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松川るい氏ら「物見遊山」疑惑と「スカスカ日程」報道

今度は「スカスカ日程」です。先週頃から騒がれ始めた、自民党の松川るい・参議院議員による「パリ物見遊山」疑惑に関連し、またもや「続報」が出てきました。いわく、問題のパリ出張では、研修時間は事実上、たった6時間しかなかったというのです。これを鵜呑みに信じるかどうかはともかく、さすがにここまで次々と「ネタ」が出て来るということは、誰かが意図的にリークしている可能性も疑うのが自然でしょう。

2023/08/07 08:12追記

記事のカテゴリー設定を誤っていましたので修正しています。

松川氏の「物見遊山」疑惑

自民党の松川るい・参議院議員らの「物見遊山」に関する話題については、先週の『支持率下げ止まりも…松川議員がパリで能天気ツイート』を皮切りに、当ウェブサイトではこれまでに何度となく取り上げてきたとおりです。

一見すると取るに足らないはずのこの話題を、当ウェブサイトで三々五々取り上げているということは、それだけ世間的な反響が大きい、という意味でもあります。というよりも、この問題に関しては、一般に保守論客と見られる人たちからも、松川氏らに対する批判が殺到している状況にあるのです。

この点、くどいようですが、松川氏ご本人を含め、参加者らの説明が正しければ、今回のフランス出張はあくまでも党としての業務の一環であり、今回の出張旅費についても基本的には参加者本人たちの自腹に加え、自民党の負担金などで賄われており、「公費」は使われていません。

(※ただし、自民党には国から政党交付金による助成が行われているため、自民党からの支出も間接的には公費のようなものではないか、といった批判があることについては申し添えておきたいと思います。)

したがって、彼らの出張が私たち国民の税金を浪費するようなものであるとの批判は当たりませんし、ましてや何らかの違法性がある、というものでもありません。

しかし、それと同時にもうひとつ指摘しておきたいのは、ここまで自民党に対する逆風が強くなっているタイミングで、松川氏を含めた国会議員らがエッフェル塔の前で妙なポーズを取り、その姿を写真に収めたうえでSNSにアップロードすることの、政治的なインパクトです。

このうち、例のポーズの写真はあまりに批判が強かったためか、すでに削除されたようですが、それでも松川氏のそれ以外のツイートなどを眺めていると、肝心の研修の具体的な中身よりも、「リュクサンブール宮殿の美しさ」、「エッフェル塔前での記念撮影」など、観光に関する話題の比重の方が目立ちます。

「子連れ出張」疑惑、観光疑惑

しかも、その後の報道では、松川氏が(おそらくは小学生の)次女を旅行に同行させていた、などとする報道も出て来ています(『松川るい氏「子連れ訪仏」に自民党はどう対処するのか』等参照)。

また、同じ自民党の参議院議員である青山繁晴氏は、人気インターネット番組『帰ってきた虎ノ門ニュース』に出演した際、本当に忙しい出張では可能などをしている余裕はない、などと述べています(『青山繁晴氏「専門家の出張では観光している余裕なし」』等参照)。

このあたり、不肖ながら山手線の駅名を冠した怪しい自称会計士の場合も、サラリーマン時代にはずいぶんと多くの出張に出かけたクチです。

こうした経験に照らすと、青山氏のいう「忙しすぎて観光している暇などない」というのには、若干の誇張があるかもしれません。遠方の出張の場合だと予備日を設ける(あるいは休日を挟む)ことも一般的だからであり、とくに日程の都合上生じたスキマ時間を使って予備日や休日を使って観光をしても良いでしょう。

ただ、さすがに自身の出張に家族(たとえば未成年の児童など)を連れていくという事例は、寡聞にして存じ上げません。自分自身で起業するなどしている人ならばともかく、通常の会社員や公務員で、公用による海外出張に家族を連れていくという事例は、決して一般的ではないでしょう。

なお、この「子連れ出張」に関しては、もうひとつ、看過できない問題点があります。報道によれば、「公務(?)」の時間中、松川氏は次女の面倒を日本大使館に丸投げしていたという可能性が濃厚だからです。

そして、そもそも松川氏は参議院議員という「特権的な立場」を持っている人物であり、また、同氏の夫の新居雄介氏は本省高官(外務省の国際情報統括官)ですので、これは「夫が本省高官、妻が参議院議員」という「エリート夫妻」による、その職権ないし地位を悪用した公私混同そのものに該当しかねません。

日本大使館の人件費も、また、次女に対して支給された(かもしれない)食事、飲み物、おやつも、タダではありません。れっきとした私たち日本国民からの税金から支払われており、その意味では公金が支出されているのだ、という言い方もできます。

このあたりは野党がしっかりと自民党を追及するのかどうかにも注目しておきたいところです(※もっとも、最大野党である立憲民主党などに、与党の「物見遊山」を批判する資格があるのかどうか、といった論点もあり得るため、あまり期待はできませんが…)。

出張日程スカスカ?研修は「たった6時間」

こうしたなかで、本稿ではもうひとつ、取り上げておきたい話題があります。

今井絵理子・松川るいが参加した「パリ視察」全スケジュール…研修はわずか6時間、セーヌ川クルーズ、シャンゼリゼで買い物

―――2023/08/06 06:01付 Yahoo!ニュースより【SmartFLASH配信】

光文社の写真週刊誌『フラッシュ』のウェブ版が配信した記事によれば、松川氏や今井絵理子・参議院議員らが参加した「パリ視察」の全スケジュールを同誌が入手。研修時間はわずか6時間で、パリ観光などがてんこ盛りだった、などとする趣旨の内容が記載されています。

本誌が今回入手した旅程表によれば、事実はまったく異なる。『令和5年女性局フランス研修 研修ノート』と題された冊子には、出発(7月24日)から帰国(28日)まで3泊5日の日程が記載されているのだが、純粋な研修に充てられていたのは、たったの6時間。ガイドツアーや、在仏日本大使らとの食事会を含めても、10時間にしかならないのだ」。

その具体的な内容については、リンク先記事でご確認ください。要するに「実働6時間」、というわけですが、これが誇張なしの事実なのだと仮定したら、まさに「スカスカ日程」といわざるを得ません。

これに関し『フラッシュ』は元自民党職員で政治アナリストの伊藤惇夫氏のこんなコメントを紹介しています。

これだけ自由時間がある視察を見たことがありません。この日程を決めた人物は、視察の目的がこれで果たせると、なぜ考えたのか。団長の松川さんは、党費を使ったことは認めているので、党員に説明する責任があります」。

出張のテーマ設定自体が不適切?

この点、『フラッシュ』が報じた内容については正直、私たち一般人には検証できないものであるため、これをどこまで信頼して良いかという論点はあります。

ただ、もしこの『フラッシュ』の報道が事実だったとすれば、おそらくその理由は、最初からわざと「余裕がある日程を組んだ」のか、それとも単純にフランスのカウンターパーティとの面談が入らなかったのかのいずれかでしょう。

ただ、3泊5日というのは、一般論ですが、決して「最初から余裕がある日程を組める」ような期間ではありません。想像するに、松川氏ら一行には、ほとんどアポが入らなかったのではないでしょうか。

もしその見立てが正しければ、そもそもこの研修自体、わざわざ行く意義がなかった、ということです。テーマ設定が不適切だったからなのか、松川氏らがフランス側からあまり重視されていなかったからなのかはわかりませんが、本当に必要な出張であれば、フランス政府ないしフランス議会からも面会の申し込みが殺到したはずです。

このあたり、たとえば外交・安全保障の観点からは、NATO東京事務所開設に後ろ向きで中国にも親密な姿勢を示しているエマニュエル・マクロン仏大統領に対し、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の重要性を訴えに行くという議員外交は、非常に有意義です。

その意味では、テーマ自体が不適切だった可能性を疑うのが自然でしょう。

松川氏の人物評

ちなみに著者自身は報道とはまったく別ルートで、松川氏に関する、非常に辛口の人物評などをいくつか入手しています。

こうした「辛口の人物評」が正しいかどうかについては、とりあえず断定は避けたいと思いますが、こうした一連の人物評自体、対韓外交に関する見解を含めた松川氏自身のこれまでの詭弁の数々などと、決して矛盾するものとは言い切れません。

とくに『自称徴用工で対韓譲歩促す松川るい議員のインチキ理論』や『松川るい氏のツイートに見る「日韓関係改善論」の詭弁』、『「徴用工解決で安保協力が進む」という松川議員の詭弁』などでも指摘したとおり、少なくとも外交・安全保障に関しては、安倍政権の方針などとも整合していないのです。

それはともかくとして、松川氏を巡って「子連れ物見遊山」を含めた続報が次々と出て来ているのを見ると、これらについては週刊誌などのでっち上げではなく、どちらかというと、「自民党内にこれらをメディアに次々とリークしている人」の存在を疑った方が自然ではないでしょうか。

もちろん、誰かが何らかの意図を持ってそれをリークしているのだとしたら、その目的は自身の政治的な立場を強めるためなのか、それとも岸田「宏池会」政権の暴走により、自民党が岩盤保守層の支持を失いつつあることに危機感を覚えている人がやっているのかはわかりません。

このように考えていくと、自民党内でも「わかっている人」はそれなりに危機感を覚えているでしょうから、松川氏の「物見遊山」を積極的・小出しにリークしているのかもしれません。

有権者は自民党を「与党でない状態」にする権利を持っている

もっとも、『政治パフォーマンスとしての「岸田首相訪朝」の危険性』でも指摘したとおり、現在の自民党には(虚実取り混ぜつつも)さまざまな「スキャンダル」「疑惑」がうごめいており、こうしたなかでの「松川物見遊山疑惑」は、次の選挙で自民党に取り返しがつかない打撃が生じる可能性もあります。

(※ただし、これらのうちの「木原誠二問題」に関しては、さすがに「第二もりかけ問題」のたぐいの問題ではないかと思うのですが、この点については昨日の議論をご参照ください。)

自民党関係者の「不祥事(?)」が続いています。ここで大事なことがあるとしたら、岸田文雄首相自身にとって、解散するタイミングがますます難しくなってきたことは間違いなく、そうなると、(一部で報じられているように)北朝鮮問題などで無茶な逆転ホームランを狙おうとするかもしれません。ただ、岸田首相には政治家としての知性と素養が欠落しているため、下手に拉致問題で北朝鮮と直談判しようものなら、良いように利用されるのが関の山でしょう。ちょうど、対韓外交で国益をドブに捨てたようなものです。サマリーマイナンバー...
政治パフォーマンスとしての「岸田首相訪朝」の危険性 - 新宿会計士の政治経済評論

いずれにせよ、くどいようですが、今回の松川氏らの出張が自民党の党務の一環として行われており、かつ、自民党がそれを認めているのであれば、彼らが何をやったところで問題はありません。もし本件についても、自民党が「あくまでも党務だ」と言い張るのならば、それは党務なのです。

ただ、それと同時に自民党が知っておくべきは、私たち一般有権者が自民党を「与党」でない状態にしてしまう権限を留保している、という事実です。

おりしも先日の『自民党「お盆明けに岸田おろし」の流れは発生するのか』では、長谷川幸洋氏らが主催するインターネット番組で、産経新聞の元政治部長である石橋文登氏が述べた内容を、「非常に興味深い」として紹介しました。

石橋氏の見立てがすべて正しいとは限りませんが、やはり日本を代表する「保守メディア」の最前線で政局を見てきた人物だけあって、それなりに説得力はあります。

私たち一般有権者は、自民党の説明を聞いて、それが妥当かどうかを判断し、「やっぱりそれはおかしい」と思ったときには、次回選挙では自民党ではなく、いま話題の「第二自民党」(?)に票を投じることだってできるのです(それが日本にとって良いことかどうかは別として)。

その意味では、倍旧の自民党には緊張感を持っていただく必要がありますし、自分たちの政党の「トップ」が本当に「彼」で良いのかどうかを含め、党の在り方を真剣に考えていただく必要もあるでしょう。

自民党が危機感を持てるのかどうか――。

この点はとくにこれから1年あまりの間、私たち有権者が高い関心を持つべき論点のひとつではないでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (29)

  • >なお、この「子連れ出張」に関しては、もうひとつ、看過できない問題点があります。報道によれば、「公務(?)」の時間中、松川氏は次女の面倒を日本大使館に丸投げしていたという可能性が濃厚だからです。

    元記事には『「党本部は、報道で初めて松川氏の次女が視察に同行していることを把握したようです。松川氏は次女の渡航費について帰国後、党に実費を追加で支払うことになったといいます」(自民党関係者)』という箇所もあり、団長である松川が立場を利用して私利私欲を満たそうとした、って可能性もありますね。

    • 松川るい・参議院議員(自民党 女性局長・外交部会長代理・2025年大阪・関西万博推進本部 事務局長 等自由民主党女性局長)政策なんかあまりなく
      比例でしか当選できないのでは?
      今井絵理子・参議院議員(女性局長代理・広報戦略局長代理・文部科学部会長代理)は宴会でSPEEDばかりしているのかな。

  • 佐々淳行氏の「香港領事動乱日誌」の時代のテイク・ケアから半世紀経っても変わらないんだなぁ、と感じます。本件、女性のぶん行状も"上品"なのでしょうが.....

  • 記事のエントリー場が普段の所ではないので、最初気づきませんでした。
    大勢が集まれば玉石混交、石も混入してしまうのは仕方ない部分もありますが、真摯に真面目に仕事している連中の邪魔するな!と強く思います。

  • この記事、読者雑談の通常の位置にアップされています。そして、読者雑談の表示が無くなっています。

  • 危地田「増税の必要性を確保するため各部署に無駄使いするよう要請しました」

    • >増税の必要性を確保するため各部署に無駄使いするよう要請しました

      この指摘は軽口ではなくて実態を言い当てているのではないかと。
      すなわち「こぉーんなに、政府も議員もがんばっているのだよ、だから政権を褒めてちょうだい」点数稼ぎにきゅうきゅうとした人生を送って来た首相どの心理構造はこれです。

  • 出発7月24日JAL便朝8時25分、帰国28日15時45分着で計算すると80時間の旅程。
    東京、パリは現在ロシアが空域制限しているため14時間かかるらしいので機中で28時間。移動を含めてパリの空港で3時間、合計31時間。残り49時間。そのうち現地での3日の睡眠24時間とすると残り25時間。朝食等の時間を差し引くと20時間か?
    10時間の仕事を差し引くと自由時間10時間。これを現地での3日間でどう割り振るか。

    定番観光地を2つ、3つも回れば使い切る。
    これをどう考えるかだね。

    • >>これをどう考えるかだね

      これは、全くの無駄で意味不明な行動と考えますね。
      たったの20時間の時間の為に、フランスへ何しに行ったのか?
      仕事時間もフリーの時間も中途半端。
      今の時代、こんな無駄な時間の使い方する人間がいるなんて。こんなんじゃ、働き方改革なんて出来る訳もないが、元々働いていないから、時間の使い方も分からないのか?辻褄合わせの仕事?しかしてないから、時間も辻褄合わせみたいな使い方しか出来ないようです。
      本来、こんな輩は論評外ですが、ね。

  • 外務省出身者に限らず「官僚」は皆能天気だよ。
    外へ出ると羽目を外す「農協」の団体と変わらん。
    舞い上がっての「SNS投稿」など見るも無残。
    雉も鳴かずば撃たれまい。
    バカしかいないwwwwwww

    • >>舞い上がっての「SNS投稿」など見るも無残。
      雉も鳴かずば撃たれまい。

      本当にそうですね。
      海外勝手に行ってればいいものを、何故、お上りさんみたいな写真をアップするのか?その写真、痛くて見ていられないです。今時、海外行った位で舞い上がるなんて、本当に見る方が恥ずかしくなります。
      向こうの重要閣僚との2ショットなら、価値もありますが。

    • この人の頭の悪さは
      スシローでしょうゆ差し舐めてSNSに投下した少年と同レベルです
      こんな程度の人物が議員をやってる時点で許しがたいです

    • おそらく政治活動報告のつもりで上げたのかもしれません。あるいは一般人のやるSNSと同じ感覚で上げたのかもしれません。政治家なのに政治センスが無い残念な方々です。

  • これ、国会議員は4名であとは地方議員と聞いたのですが本当でしょうか?政党助成金は国会議員の数に合わせて支給されているのに、これを地方議員の出張費に回すってありなんでしょうか?

  • 女性局も目的自体は立派なのに勿体無いですね。
    女性活躍や子育て支援には賛成しますが、その活動を担っている方がこんな有様ではまた信頼をなくすかもしれませんね。
    自民党も政策の芯が上手くいっていればこの程度の話はたいしたことはないと思いますがLGBT関連法案等を通した事で岩盤支持層の信頼が揺らいでる状態なので、今回の件に対して真摯に向き合わないとこれからこうした問題は出てきそうな気がします。

    まぁこれまで通り自民党に入れるだろうとたかを括っているからこんな支持者を舐めた政策ばかり取るんでしょうが。

  • 論点はこの研修と称する慰安旅行に税金が使われたかどうか。五公五民と言われるほど国民の負担率が上がり、岸田首相の増税予告と相まって、税金への国民の関心が高まっているこの時期に、これは国民をおちょくっているとしか思えない行動です。
    外国人に、奨学金だ、生活保護だ、保険証の使い回しだ、でどんどん税金が浪費されている。年間予算を使い切らずに何十兆円も金庫に腐らせている。天下り団体に国富を何百兆円も溜め込んでいる。新宿会計士さんの力作のあの図を見るたび、怒り心頭です。
    減税します! これを維新が感情論ではなく理論的に説明する事ができれば天下を取れる、かもしれません。

    • 確かに仰る通り、これが核心中の核心イシューでしょうね。
      加えて、その根本にあるprimary balance黒字化が政策目標に依然として据えられている事(骨太方針の通り)を撤回する事を明示する政党か、これがどの政党に投票するかの重要な判断基準となると思います。
      政策目標は飽くまで国民の豊かさの向上、国力増大、安全保障確保(インフラ整備等を通じた災害への備えの強化や食料安保を含む) であって、財務省省益確保優先の為のprimary balance黒字化の為、国民負担増大などでは決してありません。
      それとやはり、根本に何故政治というものがあるのか、国民の為にとの志操があるのか、との原点を忘れた政党なり議員はいらない、害になるばかりの存在という認識をしっかり持つという事でしょう。

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