いまや、ネット広告費はマスコミ4媒体と比べ、約1.3倍なのだそうです。この差は今後も開いていくでしょう。もっとも、こうしたなかで、ウェブ評論サイト『JBプレス』は14日、「子供にネットCMを見せてはならない」とする論考を掲載しています。ただ、非常に申し訳ないのですが、その論考の読んでも、「なぜ子供にネット広告を見せてはならないのか」については、とうとうわからずじまい、といったところです。
目次
ネット広告費>マスコミ広告費
株式会社電通が毎年公表している『日本の広告費』というレポートがありますが、これが大変に興味深いものです。年々、ネット広告の市場が増大する一方で、マスコミ4媒体(新聞、テレビ、雑誌、ラジオ)の広告費はじりじりと縮小を続けているからです。
最新のデータについては依然の『ネット広告費が史上初の3兆円台:マスコミ退勢は続く』などでも説明したとおり、ネット広告はすでに2021年の時点で、マスコミ4媒体を抜いていたのですが、その差は22年には約1.3倍近くにまで拡大しています。
今年も株式会社電通から『日本の広告費』というレポートが公表されました。これによるとネット広告費は史上初めて3兆円の大台に乗る反面、マスコミ4媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)の広告費は約2.4兆円にとどまりました。ネット広告費は昨年、マスコミ4媒体広告費を史上初めて抜いたのですが、今年はさらにその差が拡大し、いまやマスコミ4媒体の市場規模はネットの80%程度になってしまった計算です。日本の広告費世の中にはさまざまなウェブサイトがありますが、当ウェブサイトがひとつこだわっているテーマがあるとすれば、... ネット広告費が史上初の3兆円台:マスコミ退勢は続く - 新宿会計士の政治経済評論 |
図表を再掲しておきましょう。
図表 ネット広告費とマスコミ4媒体広告費の推移
(【出所】株式会社電通『日本の広告費』及び著者自身の手元データをもとに著者作成)
図示すると明らかですが、マスコミ4媒体の広告費はほぼ横ばいで、長い目で見ると、たとえば新聞広告費の市場は急速に干上がっている一方、ネット広告費については右肩上がりであり、上昇ペースは近年、加速しているかの感もあります。
ネットとテレビの逆転は続く
このあたり、テレビや新聞よりも、インターネットの方が、広告媒体としては優れていると考える企業が増えつつある証拠でしょう。実際、すでに『テレビ利権を突き崩す、「テレビCMゼロで増収増益」』などでも紹介してきたとおり、企業によってはテレビCMを全廃し、ネット広告にシフトしている、といった事例も出始めているのです。
しまむらの事例は「アリの一穴」?いよいよテレビ利権の崩壊が始まるのか衣料品大手のしまむらが2021年2月期連結決算で広告費を抑制しながら増収増益を達成したことが、ネットメディア『J-CASTニュース』で報じられました。J-CASTニュースによると、しまむらの企画室は「テレビCMよりYouTubeなど動画広告の方がより低いコストで売上効果も十分あった」と明らかにしたそうですが、こうした動きは他社にも広まるのでしょうか。利権の特徴の3点セットあくまでも一般論で申し上げるなら、「利権」と呼ばれる構造には、個人... テレビ利権を突き崩す、「テレビCMゼロで増収増益」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
もちろん、テレビは依然として社会的に影響力が大きく、『全年代ネットが初めてオールドメディア超え=利用時間』などでも触れたとおり、総務省『情報通信白書』に掲載された調査によれば、とくに高齢層を中心に、テレビ視聴時間はネット利用時間を依然として上回っています。
ついに全年代で、テレビ、新聞、ラジオという「オールドメディア」の総利用時間が、ネット利用時間に抜かれました。総務省が『令和5年版情報通信白書』本体に先行して公表したデータによれば、これによると平日のネット利用時間は175.2分で、テレビ、新聞、ラジオの合計167.8分を7.4分上回りました。史上初めて、全年代でネット利用時間がオールドメディア利用時間を上回ったのです。オールドメディアの退潮ウェブサイト7年目先日の『ウェブサイト7年目の御礼と世の中が良くなる「前兆」』でも説明したとおり、当ウェブサイトは2016... 全年代ネットが初めてオールドメディア超え=利用時間 - 新宿会計士の政治経済評論 |
ただ、全年代でネット利用時間が伸びている事実などを踏まえるならば、社会全体でいずれネット利用時間がテレビ視聴時間などを上回ることは、時間の問題でしょう。
こうしたなかで、ネットと広告は、もはや切っても切り離せなくなっていることは、間違いありません。
実際、当ウェブサイトも含め、私たち一般人が無料で閲覧できるサイトの多くは何らかの広告配信システムを利用していますが、これらの広告システムのなかには、ときとして、私たちにとって「閲覧したくない」というものを配信してしまうことがあることもまた間違いありません。
JBプレス「ネットCMを子供に絶対見せてはならない」
こうしたなかで、ウェブ評論サイト『JBプレス』が14日、こんな記事を配信しています。
ネットCMを子供に絶対見せてはいけない3つの理由
―――2023/08/14 11:02付 Yahoo!ニュースより【JBpress配信】
記事は4000文字を超える長文ですが、記事タイトルでも明示されているとおり、「ネットCMは3つの理由により子供に絶対に見せてはならない」、などと主張するものです(子供にネットCMを見せないためには、そもそも子供にネットを見せられない、ということになりそうですが…)。
記事は文字数が大変に多いのですが、できるだけわかりやすく要約すると、その理由は①誇大広告、②ネットは無法地帯、③生成AI、だそうです。
このうち①誇大広告や③生成AIについては、私たち一般人も目撃事例があるでしょう。ネット上では明らかな誇大広告、詐欺広告、インチキ広告っぽいものがあふれていることは間違いなく、また、AIがいい加減な文章などを生成している事例が問題だ、というものです。
ただ、少し厳しいことを申し上げるなら、この記事は「論考」と呼べる代物ではありません。
ネット広告に明らかに問題があるものが含まれていることは間違いありませんが、それはべつにテレビ、新聞広告などでも同じことはいえます。
もちろん、リンク先記事の執筆者の方が「ネット広告の方が新聞・テレビ広告よりも問題が多い」とおっしゃっているのであれば、まだ理解できます。ただ、もしもそう主張するのであれば、その証拠を数値で出していただきたいところでもあります。
②の部分については理解に苦しむ記述が…
さて、②の「ネットは無法地帯」のくだりに関しては、正直、何やら理解に苦しむ記述が多々出てきます。
「ユーチューブやソーシャルメディアを『バン』される、という表現があります。アカウントを停止されてしまう事態を指します。これ、どこがやっているか考えてみてください。国や警察ではありませんよね?一企業、下手したら外国籍の企業が日本国内で国民が発信している内容について、勝手に停止など生殺与奪の全権を握っている」。
はて、そうでしょうか?
YouTubeやX(旧Twitter)、Facebookなどは、あくまでも私企業が運営しているものであり、したがって、その企業が設定しているルールに反した場合は「バン(禁止)」されても仕方がありません。また、極端な話、それが使えなくなったところで死ぬわけではありません。
というよりも、民間企業が経営するスポーツクラブなどでも、通常は「利用規約」などが設けられているはずですし、あなたが利用規約に反した場合、クラブ運営者はあなたの施設の利用を禁止することがあります。「国や警察でもない人があなたの利用を禁止する」という事例など、いくらでもあるでしょう。
これについて著者の方は、こう述べます。
「この、実はとんでもない状況について、きちんと論じるものをあまり多く目にした記憶がありません」。
そもそもこれ自体が「とんでもない状況」なのかどうか、よくわかりません。
もちろん、「GAFAM」などと呼ばれるネット企業が社会的に大きな影響力を持ちすぎる問題などは、以前からよく指摘されるところではありますが、これと「その企業の規約に反して利用を差し止められること」はまったく別問題です。
そもそも「無法地帯」はテレビの方では?
ただ、それ以上に理解に苦しむのが、民放が「『放送法・電波法』の規制を様々な形で受けている」、とする主張でしょう。そもそも放送業界(NHK、民放含む)が放送法(とくに第4条第1項)の規定を守っていないことは明白だからです。
放送法第4条第1項
放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
犯罪行為を正当化するような番組を作って放送してきた、みずから「公共放送」だと騙るNHK(『違法行為に手を染めるNHKを冷ややかに見る一般国民』等参照)を筆頭に、テレビ業界は基本的に放送法の規定を守っていません。
NHK問題の本質は、「不視聴運動を行ったとしても、NHKを倒産させることができない」という点に尽きます。NHK自身、放送法で受信料収入を事実上、保障されているからです。こうしたなか、例の「不法滞在を美談にする」というドラマの放送が行われたそうです。こうしたドラマを放送すること自体、違法性の疑いが極めて濃厚です。しかし、それと同時に、明らかに問題がある番組が放送されようとしていても、国民がその差し止めを求めることすらできないということ自体も、極めて大きな問題です。経済学で見た日本経済学の大原則... 違法行為に手を染めるNHKを冷ややかに見る一般国民 - 新宿会計士の政治経済評論 |
このように考えていくと、「ネットはテレビと異なり無法地帯だ」、などと言われても、なんだか困惑してしまいます。無法地帯はこの場合、むしろテレビの方だからです。
いずれにせよ、どうしてネット広告を子供に見せてはならないのかは、最後までよくわからなかったというのが正直なところですが、ネットを敵視したところでネットの伸長を止めることはできないことだけは間違いなさそうです。
View Comments (27)
私は実際の詳細の仕組みまで理解はしておりませんが、「ネット広告」「ターゲッティング」あたりで検索をすればインターネット広告の大体の仕組みは理解できるかと思います。
視聴者に表示される広告は、それぞれの視聴履歴・年齢層・性別・趣味・購買力etcetcの収集情報により、効果的と思われる商品が選択表示されるものと理解しています。
表示原因のすべてがコレまでの視聴者の閲覧履歴等の趣味とは言いませんが、JBプレス記者氏に表示される広告に問題のあるネット広告が表示されるならば、要因は記者氏の閲覧履歴によるものが大きいのではないかと推察します。(もちろん全て記者氏の趣味嗜好と言うつもりはないですし、記者という職種上刺激あるコンテンツを検索する必要性も合ったかも知れませんが)
※そういえば昔、本サイト読者投稿欄のコメントに「当サイトの記事は良いが表示される広告が記事内容と乖離していて不快だ。表示広告を見直したらどうか?」という意見をしていた匿名氏もいた気もしますが、彼の場合も同様の経緯ではないかと推察していました。匿名コメント故に返信する気になれずスルーいたしましたが…
記事のライターは伊藤乾と言う人らしいですが、ググってもどういう人なのか
分かりませんでした。一体何者?
「ネットの広告はいい加減な物だらけ!」と言う主張だけなら分かるのですが、
いかんせん信用がどんどん落ちている既存マスコミの方を比較して持ち上げる記事に
なっているのが残念ですね。これが「ネットを生活から切り離す訳にはいかない、
だからこそしっかりとした教育を」なら諸手を挙げて賛同できるでしょうに。
ひょっとして、刺激的なタイトルをつけないと掲載してもらえなかったのか?」
それとも既存マスコミのヨイショをつける事を義務付けられているのか?
そんな風に邪推したくなる記事でした。
雪だんご様
>記事のライターは伊藤乾と言う人らしいですが、ググってもどういう人なのか
分かりませんでした。一体何者?
漢字変換を間違えたので、ヒットしなかったんですね。ずいぶん昔から、旺盛なネット活動をしていた人です。JBプレスの著者紹介欄の記述を貼っておきます。
>伊東 乾のプロフィール
いとう・けん 作曲家=指揮者 東京大学教授(作曲・指揮・情報詩学研究室/生物統
計・生命倫理研究室/情報基礎論研究室)東京大学ゲノムAI生命倫理研究コア統括。ベ>ルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督。グローバルAI倫理コンソーシアム理事。
(以下略)。
学者にして音楽家。多岐にわたる学問の専門分野も、一般人にはどういうものか、ちょっと理解できない、ご本人の頭の中でだけは、ごく自然に繋がっているという類いのものでしょう。国際的活動も積極的になさっている様子。多能の才人、マルチ人間といったところの方と認識しています。
発想、論理展開のユニークさが面白くて、以前はこの方の評論によく目を通していましたが、確たる論拠もないままに、俺が言ってることは正しいんだ臭が鼻について、最近は余り読まなくなりました。あくまで私の印象です。
おお、JBプレスの方で紹介していましたか。ありがとうございます。
作曲家……?ゲノムAI研究……?
なんだか「ネット広告」とはかなりかけ離れた分野に思えますね。
肩書ですべてを判断するべきではないし、専門家だからと言って妄信できる訳でも
ありませんが、それでもここまで「違う」感があると……う~ん。
伊江太様
>確たる論拠もないままに、俺が言ってることは正しいんだ臭が鼻について、
全く同じ感想です。大方、第2段落辺りから、東大自慢、自分自慢が始まり、それを基調として最後まで続いて、結局何が言いたいのか分からないですね。
雪だんご様
>だからこそしっかりとした教育を
全く同じ考えです。マトモな現実認識を持っているなら、解決策はこれしかないことは自ずと分かるはずです。しかも、若者の言語の乱れはネット以前からあったことです。また、どうやったって、時代の流れは止められないのだから、その流れの中でどういう対処をするかを考えるのが、いわゆる識者の仕事だと思うのですが、この人は、識者とはどういう仕事をすべきが全く分かっていないですね。これで、識者面されても、その方が社会に有害ですわなぁ。
掲載広告については、適正な罰則規定等により、自浄作用が働くものと思っています。
ネット広告を子供に見せたくないのは、「お父さん(お母さん)の密かな嗜好が明るみに出る」からですね。きっと・・。
・・・・・
【夕刊】朝日新聞記者、ウェブ広告のトラップにかかる?
https://shinjukuacc.com/20180624-02/
↑こんな感じにですね。
カズ様 情報提供ありがとうございます
すでに新宿会計士様が詳細な記事に纏めておられたのですね。しかも日付を見るに5年前w
つまりJBプレス記者氏も、↑の私も5周遅れということですかねw
そんなことないですよ。
こんとん様のコメントの”ターゲッティング”の言葉を見て、「そういえば!」と思い出したんですから。
ターゲッティング広告は避ける方法はあるんですが、先ず、クッキーを削除する事ではないでしょうか?
簡単に言うと、オールドメディアのオジサン社員(?)の意向に合わせるために、ネットを規制しなければならない、ということでしょうか。
毎度、ばかばかしいお話しを。
テレビ:「テレビの無法地帯は良い無法地帯で、ネットの無法地帯は悪い無法地帯だ」
ありそうだな。
とあるフェミニスト(そこそこ著名な人物らしい)が「ネットの広告はエロまみれだ」と文句を言っていたのだが、実は男の悪口を言うためにそっち系のサイトばかり見てたのでターゲッティングが効いてそうなったのだとか。
でも広告はともかくネットの通販やフリマはリスキーでデンジャラスだと思ったり。
JBプレス自身がこういう何のためにもならないどころか間違った方向へ誘導する様な内容だから見るべきではないという事を身をもって訴えているという事ですね。
素晴らしいですねwww
何らかの裏の意図をもった発言なのか?
そうでなければ、テレビが出現した時に「一億総白痴化」といってたのと同じじゃないの?
sqsqさま
昔:「テレビなんて見るとバカになる」
今:「ネットなんてするとバカになる」
ということでしょうか。
ということは、テレビに反対していた知識人(?)が、テレビに出演するようになったように、ネットに反対している知識人(?)も、(間に他の人間を挟まない)ネットで発信するようになるのでしょうか。
>かつてワープロが普及し始めた頃、私自身「読めるけれど書けない」漢字熟語が増え、恐怖した経験があります。
>日常的な生活慣習はいがいなところから、私たちの日本語を破壊していく可能性がある。
「恐怖の体験」の後、日本は現在どうなってると言うと、今も同じで(私も含め)読めるけど書けない大人はたくさんいます。日本語は破壊されたんですかね。脈絡がみえません。
>現在でも、例えばCM器用しているタレントに問題が発生したら、サッと外してしまいますね。
「CM器用」。日本語の破壊は自分自身の問題のことを言ってるんでしょうかね。
伊東乾氏が科学ネタを紹介する記事はたまに面白いものもあるんですが、この記事は「やっつけ感」がかなり酷いです。
まあいつも、自身の属する東大を強調した記事を書いてらっしゃいますが。(笑)
結局のところ、広告収入に依存するというビジネスモデルを採っている限り、既存メディアであろうがネットであろうが、本質的には差はありません。そして、ネットには、電波法・放送法という規制の枠組みすら存在しないというのも、単なる事実であるにすぎません。また、たとえ既存マスメディアが放送法・電波法の枠組みから逸脱している(かもしれない)としても、それがネット上の「荒野」を正当化することはできません。「規制を守らないものがいる」ということと、「そもそも規制そのものが存在しない」というのは全く別物だからです。もちろん、ネット上の広告だって、消費者保護関連の法は適用されるはずですが、媒体側がそのことを意識して広告を流しているかどうかという違いはあるでしょうね。また、広告配信サーバが国外に設置されていた場合に消費者保護はどの程度機能しうるのか、ちょっとよくわかりません。
ということで、別に見たいとも思っていない「広告」を半強制的に見させられる、そしてその「広告」配信が媒体にとって大きな収益源となっているという点では、既存マスメディア(特にTV)であろうと、ネットであろうと何も違いはありません。そして、規制の枠組みすらないネット上の「広告」のほうが、より如何わしく、悪質低質な「広告」を配信する可能性があるという点も否定できないでしょう。さらに、ネット上の「広告」の場合、媒体の主の意向に関わらず、プラットホーム側の都合で「広告」が配信される、つまり媒体の主が「広告」の内容に関して関与できない場合もあるということも指摘できるでしょう。
# この文章を書いている現在、ブラウザ上には「チケットぴあ」の広告が映し出されてます
# が、新宿会計士様の意向でそのような「広告」が出ているわけではないはずです。
このように考えると、当該コラム著者の主張「子供にネット広告を見せるな」というものには、妥当性ゼロとまでは言えないものの、必ずしも賛成できません。なぜならば、嘘やフェイクが出回っているのは、何もネット上だけではないからです。しかし、それはネット上に嘘やフェイクが溢れていないことを意味するわけではありません。そして、ネット上のウソやフェイクに騙される危険性があるのは、何も判断能力未熟な子供だけに限った話ではないからです。
別のところでもちょっと触れましたが、chatGPTなどの技術や画像生成AIの技術がさらに進めば、ネット上に真偽判定が極めて困難な情報が氾濫するであろうことは確実です。そしてそのような情報に煽動されたり、信じ込んだりする人もまた増えることでしょう。そうなってしまえば、いくら「広告」の危険性を説いても、意味があることとは思えません。
なお、既存マスメディアの衰退とネットの伸長は、止めようもない流れだと考えています。そして、そのこと自体の善悪を考えても意味はなく、単にそうなっていくというだけのことです。なので、ことさら既存メディアの衰退を喜んだり悲しんだりするつもりはなく、同時にネット普及の進展を必ずしも喜ばしいことだとも考えません。ただ、情報源の爆発的拡大は、個人の情報リテラシー向上がより一層強く求められるようになるでしょうし、さらには個人レベルではカバーしきれなくなるほど真偽不明の情報の氾濫に曝されるようにもなるだろうと予測されるというだけですね。繰り返しますが、そこに良い悪いは関係ありません。ただそうなっていくというだけのことです。
かつて、隆盛を誇っていた新聞は、一定機関に阿る報道を連発で読者の信頼を失った、地上波テレビ放送はチャンネルの多角化で良質な番組が姿を消し、同じ出演者が幅を利かせて庶民に飽きられた。週刊誌は文春がたまにスクープを飛ばしはするが下らない雑誌が多すぎる。読者や視聴者を置き去りにした現状はネットを批判した所で解消はしない。努力を怠ったいまの姿は自業自得としか言いようがない。若い人が増えてくれば、報道媒体の未来は暗い。