ロシア向け中古車輸出制限で日露貿易はさらに縮小する

日露間の貿易高が減少しているなか、唯一例外的に伸びていた分野のひとつが、中古車でした。日本からロシアへの中古車の輸出額は、2016年には192億円程度に過ぎませんでしたが、これが昨年・2022年には2507億円にまで急増しているのです。こうしたなか、日本政府は排気量1900㏄を超える中古車などについても、ロシアに対する輸出を制限する方針を打ち出しました。少し遅すぎるくらいですが、適切な措置でしょう。

日露貿易高の現状

日露間の貿易高が減少しているようです。

財務省税関が作成・公表している『普通貿易統計(概況品別国別表)』に基づけば、2023年1月から6月までの日露間の累計貿易額は、日本からのロシアへの輸出が2399億円、ロシアから日本への輸入が-5668億円で、合計貿易高は8067億円と、2016年以降で最低水準です。

図表1は2016年以降の毎年1~6月までの貿易高を示したものですが(便宜上、輸出をプラス、輸入をマイナス表示しています)、2023年上半期に関していえば、過去最低となっていることがうかがえるでしょう。

図表1 日露貿易高(1~6月)

(【出所】財務省税関『普通貿易統計(概況品別国別表)』より著者作成。以下同じ)

輸入品はエネルギー、輸出品は中古車

2022年の数値が膨らんでいるのはおそらく、資源高の影響でしょう。

図表2は2022年(1月~12月)のロシアとの貿易を品目別に分解したものです。

図表2-1 対露貿易(2022年1月~12月、輸出)
品目輸出額構成割合
食料品及び動物24億円0.40%
飲料及びたばこ5億円0.08%
原材料5億円0.08%
鉱物性燃料109億円1.80%
動植物性油脂0億円0.00%
化学製品146億円2.42%
原料別製品309億円5.11%
機械類及び輸送用機器4909億円81.29%
雑製品175億円2.90%
特殊取扱品358億円5.93%
合計6040億円100.00%
図表2-2 対露貿易(2022年1月~12月、輸入)
品目輸入額構成割合
食料品及び動物1579億円8.02%
飲料及びたばこ2億円0.01%
原材料770億円3.91%
鉱物性燃料1兆3489億円68.51%
動植物性油脂10億円0.05%
化学製品180億円0.91%
原料別製品3571億円18.14%
機械類及び輸送用機器30億円0.15%
雑製品11億円0.05%
特殊取扱品49億円0.25%
合計1兆9690億円100.00%

これで見ると明らかなとおり、ロシアからの輸入額については、「鉱物性燃料」だけで全体の3分の2以上を占めており、また、日本からロシアに対する輸出額については「機械類及び輸送用機器」が中心で、これだけで全体の81.9%を占めています。

また、この「機械類及び輸送用機器」4909億円のうちの2507億円が「中古車」であり、日本製の自動車が相当にロシアに輸出されていることがうかがえます。

中古車輸出はむしろ増加傾向に!

一方、今年1月~6月までの累計に関していえば、やはり輸出は「機械類及び輸送用機器」が全体の約80%、輸入は「鉱物性燃料」が全体の3分の2少々という構造は変わらないのですが、その金額は微減しつつあります(図表3)。

図表3-1 対露貿易(2023年1月~6月、輸出)
品目輸出額構成割合
食料品及び動物14億円0.59%
飲料及びたばこ2億円0.10%
原材料2億円0.09%
鉱物性燃料73億円3.03%
動植物性油脂0億円0.00%
化学製品69億円2.89%
原料別製品93億円3.88%
機械類及び輸送用機器1900億円79.21%
雑製品78億円3.25%
特殊取扱品167億円6.96%
合計2399億円100.00%
図表3-2 対露貿易(2023年1月~6月、輸入)
品目輸入額構成割合
食料品及び動物642億円11.33%
飲料及びたばこ0億円0.00%
原材料187億円3.31%
鉱物性燃料3879億円68.44%
動植物性油脂0億円0.00%
化学製品94億円1.66%
原料別製品841億円14.83%
機械類及び輸送用機器11億円0.20%
雑製品5億円0.09%
特殊取扱品8億円0.15%
合計5668億円100.00%

図表2が通年、図表3が半年であるため、単純比較はできませんが、2023年6月までの輸出高は2022年累計の半額以下、輸入高に至っては4分の1強にまで落ち込んでいるのは印象的です。

ただし、中古車に関しては1413億円です。昨年1年間を通じた中古車の輸出額が2507億円だったことを思い出しておくと、その半額は1250億円程度であるため、むしろ中古車の輸出は伸びている、という言い方もできるかもしれません。

遅すぎるくらい

ちなみに日本からロシアへの中古車の輸出額を並べておくと、次の通り、近年、急速に増えていることがわかります。

日本からロシアへの中古車の輸出額(年額)
  • 2016年…*192億円
  • 2017年…*326億円
  • 2018年…*487億円
  • 2019年…*622億円
  • 2020年…*641億円
  • 2021年…*987億円
  • 2022年…2507億円
  • 2023年…1413億円(※半年間)

そして、もしも中古車の輸出を制限すれば、日露貿易額はさらに落ち込むことになるでしょう。

こうしたなかで、経産省は先月28日に外為法に基づき、ロシアに対する追加の輸出禁止措置を発表しました。

ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置を実施します(輸出貿易管理令の一部を改正)

―――2023年7月28日付 経産省HPより(※8月2日付で一部修正)

追加品目は多岐に及ぶのですが、そのなかに「輸送用の機械及びその部分品」という項目があり、次のようなものが例示されています。

排気量1,900cc超の自動車(ガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車)、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車

これにより一部の小型車を除き、ほとんどの中古車の対露輸出が制限されることになると考えられます。むしろ遅すぎるくらいですが、ロシアの戦争遂行能力を低下させるという観点からは、じつに適切な措置であると考えて良いでしょう。

ロシア人経営者らが「悲鳴」

これに関連し、富山新聞に先週、こんな記事が掲載されていました。

中古車輸出ピンチ 県内業者から悲鳴 対ロシア規制対象拡大

―――2023/7/29 05:00付 富山新聞デジタルより

これによるとロシア向けの中古車輸出は半数以上が伏木富山港から行われているそうであり、「販売業者への影響は大きく、担当者から悲鳴が上がっている」、などとしています。

富山新聞によると、ロシアによるウクライナ侵攻開始以降、自動車各社は新車の輸出ができないため、「ロシアでは日本から輸入した中古車の人気が高い」のだそうであり、実際、昨年を通じてロシアに輸出された中古車は全国で20万4868台で、このうち富山県からは全体の半数超の10万8281台が送り込まれたのだとか。

ちなみに富山新聞に出て来る「悲鳴を上げている経営者」として出て来る事例も、たとえば「週に千台の中古車をロシアに送っている業者のロシア人経営者」、「パキスタン出身の代表者」などだそうですが、逆にこれまで中古車が制裁対象から漏れていたこと自体が不思議な気がします。

いずれにせよ、今回の中古車規制により、日露貿易がさらに縮小(シュリンク)していくことは間違いないありません。

なお、ウクライナ戦争をロシアの敗北に終わらせることは重要ですが、それ以上にこれから日本が加速しなければならないのは、「戦後秩序」ではないでしょうか。

第二次世界大戦後、旧ソ連とその後継国家が不法占拠したままである北方領土や千島列島、樺太などの帰属についても議論を進めていかねばなりませんし、ロシアが保有する核や、場合によってはロシアが崩壊した際、東シベリアに後継国家が出現したらどうなるか、といった点に関しても、整理は必要でしょう。

ただ、この点については本稿の範囲からは少し外れるため、また機会を見て、別稿にて議論していくことにしたいと思います。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. たろうちゃん より:

    自動車には半導体が多く使用されている。なので中古車からも半導体が取り出される。一時期新車の購入は3ヶ月待ちなんていう時期があった。ロシアへの中古車の輸出規制か、管理かはしらないが、中古車だけでなくあらゆる分野での規制は必要とおもう。ロシアだけでなく中国や韓国にも規制を掛けるべきだ。輸出だけでない。輸入だって報復を受けるだろうけど、規制は必要だとおもう。中国なんか福島の海洋放出に反対して日本産の海産物を禁輸している。韓国だってそう。日本は圧力に負けることなく相互主義で頑張ってもらいたい。

  2. さより より:

    露との貿易の数字、細かく書いて頂いたので、露は、経済的には殆ど関係のない国だと改めて分かりました。天然ガスだって、日本がお情けで開発して上げたようなもので、それが無ければ、輸出入それぞれ約6千億円。これは、殆ど、国交があるかないかのレベルです。
    日本にとって、露は、北方領土問題、核の脅威がなければ、何の関心も起こらない無縁の存在ですね。
    どなたかが、露は、北方領土をさっさと返して、日本との平和条約を結んでいれば、どれだけの経済的な利を得られたか、と書いておられました。それは、韓国を見れば分かります。何も無い韓国があれだけのGDPを稼げるのは、日本のお陰でしょう。北方四島を返して、日本がシベリア開発を支援していたら、今日、シベリアの経済はどれだけの規模であったことでしょうか?
    日本がちょっとイヤイヤながらも行った天然ガス開発で、1兆円以上も稼げるのですから。
    確かに、露は、北方四島に固執した事により大きな損をしていますね。日本の力が分かってないですね。
    何でも、力の強さでしか考えられない国なんですね。

  3. はにわファクトリー より:

    資源を剥がしたら何も残らないのが現代ロシアの特徴です。資源モノカルチャー経済と命名したいです。ちかごろロシア名の新型自動車が発売になったのですが、それは中国車のリバッジ製品だそうです。
    資源モノカルチャー国家はいきなりリッチになったつもりでいました。溢れる商品も最新式産業中間財もすべてが外国製。ペテルブルグなりモスクワなりの住人達が着けているものすべてが外国ブランドです。そして儲けた金は国内再投資へは回らず一握りの政商たちが独占、国外おもに欧州の風光明媚な観光地なりロンドン郊外の大邸宅なりスーパーヨットに化けました。ロシア国内に投資先などないのです。人を軽視する彼らに特有な社会心理構造にも関係があります。即席成金根性ロシアで何が一体起きたのか、有頂天になっていたかも知れないが実は彼らは嵌められたのではないかという疑惑を解くヒントは William Spaniel 氏の Youtube チャネルにあります。

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