能なため、そこまではやるつもりはなさそうです。日本へのイタ電を煽ったSNS投稿やアカウントを当局が削除し始めているなんて話も流れてますね。

      事実上の水産物禁輸に対し、WTOに提訴するというのは一案ですが、かえって中国政府に一息つかせてしまう可能性もあります。キャンキャン吠えるのを止めるいい口実になりますので。このまま吠え続けても日本政府の姿勢を変えられないことくらいは承知しているでしょうし、吠え続ければ吠え続けるほど、世界中にバカを喧伝するだけだということくらいはわかっているでしょうから、多分。

  • 横の大陸も半島も幼稚過ぎて。
    いつか責任ある国家になれば良いですね。
    無理でしょうが。
    何故日本の政治家は横の大陸、半島の方が
    放射性物質排出してると言わないのでしょうか?

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