韓国大統領の「日本はパートナー」発言は信頼できない
尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領が「光復節」演説で、日本を「普遍的価値を共有するパートナー」などと述べたうえで、(おそらくは半島有事を念頭に)日本との協力の重要性に言及したそうです。まさに「全力で日本に抱き着きに来ている」ようですが、これについて日本はどう対処すべきでしょうか。そもそも「朝鮮半島生命線説」自体が正しくないことを、改めて認識する必要はないのでしょうか。
鈴置氏「日本にとって韓国は要らない」
先日の『日本の半導体産業にとって「韓国は要らない」=鈴置氏』では、韓国観察者である鈴置高史氏がYouTube動画に出演し、「日韓は半導体産業で協力すべき」とする俗説に対し、「日本にとって韓国は要らない」と一蹴した、とする話題を取り上げました。
鈴置氏のこの見解は、「半導体において、日本と米国(にとっては)台湾は必要だが韓国はなくてもやっていける」とする文脈で出て来たものですが、ただ、この「日本にとって韓国は不要」とする評価は、じつは半導体産業だけでなく、もっと広く当てはまる考え方なのかもしれません。
ここで思い出していただきたいのが、当ウェブサイトでも以前から取り上げて来た、「朝鮮半島生命線説」なる考え方です。
これは、韓国が日本から見て、地理的に非常に近い位置にあることから、「朝鮮半島が日本の敵対勢力の影響下に入れば、日本の安全保障に深刻な脅威がもたらされる」としたうえで、「だからこそ日本はあらゆるコストを払ってでも、この地域を味方にしておかねばならない」、などと説くものです。
朝鮮半島生命線説とは?
韓国は地理的に見て日本に非常に近く、この地域が日本の敵対勢力に入れば、日本の安全保障に深刻な脅威をもたらす。だからこそ、日本はあらゆるコストを払ってでも、朝鮮半島を日本の友好国に引きとどめておかなければならない。
(【出所】『新宿会計士の政治経済評論』)
この考え方には、ほかにもいくつかの派生形があります。
たとえば「北朝鮮に対する牽制のためには日韓連携が必要だ」、「中国と対峙するためには日韓連携が必要だ」、といった考え方であり、また、「北朝鮮や中国に対処するうえでは韓国と良好な関係を維持しておくことが望ましい」、などとする主張につながることもあります。
酷い場合には、「日韓が連携すれば、米国に対しても意見を述べることができる」、などと主張するものもあります(これはおもに韓国メディアから出て来ることが多いようですが、ごくまれに、日本の自称「保守派」からもこのような主張が出ることがあります)。
朝鮮半島生命線説の根本的欠陥
ただ、こうした「朝鮮半島生命線説」には、根本的な欠陥があります。
それは、「仮に日本が韓国と仲良くしようとしても、韓国が日本と仲良くするかどうかはわからない」、という疑問点に対し、正面から答えていないことです。
もっといえば、日本が「あらゆるコスト」を払ったとしても、朝鮮半島(あるいは韓国)を日本の友好国に引きとどめておけるというものではありませんし、また、韓国を日本の「味方」「友好国」にしたとして、それが日本の安全保障上の地位向上に寄与するという保証もありません。
鈴置氏は韓国観察者として、ウェブ評論サイト『デイリー新潮』などへの寄稿、あるいは『韓国民主政治の自壊』などの著書を通じ、これまで何度も、「韓国の特殊性」を警告してきました。
【参考】『韓国民主政治の自壊』
(【出所】アマゾンアフィリエイト)
この「韓国の特殊性」については、鈴置氏が『デイリー新潮』に2021年7月16日付で寄稿した、『文在寅が菅首相をストーカーするのはなぜか 「北京五輪説」「米国圧力説」……やはり「監獄回避説」が有力』という記事に出て来る、こんな記述が参考になるかもしれません。
「平気で約束を破り、堂々と他人を裏切る韓国と首脳会談を開こうとする国はまず出てこない。何を取りきめようが、すぐに反故にされるからです。日本と韓国がうまくいかない原因は『日韓関係の特殊性』ではなく『韓国の特殊性』にあるのです」(※下線部は引用者による加工)。
この「韓国の特殊性」という特徴、「米中二股外交」、「食い逃げ外交」と並んで、韓国の外交を論じるうえで極めて重要な概念です。そして、韓国が日本に「抱き着いてきている」ときは、たいていの場合、韓国が経済、安保などにおいて、本当に「ヤバい」ときであることについても、また忘れてはならないでしょう。
尹錫悦氏「日本はパートナー」
こうしたなかで、韓国大統領の口から、とうとう「日本はパートナー」という表現が飛び出してきました。
尹大統領「日本はパートナー…共産勢力、進歩を偽装して非倫理的工作」
―――2023.08.15 13:02付 中央日報日本語版より
韓国メディア『中央日報』(日本語版)の報道によると、尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領は15日、韓国の祝日にあたる「光復節」で演説し、「日本はもう我々と普遍的価値を共有し、共同の利益を追及するパートナー」、などと述べたというのです。
はて?
「平気で約束を破り、ウソをつく」というカルチャー、日本には存在しませんが、この人物はいったいなにをもって日本が韓国と「価値を共有している」とおっしゃっているのでしょうか?なんとも理解に苦しみます。
ただ、尹錫悦氏の発言で注目すべきは、こんなくだりでしょう。
- 韓半島と域内で韓日米安保協力の重要性が日々高まっている
- 日本が国連軍司令部に提供する7カ所の後方基地の役割は、北の南侵を遮断する最大抑止要因だ
- 3日後の韓日米首脳会談は3カ国の連携の新たな里程標になるだろう
…。
発言をそのまま読めば、「朝鮮半島生命線説」を信奉する人にとっては狂喜乱舞して喜びそうになるところかもしれませんが、裏を返せば、尹錫悦氏の発言からは、ごく近い将来、朝鮮半島で何らかの「動乱」が生じることへの警戒が滲み出ています。
このあたり、現在の東アジアの地政学的状況に照らせば、もっとも懸念されるのは台湾有事でしょう。
中国人民解放軍が台湾に軍事侵攻をすれば、日米が台湾防衛に成功したとしても、結果的に中台両岸だけでなく、沖縄を含めた在日米軍基地にも被害が及ぶ可能性が高いですが、それだけではありません。台湾有事に乗じて、在韓米軍が手薄になった隙を突き、北朝鮮が南侵する可能性もあります。
このあたり、日米の「ホンネ」は、「韓国防衛に力を割かれたくない」、といったところですが、尹錫悦政権としては全力で日本に「抱き着き」に来ているのではないでしょうか。
ただ、韓国がこれまでに自称元徴用工問題、慰安婦合意破り、火器管制レーダー照射、不正輸出疑惑などを通じ、日本にさんざん「殴りかかって来ていた」ことを思い出すならば、こうした韓国の「抱き着き戦略」を安易に歓迎して良いものかどうかは微妙でしょう。
そもそも信頼に値する国ではない
なにより、朝鮮半島生命線説に欠落している視点は、韓国が日本にとって「同盟国として信頼に値するかどうか」、です。
そもそも韓国は日本にとって、現時点で「同盟国」ではありませんが、仮に「同盟」を目指すにしても、中国を牽制するための同盟を韓国と構築することは、現実的ではありません。肝心の韓国が中国に立ち向かう意思を持っていないからです。
実際、数日後に日米韓3ヵ国首脳会談を控え、中央日報からはこんな報道も出ています。
北朝鮮を明示して韓日米軍訓練を定例化…共同声明で中国に言及しない見込み
―――2023.08.15 14:33付 中央日報日本語版より
中国牽制を盛り込まないのに、日米韓連携が日米豪印「クアッド」よりも重要になるはずなどありません。
このあたり、どこかの国には「私こそ外交の●●●だ」、などと自画自賛する首相がいるようですが(●●●にはその人物の名字が入るそうです)、インテリジェンスもプリンシプルも欠落していることが自覚できていないのは困った話ではあります。
ただ、現実に日米が「日米韓3ヵ国連携」を深めようとしたところで、それは機能しないでしょう。肝心の対中牽制の枠組みに加わる意思を、韓国自身が持っていないからです。
あるいは、尹錫悦氏が遅くとも4年後に退任し、後継大統領が日米韓の枠組みを承継しようとしないという可能性や、あるいはそれ以前の段階で、尹錫悦氏自身が李明博(り・めいはく)元大統領のように、任期中に突如として変節して反日に舵を切るという可能性もあるかもしれません。
このあたり、日本としては決して警戒を緩めてはならないのです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。
ツイート @新宿会計士をフォロー
読者コメント一覧
※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。
やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。
※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。
※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。
当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。
コメントを残す
【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
「何を言ったかではなく、何をやったか」
一言で終わる話題ですね…
アメリカは分かっていて“日米韓”の枠組みを強調し、韓国に踏み絵を迫っていると思います。
共同声明から中国牽制の要素を抜いてほしい、クアッドには部分的に協力したい、etc.
そう言う度に「誰が大統領になっても、韓国は中国と対峙する気がない」という”証拠“が積み重なって行く。
問題は日本で、岸田さんのように、何度韓国に騙されても懲りず、アメリカに「韓国を信用するな」と言うことも出来ないお人好しの善隣外交では、日米韓の枠組み維持のために日本だけが譲歩を迫られる構図から抜け出せないということ。
親日はパートな
まぁ個人的には韓国が対中包囲網の中に入らないのは良いことかなと思います。アメリカ同盟国としてアメリカからの韓国の価値が下がるだけですし。そして対中戦略で韓国を混ぜない方が楽に話を進められるでしょう。
それにしても、尹さんは日米事大に切り替えるべく国民の説得を頑張ってはいますね。今までの大統領なら考えられない発言です。
さんざん反日をしておいて、李在名と思いきや、こんどは尹錫悦。さっさと日本と関係改善を成功させ、ちゃっかり通貨スワップまで。いやあ、尹錫悦というか半島人は、彼ら半島が地政学的にカネになることがDNAに刻まれ、分かっているのでしょうか。したたかな民族です。アメリカを上手く使って、日本に見事な立ち回りをしてきました。賢いです。
それにひきかえアホウは日本。
半島有事は日本の有事・・などと、せめて、アメリカにそそのかされないことを願います。
とりあえず、条約とか協定とか
「国家と国家で約束」
するような場合に、韓国では国家元首である大統領ではなくて最高裁判所長が国の代表なのだそうですから、最高裁判所長が同じコメントを出してくるまでは、無視しておいて構わないと思いますけどね。
あるいは韓国の最高裁判所が、
「国家と国家の約束が、国内法より優先する」
という判例を出してから、でもよいかな。
大統領という肩書きなのに、韓国では最高裁判所長の使い走り役の小者だというのですから、わかはんもんですね。
岸田首相が勘違いしないように、周りのみなさんは気をつけてあげてほしいものです。
韓国を強かというコメントを散見しますが、どちらかというと「ズル賢い」と思います。岸田文雄がバカ過ぎて外務大臣時代から、何回騙されればいいのかと、忸怩たる思いです。韓国の尹大統領は信頼できかねる、、、は正解で処理水にしても、靖国参拝にしても、あの国は、統制が取れていない。せめて、科学的エビデンスと歴史的背景を認識し、自国の経済くらい自国でまわしてほしい。10年事に集られたんでは、税金払うのがイヤになる。日本政府も厳しい言い回しができないか?韓国とは国交断絶する位の気構えを見せて欲しい。
まあ●●をおだててリップサービスするだけで自国の利益になるというなら、そらやりますよねえ・・・。
バイデン大統領は、韓国の面倒を日本に見させるつもりです。
台湾有事には、北朝鮮は中国支援のため、一応臨戦態勢をとると思います。
ただし、北には南へ侵攻する気も力もないと思いますが。
アメリカとしては、米韓同盟がありますので、一応朝鮮半島防衛のために対応せざるを得ません。
現状、アメリカにすれば、北のICBMが直接アメリカを狙える段階にまで開発が進んでいますので、韓国を守るメリットが少なくなっています。
アメリカにすれば、韓国などよりも台湾防衛に集中しなければいけませんので、日韓の軍事協力を目論んでいるのでしょう。
ただ、日韓の軍事協力には双方に大きなハードルがあります。
多分無理だと思うのですが、バイデン大統領はそのあたりのところは理解していないのでしょうね。
尹大統領は、岸田首相から既にかなりの譲歩を引き出したので、アメリカのいう事は聞かないと思います。
岸田首相のほうはまだまだバイデン大統領の言いなりになって韓国に譲歩しそうです。
(※自分の支持率が何故下がったのか理解していないと思われます。)
岸田首相は、今こそ朝鮮半島の歴史を思い起こすべきです。
>鈴置氏「日本にとって韓国は要らない」
そうです、要らないのです。
何度も何度も韓国は裏切ってきました。
日本もいい加減、「うそつき」国家との距離を考えるべきでしょう。いい加減に、です。
少なくとも「岸田さんのような政治家は日本にいらない」のです。
岸田政権は日米韓連携を是とするなら、有事の邦人脱出のための自衛隊機の韓国入りの保証を確約させる(踏み絵)とか、やんないんですかね。
この手の話は首脳案件に上げないとまとまらないと思いますけど。の割には何も聞こえてきません。
いや、別に進めて欲しいわけではないんですが。(笑)
首相がぶち上げた各種案件、その後どうなってんだかよくわかんないんですよね。中身より看板が大事なのかな。
>もっといえば、日本が「あらゆるコスト」を払ったとしても、朝鮮半島(あるいは韓国)を日本の友好国に引きとどめておけるというものではありませんし、また、韓国を日本の「味方」「友好国」にしたとして、それが日本の安全保障上の地位向上に寄与するという保証もありません。
朝鮮半島生命線説の“あらゆるコスト”の中に、日本が朝鮮半島の“浄化”を実施した場合に被る悪評が入っていないのが、覚悟が足りないって感じるんですよね。
勝てば官軍負ければ賊軍と言いますが、日本人をジェノサイドしまくった米国が「正義の味方」扱いですからね。
逆に、中国の強さというか恐ろしさって、必要があれば台湾や朝鮮半島で民族浄化を厭わないところだと思うんですよね。
だからこそ、脅されればすぐヘタれる玉無し民族は中華人民共和国からの脅しに容易に屈する訳で。
民族浄化も戦争に勝てば正当化出来る、と考えるところは、米国はさて置き日本は先ず出来ないでしょうね。
何はともあれ、日米が自由民主主義国家として存続する為に存亡を賭けて戦争しようとしている時に、反自由民主主義国家との対決を避け、日米に抱き着き、勝ち馬に乗ろうとしている韓国を“信頼”するのはバカのする事ですし、韓国がいつ裏切っても大丈夫なように物事を進めるのが肝要ですね。
意外や意外、尹錫悦韓国大統領は未だに”ロウソク火あぶり”を食らっていないし、
政敵には追い詰められるどころかむしろ追い詰めている。
彼は岸田首相に比べれば有能と言って良いかも知れませんね。
特にあまりにもひどかった前任者の尻ぬぐいをしていると言う点では。
抱きつかれる日本側としてはたまった物ではありませんが、
「オールドメディアが最後の力を振り絞り、騙せる世代を騙している」と言うハンデは
キツい……
>日本が国連軍司令部に提供する7カ所の後方基地の役割は、北の南侵を遮断する最大抑止要因だ
これって、日本が国連軍に対し後方基地の使用を認めなければ、北朝鮮の南侵に際し「韓国は見殺し」ってことなんですよね。
あからさまな擦り寄りは、生殺与奪の権を封じたい一心なのかもですね。
・・・・・
>日本はパートナー
彼らが謳うパートナーの定義って、「如何なる時も我に尽くし、我を護り、我に見返りを求めない存在」なんですよね。
甘ったれないで欲しい。日本は「君たちのお母さんじゃない」んですから・・。
尹錫悦大統領の意図と方向性については、これまでのところを見る限り、特に疑うべき理由はありません。つまり、彼が韓国を自由主義陣営の一角に留めようとしていること、そして日米韓という枠組みを機能させるために、対日接近を図ろうとしていることなど、ある意味マトモな方向を目指そうとしていることは明白です。
しかしながら、依然として野党に国会の過半数以上を握られていることから、如何に韓国大統領の権限が強大であろうと、できることに限界があるということも確かです。尹大統領は前政権の悪しき遺産の清算に努めてますが、前政権下で成立した無茶苦茶な法律をどうすることもできません。なので、尹大統領としては、来年4月の総選挙に何としてでも勝たない限り、その制約から逃れられません。元々、尹大統領は、大統領選の際も0.1%の票差という僅差でしか勝てていないため、支持基盤も盤石には程遠いと思われます。
ということで、尹大統領がマトモな方向を目指しているということ自体は、揶揄したり否定したりすべきとは思いませんが、一部の方が言われるように諸手を上げて歓迎し、全力で支援すべきとも思いません。そこで日本としては、国益を損ねない範囲で(*)、尹大統領の意図を阻害しない程度に構えておけば十分かと思います。
そのように考える理由としてはこんな感じです。
・とにかく来年の総選挙で勝てなければ、自由主義国たるべしという尹大統領の意図を継続することも難しくなるが、現状韓国世論の動向を見る限り、与党勝利確実というほどでもない。もし与党敗北ならば、尹大統領は3年の任期を残してレイムダックとなりかねない。
・たとえ与党が勝ったとしても、次期大統領選の帰趨は不明であり、次期大統領が尹大統領の意図を継承するとは限らない。仮に従北左派が後継者となったら、尹大統領の政策は全部ひっくり返されるだろう。
・現在、韓国経済は総体的難局に見舞われつつある。その原因はこれまでの政権、特に前政権の出鱈目な経済運営にあるが、実際に国家破綻あるいはそれに近い状態になった際、韓国国民は現政権の責任として追及するだろう。そうなれば、尹大統領が任期を全うできるかどうかも危うい。
以前もコメントしましたが、私としては、今や韓国は日本にとって「どーでもいー国」であると認識しています。関係が多少良くなろうが悪くなろうが、ほとんどと言って良いほど影響がないからです。ただ、再々コメントしているように、米韓同盟が名目的にでも生きている限り、日本から断交を通告するという選択肢は存在しませんし、アメリカが固執する日米韓という枠組みを積極的に破棄すべき理由もありません。さらに、あくまでも一般論として「隣国との関係は悪くないほうがいいんじゃないかなぁ」を考えあわせると、ある程度の宥和的な対応も必ずしも非難すべきとは考えません(程度の問題はありますが)。
いずれにしても、来年4月の総選挙の結果が出るまでは、当面静観することで十分であり、さらにその上で、後任がちゃぶ台返しをしても困らない範囲での対応ならば許容範囲と考えます。尹大統領の意図を過大評価することも過小評価することも、どちらも日本の国益を損ねかねないのではないかと思います。
(*) 岸田政権の対韓政策&措置が「国益を重大に損ねた」とする見解には全く同意しません。確かに、いくつかの措置についてはけして賛成はできませんが、「国益棄損」などと評するほど致命的な問題であったとは考えていないからです。上記のような考えを踏まえ、「いささか拙速ではなかったか」というのであれば、十分首肯できますけれども。
社長がまともな事言っているから 社長は信用してもいいけれど
従業員も役員の半数以上もヤバイ人しかいない企業と
付き合えるわけないじゃん
龍様
尹大統領の意図と方向性の分析自体には異論はないのですが、私は岸田の一連の譲歩はやはり国益を損ねたと考えてます。何か譲歩するならそれに見合ったものを日本も韓国から取るべきだからです。現状、対北朝鮮では利害が一致しているので日米韓協力は上手くいってます。しかし、北朝鮮は日本にとって軍事的にはたいした脅威ではないので、日本が譲歩してまでやることではないと思ってます。対中国では韓国はついて来れないので、譲歩の対価がただの関係改善なら割に合いません。むしろ自称徴用工問題が譲歩の対価という形になっており結局は韓国のゴネ得を許す形になったのではないでしょうか。
尹大統領の言うことはけっこうまともですが、部活や国民がついて来れるのかはなはだ疑問です。
龍さん
ご無沙汰しております。
一点気になったのですが、
>彼が韓国を自由主義陣営の一角に留めようとしていること、そして日米韓という枠組みを機能させるために、対日接近を図ろうとしていることなど、ある意味マトモな方向を目指そうとしていることは明白
彼がそう「言っている」ことは明白なのですが、何か具体的な政策・実績からそれが裏付けられたことがあるか、その点が心配です。
どちらかと言うと彼の国の「行動」は自由主義陣営や日米韓の枠組みの「いいとこどり」だけ狙っているように見えることが多いように見えますので。
そこは彼の脆い政権基盤がそうさせるのだと言われるのかもしれませんが、目に見える形で証文を見せてくれないと、彼の言葉を前提に日本の対応を考えるのはいささか心配です。
突然のコメント、ご容赦くださると幸いです。
昨夜久しぶりに実弟と呑める機会がありました。
弟は普段から自分が正しい考え方をしていると自負していながら呑む席では、毎回の如く持論のお披露目会になります。
聞いていてなるほどと納得できる話もあれば、ちょっとそれは違うかなという話もあり、楽しい呑み会になります。
しかし時々、過去に私が起こした問題が発端で場が荒れてしまうことが残念でなりません。これまでの禍根を解消すべく謝罪など繰り返してきましたが、私の至らぬ誠意がもとに無駄な努力となりそうです。
人は「私はこうだ」と思うと、論理的に考えているつもりでも認知バイアスにより思考が偏ってしまうのでしょうか。
どの分野に関しても、一貫して素人の量域で過ごしてきた私は、ネット社会でさまざまな情報の中から選り優った情報を知識として蓄えてきました。
全てにおいて100点を取れる人が居るなら素晴らしいと思いますが、そのような人はごく少数ではないでしょうか?
人は「駄目」からスタートして100点を目指す。政治家も国民も「駄目」からスタートして100点を目指す、お互いに叱咤激励しながら日本の将来を明るくできればと思います。
いつも自分に「本当に正しいか」を問いつつ、これからも楽しくブログを拝読させていただきます。
駄文失礼いたしました。
よりによって岸田君だしなあ・・・
国益が吹っ飛んだら権力や利権も一緒に吹っ飛ぶと思うんだけど
政治屋さんとお役人様はその辺どう考えてるのやら
政治家や公務員が、国益では無く、省益、私益を優先しているのが、今の日本の最も大きな問題です。
全力で日本に抱きついて来ていると同時に、日本人に韓国とは価値観を共有している国だと勘違いさせてより騙しやすくするためでしょう。総理自身がコロリと何度も騙されるくらい韓国のこの手の宣伝戦は上手くいっていると思いますね。
朝鮮は戦争で勝ったことが無い。味方に付けば負けフラグ確定です。
それもそのはず、自国の問題で他の大国を引きずり込んで戦わせるだけ
でしたから。都度国土は荒廃。この繰り返し。
どっちつかずの外交は昔からのことで、今はアメリカ側につく方がよいと
いう政権がいるだけの話。
皆さんの意見の様にこの国は信用できないことに同意します。それ以上に
負けフラグが立っている国との協調など不要とも思っています。鈴置さん
言うように、韓国なんぞ不要であると心底思っています。
18日に、日米韓首脳会議があるらしいですが、韓国は北朝鮮核抑止行動以外の案件すべてに、反対もしくは慎重な態度だそうですね。
シンシアリーさんの「これではまるで日米間首脳会議」が、翌日の新聞の一面にふさわしいような。